最近、ビットコインのトランザクション数が順調に伸びています。
4月の1日当たりのトランザクション数は、バブル期にあった2017年12月の1日当たりトランザクション数を超えており、なおかつ取引手数料が低くなっているのです。
これは、ビットコインの実利用が広がっているためです。
本稿では、ビットコインのトランザクション数の変化と、需要の高まりについて解説していきます。
ビットコインのトランザクション数が増加
ビットコインをはじめとする仮想通貨がバブルと言われたのは、なんといっても2017年であり、中でも年末の値動きは未だに語り草となっています。
2018年に入ると相場は下落に転じ、最近は徐々に上へ向き始めているものの、下落を脱け出したとは言い切れない状況です。
しかし、ビットコインや仮想通貨が「低迷している」というわけではありません。
特に、普及に注目するならば、むしろ順調に進んでいるようです。
その根拠のひとつとなるのが、ビットコインのトランザクション数です。
2017年のバブル期と現在における、ビットコインの1日当たりの平均トランザクション数を比較すると、2019年4月の平均トランザクション数が最高値を記録しており、2017年12月平均の数値を越えたことが分かっています。
具体的には、2017年12月の1日当たりの平均トランザクション数が約360万であるのに対し、2019年4月の1日当たりの平均トランザクション数は約366万となっています。
2017年12月は、相場が非常に活発であったため、売買に伴うトランザクションが急増していました。
特に、短期売買によるトランザクションが多かったと言われています。
一方、2019年4月はそのような相場環境になく、短期売買によるトランザクションの増加も起こっていません。
しかし、トランザクション数がバブル期を上回っているということは、売買に伴うトランザクションではなく、送金や決済によるトランザクションが増加していることを示唆しています。
つまり、バブル期から現在に至るまでの約1年半の間に、ビットコインの実利用が広がっており、それによって需要が高まっているのです。
ソーシャルレンディング、送金、決済などにビットコインが活用される機会が増えてきており、それがトランザクション数に如実に表れていると言えます。
価格が安定せず、ボラティリティが高いことは、ビットコインの大きな欠点とされてきました。
この原因の一つとして、投機的な目的でビットコインが利用されていることが挙げられます。
投機目的で利用された場合、本質的な価値があまり重視されずに売買がなされ、ときに合理的ではない値動きになります。
価値が定まりにくく、高すぎる・安すぎるという状況に陥りやすく、ボラティリティが高くなります。
しかし、投機目的での需要が減少し、実利用での需要が高まっていけば、価値は定まりやすくなり、ボラティリティが低くなります。
したがって、最近のビットコインのトランザクション数の増加から、仮想通貨業界が良い流れにあることが分かります。
取引手数料も減少
さらに、取引手数料が減少していることにも注目すべきです。
2017年12月の1日当たりの平均取引手数料は616BTCであったのに対し、2019年4月は89BTCとなっており、大幅に減少しているのです。
単に、トランザクション数がバブル期水準を越えただけではなく、取引手数料が減少していることにも大きな意味があります。
上記の通り、大相場にあったバブル期には、短期売買を目的としたトランザクション数が非常に多かったものです。
短期売買をする投資家は、自分が想定している価格で取引するため、トランザクションの承認を急いでほしいと考えます。
投機目的によって、高い取引手数料を支払っても送金しようとした結果、取引手数料が高騰する結果となったのです。
しかし、現在はそのような状況にはありません。
送金や決済といった目的で利用するのですから、トランザクションを早急に処理する必要性は低いです。
これによって、トランザクション数はバブル期水準を超えているにもかかわらず、取引手数料は安く抑えられているのです。
このことからも、ビットコインの実利用が広がっていることが分かります。
このほか、Segwitの普及率も高まったことで、トランザクションがスムーズになったことも影響しているでしょう。
Segwitの普及率は、2017年12月は約10%でしたが、2019年4月には約40%に上昇しています。
これも、トランザクション数が増加しつつも取引手数料が低く抑えられている理由です。
インフレ対応にビットコイン
ビットコインの需要が高まり、トランザクション数が増加している背景として、インフレ問題への対応も挙げられます。
ハイパーインフレーションなどにより、自国通貨が深刻なインフレに陥ったとき、その通貨は信用を失います。
インフレによって物価が上昇すれば、相対的に通貨の価値は目減りします。
経済がまともに成長していくとき、インフレ率は軽微な上昇を見せますが、なんら問題にはなりません。
しかし、ハイパーインフレになると、通貨の価値は極端に減少することになります。
近年、ハイパーインフレ国として最も有名なのはベネズエラですが、IMFのデータでは、ベネズエラの2017年の年間インフレ率は250万%とも言われています。
これは、ベネズエラの通貨であるボリバルの価値が1年間で2万5000分の1にまで減少するということです。
ある時期に1ボリバル=1円であったとすれば、その1年後には1ボリバル=0.00004円(25,000ボリバル=1円)になるのです。
このようなことになれば、ボリバルを持ちたいを思う人はいなくなります。
そこで注目されたのがビットコインであり、ベネズエラではビットコインの需要が伸び続けています。
最近では、トルコも同じような状況にあるといいます。
トルコのインフレ率は20%台が続いており、ベネズエラには遠く及ばないものの、やはり高すぎるインフレ率と言えるでしょう。
このため、トルコでもビットコインなどの仮想通貨を購入する人が増えており、仮想通貨取引所の登録者が急増しています。
例えば、仮想通貨取引所OKExでは、今年3月26日にトルコでの運営を開始していますが、すでに登録者数は3万人を超えています。
その結果、トルコはヨーロッパ・中東地域の中で、仮想通貨所持者の割合が最も高い国となっています。
国内の仮想通貨所持者が多くなれば、ビットコイン決済の普及も広がっていく可能性が高まるため、インフレ国における仮想通貨の需要増は、見逃せない動きです。
ベネズエラやトルコ以外にも、インフレに悩まされる国はたくさんあります。
さらに、そのような国のほとんどは発展途上国であり、人口も多いため、仮想通貨の需要が高まれば仮想通貨業界や市場に大きな影響を与える可能性があります。
ビットコインのトランザクション数の増加にも、インフレ国による需要増加が影響しているでしょう。
今後も、インフレ国と仮想通貨の関係には注目したほうがよさそうです。
まとめ
4月に入ってから、仮想通貨市場は良い動きを見せる局面が多くなっています。
テザー問題など、懸念すべき問題は色々ありますが、ビットコインのトランザクション数が増加していること、インフレ国で需要が伸びていることなど、地合いは良好と言えるでしょう。
実利用への広がりは、仮想通貨業界・市場に確実に良い影響をもたらします。
仮想通貨投資の参考にもなるので、今後もこのようなニュースは随時取り上げていきたいと思います。