ビットコイン価格が急騰。その背景として考えられる3つのこと

ビットコイン(BTC)

ビットコインキャッシュのハードフォーク以降、仮想通貨市場は短期間のうちに大きく下落することとなりました。

しかし、ハッシュ戦争の終了が宣言されたことや、いくつかの好材料が出てきたことによって、市場が持ち直す兆しが見えてきています。

本稿では、28日に起こった急騰と、その背景について解説していきます。

ビットコインが急騰へ

ビットコインキャッシュのハードフォークにより、仮想通貨市場は急激な下落に見舞われました。

ハードフォーク前には70万円以上であったものが一時40万円を下回る下落を見せています。

しかし11月28日、相場が急騰するシーンが見られました。

27日時点では42万円台を推移していたものが、28日の朝方(日本時間)からじわじわと上昇して44万円台に至り、14時ごろに46万円に急騰、21時ごろに47万円に急騰、29日に日付が変わる直前には48万円を一時的に突破しています。

ビットコインとほぼ時を同じくして、他の通貨も上昇しています。

イーサリアムは12000円弱から13500円へ、リップルは39円台から44円台へ、ライトコインは3300円台から3900円台へと伸びています。

ビットコインキャッシュの影響から大幅な下落となり、底値が見えないとも言われていた状況でしたが、この反発はなぜ起こったのでしょうか。

 

急騰の理由は?

一見すると大きな値動きに見えますが、仮想通貨市場ではこのような値動きはそれほど珍しいものではありません。

特に急落後の相場では、下値で仕込もうとする買方もいれば、下値で利確しようとする売方の影響によって、一時的な反発がみられることもあります。

したがって、それを相場の転換だとみなしてしまい、下落の波にのまれてしまうこともあるものです。

しかし、大きな値動きの背景に何らかのニュースがかかわっている場合には無視できません。

今回の急騰も、

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  • ハッシュ戦争の終了が発表されたこと
  • ナスダックのビットコイン先物上場の予定が報じられたこと
  • SECの態度が前向きになりつつあること

などが影響しているものと思われます。

 

 

ハッシュ戦争の終了が発表される

まず、今回の暴落の引き金ともなったビットコインキャッシュの分裂騒動ですが、ABC陣営とSV陣営の繰り広げるハッシュ戦争が長引けば長引くほど、仮想通貨市場には悪影響があるとされていました。

しかし、分裂したチェーンの一つであるBitcoin SV側がリプレイプロテクション(分裂後のチェーンを独立したものとして認識するシステム)を導入することで、Bitcoin ABCとBitcoin SVの双方が永続的に分裂されることが発表されました。

 

発表の詳細

これが発表されたのは11月26日、SV陣営の中心人物であるCalvin Ayre氏が、自身がCEOを務めるCoinGeek社のブログで発表したものです。

つまり、ハッシュ戦争の終了が宣言されたということですが、これはCoinGeek社の公式プレスリリースで「BCH Hash War Ends(ビットコインキャッシュのハッシュ戦争は終了)」として発表されています。

発表によれば、ABCとSVが完全に分岐するために調整期間を設けるとしており、Bitcoin ABCとBitcoin SVが完全に分岐するのは2019年第1四半期を予定しているようです。

Bitcoin SVプロジェクトのテクニカルリーダーを務めるSteve Shadders氏は、この発表に伴い、以下のように発言しています。

 

安定性を高めるためには、リプレイプロテクションが必要である。

ABC側は安定性を優先していないため、SV側が企業やユーザーからの信頼を回復させていきたい。

リプレイプロテクション導入のためには、SV側がビットコイン・エコシステムと連携する必要がある。

そのため、具体的な日程は準備が整い次第発表したい。

 

また、今回のハッシュ戦争についても、以下のように触れられています。

 

ビットコインが本来の理念から外れたことで、我々はビットコインキャッシュとして分裂し、オリジナル・ビットコインとして存続することを目指してきた。

ABC側のビットコインキャッシュは、先週の時点で色々なアップデートが行われているが、それによってビットコインの理念からかけ離れたものとなった。

今ではひとつのアルトコインに堕ちてしまったため、SV側が今後かかわるつもりはない。

Bitcoin SVは、ビットコインの理念であるサトシ・ビジョンを引き継ごうと努力してきた。

Bitcoin SVは、本来のビットコインのあるべき姿だと思っている。

Bitcoin SVのエコシステムはすでに活気に満ちている。

その構築のために、これからも全力を注いでいく。

Bitcoin ABCはBCHのティッカーシンボルを引き継いだかもしれないが、(それはすでにビットコインの理念からかけ離れたものであり)Bitcoin SVはBCHのユーザーや開発者を引き寄せている。

