昨年から、開発に遅れが見えているイーサリアム。
コンスタンティノープルへのアップデートは延期発表が相次いでおり、市場の反応も徐々に薄くなっている感じがあります。
先日も、ProgPoWの実装が延期されることが発表されており、総じて開発が遅れている印象がありますが、一方でイーサリアム2.0の開発は順調に進んでいるようです。
本稿では、イーサリアムの開発状況について、最近公表された内容をまとめていきます。
ProgPoWの実装が延期される
イーサリアムのロードマップにおいて、第三段階とされているコンスタンティノープルへのアップデートは、昨年から延期が続いています。
最近も、開発が難航していることを匂わせる情報が出てきています。
この原因の一つとして、イーサリアムの開発コミュニティが第三者機関から監査を受けていることが挙げられます。
監査機関が問題ありとした場合、その調整のために延期することになります。
先日も、ProgPoWの実装について、第三者機関から物言いが入ったようです。
ProgPoWは、すでに実装が仮決定されていたのですが、延期の可能性が浮上しています。
イーサリアムのコアデベロッパーであるLane Rattin氏の公式ツイッターでは、以下のような発言がなされています(2月1日のツイートより)。
私たちは今、オール・コア・デベロッパーズ(コアデベロッパーたちによる会議)で、ProgPoWについて再び話し合いました。
話し合いの結果、
- 多くの未解決問題の解決と、クライアントの実装と並行していくために第三者による監査を行うこと
- マイナーのシグナルについて調査すること。マイナーに賛成・反対の投票を依頼し、意見を集めること
が決まりました。
なお、上記の「多くの未解決問題」として、第三者機関から以下のような問題が挙げられているようです。
- 構築されたシステムが、設計通りに機能するのか
- ProgPoWが実装されたとき、GPUに対するASICによるマイニング効率が1.1~1.2倍の範囲に収まるのか
- ProgPoWにより、ASICチップの非効率化につながるのか。つながる場合、何%の非効率化につながるのか
- シビル攻撃に対する耐性は向上するのか(シビル攻撃とは、「シビルアタック」とも呼ばれるもの。攻撃者がたくさんのIDを作り、ブロックチェーンの投票を妨害する攻撃のこと)
- ASICに対する耐性により、非中央集権化に近づくのか
- ProgPoWがASIC耐性の向上にどれほど効果的なのか
ProgPoWとASIC耐性
この問題の中で、特に中心的に監査されるのは、ASIC耐性についてでしょう。
というのも、ASIC耐性はマイニングに大きな影響を与えるからです。
イーサリアムのブロックチェーンは、マイナーがマイニングによってブロックを生成することで機能しています。
マイナーは、マイニング報酬を得ることで、マイニングにあたっています。
このように、相互に利益のある関係が成り立っていますが、仮想通貨のアップデートではマイナーに大きな影響を与える変更がなされることもあり、一部のマイナーの利益になったり、損失になったりすることがあります。
今回のProgPoWも、一部のマイナーに大きな影響を与える可能性があり、議論の対象となっています。
そもそも、ProgPoWでは、ASIC耐性を大きく向上させる目的があります。
マイニングの実施では、一般的なPCを用いるGPUマイニングと、ASICマシンを用いるASICマイニングがあります。
ASICマイニングは、マイニングに特化したマシンを用いるものであり、GPUマイニングに比べて効率的なマイニングが可能となります。
ASICマイニングは、一見すると何の問題もなさそうですし、ブロックチェーンの維持には役立ちそうなものです。
しかし、資金力のあるマイナーが、ASICマシンを大量に稼働させ、巨大なハッシュパワーを背景にマイニングにあたることで、個人や中小マイナーがマイニングする余地がなくなり、一部のマイナーによるマイニングの寡占が進む危険性があります。
その結果、ハッシュパワーの51%を占めるマイナーが出てきた場合、そのハッシュパワーを以て不正取引が可能になったり、仮想通貨の価格をコントロールしたりすることが可能となります。これでは、イーサリアムの理念である「非中央集権化」が崩れてしまいます。
そこで、イーサリアムでは、ProgPoWの実装によってASIC耐性を高め、GPUに対するASICの優位性を下げることを目指しています。
ProgPoWが実装されれば、GPUに対するASICマシンのマイニング効率は、200%から120%に抑えられるとしています。
ProgPoWが実装されれば、イーサリアムの非中央集権化は進み、このような問題は解決されるでしょう。
しかし、そうなればASICマシンによってマイニングしていたマイナーの儲けは少なくなるため、当然反発する勢力も出てきます。
これにより、コミュニティの分裂によってブロックチェーンが分岐し、仮想通貨業界全体にとっても不安定な影響が表れる可能性もあります。
開発者の理念と実際のコミュニティ運営で、このように利害が相反していることも、イーサリアムのアップデートやシステムの導入を遅らせる要因となっています。
ProgPoWの実装は、コンスタンティノープルへのアップデートとは直接関係のないものです。
しかし、イーサリアム財団は以前、コンスタンティノープルのアップデートとProgPoWの実装の時期を合わせると発表しています。
したがって、イーサリアムの今後を占う上では、コンスタンティノープルとProgPoWの動向を合わせてみていく必要があるでしょう。
イーサリアム2.0の進捗は毎週報告へ
イーサリアム2.0に関する情報も発表されています。
イーサリアム2.0とは、キャスパーとシャーディングという2つのソリューションによって、イーサリアムのブロックチェーンを改善するためのアップグレードです。
すなわち、
- キャスパー:マイニングのアルゴリズムをPoSに移行することで、承認コストを削減するもの
- シャーディング:ブロックチェーンのスピードを落とすことなく、スケーラビリティの問題を解決するもの
というアップグレードであり、イーサリアムの機能を高めるものとして注目されています。
2019年1月より、イーサリアム2.0の進捗が毎週リリースされることになっていますが、1月31日に最初の公表がなされています。
それによれば、アップグレードは順調に進んでおり、キャスパーの開発はほとんど完成しているとのことです。
イーサリアム2.0への移行は、フェーズ0からフェーズ6の7つのフェーズによって進められます。
今回公表された内容はフェーズ0にあたるため、出だしはまずまずといった感じでしょう。
なお、イーサリアム2.0は、イーサリアムのロードマップにおける最終段階「セレニティ」を前提に進められているため、イーサリアム2.0の進捗状況は、イーサリアムの全体的なアップデートにも影響すると考えられます。
今後、イーサリアム2.0の開発状況は毎週報告されることでしょう。
この発表も、イーサリアムの今後を占う上では重要な情報になってくると思います。
まとめ
昨年から、コンスタンティノープルへのアップデートは延期に延期を重ねており、進捗状況がどのようになっているのか見えづらい状況になっていました。
今回公表された内容から、ProgPoWの実装が延期されていること、その一方でイーサリアム2.0へのアップグレードは順調であることが分かりました。
外部から見れば、開発がなかなか進まないもどかしさはありますが、決して足踏みしているわけではなく、粘り腰で開発を進めている姿勢がうかがえます。
今後も、当サイトでは最新情報をお伝えしていきます。