中国のICO禁止令、仮想通貨の取引停止で、仮想通貨市場が荒れています。
影響は今後も続くのか、限定的なのか、詳しく見ていたいと思います。
はじめに
先日、中国政府がICOを全面的に禁止することを発表し、これに伴いビットコインをはじめとした仮想通貨全体の価格が暴落しました。
立て続けに中国の仮想通貨取引所で仮想通貨の取引を停止することが報道され、仮想通貨市場全体に不安の声が広がっています。
しかし一方で、ICOを禁止するのではなく、整備していこうとする国もあります。
本稿では中国のICO禁止令、取引所の取引停止による世界的影響と各国の対応を見ていきます。
中国ICO禁止令の仮想通貨市場への影響は限定的
イギリスの市場調査会社であるジュニパー・リサーチの報告によると、仮想通貨の取引総額は年内に1兆ドルを超えるとされています。
2017年上半期の取引総額は3250億ドルであり、8月末には仮想通貨全体の時価総額が1585億ドルを超えました。
しかし、そのような取引高と時価総額の上昇に水を差すように、中国政府がICO禁止令を発令しました。
これに伴い市場の勢いは衰え、9月14日にはBTCChinaなど中国の取引所による仮想通貨取引の全面停止が発表され、暴落に更なる拍車をかけました。
中国のICO禁止令をきっかけとして、8月の暴騰が全て吹き飛んだような状況になっています。
ジュニパー・リサーチの報告書では、上記の通り、年内に取引総額が1兆ドルを超えると予測しているわけですが、これはIT専門家やブロックチェーン関連企業への出資者やマネージャーなど、400人の専門家の意見を集めて分析したものです。
また、2017~2022年にかけて、ブロックチェーン技術が急速に開発され、発展していくとされています。
しかし、この報告書は楽観論ばかりではありません。
11月にはビットコインのハードフォークも予定されています。
ビットコインはもともと、利用者が増えるにつれてブロックの容量が足りなくなるという「スケーラビリティ問題」が議論されてきました。
これによって、ビットコインとビットコイン・キャッシュへの分裂が起きたのが8月1日のことでした。
今回も、SegWit2xはスケーラビリティ問題の解決策として十分ではないと反対する意見も多く、11月にはビットコインが再び分裂するものとされています。
これによって、ビットコイン価格が大きく変動する可能性があり、市場に動揺をもたらすかもしれません。
ジュニパー・リサーチでは、そのような危険性も踏まえた上で、仮想通貨の取引総額は2017年内に1兆ドルを超えると指摘しているわけです。
しかし、中国がICO禁止令を出してからというもの、事態は一変しました。
コインデスクの報道によると、中国人民銀行はICO調査の結果、既に完了している取引を含め、すべてのICOを違法と見なすと発表しています。
詳細はまだ不明なのですが、すでにICOによって資金を調達している場合には返金しなければならないこと、すでにICOによって取引されたトークンを法定通貨と交換することや、市場で流通させることも禁止し、さらに銀行によるICOサービスの提供も禁止となります。
これが、仮想通貨市場に大きな影響を与えたのは、すでに皆さんもご存知のことでしょう。
多くの仮想通貨が20%以上の下落となりました。
このような状況を見れば、ジュニパー・リサーチの予想はもはや正しいものとは言えなくなったかもしれません。
しかし、一部の市場関係者の意見では、中国は今後、条件付きで(許可登録制)ICOの再開を認める可能性もあるとされていますし、世界全体でみれば、仮想通貨の人気が完全になくなってしまうということはないと思います。
仮に中国で仮想通貨の人気が下火になったとしても、世界的には仮想通貨普及の流れは止められないというのが、大方の見解です。
世界各国のICO規制
当然のことながら、中国のICO禁止令および取引所による取引停止は、各国の中央銀行に対し影響を与えることになりますが、アメリカやシンガポールでも、ICOが乱発していること、仮想通貨が投機的なものになりすぎていることを警戒しています。
その一方で、カナダなどは流通環境の整備に力を注いでいます。
そもそも、中国政府がICOを禁止した理由は、ICOによる資金調達が経済と金融の秩序を乱していると考えたからです。
実際、ICOの中には詐欺的なものも多いため、中国では以前から捜査が行われており、それがついに全面禁止に至ったのです。
アメリカの証券取引委員会も、仮想通貨とICOには警戒心を抱いています。
2016年にDAOがハッキングを受け、当時の価格で5000万ドル相当のイーサが盗まれた事件が起きましたが、米国証券取引委員会はこの調査に乗り出しました。
その結果、ICOによって新たに生まれるトークンは規制しなければならないと結論づけており、取り締まりを厳しくしていくと思われます。
シンガポールの金融管理局でも、ICO規制を明確化しています。
米国証券取引委員会と同じく、ICOトークンの規制を設けることを発表しています。
このように、中国のICO規制が非常に注目されているのですが、以前から様々な機関でICOを警戒する見方はありました。
それらの機関は、今回のICO規制を受け、本格的な規制に乗り出す可能性があります。
しかしながら、このような動きはあくまでも、ICOや仮想通貨によって経済や金融が混乱したり、犯罪が増加することを懸念しているのであり、必ずしもICOや仮想通貨の存在を否定しているわけではありません。
ICOや仮想通貨によって経済や金融が混乱することなく、むしろ発展していくのであれば、中国政府であろうと何であろうと、積極的に取り入れるに決まっています。
だからこそ、中国にしろ、アメリカにしろ、シンガポールにしろ、中央銀行では仮想通貨を独自に発行することを検討しています。
非中央集権的で、どこからも縛られない仮想通貨を流通させるのではなく、中央銀行が管理している安全な仮想通貨を流通させようという考え方です。
そうすれば、仮想通貨を利用する消費者も、投資家も、安全性の高い取引が可能となります。
そのような動きが顕著な国の一つが、カナダです。
カナダのケベック州にある金融機関規制当局は、インパックコインのICOを承認し、アメリカ大陸で第1号となる合法ICOとなりました。
このように、中国がICOを全面禁止している一方で、安全性が高く有意義なICOは、政府が積極的に承認していく国もあるのです。
そのような流れができてくれば、違法性の高いICOは排除され、価値のあるICOの比率が高まっていくことでしょう。
まとめ
中国のICO規制と世界的な影響を懸念し、仮想通貨の価格は大暴落しました。
しかし、その一方で、違法性の高いICOだけが問題なのだから、それを排除して、認めるべきICOは認めていこうという姿勢の国もあります。
大局的に見れば、ブロックチェーン技術は今後ますます発展していき、仮想通貨も普及が浸透していくと思います。
規制や法的整備というものは、市場規模が急激に発展していくなかでは避けて通れないもので、筆者個人としてはむしろ健全な市場への第一歩だと思いますので、なんら悲観することはないと考えています。