SWELLが閉幕。注目ポイントのまとめ

リップル(XRP)

リップル社の主催するカンファレンス「SWELL」が、10月1日から2日にかけて開催されました。

非常に注目度が高く、XRP価格の急伸を大きく後押ししたカンファレンスでしたが、その内容とはどのようなものだったのでしょうか。

本稿では、SWELLの内容で注目すべき点についてまとめていきます。

SWELLの内容まとめ

リップル社が主催するカンファレンス「SWELL」が、10月1日から2日にかけて(日本時間では2日から3日にかけて)開催され、閉幕を迎えました。

元アメリカ大統領のビル・クリントン氏が登壇することが発表されるなど、開催前から非常に注目度が高く、XRP価格が急騰するひとつのきっかけともなっていましたが、実際にはどのような内容だったのでしょうか。

1日目と2日目に分けて、注目すべきポイントを見ていきましょう。

 

SWELL1日目

まず、1日目に大きく注目されていたのが、元アメリカ大統領のビル・クリントン氏と、リップル社CEOであるブラッド・ガーリングハウス氏の登壇です。

 

ビル・クリントン氏の登壇

ビル・クリントン氏は、元大統領という立場にあることから、その影響力は決して小さくありません。

また、他の元大統領ではなくクリントン氏であることにも意味があります。

なぜならば、クリントン氏が大統領を務めたのは1992~2000年であり、この時期にインターネットが普及しているからです。

日本においても、インターネットが大きく普及したのはこの時期でした。

インターネットの普及率は1996年には3.3%、2000年には37.1%と急速な普及を見せており、2000年には「IT革命」が流行語になっています。

インターネットが大きく普及したこの時期に大統領を務めたクリントン氏は、インターネットの普及に多大な貢献をした人物であり、情報革命の立役者の一人と言えます。

インターネットの普及によって、世界は情報によってつながれることとなり、物理的な距離が大きく縮まりました。

仮想通貨においても、ブロックチェーンでつなぐことによって、金融上の距離を大きく縮めるものですから、インターネットの普及と仮想通貨の普及は非常に似たものがあります。

このため、世界を大きく変化させた情報革命を担った人物が、金融に革命を起こすと言われている仮想通貨についてどのような意見を述べるのか、またドットコムバブルを目の当たりにした人物が仮想通貨バブルをどう捉えているのかが注目されていました。

クリントン氏は公演の中で、当初から予想されていた通り、ブロックチェーン技術をインターネットの普及になぞらえながら話しました。

まず触れたのが、ブロックチェーン技術の進歩に伴って生まれる格差の問題です。

インターネットは社会の様子を大きく変化させましたが、同時に情報格差も生み出しました。

インターネットが普及し始めた当時、パソコンはまだ高価なものであり、使いこなせる人も少なかったことから、経済力やパソコンスキルによって情報格差が生まれました。

また、都市部と山間部における情報格差も問題とされましたし、あるいは先進国と発展途上国でも情報格差が生まれました。

時代と共に情報格差は減少していき、今では誰もがインターネットを使うことができ、発展途上国でもそれなりに普及しています。

クリントン氏は、インターネット黎明期になぞらえ、ブロックチェーン技術にも同じような格差が感じられると話しています。

しかし、これは格差が生まれていることを問題視するものではなく、あたかもインターネット黎明期が同じであったように、一時的に格差が生まれることは避けられないが、やがてその問題は解消されていくということでしょう。

クリントン氏ならではの見解であったと言えます。

この他、仮想通貨規制についても意見を述べています。

最近、アメリカではビットコインETFのことがよく話題になっており、SECの仮想通貨に対する見解にも注目が集まっています。

そんな中、クリントン氏としては、仮想通貨の可能性を潰さないような規制を望んでいるようです。

クリントン氏は、規制について以下のような意見を述べています。

 

 

ブロックチェーンは国境や所得層を超える性質を持っており、そこに大きな可能性があります。

それがマネーロンダリングを始めとした犯罪に使われるリスクは認識しているが、可能性を潰してしまうような古い規制に当てはめてはいけない。

ブロックチェーンの可能性や使用事例は非常に大きい。

それなのに、マイナスな政治や金融、社会政策などで台無しになってしまう可能性がある。

ブロックチェーン技術を商業利用するにあたっても、目先の金銭的な報酬を追い求めるのではなく、利益をあげると同時に充分に慎重になって、規制の枠組みは賢く考えていかなければならない。

金の卵を産むガチョウを殺してはならない。

 

クリントン氏は、ブロックチェーンが金の卵を産むガチョウであると喝破しており、このことからも仮想通貨への多大な期待が窺われます。

情報革命と仮想通貨革命に似たものを感じ取っており、ブロックチェーンを非常に価値のある、決して潰してはならないものだと考えているのです。

クリントン氏の公演の後、リップル社CEOであるブラッド・ガーリングハウス氏は自身の公式ツイッターにおいて、以下のようにツイートしています。

 

