仮想通貨担保融資を提供するNexoは、これまでビットコインを始めとした4通貨を担保としてきました。
本日、そこにXRPの追加が発表されましたの。
本稿では、XRP採用のあらましと、仮想通貨担保融資について解説していきます。
仮想通貨担保融資とは?
10月18日、仮想通貨による貸金サービスを提供する企業Nexoの公式ツイッターで、XRPを担保とする融資の提供が発表されました。
公式ツイッターでは、以下のようにツイートされています。
XRPを担保とした融資が、Nexoプラットフォームで利用可能となりました。
XRPを担保とした貸金サービスを提供しているのは当社だけです。
XRPの潜在的な可能性(今後も値上がりしていく可能性)を維持しつつ、スピーディに資金を調達しましょう。
「XRPの潜在的な可能性を維持しつつ」というのは、多少分かりにくい言い回しですが、分かりやすく言えば「今後値上がりする可能性があるXRPを売却することなく」という意味です。
通常、現金が必要な時には、仮想通貨を売却して現金を得ることになります。
今後も値上がりの可能性があると考えているならば、仮想通貨を泣く泣く売ることとなります。
しかし、担保としている状態であれば、あくまで金融業者が仮想通貨に担保権を設定しているだけで、借りたものをきちんと返済すれば仮想通貨は返ってきます。
仮想通貨を売ることなく現金を調達することができるのです。
現金を必要としているものの、仮想通貨を売りたくない人にとっては、非常に好都合なサービスだと言えます。
Nexoについて
XRP担保融資の提供を始めたNexoは、これまでも仮想通貨を担保とする貸金サービスを提供してきました。
仮想通貨を担保とすることによって、1000ドル~200万ドルまでの融資を提供としています。
今回、XRPを取り扱い始めたことで、ビットコイン、イーサリアム、バイナンスコイン、NEXOトークン、XRPの計5種類を担保とすることが可能となりました。
なお、今後追加を検討されている仮想通貨には、ステラ、ライトコイン、ビットコインキャッシュ、トロン、カルダノ、イオス、ジーキャッシュ、モネロ、アイオータ、イーサリアム・クラシック、オミセゴー、ヴェチェイン、クアンタム、ネオ、キンなどが検討されているようです。
XRPの前進に注目
先日、SWELLでも実用化が進んでいることが明らかとなり話題を呼んだXRPですが、Nexoの採用によってまた一歩普及が進んだといえるでしょう。
このほか、10月17日には、シェアリング・エコノミーアプリのOmniでXRP決済が可能となったことが、Omni創設者のブログで発表されています。
スムーズに決済できるXRPのメリットに注目し、取り入れようとする動きが各所で起こっています。
仮想通貨業界がまだそれほど盛り上がっていなかった時、ビットコインによって送金に革命が起こると言われていたものですが、現在、XRPの採用事例が相次いでいます。
仮想通貨担保融資の現状
Nexoが提供している仮想通貨担保融資ですが、上記の通り、仮想通貨を売却することなく現金を手に入れられることに大きな意味があります。
しかし、このようなNexoの取り組みを皮切りに仮想通貨担保融資が拡大していくかについては、以下の理由から、多少時間を要するのではないかと思います。
担保としての取り扱いが難しい
通常、何らかの資産を担保に融資を引き出すと「担保融資」では、不動産を担保とした不動産担保融資が最も有名で身近なものです。
それ以外には、株式や債券などの有価証券を担保にした融資、売掛金や保険金などの指名債権を担保にした融資、海運業者における船舶や牧場における家畜などの動産を担保にした融資などがあります。
これらとは対照的に、同じ資産でありながらも、仮想通貨への担保設定はほとんど普及していません。
これは、担保としての取り扱いが難しいことが理由と考えられます。
不動産や動産、有価証券や指名債権といった資産ならば、価値の鑑定は容易であり、価値が急に変動することも基本的にはありません。
株式は価値が激しく変動することもありますが、担保掛目を60~70%くらいに設定することで担保利用が可能です。
しかし、仮想通貨はどうかというに、まず価値の把握が容易ではありません。
