フィンサム2019でSBI北尾社長が講演。XRP活用への期待

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金融庁と日本経済新聞社の共催によって、2016年から毎年開かれているフィンサム。

今年も9月3日から6日にかけて開催されました。

仮想通貨に関わる内容も色々と取り上げられていますが、中でも注目すべきは、SBIホールディングスを率いる北尾社長の講演内容です。

昨今の国内金融の概況、地域金融の苦境、金融庁の方針と焦りに加えて、北尾社長の講演内容を詳細に検討していくと、SBIの構想が仮想通貨業界にも大きな影響をもたらす可能性は極めて高いと考えられます。

本稿では、SBIの構想と背景、期待される影響などについて詳しく解説していきます。

フィンサム2019で北尾社長が講演

9月3日から6日にかけて、金融庁と日本経済新聞社の共催によって、フィンサム2019が開催されました。

フィンサムは2016年から開催されている、フィンテックの活用をテーマとするイベントです。

仮想通貨周辺のことも色々と取り上げられていましたが、中でも特に注目されているのが、SBIホールディングスの北尾吉孝社長の講演です。

SBIホールディングスは、日本国内の金融機関の中でも特に進取性に富んでおり、フィンテックをはじめとする新興技術も積極的に取り入れています。

それを率いている北尾社長は、以前から仮想通貨の可能性、特にXRPの有用性に強い関心を示しており、SBIホールディングスとしてもリップル社との連携を強め、XRPの活用を模索してきました。

フィンサム2019の講演では、北尾社長は地域創生と次世代金融機関の創造を打ち出しています。

その中で、国際送金や貿易金融の分野では、仮想通貨を積極的に活用していく方針を明らかにしました。

北尾社長いわく

北尾社長の講演が行なわれたのは、フィンサム2019初日の3日です。

北尾社長は講演の中で、

 

「国内外の様々なフィンテックを活用し、地域金融機関と『第4のメガバンク構想』を実現していく」

 

と発言しています。

現在、メガバンクとされている金融機関は三菱UFJフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの3社です。

SBIホールディングスの構想では、SBIホールディングスが旗手となって地域金融機関との連携を強め、既存のメガバンクに匹敵する規模のグループを作ろうとするものです。

この構想では、持ち株会社はSBIホールディングスが過半を出資し、大手銀行や地方銀行、あるいはベンチャーキャピタルなどにも出資を募り、地銀への支援を実施します。

具体的な支援策は、システムなどのインフラ、資産運用商品やサービスの提供、人材育成の支援などが挙げられています。

支援策のうち、期待が集まるのはシステムの提供、人材育成の支援です。

これによって危機的な状況にある地域金融機関の収益性の改善につながることが期待されています。

地域金融は危機的状況

近年、地域金融機関の収益は悪化を続けています。

その大きな原因とされるのが、地域経済の停滞と、日銀の超低金利政策です。

この影響により、金融機関としての主な収益源である利ザヤが目減りし、融資によって得られる利益が圧迫されています。

19年3月期の決算を見ても、融資金利や手数料収入など、本業の損益が赤字になった地銀は全105行のうち4割に達しており、このうち27行は5年以上の赤字が続いている状態です。

本業の赤字を、本業以外の業務で穴埋めできない地銀が増えているのです。

連続赤字を回避している地銀も、資産を売却などによって得た利益で本業赤字を穴埋めし、最終損益を一時的に黒字に転換しているケースが少なくありません。

しかし、このような黒字は本質的に赤字と大差なく、いずれは恒常的な赤字に苦しむと考えられます。

金融庁のレポートでも、10年後の2028年度には、地銀の6割が最終赤字になるという試算を発表しています。

金融庁は再編を促進

日銀の黒田総裁の最近の発言からも、日銀の低金利政策は今後深堀りされる可能性があるため、利ザヤの縮小による収益悪化を食い止めることは容易ではありません。

また、メガバンクであれば海外への展開によって収益拡大を図ることもできますが、地域金融の担い手である地銀は海外に展開できません。

基本的に、展開する地域の金融から収益をあげる必要があります。

とはいえ、地域によっては人口や企業数が急速に減少しているため、地域内での収益拡大も容易ではなく、まさに八方ふさがりの状況です。

超低金利の環境下で、地域金融の枠組みの中で地銀が再生するためには、業務の効率化を進め、収益性を改善する必要があります。

金融庁も危機感を強めており、経営統合や合併などによる、地銀再編を促進する考えです。

金融庁は先日、2019事務年度の金融行政の重点分野をまとめていますが、その中でも経営統合・合併の加速を方針としています。

金融庁の方針に後押しされる形で、以下のように、ここ数年で多くの再編が実現してきました。

 

