モーニングスター社がXRPを株主優待。影響や意図を深読み

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先日、ジャスダックに上場しているモーニングスター社が、株主優待としてXRPを配布することを発表しました。

これによって、モーニングスター社の株価が大幅に上昇したわけでもなく、株式市場の反応は極めて薄いのですが、仮想通貨市場への影響を是非考えてみるべきでしょう。

本稿では、モーニングスター社のXRPによる優待実施の概要と、期待される影響について解説していきます。

株主優待にXRPを導入

SBIホールディングスは、日本の金融業者の中でも特に多角化が進んでいる会社です。

ネット証券業、保険業、銀行業、仮想通貨交換業、ベンチャー企業投資などの様々な分野で事業を展開し、総合金融業者として急速に発展しています。

とりわけ、仮想通貨業界における存在感は強く、北尾吉孝社長はリップル社の役員も務めています。

SBIホールディングスは2015年11月、中間持株会社としてSBIグローバルアセットマネジメントを発足しており、SBIグローバルアセットマネジメントの子会社には投資評価会社として有名なモーニングスター社があります。

現在、モーニングスター社はジャスダックに上場しており、時価総額は今年3月時点で272億円です。財務は堅調であり、10期連続増配の実績からも分かる通り、業績も安定して伸びている優良会社です。

株主優待の内容

モーニングスター社の配当金は増配を続けており、2019年3月期の中間配当で6.5円、期末配当で7.5円、合計14円を配当しています。

2020年3月期の中間配当は、前年同期比50銭増配の7円に増配することが発表されています。

また、期末配当も8円への増配が予定されており、予定通りに配当されれば年間の配当金は15円となります。

モーニングスター社の8月30日の終値は350円ですから、配当金15円ならば配当利回りは約4.29%となります。

東証1部全銘柄の平均配当利回り(前期基準・加重平均)は2.56%、ジャスダック全銘柄の平均配当利回り(前期基準・加重平均)は1.71%ですから、モーニングスター社の4.29%という利回りはかなり高い水準と言えます。

またモーニングスター社は、配当金のほかに株主優待も実施しています。

これまでは、保有する単元数に応じて、株式新聞の無料購読クーポンなどを提供してきました。

これに加えて、8月28日のプレスリリースにおいて、中間配当の株主優待でXRPを配布することを発表しました。

配布されるXRPは、1単元(100株以上)を保有する株主に対して30XRPです。

中間配当の基準日は9月30日です。

配当金の増配に加えて、現金と同じ価値があるXRPを配布するのですから、かなり太っ腹です。

配当利回りは大きく上昇

1株あたりの年間の配当金15円であるため、100株保有する株主は配当金1500円に加え、30XRPを受け取ることになります。

最近、XRPは1XRP=27~28円程度で推移しています。

1XRP=28円とすれば、30XRPは840円相当です。

したがって、モーニングスター社の株主は、配当金とXRPを合計して年間で2340円を受け取ることになります。

現在の株価350円で100株取得した場合の投資金額は3.5万円ですから、これに対する配当利回りは最大で約6.69%まで上昇することになります。

ただし、XRPの配布は「100株につき30XRP」ではなく、「100株以上の保有者に30XRP」であるため、全ての単元株主(1単元(=100株)以上を保有する株主)に一律で30XRPの配布となります。

これは株主優待の特徴とも言える部分です。

配当金は1株ごとに支払われますが、株主優待は「100株以上で」「500株以上で」「1000株以上で」といった条件で配布されるため、株式の保有数と株主優待が比例するものではないのです。

モーニングスター社が、XRPの配布をツイッター上で発表したとき、「とりあえず1000株買いました」といったリプライを送るユーザーも見受けられましたが、1000株保有しても300XRPの配布を受けられるわけではありません。

350円で1000株保有すれば、配当金は15000円と30XRPを受け取るため、配当利回りは約4.53%となります。

この点には注意が必要です。

SBIホールディングスの自信

SBIホールディングスの北尾社長は、これまでもXRPを力強く推してきました。

モーニングスター社の株主優待にXRPが導入されたのも、SBIグループとしての方針が色濃く表れています。

株主優待に伴うモーニングスター社のプレスリリースでは、株主優待としてXRPを配布することについて、以下のように説明しています。

 

当社は、株主の皆さまへの利益還元として、2019 年 9 月 30 日を基準日とする中間配当の増配を決定し、併せて中間株主優待として、仮想通貨 XRP を贈呈することにいたしました。

仮想通貨(暗号資産)は、既にグローバルで、決済、送金、運用等の様々な場面で利用されており、なかでも効率的なグローバル送金で活用されている仮想通貨 XRPの実用性は今後一層高まり、ひいては、資産運用におきましても重要な資産クラスのひとつになると考えております。

当社は、「投資家一人一人の的確な資産形成に資する」ことを経営の基本的な考えとしており、これまでに豊富で偏りのない投資情報を提供してまいりました。仮想通貨につきましても、当社が運営する「My 仮想通貨」アプリを通じて、仮想通貨の価格情報や関連ニュース等を積極的に提供してまいりました。