現時点では、ビットコインを始めとした代表的な仮想通貨でさえ、真の価値がどれくらいであるのか分かっていません。
基準となる価値が分からないため、現在の価値が適正であるかどうかの判断もできません。
このため、仮想通貨を担保として提供されても、いくらの融資を出すべきなのか決めかねるのです。
そもそも担保とは、債務者が返済できなくなったとき、担保から回収することで保全を図るものです。
もし、担保価値7000万円を認められる不動産ならば、7000万円を融資しても保全は充足していると言えます。
債務者が返済不能になれば、担保不動産を売却して回収すればいいだけです。
しかし、1BTC=70万円のビットコインを100BTC担保にするからと言って、7000万円の融資で保全が充足するのかと言えば、決してそうとは言えません。
基準価値が定まっておらず、100BTC=7000万円の担保価値として取り扱うことができないのです。
また、仮想通貨は価値が急変する可能性が高い資産でもあります。
約一年前、ビットコインは240万円を更新したものの、現在では70万円程度を推移しています。
実に70%もの下落です。
もし、100BTC=7000万円で担保としたものの、再び70%の下落となれば100BTC=2000万円程度に価値が目減りし、保全機能を果たさなくなります。
このような問題があることから、仮想通貨は担保としての取り扱いが難しく、仮想通貨担保融資の普及にはまだ時間を要するのではないかと思います。
仮想通貨担保融資が普及したらどうなる?
しかし、仮想通貨担保融資を利用すれば、仮想通貨を売却することなく資金を調達できるのですから、これを好都合と考える人は多いはずです。
例えば、ICOによってイーサリアムで資金調達をしたものの、その後価値が急落した会社での利用が考えられます。
事業資金を必要としていても、下落の程度によっては売却環境が悪すぎるため、イーサリアムを担保として資金調達したほうが良いと考える会社もあるはずです。
また、イーサリアムは今後も価値が上昇すると考えている会社でも、ICOで調達したイーサリアムを担保として融資を受けるのが好都合でしょう。
思惑通りにイーサリアムの価値が上昇していけば、それに伴って担保価値は上昇し、資金調達余力が増え、資金繰りに大変役立つはずです。
個人においても、現金が必要でありながら売却したくないと考える人は多いと思います。
まだまだ値上がり余地があるから売りたくない、急落後だから売りたくないなどが考えられます。
例えば、仮想通貨で利益を得た人が納税資金を確保するために、現金の必要に迫られて仮想通貨を売却することがあり、それによって下落を引き起こされることもあります。
これは、2017年度の納税の時期にもしばしば話題になっていたことです。
仮想通貨による納税ができない現時点では、そうせざるをえなかったのです。
しかし、仮想通貨担保融資が普及していけば、それによって現金を調達し、納税その他の資金に充てることができます。
これにより、法定通貨の需要増に伴う仮想通貨の価格変動が抑えられ、市場の安定につながることが期待できます。
もっとも、仮想通貨のボラティリティの高さから、普及には障害も多そうです。
価値の急変によって担保価値が不足すれば、金融業者の安定性を欠いたり、消費者側が追加の担保を求められたりといったトラブルが頻発する可能性があるため、法的枠組みなども必要となってくるかもしれません。
以上のような理由から、仮想通貨担保融資によって、仮想通貨の利用価値増進、普及の促進、市場の安定などが期待できますが、普及にはもう少し時間がかかるように思います。
仮想通貨そのものの価値の安定や、仮想通貨市場の整備などが前提となるのではないでしょうか。
まとめ
仮想通貨担保融資にXRPが採用されたことは、XRPの普及をまた一つ前進させるものであり、リップル保有者にとってはうれしいニュースだったと思います。
本稿で検証したように、仮想通貨担保融資の普及には、もう少し時間がかかるように思います。
もちろん、ここ1年で仮想通貨への一般的な認識は随分広まっていますし、仮想通貨に対する整備が加速度的に進んでいくならば、仮想通貨担保融資の普及も早まるかもしれません。
仮想通貨全般やXRPの将来を計る、一つの材料にしていただければと思います。