フランスでICOが合法化へ。ヨーロッパの動きに注目

国の動き

ヨーロッパは、イギリスやフランス、スイスなど、仮想通貨に積極的な取り組みをしている国が多いことで知られています。

また、仮想通貨規制の世界的な方針を作っていく上でG20の動きは注目すべきですが、G20にはEUが加盟しているほか、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなども名前を連ねています。

このことから、ヨーロッパにおける仮想通貨の動きは無視できないものと言えますが、先日、フランスでICOを合法化するとの報道がなされました。

世界のICO事情

これまでICOは、仮想通貨業界の盛り上がったことで大きな注目を浴びてきました。

しかし、それと同時に詐欺被害の増加にもつながり、ICOへの対応は国によって大きな隔たりがあります。

ICOに好意的な国としては、アメリカ、スイス、シンガポールなどが有名で、資産調達額でも特に上位にランクづけられています。

地域として進んでいるのはヨーロッパで、ICOは革新的な資金調達手段であると評価されており、今後もイギリスやロシアなどでの積極化が有望視されています。

しかし、これらの国々でも、ICO関連の不正行為への対応には苦慮しているようで、今後も規制がどのように進められていくかに注目が集まっています。

 

フランスでICOが合法化へ

そんな中、9月12日、フランスでICOに対する新たな法律枠組みが可決されました。

具体的には、「企業の成長・変革のための行動計画に関する法案(以下、PACTE)」において、ICOに関する条項が承認されたのです。

同時に、ICOに参加した出資者の利益を保護するための法律も整備されたとのことです。

これにより、ICOによって資金調達を行う企業に対して、フランス金融市場庁(以下、AMF)がライセンスを付与する権限が与えられます。

フランス下院の公表によれば、ICOを行う企業はトークン発行前にAMFにライセンスを申請し、ICOの内容や発行体についての情報を提供して審査を受けるという流れになります。

ライセンスが発行されるかどうかの基準は、投資家に具体的な保証を提供できるかどうかが中心となるようです。

これまで、ICOの最大の問題点として考えられてきたのは、プロジェクトを掲げてICOを行ったものの、その後プロジェクトに予定通りの進捗が見られず、投資家が損失を被るというものでした。リターンを期待させて資金を集める詐欺的なICOが多いことも問題とされていました。

しかしフランスでは、PACTEの可決によって、投資家への保証に欠ける不正なICOは、ライセンスを受けられずにICOの実施が不可能となります。また、ICOに関する詳細な情報は全て提供する必要があるため、透明性の問題も解消されます。

正確でない情報、あるいは情報不足などによって投資家が損失を被ることもなくなるでしょう。

こうして、本来リスクが高く、不正なものも多かったICOに、保証を与えることを目的としています。

今回の報道では、ICOに関する法律の枠組みが成立したと発表されています。

その具体的な内容を見れば、AMFが発行するライセンスによってICOが行われるという法的枠組みが作られたのであり、ICOが合法化されたものと考えて良いでしょう。

 

 

フランスの狙い

リスクが高く、問題も多く、多くの国が扱いに困っているICOを、フランスは合法化することとなりました。

なぜそのように積極的な取り組みをしているのかと言えば、フランス政府の政策によるものと思います。

まず、この法案の狙いは、世界中の投資家やイノベーターをフランスに招致することであり、フランスの財務大臣であるブリュノ・ル・メール氏も自身の公式ツイッターでそのように発言しています。

多くの国がICOの扱いに難渋している中で、ICOを前向きに規制していくこととなれば、フランスはICOに適した国とみなされ、期待通りに投資家を呼び込むことになるかもしれません。