  • 15年10月:九州フィナンシャルグループ(肥後銀行・鹿児島銀行が統合)
  • 16年4月:コンコルディアフィナンシャルグループ(横浜銀行・東日本銀行が統合)
  • 16年10月:めぶきフィナンシャルグループ(常陽銀行・足利銀行が統合)
  • 18年4月:関西みらいフィナンシャルグループ(近畿大阪銀行・関西アーバン銀行・みなと銀行が統合)
  • 18年5月:東京きらぼしフィナンシャルグループ(八千代銀行・東京都民銀行・新銀行東京が統合)
  • 18年10月:第四北越フィナンシャルグループ(第四銀行・北越銀行が統合)
  • 19年4月:ふくおかフィナンシャルグループ(ふくおかフィナンシャルグループ(福岡銀行・熊本銀行・親和銀行の統合)に十八銀行が参加)

 

以上のように、再編の動きが盛んになっています。

象徴的な事例は、18年4月に発足した関西みらいフィナンシャルグループの発足です。

個の事例では、りそなホールディングスの子会社であった近畿大阪銀行と、三井住友フィナンシャルグループの傘下であった関西アーバン銀行・みなと銀行が統合しています。

系列の垣根を超える再編は前例がなく、地域金融の逼迫した状況が、金融機関を再編へと突き動かしている様子がうかがえます。

金融庁の方針は難航

ただし、地銀の再編は容易ではありません。

地銀同士が統合・合併によって規模を拡大し、経営基盤が強くなることは間違いないとしても、その地域で銀行の寡占が進むことによって、顧客が不利益を被る恐れがあります。

このため、公正取引委員会が統合・合併に難色を示しており、再編がスムーズに進まないのです。

最近の例を見ても、福岡銀行(福岡県)・熊本銀行(熊本県)・親和銀行(長崎県)が統合されて誕生したふくおかフィナンシャルグループと、十八銀行(長崎県)が統合を図った際、公正取引委員会が待ったをかけています。

同じ長崎の地銀である親和銀行と十八銀行が統合すれば、ふくおかフィナンシャルグループの長崎県内の融資シェアが一気に高まります。

融資シェアが高まり寡占状態になれば、金融機関同士の競合によって金利が抑制される作用が働かず、貸出金利が過度に引き上げられ、立場の弱い中小企業が窮地に立たされる恐れがあります。

これに対し、独占禁止法を持ち出した公正取引委員会と金融庁が対立する構図となり、再編が難航しました。

最終的には、独占禁止法の例外規定を設けることで統合に至っていますが、今後も同様の理由によって再編が難航する可能性が考えられます。

金融庁の焦りが追い風か

金融庁の焦りが再編の促進へとつながり、なおかつそれが難航している現状を考えるにつけ、SBIホールディングスに寄せられる期待は高まるでしょう。

再編が難航する中でも、SBIホールディングスの支援が進めば、地銀の収益性は大きく改善される可能性があります。

収益性改善のために、各地銀が経営の効率化を模索していますが、顕著な効果が得られた事例はありません。

効率化のためのシステムの導入・更新に多額のコストがかかるため、システムの刷新が必要と分かっていても、積極的に取り組めない地銀が多く、目立った効果をあげられないのです。

このため、効率の悪いシステムに依存し、高コスト体質に陥っている地銀が多く、早急な改善が求められています。

フィンサム2019で北尾社長は、

 

「持ち株会社は、地域金融機関に対してシステムを安価に提供する」

 