我々のSWELLにおける、ビル・クリントン氏の発言に非常に感謝している。

ブロックチェーン技術が、世界中の人々の金融のあり方を変える驚異的な力を持っているという、彼の発言に全面的に同意する。

 

ブラッド・ガーリングハウス氏の登壇

クリントン氏に続いて、リップル社CEOであるブラッド・ガーリングハウス氏が登壇しました。

ガーリングハウス氏は、主にリップル社の目指す方向性と、リップル社の商品であるxRapidについて話しています。

まず、リップル社の方向性について、以下のように語っています。

 

シリコンバレーでは、破壊的なイノベーションも起こってきたが、必ずしも破壊する必要はない。

リップル社は銀行にとってかわるつもりはなく、銀行のパートナーでありたいと考えている。

現在、まだブロックチェーンは初期段階だが、我々は他の企業とは違い、実際に活用事例を持っている。

 

これに続いて、ガーリングハウス氏は、リップル社の注目商品であるxRapidの商業化を発表しました。

既に導入が決まっており、アメリカとメキシコ間の送金サービスを展開しているCuallix、国際送金サービスを行うMercuryFX、アメリカの金融サービス会社であるCatalyst Corporate Federal Credit Unionで利用されることが報告されました。

xRapidは、XRPを利用することによって、低コストで迅速な国際決済が可能とするものです。

XRPがいよいよ実用化となるわけです。

Catalyst Corporate Federal Credit Union社のブラッド・ガネイ氏は、この発表をうけて、

 

従来の国際送金は、手数料やスピード、使いやすさなどの点で、顧客の期待に満足に答えられるものではなかった。

しかし、xRapidならばこれらの問題を全て解決できる。

 

と述べています。

ガーリングハウス氏のこの発表によって、SWELL開催前に利確売りに押されていたXRP価格が大きく上昇したことからも、xRapidの注目度が高かったことが分かります。

 

このほかリップル社製品について

このほか、SWELLの1日目にはサンタンデール銀行の発表も話題となりました。

サンタンデール銀行はスペインの大手銀行であり、以前からリップル社との提携が話題になってきました。

サンタンデール銀行では、今年4月からリップルの技術を使ったOne pay FXを提供しており、このことについてサンタンデール銀行のイノベーション責任者であるエド・メッツガー氏は以下のように述べています。

 

我々の顧客は、情報技術によって高速化された社会に生き、指先一つで情報を扱うことに慣れている。

その高い水準に比べて、今日の国際送金システムはユーザーのニーズを満たすことができていない。

我々は、リップル社と協力して様々な試験に取り組んできた。

その中で成功したのがOne pay FXであり、イギリス、スペイン、ブラジル、ポーランドで実際に提供してきた。

One pay FXは、国境を超えた取引をシームレスに処理し、顧客が容易に送受金できることを目的としている。

例えば、顧客の一人が休暇中にイタリアにいて、駐車違反をしてしまったとする。

罰金を払わなければならないが、銀行カードを持っていない。

そこで彼は、One pay FXによってすぐに罰金を支払うことで、車がレッカー移動させることを防ぐことができる。

これまでは、多くの時間を要したプロセスを、たったの4~5クリックで完了することができる。

利用した企業からは、大変な好評をいただいている。

 

One pay FXは、リップル社の技術を使った外国為替用のアプリです。

ブロックチェーン技術を使った外貨決済を提供したのは、サンタンデール銀行が初です。

サンタンデール銀行は、今後もOne pay FXの提供を拡大していきたいとしています。

 

 

SWELL2日目

SWELLの2日目には、世界の金融に関するリップル社の調査報告、世界的な仮想通貨規制、リップルの有価証券問題などについて触れられており、2日目も非常に注目度の高い内容となっています。

 

リップル社の調査報告

リップル社の調査報告では、現在1100兆円という莫大な資金が、ノストロ・アカウント(銀行間取引に用いられる決済用口座であり、決済のための資金をこの口座にプールしておく)に保管されていることが報告されました。

これは経済的に見て非常に非効率的なことであると指摘し、また現時点における国際送金システム「SWIFT」に不明点が多いことにも言及しています。

このほか、仮想通貨の価値は価値の保存手段や希少性にあるのではなく、あくまでも活用されているかどうかによって価値が決まるとしたうえで、リップル社は最先端をゆくものだとする発言もありました。

 

世界の仮想通貨規制とXRPの有価証券問題について

G20によって模索が続いている世界レベルでの仮想通貨規制についても、議論がなされています。

パネリストとして登壇したのはBen Lawsky氏(ニューヨーク金融サービス局所属、Bit Licenseの考案者)、Richard Teng氏(Abu Dhabi Global MarketのCEO)、Michael S Didiuk氏(Perkins Coie社の共同経営者、SECの首席弁護士を8年間務めた)、Archari Suppiroj氏(タイの商圏委員会のフィンテックディレクター)、Ross Leckow氏(国際通貨基金の法務部副長官)などであり、錚々たるメンバーが意見を交わしています。