また、現フランス大統領であるマクロン大統領は、新しいテクノロジーに対して一貫して積極的な姿勢を見せてきました。

2017年には、フランスをスタートアップ国家にするとの提言をしていますし、今年7月には仮想通貨取引に伴う税率を大幅に引き下げています。

そして今回、PACTEによってICOを合法化し、これによってフランス経済に革新をもたらすことを狙っています。

財務大臣であるブリュノ・ル・メール氏の発言を辿っても、今年3月には「ブロックチェーン革命の準備が整った」との発言をしており、その頃から仮想通貨やブロックチェーンといった新興技術に積極的に取り組んでいく姿勢を見せていました。

このように、フランスでは仮想通貨に関する法的整備を推し進めている印象があり、世界的に見ても進んでいると言えます。

仮想通貨業界を牽引する存在になっていくかもしれず、今後も注目しておくべきでしょう。

 

 

ヨーロッパ全体では?

では、ヨーロッパ全体ではどうかというと、9月7日から8日にかけて開催された欧州会議で、仮想通貨に関してヨーロッパ全体で共通する規制基準を設定していこうという動きがみられました。

この会議では、EUの全加盟国の財務大臣が集まり、仮想通貨の影響や規制厳格化の必要性について協議されました。

その中で、仮想通貨の透明性、マネーロンダリングやテロ資金への不正利用などが話し合われ、ヨーロッパ共通でのルールを作るように呼びかけも行われました。

ただし、EU加盟国それぞれにおいて、仮想通貨に対する取り組みにはかなりの温度差があり、足並みをそろえての規制は難しいと思われます。

共通ルールの設定が必要という認識を確認し合っただけで、そこに具体性はありません。

EUという限定された範囲だけでも共通の規制案が設けられないところを見ると、世界というもっと広い範囲で思惑が絡むG20での規制はなかなか進まないのではないかとも思います。

この会議は別としても、ヨーロッパ全体ではICOについて賛否両論あるようです。

推進派の動きを見てみると、9月4日に欧州議会内の超党派議員連盟が会合を開いており、ICOを前向きに規制していくための建設的な議論が行われています。

しかしその一方で、ICOは透明性が欠如している、ボラティリティが高い、詐欺が発生するなどと厳しい意見もあります。

色々な意見があることから、欧州会議ではなんら具体的な合意には至っていません。

その中でフランスがICO合法化に踏み切ったことは、足並みをそろえてルールを作っていこうとする全体の流れにそぐわないものとも言えます。

しかし、フランスは合法化によって、ICOの透明性や安全性を確保するとしていますから、それが確実であるならば、否定派が問題とする点をしっかりと解消していることになります。

これがきっかけとなって、ヨーロッパ全体の仮想通貨規制が前向きなものになってくる可能性も考えられます。

 

なお日本では・・・

なお、日本におけるICOについても言及しておくと、日本の金融庁では、ICOに対して資金決済法や金融商品取引法といった観点からの規制を行っており、法律を順守しながらICOに取り組む必要があります。

先日公表された、仮想通貨交換業協会の自主規制方針の資料を見てみると、金融庁の方針に加えて、プロジェクトとしての実現性があるかどうか、安全性があるかどうか、調達資金の使い道はどうであるかなどを協会で審査したうえで、基準を満たすもののみICOを認めるという方針となっていました。

しかし、どのように審査が行われるのか、協会の審査に合格すれば問題のないプロジェクトなのかという点については疑問が残ります。

フランス政府が保証するライセンスを賭けて審査を行うICO規制と比べると、単なる自主規制団体の規制にはそれほど期待ができないように思われます。

日本のICO規制は、まだ発展途上にあると言えるでしょう。

 

 

まとめ

以前、フランスが仮想通貨取引にともなう税率を大幅に引き下げた時にも、フランスは世界でも特に積極的に法整備に取り組んでいるなという印象がありました。

そして今回、取り扱いが難しいICOについても、合法化されることとなりました。

これまでのフランスの動きを見ていると、今後も色々な取り組みが期待できます。

フランスは、ヨーロッパの中でも影響力が大きいことから、ヨーロッパ諸国の仮想通貨やICOへの取り組みにも、前向きな姿勢や動きが出てくるかもしれません。

 

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