SBIホールディングスの戦略から金融&仮想通貨業界の関係に迫る

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仮想通貨の実用化、業界の発展、適切な規制や普及のためには、金融業界と仮想通貨業界が深くかかわっていく必要があります。

現時点では、金融業界が仮想通貨を深いところで取り入れることはできていませんが、今後の流れはそうなっていくものと思います。

金融業界と仮想通貨業界の関係は、現時点でどのようなものであるか、あるいは将来的にどのような関係であるべきか、それを知るためにはSBIホールディングスの戦略や考え方を知るのが役立ちます。

本稿では、3月6日に開催されたカンファレンスにおける、SBIホールディングスのプレゼンを紹介します。

SBIホールディングスと仮想通貨業界

世界においても、日本国内においても、金融業界が徐々に仮想通貨業界との関係を強めつつあります。

これは、金融業界が仮想通貨を利用することは、仮想通貨の普及と業界の発展のために必要不可欠なことであり、最近は良い流れにあると言えます。

金融業界のなかでも、仮想通貨を特に好意的に捉えている金融機関と言えば、SBIホールディングスです。

SBIホールディングスは、これまで多くの仮想通貨関連ベンチャー企業に投資してきました。

また、社長である北尾吉孝氏は、仮想通貨、特にリップルとXRPについて肯定的な発言を繰り返し、注目されてきました。

SBIホールディングスは3月6日、SBIグループの成長戦略に関する資料をホームページで公開しました。

この資料には、大和インベストメントカンファレンス2019での北尾社長のプレゼンの内容も記載されており、SBIホールディングスの仮想通貨業界に対する姿勢を知ることができます。

 

 

SBIホールディングスの考え方

北尾社長の語るところによれば、仮想通貨に強いかかわりのある

「フィンテック(金融と技術、つまり「”fin”ance」と「”tech”nology」合わせた造語。金融サービスと情報技術を融合させる動きのこと)」

とSBIホールディングスの関係は、三段階に分けて進められています。

すなわち、

 

  1. フィンテック1.0・・・SBIホールディングスが1999年に創業してから、16年間をかけて金融サービス事業を確立する段階
  2. フィンテック1.5・・・AIやIoT、ビッグデータなどを金融サービスに活用し、金融サービス事業の主体をオンラインとする。その上でブロックチェーンを活用していく段階
  3. フィンテック2.0・・・ブロックチェーンを中心として金融サービスを提供していく段階

 

という流れです。

最終的にフィンテック2.0に至れば、ブロックチェーンを中心とした金融のありかたを、SBIホールディングスが率先して示していくと話しています。

 

 

投資→導入→拡散

SBIホールディングスは、創業時から投資→導入→拡散を基本戦略としています。

つまり、仮想通貨業界とのかかわりにおいても、ベンチャー企業に投資し、自社の金融サービス事業に取り込んでいき、やがては拡散することで社会に変革をもたらそうとする戦略を基本としているのです。

ベンチャー投資のために、SBIホールディングスは2015年12月、Fintechファンドを設立しており、投資に取り組んできました。

それから約3年が経過した今、すでに回収フェーズに入っています。

今年1月には、新たにSBI AI&Blockchainファンドを立ち上げ、AIとブロックチェーンへの投資を開始しています。

現時点で、すでに350億円にのぼる投資が決定しているとのことです。

 

導入について

上記のように投資を進め、次に導入段階に移っていくわけですが、現時点ですでに日本IBMと共同で検証を進めており、SBI証券の債券取引業務にブロックチェーンを適用できる可能性を探っているようです。

このほか、住信SBIネット銀行の勘定業務でブロックチェーンを使う実験も行っており、このような実験は国内では初めての事例です。

実験の結果、サーバーダウンが起こらなかったこと、250万口座を想定したトランザクションに対応できたこと、最大で15%程度のコスト削減につながったことなどが報告されています。

 

仮想通貨の実需拡大に向けて

SBIホールディングスと仮想通貨業界の関係性だけではなく、仮想通貨業界そのものの動向についても触れられています。

北尾社長は、これまでは仮想通貨は投機の対象として見られてきたものの、今後は実需と実用性を重視するように変わっていくと考えています。

SBIグループでは、デジタルアセットを基盤とした仕組みをすでに構築完了しているとのことで、今後は実需の導入に向けて具体的な動きをしていくことが予想されます。

 

SBIVCの動向

このほか、SBIVC(SBIの仮想通貨取引所)でのレバレッジ取引の提供開始についても述べられています。

現在、SBIVCでは現物取引だけを提供していますが、今後は国会での規制審議を踏まえて、レバレッジ取引を実装することを発表しています。

レバレッジ取引の提供開始は2019年7月を予定しています。

 

仮想通貨を取り入れた金融商品の提供を

このほか注目すべき発言と言えば、SBIグループがアメリカのCoVenture Holdings Companyと共同で立ち上げようとしている仮想通貨ファンドについてです。

このファンドでは、仮想通貨を取り入れた金融商品を作り、SBI証券で販売を計画しているとのことです。

ただし、法的な規制が整備されていないことから、金融庁にストップをかけられているため、実際の販売にはもう少し時間がかかるものと思われます。

このような金融商品のほかに、XRPを用いた送金をSBIレミットで提供する計画もあるそうです。

 

 

北尾社長がリップル社の役員に?

以上のように、SBIが仮想通貨事業に対して、かなり意欲的に取り組んでいる様子がうかがえます。

SBIグループとしての動きも興味深く、仮想通貨業界にとっては心強いと言えますが、北尾社長本人の中には、誰も予想していなかったような内容も含まれています。

北尾社長は、2018年3月、東京で開催されたR3社のCordaシステムに関するカンファレンスに出席し、登壇しています。

当時は、R3社とリップル社の訴訟問題が続いていたため、その場では和解に向けて取り組むこと、その後はXRPの活用に力を入れることを宣言しています。

その後、R3社とリップル社は和解し、XRPの実用化は着実に進んでおり、北尾社長が宣言した流れで進展しつつあります。

SBIグループは、R3社とリップル社の双方に出資しており、役員を派遣しています。

これに関して北尾社長は、大和インベストメントカンファレンスの中で、「私がリップル社の役員になることも考えている」と発言しています。

この発言は、本人の意図がどうであったか分かりませんが、何の根拠もないことではないでしょう。

また、SBIグループとリップル社の関係性、XRP導入への意欲などが、具体的に知れる発言だと思います。

 

まとめ

日本国内の金融機関が、カンファレンスなどを通して事業戦略や所感を広く公開するケースはそれほど多くなく、仮想通貨がテーマとなればなおさらです。

そんな中、SBIホールディングスの戦略や所感を、社長自身が詳しく語ったのですから、大いに参考にすべき内容と思います。

今後も、金融業界と仮想通貨業界の関係を知るにあたって、SBIホールディングスの動きは参考になりそうです。

 

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