注目を集めた発言は以下の通りです。

 

【Ben Lawsky氏】

2013年から、ニューヨーク金融サービス局は仮想通貨を規制していくにあたって、まずは仮想通貨について学ぶことから始めるべきだと考えてきた。

そうすることが、最終的に多くの金融機関が参加することにもつながると考えている。

 

【Ross Leckow氏】

IMFNewsは仮想通貨について、他のメディアよりも公平なスタンスで発信している。

仮想通貨は、マネーロンダリングやテロなどに悪用されるリスクがあるが、国際金融システムを効率化することもできる。

 

【Archari Suppiroj氏】

仮想通貨の課題はすぐに解決できるものではない。

何も規制しないままにしておくと、やがて手におえない状況になっていくだろう。

 

中でも注目を集めたのが、かつてSECの首席弁護士を8年間務めた経歴があるMichel S Didiuk氏の発言です。

仮想通貨規制の中でも、特にXRPは有価証券であるかどうか、どのように規制されていくのかという問題がしばしば話題となっていますが、Didiuk氏はこれについて以下のように述べています。

 

私は、XRPは有価証券ではなく、通貨だと考えている。

ハウェイ・テスト(対象となる取引が、証券取引の定義の一つである「投資契約」に該当するかどうかを判定するテスト)によって証券であるかどうかを考えてみると、XRPはリップル社がなくなっても機能するものであり、証券には該当しない。

 

サイアム商業銀行の発言

このほかには、タイのサイアム商業銀行のColin Dinn氏の発言も注目に値します。

 

今後5~8年のうちに、銀行の存続は厳しくなるだろう。

サイアム商業銀行は生き残りを図るために、共に成長していけるリップル社のような企業を求めていた。

国際送金において、より円滑で簡単な取引を実現する方法を模索していたとき、ブロックチェーンに注目すべきだと考えた。

 

サイアム商業銀行といえば、タイ国内で最も歴史が古く、資産規模は第3位であり、王室系の銀行であることからも重要な銀行です。

その銀行がリップル社と手を組むことに非常に意欲的であり、ブロックチェーンにも積極的な姿勢を見せていることは、ブロックチェーンと銀行の将来を示唆するようで、興味深いところです。

 

決済におけるブロックチェーン報告

さらに、送金とブロックチェーンの関連について、Celent社のシニアアナリストであるAlenka Grealish氏が調査結果を報告しています。

これは、世界の700以上の送金企業を対象とした調査であり、送金企業がブロックチェーンと仮想通貨についてどのような関心を示しているかを調査したものです。

現在、全世界の国際間送金高は27兆ドルに上ります。

XRPの本領は国際間送金にあるわけですが、27兆ドルに上る莫大な送金をどのようにXRPが担っていくかによって、XRPの将来性も占うことができます。

調査報告によると、既にブロックチェーンを商品化している、あるいは商品化に近い段階にあると回答した企業は18%に上りました。

また、45%は商品開発や試験を運用に取り組んでいるとのことです。

仮想通貨決済への関心に至っては、実に75%もの企業が大きな関心を抱いていると回答しています。

この報告から、27兆ドルにのぼる国際送金において、送金企業の大部分が仮想通貨決済に関心を寄せており、半数近くが実用に向けて具体的な動きを始めており、約2割は実用化にかなり近いようです。

国際送金に仮想通貨が活用される未来は、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。

 

SWELL閉幕後に60円を下回る

興味深い内容が盛りだくさんでしたが、SWELLが閉幕して間もなく、XRPは60円を切りました。

SWELL開催直前から価格が下落を始め、xRapidの商品化が発表されたことで再度大きく上昇しましたが、その後再び下落に転じました。

xRapidの発表後は、それ以上に大きなニュースはないとの見通しから、利確売りに押されたものと思います。

もっとも、SWELLの内容が悪かったことによって下落しているわけではないため、それほど気にすべきとは思えません。

SWELLで発表された通り、xRapidが普及していくことも十分に考えられますし、中長期的に価格が上昇していく可能性は充分にあります。

短期的な下落を憂えることなく、腰を据えて臨む必要があるかもしれません。

 

 

まとめ

SWELLでは、ビル・クリントン氏の公演、xRapidの商品化発表、元SECの首席弁護士によるXRPは有価証券ではないとの意見など、注目すべき内容がたくさんありました。

SWELLによって、XRPが非常に有望な仮想通貨であるという見方を強めた投資家は多いと思いますし、これによってXRPの底値が堅くなる可能性もあります。

もちろん、有価証券問題に結論は出ておらず、仮想通貨全般に対する規制の方向性も定まっていないため、必ずしも楽観視できるとは言えませんが、総じてSWELLは実りの多いものであったと思います。

 

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