と語っています。

この支援によってシステムの導入・定期更新にかかるコスト負担が小さくなれば、高コスト体質の根源であるシステム費用が圧縮される可能性が高いです。

また人材に関して、地銀は資産運用に強い人材が不足していることが課題となっています。

資産運用は、傘下にSBI証券を抱えるSBIホールディングスのお家芸とも言えるもので、このノウハウによって人材育成を支援することで、課題の解決を図ることができます。

その結果、地銀が資産運用から得られる収益を伸ばすことができれば、低金利政策や地域特有の問題によって本業が圧迫される中でも、収益を確保できる可能性が高まります。

これについて北尾社長は、

 

「SBIグループが運用を総受託し、地域金融機関の運用を高度化することも考えられる」

 

とも発言しています。

仮想通貨業界にも好影響の期待

金融庁の焦りがSBIホールディングスの構想の後押しとなれば、地域金融の問題を解決すると同時に、仮想通貨業界への好影響も期待できます。

マネーロンダリング対策に貢献

まず、フィンサム2019の講演でも語られていますが、SBIホールディングスのシステム支援では、SBIグループとベンチャー企業、地銀が共同で使えるシステムをクラウド上に作ることで、システムを安価に提供していくとしています。

共同プラットフォームでは、業務効率化だけではなく、マネーロンダリング対策にもつながるフィンテックを一体で導入していく考えです。

これまで、仮想通貨の普及を妨げる大きな原因の一つに、マネーロンダリングへの懸念が挙げられてきました。

この問題は、仮想通貨への規制がなかなか進まない原因にもなっています。

SBIの主導によって、国内の多くの地銀がマネーロンダリング対策を強化していけば、国内金融におけるマネーロンダリングへの懸念が後退し、国内仮想通貨業界の発展に寄与する可能性が考えられます。

仮想通貨取引の活性化に貢献

また、SBIホールディングスの狙いの一つに、若年層の顧客の獲得があります。

SBIホールディングスでは、これまでも若年層の資産運用を促進するために、Tポイントでの株式投資を可能とする「ネオモバイル証券」を設立するなど、様々な取り組みを展開してきました。

このような動きに触発されて、地銀でも進取性に富む取り組みが展開される可能性があります。

特に、SBIと地銀が資産運用での連携を強めていくにあたって、資産運用に弱い地銀は、資産運用分野でSBIへの依存を強める可能性が高いです。

地銀を窓口として、SBIグループでの資産運用を始める顧客も増えることが考えられます。

このような流れで若年層に資産運用が普及したとき、仮想通貨も資産運用の対象になるはずです。

様々なデータを見ても、若年層は中高年層に比べて、仮想通貨取引に対する抵抗が少なく、将来的に若年層の仮想通貨取引は拡大していくと考えられています。

SBIグループでは、SBI VCトレードによって仮想通貨取引も展開しているため、この構想の延長として仮想通貨取引が活性化することが期待できます。

XRPの普及にも期待

また、この構想がXRPの普及を促進する可能性も高いです。

XRPの取引拡大の可能性

まず、地銀とSBIホールディングスの連携によって、顧客の資産運用に働きかけていくにあたって、XRPの取引拡大が考えられます。

SBIホールディングスは、資産運用分野の展開の中で、特にXRPの取引拡大に力を入れています。

ネオモバイル証券の設立を見ると、単に若年層の株式投資の促進を目指しているように見えますが、その延長としてXRPの普及を目指していることは明らかです。

最近の取り組みを見ても、ネオモバイル証券の口座保有者がSBI VCトレードに新規口座開設した場合、もれなく1000円相当のXRPを付与すること、XRPの取引金額に応じて最大20万円相当のXRPを付与するキャンペーンを実施しています。

このほか、先日、SBIグローバルアセットマネジメント(SBIホールディングスの持ち株会社)の子会社であるモーニングスター社(資産運用関連業務を主とする。ジャスダック上場)で、株主優待にXRPを導入することが発表されています。