当社株主の皆さまには、「My 仮想通貨」アプリによる情報に加え、仮想通貨 XRP に触れる機会を提供させて頂きたく、このたびの株主優待を実施させて頂くことになりました。

 

この説明から、SBIグループがXRPに寄せる期待が良く分かります。

XRPが金融的に非常に有用であり、今後実用性が高まっていく仮想通貨であるとする記載には、金融業者としての立場が多分に含まれています。

しかし同時に、資産運用でXRPが重要な資産クラスになるとも記載しています。

投資評価会社として知名度が高く、資産運用に関する情報を発信したり、セミナーを開催したりしているモーニングスター社が、このように立場を明確にしたことは、XRPにとって間違いなく好材料になると言えるでしょう。

XRPへの見込みが大きく外れてしまうと、モーニングスター社の発信する評価や情報への信頼は揺らぎ、事業に大きなマイナスとなります。

相当な自信や裏付けがなければ、このような大胆な優待を実施することはできないはずです。

見方によっては、SBIグループはモーニングスター社を通じて、XRPへの投資を推奨したと考えることもできます。

XRPの価格への影響は?

モーニングスター社の株主優待によって、XRPには以下のような影響が考えられます。

関心の高まり

モーニングスター社は、株主優待としてXRPを配布することで、自社の株主の資産にXRPが含まれることになります。

資産形成をサポートすることを使命としている会社ですから、株主がXRPという重要な資産クラスに積極的に投資できるように、XRP関連の情報を今以上に発信していくことが考えられます。

なんといっても、モーニングスター社の株主の多くは、投資に強い関心を抱いています。

モーニングスター社のような、ジャスダック上場の地味な会社以外にも、株式市場には魅力的な銘柄がたくさんあります。にもかかわらず、あえてモーニングスター社に投資しているのは、

 

  • モーニングスター社の投資関連業務に期待している
  • モーニングスター社の発信する情報を信頼している

 

といった理由からです。

期待・信頼しているモーニングスター社がXRPにお墨付きを与えたことで、モーニングスター社の株主がXRPに高い関心を抱くようになれば、XRP価格にも良い影響が期待できます。

投資の促進

さらに、XRPに投資する人が増え、価格上昇につながる可能性もあります。

というのも、XRPを受け取るためには、SBI VCトレードに口座を開設する必要があるためです。

モーニングスター社の単元株主数は、今年3月時点で15073人です。

単元株主のうち、どれくらいが口座を開設するか不明ですが、元より投資に関心を寄せる株主が多いのですから、これをきっかけとして口座を開設する人もかなり多いはずです。

単元株主に配布されるXRPは、合計で約45万XRPです。

仮に、これが全て売られるとしても、ほとんど影響のないレベルであり、優待が売り圧力になることは考えにくいです。

むしろ、受け取ったXRPをそのまま保有し続ける人や、興味をもってXRPへの投資を始める人も多いでしょうから、価格の上昇力になることも期待できます。

仮想通貨市場全体への影響も

モーニングスター社の株主優待をきっかけとして、これまで株に投資してきた人が、その一部をXRPに振り分けることも考えられます。

これは、株式市場から仮想通貨市場に資金が流れてくることにほかなりません。

もちろん、モーニングスター社の規模から考えれば、この株主優待が仮想通貨市場に与える影響はわずかなものかもしれません。

しかし、このような形で株式市場と仮想通貨市場が直接的な接点を持つことは珍しく、その意味を深読みするのも悪くないでしょう。

たとえば、この株主優待を通じてXRPへの関心や信頼が高まっていけば、

 

  • SBI VCトレードの口座開設が増える→XRPに投資・保有する人が増える→XRPを介した様々な金融サービスの普及につながる→XRPの流通量が大きく伸び、価格の上昇につながる
  • リップルネットを通じて送金業務を行なうSBIレミットの利用者が増える→SBIレミットの送金業務にXRPが使われることで、XRPの流通量が大きく伸び、価格の上昇につながる

 

など、様々な形でXRPの上昇要因になる可能性があります。

このように、モーニングスター社の株主優待は、SBIグループがあらゆる金融業務にXRPを活用するための布石となり、XRPの普及・価値向上につながるかもしれません。

今後は、モーニングスター社がXRPによる優待を継続していくのか、経過を観察していく必要があるでしょう。今回と同様、自信をもってXRPを推進し、優待として配布し続けるならば、SBIグループがXRP支持の立場であることは明白であり、XRPに投資する理由にもなりえると思います。

まとめ

モーニングスター社が株主優待でXRPを配布することは、投資評価会社として非常に思い切った取り組みだと言えます。

リップル社と深い関係にあるSBIグループが、XRPの普及推進にかなり自信を持っていること、また近年加速する実用化の流れに手ごたえを感じている様子がうかがえます。

仮想通貨市場やXRPの価格にも長期的に大きな影響をもたらす可能性があるため、単に株式市場の片隅で起こった小さな変化と見るのではなく、大いに好材料として捉えるべきでしょう。

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