金融庁が仮想通貨交換業者の検査・モニタリング結果を中間発表

国の動き

先日、金融庁が仮想通貨交換業者の検査結果を公表しました。

これにより、日本国内の仮想通貨交換業者の実態、抱えている問題点、金融庁の今後の対応などを知ることができます。

また、今回の公表内容から、日本の仮想通貨市場に影響しそうな内容もいくつか見られましたので、その点についても見ていきましょう。

金融庁の最新発表について

8月10日、金融庁の公式サイトにて、「仮想通貨交換業者等の検査・モニタリング 中間とりまとめの公表について」として、仮想通貨交換業者への立ち入り検査の結果を公表しました。

今年初めに起こったcoincheck社へのハッキング事件を始めとし、6月には金融庁の認可を受けた仮想通貨交換業者に対しても業務改善命令が出されたことで、日本の仮想通貨交換業者は一体どうなっているのか、今後どうなっていくのかということに関心が集まっていました。

これに関して、金融庁の今回の発表を見ることで、現在における仮想通貨交換業者の実態、問題点、金融庁の対応などを知ることができます

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参照資料

https://www.fsa.go.jp/news/30/virtual_currency/20180810-1.pdf

金融庁の公表内容を簡単にまとめると、以下のような点を特に注目しているようです。

 

仮想通貨交換業者の拡大について

仮想通貨交換業者の会社の規模は急速に拡大しており、前事業年度比で平均553%も拡大している。

一方、業者の内部体制がこの拡大に追いついておらず、顧客からの預かり資産を役員1人あたり33億円も管理しなければならなくなっている。

 

仮想通貨交換業者の問題点について

内部管理体制の整備が追い付いていないことは、特にビジネス部門、リスク管理・コンプライアンス部門、内部監査で問題をもたらしている。

これにより、取り扱う仮想通貨のリスクが適切に評価されていない、マネーロンダリングやテロ資金供与対策が不十分である、システム担当者不足によってシステムリスクへの対策が十分はない、経営陣が十分に機能していないなどの問題が起こっており、なおかつこの状況の中で宣伝行為が盛んに行われていることも問題である。

 

金融庁の対応について

これらの問題への対策として、金融庁は、登録業者に対しては精密かつ頻繁にリスクプロファイリングを行い、引き続き立ち入り検査とモニタリングを行い、問題が認められた場合には行政対応を取っていく。

みなし業者に対しては、業務改善命令への対応と、検査・モニタリングの結果を踏まえて個別に検証し、登録の可否を検討していく。

新規登録申請業者に対しては、内部管理体制の整理状況、書面やエビデンスでの確認、現場検証や役員ヒアリングを通して登録審査を進めていく。

 

 

仮想通貨交換業者の新規登録は再開へ

みなし業者と新規登録申請業者に対する金融庁の対応を見てみると、今後はこれらの業者に対して、仮想通貨交換業者の登録を再開させることが分かります。

coincheck事件以降、金融庁は仮想通貨交換業者の登録を停止していましたが、ようやく再開となります。

ただし、新規登録の審査はかなり厳しいものになると予想できます。

今年6月、登録業者にたくさんの問題が見つかったことにより、長らく曖昧にされてきた、あるいは問題としながらも断罪されてこなかった問題点が明るみに出ました。

そして、今回の発表によって、様々な問題点が細かく、明確に公表されることとなりました。

このような公表を出しておきながら、今後登録された業者に再び問題が発覚したとなれば、金融庁の監督機能に重大な疑いをもたれてもおかしくないでしょう。

そうならないためにも、金融庁は今後ますます監督を厳しく行ない、審査も厳格化すると考えられます。

 

 

「暗号資産」の表記について

なお、今回の発表で気になるのが、「暗号資産」という表記です。

一般的には「仮想通貨」と呼ばれており、言い換えるにしても「暗号通貨」と言い換えるものですが、今回の発表では「暗号資産」と表記されているのです。

特に、資料の冒頭では

 

ビットコインに代表される暗号資産(いわゆる仮想通貨、本とりまとめにおいては、以下「暗号資産」で基本的に統一)

 

という書き方をしているところを見ると、あくまでも暗号資産という呼称が正確であり、一般に使われる仮想通貨という呼称は俗な表現であるとするおもむきも感じられます。

改正資金決済法を見ても分かりますが、これまで金融庁は「仮想通貨」という表記を用いてきました。

しかし、今回の公表では暗号資産と表現しているのです。

これまで、仮想通貨に対する捉え方は明確ではなく、通貨であると考えるか、資産であると考えるかによって解釈は大きく異なりますし、それによって法律をどう適用するかということも変わってきます。

仮想通貨ではなく、あえて暗号資産という表記を貫いた意図は明らかではありませんが、国としては仮想通貨に対し、通貨としては認めておらず、あくまで資産として認めるにとどまっているのかもしれません。

また、先日ブエノスアイレスで開催されたG20の報告を見ても、仮想通貨はソブリン通貨としての性質を欠いているとの見解も出されているため、その点への配慮から、暗号資産という表記に至ったとも考えられます。

今後は、金融庁について、仮想通貨交換業者への監督を見守っていくと同時に、仮想通貨をどのように捉えるかという点に関しても注目していくべきでしょう。

仮想通貨は、通貨としてみなされるか、資産としてみなされるかによって大きく変わります。

現在は通貨として認められており、改正資金決済法を根拠に規制案なども組み立てていますが、これが通貨ではなく資産として認められるならば、金融商品取引法が規制の中心に据えられる可能性も出てきます。

この辺に関しては、まだまだ憶測が飛び交っている段階ですから、今後も注目していく必要があるでしょう。

 

 

まとめ

2017年から2018年にかけて、仮想通貨がようやく世間的にも認知されるようになり、それに伴って様々な問題も起きてきました。

これに対応する金融庁の動きは、日本国内の仮想通貨市場や、仮想通貨投資のあり方に大きく影響するものですから、決して見過ごすことはできません。

金融庁の動きに充分に注意しておくことで、投資判断の材料も得られることでしょう。

 

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