このように、株式投資と仮想通貨投資をうまく組み合わせることで、SBI VCトレードの口座開設拡大、XRPの認知度アップを目指しています。

これが、XRPの取引拡大、普及促進、価値の向上につながることが考えられます。

XRPの実用化が加速

さらに、第4のメガバンク構想では、SBIホールディングスと地銀が連携していく中で利用されるシステムの一環として、XRPの活用が考えられます。

フィンサム2019の北尾社長の講演の中では、R3社のCordaを国際送金に活用していくことが語られています。

また、先日リップル社が提携を発表して話題となったマネーグラム社について、「マネーグラム社は、創業時から非常に親しくしていた」とも語っています。

マネーグラム社の顧客基盤は世界200ヵ国に上り、SBIグループの国際送金会社であるSBIレミットでも、マネーグラムのネットワークを利用しています。

SBIレミットの国際送金累計額は、今年7月時点ですでに7000億円を突破したことが発表されており、利用が急速に拡大しています。

注目すべきは、北尾社長の講演の中で、将来的にXRPの活用が明言されていることです。

北尾社長は、

 

「海外送金には、xCurrentを利用している。

将来的にはxRapid、すなわち仮想通貨XRPを使用していく。

SBIレミット、SBI Ripple Asia、SBIグループと深い関係にある東南アジアの銀行と連携して、システムの開発を進めている。

近い将来に具現化し、次世代金融インフラを構築していく」

 

と明言しています。

第4のメガバンク構想を進めていく上でも、SBIがシステムの構築・支援・提供を主導していく以上、リップル社の技術が組み込まれる可能性は高いです。

そうなれば、多くの地銀が収益性改善のためにXRPを利用することとなり、メガバンクと同じ規模の金融ネットワークでXRPが利用される可能性もあり、XRPの普及を大幅な普及に寄与すると考えられます。

金融庁は、地域金融が深刻な状況に置かれている今、好転の糸口になりえるSBIの構想に好感を持つはずです。仮想通貨への取り組みに慎重な金融庁も、XRPの実用化にはやぶさかではないでしょう。

SBIの構想は動き始めている

これまで、SBIは地域金融機関との提携を急拡大してきました。

2017年に清水銀行と提携したことを皮切りに、今や35の地銀・信金と提携しています。

地域金融機関で、顧客をSBI証券のネット口座につなげるために、SBIの社員が常駐し、資産運用の相談を受け付ける地銀店舗も増えています。

さらに、9月7日付の日本経済新聞朝刊では、SBIホールディングスと島根銀行の資本・業務提携が報じられています。

島根銀行の増資のうち、SBIが25億円を出資(SBIホールディングスが19億円、SBI傘下のファンドが6億円を引き受け)するほか、SBIから取締役2名を派遣するとのことです。

島根銀行は、2019年7~9月期決算で19億円の損失を計上しており、20年3月期の連結最終損益は23億8000万円という深刻な状況に置かれています。

増資によって調達した資金は、主に損失の穴埋めと不採算店舗の再編費用に充てられるとのことです。

もちろん、単に損失を補填するだけではなく、SBIからシステムや資産運用でも支援を受け、改善に努めていきます。

島根銀行の顧客をSBIにつなぎ、仮想通貨をはじめとした資産運用に誘導する狙いもあります。

島根銀行は、低金利政策のほか、少子高齢化の影響を大きく受けている代表的な地銀です。

提携の結果、業績の悪化を食い止め、成長軌道に乗せることができれば、第4のメガバンク構想に参加する地銀が増えるはずです。

また、この提携は市場からも期待を集めており、島根銀行の株価は提携発表後、前日終値比で一時17%の高騰を見せています。

今回の提携は、第4のメガバンク構想の始動と見られており、支援がうまくいけば、仮想通貨業界への影響も高まるはずです。

まとめ

フィンサム2019で北尾社長が語った内容は、地銀への支援の拡大を通じて、仮想通貨業界全体の発展、とりわけXRPの普及促進が期待できるものでした。

SBIホールディングスは、国内の金融機関のなかでも特に仮想通貨業界と近い関係にあり、国内仮想通貨業界の発展にも大きな影響を与えています。

今後も、より大きな影響を与える存在になっていきそうです。

SBIの構想は大きく、構想に関わる動きを細かくチェックすることは容易ではありません。

しかし、大局的にみても、SBIの動きは仮想通貨業界の流れを把握し、投資の判断材料としても役立ちます。

当サイトでは、今後も注目すべき情報についてまとめていきたいと考えています。

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