新型通貨の適正利用を考える議員連盟が設立される

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7月17日、自民党有志によって、「新型通貨の適正利用を考える議員連盟」が設立されました。

この議連では、仮想通貨市場の健全な発達のため、仮想通貨に関する法律や税制について議論を進めていくとしています。

議連の議論は、仮想通貨市場にどのような影響を与える可能性があるのでしょうか。

新型通貨の適正利用を考える議員連盟の発足

読売新聞の報道によると、7月17日、自民党有志によって「新型通貨の適正利用を考える議員連盟」が設立されたようです。

議連の会長には、衆議院議員の竹本直一氏が就任するとのことです。

この議連は、仮想通貨市場の健全化を目指すもので、仮想通貨交換業者への規制、投資家保護の方針、関連する法律の整備などを議論していくとしています。

 

 

仮想通貨交換業者の規制について

報道の中で特に取り上げられているのは、仮想通貨交換業者を規制する法律についてです。

仮想通貨業界では、これまでにも色々なトラブルがありましたが、2018年に入ってからというもの、日本国内でもトラブルが起こり、大きな話題を呼びました。

ハッキング被害を始めとした様々なトラブルが起きる中で、金融庁が仮想通貨交換業者に対して検査をしたところ、セキュリティの脆弱性、反社会勢力の取引、投資家の資産の流用など、多くの問題が見つかっています。

また、取引所の健全性に問題があるだけではなく、法的な枠組みでも投資家保護に問題があります。

例えば、仮想通貨交換業者を規制する法律の一つに改正資金決済法が挙げられますが、改正資金決済法では、会社の資産と投資家の資産を分別管理することを義務付けつつも、交換業者の破綻などによって投資家が損失した場合の定めはありません。

一方、証券会社などの場合には、資産を分別管理し、なおかつ経営破綻によって投資家に損失が発生した場合、業界が作る基金によって損失を補償することが義務付けられています。

このように、仮想通貨市場が抱える問題は山積みです。

議連では、このような問題に対し、仮想通貨を金融商品取引法の対象とすることによって改善を検討していくようです。

金融商品取引法とは、株式、債券、外国為替、商品先物などの金融取引を規制している法律であり、条文によれば「国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資すること」を目的としています。

金融商品取引法では、開示規制や参入規制、不公正取引規制などが定められていることから、この法律が仮想通貨交換業に適用された場合、

 

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  • 開示規制によって、さまざまな報告義務が課せられ、仮想通貨市場の透明性が高まる
  • 参入規制によって、仮想通貨交換業者への規制がより強くなり、仮想通貨取引所の安全性が高まる
  • 不公正取引規制によって、インサイダー取引などの不公正取引が禁止され、市場全体の健全性が高まる

 

などが期待されます。

参入規制については、特に議論が進められていくものと考えられます。

日本の仮想通貨交換業者のほとんどはベンチャー企業であり、金融庁の検査でもたくさんの問題が見つかっており、これが投資家保護の観点から問題視されています。

今回設立された議連の目的には、仮想通貨市場の健全化や投資家保護が盛り込まれていますが、そのためには仮想通貨交換業者を厳しく取り締まる必要があります。

仮想通貨が金融商品とみなされて金融商品取引法の規制を受けるようになると、仮想通貨交換業者として求められる条件が今よりも厳しくなり、事業の継続が難しくなる業者も少なくないのではないか、という声もあります。

現在運営されている仮想通貨交換業者にとっては逆風が吹いていると言えますが、投資家にとっては良い流れだと言えるでしょう。

ただし、金融商品取引法で規制の対象となっているのはあくまでも金融商品であり、仮想通貨は今のところ金融商品とみなされていません。

通貨としてみなすか、金融商品としてみなすかを議論している段階であり、現時点では金融商品取引法に適用されることもないとされています。

しかし、金融商品取引法は改正が多い法律です。

仮想通貨が有価証券とみなされるかどうか、ということは最近よく話題になっていますし、仮想通貨市場が拡大すればするほど、個人投資家の参入が進めば進むほど、一層の法的規制が不可欠になってきます。

今後の議論次第では、金融商品取引法が適用される可能性もあると言えます。

もし金融商品取引法の対象となれば、仮想通貨は通貨ではなく金融商品としてみなされることとなり、ビットコインETFなどのデリバティブ商品なども取り扱いが始まる可能性があります。

 

 

税制について

なお、この議連では仮想通貨に対する税制も積極的に議論していくようです。

議連の姿勢にしてもそうですが、仮想通貨の税制についてはこれまでも議論がなされてきました。

国税庁の14日の発表でも、仮想通貨の確定申告を促すための環境整備を進めるために、仮想通貨所得の確定申告の簡略化を検討すると発表されています。

現在、仮想通貨取引によって得た所得は雑所得とみなし、1月から12月までの間に得た雑所得の合計が20万円を超える場合には確定申告をする必要があります。

最大税率は55%と非常に高く、仮想通貨投資家にとって大きな負担となっています。

もちろん、利益を得ながらも確定申告を怠った場合、脱税となり、追徴課税の支払いを求められたり、罪を問われたりする可能性があります。

しかし、仮想通貨取引によって得た利益を計算する際には、仮想通貨取引所によって取引履歴の保存方法が異なることや、頻繁に取引をしていた場合の計算が煩雑であることなどから、正しく納税することが難しい場合もあります。

このため、国税庁は確定申告を簡略化するために環境を整備していくとしていますが、議連では雑所得から分離課税への変更も検討していくようです。

税制の改正が進むことによって、もっと多くの個人投資家が仮想通貨市場に参加するようになれば、仮想通貨の流動性は高まり、価格も上がることが期待できます。

しかし、今回設立された議連の議論はどうあれ、仮想通貨市場の整備に対して消極的あるいは退歩的な考えを示す議員がいることも忘れてはなりません。

例えば、財務大臣の麻生太郎氏は、仮想通貨“技術”に対しては理解を示しているものの、「汗もかいていない儲けを優遇するのはどうかと思う」と、仮想通貨投資によって得られる利益を否定的に解釈しているようです。

また、最近では千葉県館山市議員の石井敏宏氏の「仮想通貨はグレーゾーンのギャンブルのようなもので、最高税率55%は妥当、70%くらいでも良い」という発言が話題となりました。

このような発言も見られる中で、今回の議連が発足し、仮想通貨投資への税制が改善される可能性が出てきたことは、喜ばしいことだと言えるでしょう。

 

 

まとめ

仮想通貨市場の整備はまだまだ進んでいない状況ですが、法律面でも税制面でも、政治における関心が広がり、徐々に取り組みが進んでいることはポジティブに捉えるべきでしょう。

去年までは、国内政治は仮想通貨市場にそれほど関心を示しておらず、税制に関しても、直前で慌てたように決定されたほどでした。

しかし2018年に入ってからは、日本国内での政治と仮想通貨市場の関連性が強まっているように思います。

今後、この流れは一層強くなっていくことが予想されるため、国内政治にも注目しておくべきでしょう。

 

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