ビットコインのハードフォークで賑わっている仮想通貨市場ですが、時価総額第2位のイーサリアムでも、10月16日にメトロポリスというハードフォークが行われました。
ビットコインのハードフォークにはリプレイプロテクションなど問題が多いですが、イーサリアムのハードフォークは技術的進化の側面が強く好ましいものとして捉えられています。
では、イーサリアムのハードフォークはどのようなものなのでしょうか?
本稿では、イーサリアムのハードフォークである「メトロポリス」の概要と、その影響について解説していきます。
イーサリアムのハードフォークの歴史&今後の予定
10月16日にイーサリアムのハードフォーク「メトロポリス」の第一弾、コードネーム名「ビザンチウム」が実装されましたが、そもそもイーサリアムのハードフォークは今回が初めてではありません。
イーサリアムが誕生した当初から、数年かけて計画的にハードフォークが進められてきており、ハードフォークは全部で4つのフェーズに分かれています。
この4つの段階が全て終了した時、イーサリアムは完成すると言われています。
今回のハードフォークは「メトロポリス」と呼ばれるものであり、第三段階にあたるものです。
全体のスケジュール
まずは、イーサリアムのハードフォークについて全体の流れを確認しておきましょう。
“#fff”]第1段階:フロンティア(2015年7月30日に実行。このアップデートによって、現在のイーサリアムの基礎が作られた)
第2段階:ホームステッド(2016年3月15日に実行。このアップデートによって、ネットワークが安定し、利用しやすくなった)
第3段階:メトロポリス(2017年10月16日に実行。下記の通り、大量のアップデートを予定している)
第4段階:セレニティ(2018年に予定。詳細は不明)
では、第3段階のメトロポリスが行われることによって、イーサリアムにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
メトロポリスとは?
メトロポリスは、上記の通り第3段階のアップデートになるわけですが、メトロポリス自体も2回に分けて行われます。
第一弾のコード名を「ビザンチウム」、第二弾のコード名を「コンスタンティノープル」と言い、この2つのステップを経て第三段階のHFである「メトロポリス」は完成します。
第一弾であるビザンチウムは、イーサリアムにzkSNARKと呼ばれる機能を追加するもので、匿名性を高めるためのものです。
9月18日から定期的にテストが行われ、無事に実装されました。
第二弾であるコンスタンティノープルは、来年2月に予定されており、これによってメトロポリスが完成します。
ビットコインのハードフォークは、ビットコインコミュニティ内で激しい争いと共に行われつつあり、様々な不安を引き起こしています。
それに対し、イーサリアムのハードフォークは平和的にかつ慎重に行われていることに注目すべきでしょう。
アップデートでどう変わる?
イーサリアムのメトロポリスは、全部で4つの段階に分けられているハードフォークのうち、最も重要な実装段階であると位置づけられています。
それは、メトロポリスのハードフォークによって、イーサリアムが次の4つの特徴を有することになるからです。
- 匿名性の向上
- セキュリティの強化
- スマートコントラクトの単純化
- マイニングの難易度の向上
これらをもう少し詳しく見てみましょう。
匿名性の向上
上記の通り、メトロポリスの第一弾であるビザンチウムでは、zkSNARKという機能が実装されました。
zkSNARKとは、ゼロ知識証明の一種で、「その取引が正しいことを証明するために、“正しい”ということ以外の情報を与えることなく証明できる機能」のことです。
あまり難しく考えず、「ゼロ知識証明=匿名性の向上」と理解してもいいと思います。
ゼロ知識証明で有名なのは、Zcash(ジーキャッシュ)です。
ジーキャッシュは匿名性の高さから注目を浴びている仮想通貨ですが、ジーキャッシュの目玉である匿名性の高さが、イーサリアムにも取り入れられたというわけです。
セキュリティの強化
イーサリアムは、信頼できない仮想通貨だと言われることがありました。
これは、根も葉もないことではなくて、実際に「The Dao」というプロジェクトがハッキングされたことで、イーサリアムが大量に盗まれた過去に基づく意見です。
したがって、イーサリアムを完成に近づけるためには、どうしてもセキュリティ上の問題を解決する必要がありました。
そこで、メトロポリスによって、ユーザーが自分で秘密鍵を決められる機能を設けることで、セキュリティを高める予定です。
これによって、イーサリアムの最大の問題が解決されれば、イーサリアムの価値が上がることが期待できます。
スマートコントラクトの単純化
次の目玉が、スマートコントラクトの単純化です。
そもそも、イーサリアムの最大の売りはスマートコントラクトであり、イーサリアムプラットフォームを利用することによって、スマートコントラクトを取り入れたシステムを開発することができます。
スマートコントラクトとは、直訳すれば「賢い契約」であり、契約書の発行や契約の履行などを、ブロックチェーン上で行う機能のことです。
ブロックチェーンは、皆さんもご存知の通り、意図的に書き換えや消去が不可能なものですから、透明性を保つうえで非常に役立つ機能であり、契約との相性は抜群です。
仮想通貨を使って、あらゆる契約を自動的に記録し、また自動的に契約が利用されるのがスマートコントラクトです。
これを活用すれば、契約を介して行われる、あらゆる取引を簡素化することができます。
例えば、不動産の売買にあたり、不動産業者に契約書を発行してもらう必要がなくなり、売買に伴う諸経費の削減につながります。
メトロポリスによって、スマートコントラクトが単純化し、もっと簡単にイーサリアムを利用しやすくすることで、普及を促進しようという狙いがあります。
マイニングの難易度の向上
イーサリアムのマイニングの難易度を向上させる目的は、主にマイニングにかかる電力消費を抑えることと、取引の速度を早くすることです。
これは、第3段階の「メトロポリス」ではなく、第4段階の「セレニティ」において、マイニング方式を「PoW(プルーフ・オブ・ワーク)」から、「PoS(プルーフ・オブ・ステーク)」に移行することで完成します。
したがって、メトロポリスの段階ではマイニング難易度を一気に向上させるわけではありません。
ここで念のため、PoWとPoSの違いは、確認しておきます。
PoW・・・
ビットコインでも使われているマイニング方式で、取引の承認にあたって、コンピューターで計算処理を行い、最も早く答えにたどり着いたマイナーに承認の権利が与えられ、報酬が支払われる方式。
計算処理をより速く行なうため、スーパーコンピューターを用いることから、大量の電力を消費する。
また、大規模なマイニング施設を使うマイナーが有利な立場に立つため、企業や国がマイニングを支配する可能性が高い。
ホルダーとマイナーの利害が必ずしも一致しない。
PoS・・・
取引の承認にあたって、仮想通貨の保有量に応じて、承認の割合を決める方式。
計算処理のスピードを競う必要がなくなるため、大量の電力消費がなくなる。
イーサリアムを保有していれば、その保有量に応じて誰にでも承認権が与えられるため、中央集権化を抑制できる。
ホルダーとマイナーの利害が一致する。
現在PoW方式を採用しているイーサリアムも、PoS方式に移行することを目指しています。
しかし、PoW方式のマイニングで儲けることを考えて、マイニングのための機器を揃えていたマイナーからしてみれば、このようなアップデートは反対するはずです。
その反対意見を考慮して、第4段階への布石として、第3段階のメトロポリスから徐々にマイニング難易度を上げていくわけです。
これによって、イーサリアムのマイニング難易度が徐々に上がり、収益性が徐々に悪化していけば、マイナーは減少していき、PoS方式への意向が容易になります。
以上のように、第3段階のメトロポリスによって、非常に多くのメリットが生じることが期待されています。
メトロポリスが、全4段階のハードフォークの中で最も重要とされているのもうなずけますね。
イーサリアムの価格への影響は?
では、メトロポリスが行われることによって、イーサリアムの価格にはどのような影響があるのでしょうか。
これが一番の関心事という人も多いと思います。
まず、第一弾であるビザンチウムは10月16日に行われたわけですが、ETHに対する価格への影響はほとんどなかったと言ってよいでしょう。
ただし、11月1日より年に1度のイーサリアムカンファレンスである「devcon3」がメキシコのカンクンで開催されますので、個人的にはこの期間中に上昇する機会があるのではとみています。
まとめ
第3段階のハードフォーク「メトロポリス」の実装によって、イーサリアムの性能は大幅に向上すると信じています。
「いずれイーサリアムの時価総額は、ビットコインの時価総額を追い抜く」という意見もありますが、開発技術力の優秀さ、優れた機能面の実装期待からこのような意見は出てきているのでしょう。
今後の上昇を期待して、イーサリアムに投資しておくのは、仮想通貨投資の中でも堅実で将来性のある投資と言ってよいと思います。
つい最近、Zaifコイン投資でもETHの取り扱いが開始されましたので、ドルコスト平均法でリスクコントロールしながら積立投資なんて選択も良いでしょう。
ただし、ETHは発行上限枚数が決まっていないため、ビットコインよりも上がりにくいという特徴があることは頭に入れておいてください。