今後はチェーン上で戦うのではなく、仮想通貨市場で戦いたいと思っている。

 

Bitcoin SVは、ビットコインの本来の理念を引き継ぐために分裂してきたと主張しています。

つまり、

 

  1. 理念から外れたビットコインのコミュニティから、理念を守りたいコミュニティが分裂してビットコインキャッシュへ(2017年8月)
  2. 理念を外れたビットコインキャッシュのコミュニティから、理念を守りたいコミュニティが分裂してBitcoin SVへ(2018年11月)

 

といった分裂を繰り返してきたことが分かります。

ナカモトサトシの理念を受け継いでいるとするBitcoin SVは、分裂後の現在、時価総額で第7位となっています。

ビットコインは時価総額第1位、ビットコインキャッシュは時価総額第4位ですが、今後はハッシュ戦争ではなく仮想通貨市場で争い、追い越していきたいとのことです。

 

今後はどうなる?

ただし、ハッシュ戦争の終了はあくまでも宣言にすぎず、完全な分岐はまだ先のことになりますから、今後どうなっていくのかについては楽観できません。

また、このハッシュ戦争によって、ABC側とSV側の両陣営はかなりの資金を消耗しています。

これが、今後の両陣営の運営にどう影響していくか、それが市場全体からどのような評価を得ていくのか、慎重に見ていきたいところです。

 

 

ナスダックのビットコイン先物上場の予定が報じられる

さらに、27日に開催されたConsensus INVEST 2018の影響も大きいでしょう。

このカンファレンスはアメリカで行われたものであり、登壇メンバーも豪華であったことから、大きな注目を集めました。

中でも、ナスダックのビットコイン先物上場についての発言が注目されています。

これは、ビットコインETFを申請しているVanEck社のガボール・ギャバックス(デジタルアセット部のディレクター)が、ナスダックと提携したことを発表したものです。

この発表では、VanEck社とナスダックがインデックス技術で提携し、ビットコイン先物をはじめとしたデジタル資産の提供を予定していると明言されています。

機関投資家が仮想通貨市場に参入すれば、巨額の資金が市場に流入することとなり、大幅な値上がりが期待されます。

そのため、機関投資家がどんどん参入してくる環境が待ち望まれてきました。

しかし2018年は、一年を通して仮想通貨市場が暴落し続け、ビットコインキャッシュ分裂騒動の追い打ちもあり、機関投資家が積極的に参入しにくい状況となっています。

このカンフル剤として期待を寄せられているのが、ナスダックのビットコイン先物上場です。

ナスダックは新興企業の株式市場として世界最大級の規模を誇っており、ナスダックでビットコイン先物が上場されれば、機関投資家が仮想通貨市場に参入してくる可能性が高まります。

 

ナスダックの動き

ビットコイン先物上場は投資家からの期待も大きく、これまでしばしば話題になってきました。

最初にナスダックのビットコイン先物上場が報じられたのは2017年11月であり、その後2018年第2四半期には上場されるという報道もありました。

その報道の通りには進まなかったものの、長引く下落相場の中で、ナスダックはビットコイン先物の上場計画を進めてきたようです。

今年4月、ナスダックはGemini(ビットコインETFにも取り組んできた、ウィンクルボス兄弟が運営する取引所)と提携していますし、CEOのアデナ・フリードマン氏も

 

いずれ、仮想通貨取引を検討することは間違いない。

 

という、かなりはっきりした発言をしています。

今回の報道は、アメリカのブルームバーグ紙によるものです。

ナスダックは、今後も仮想通貨への関心は継続すると見込んでおり、2019年第1四半期(1~3月)の上場を目指し、CFTC(米商品先物取引委員会)との折衝を続けているようです。

今後も仮想通貨の関心が高まっていくことを見据えて、時間をかけて準備を進めているわけです。

ナスダックほどの企業が大がかりな準備を進めているのですから、水面下ではかなり具体的に動いているのだと思います。

予定通り、2019年第1四半期にビットコイン先物上場に至ると決まったわけではありませんが、需要を確信して、近いうちにそこまで漕ぎつけたいと考えていることは間違いないでしょう。

それに加えて、カンファレンスでもそれを裏付けるような発言が見られたのです。

予定通りに進めば、近い将来には機関投資家からの資金が市場に流入してくる可能性が考えられるため、今回の急騰にも影響したものと思います。

 

SECから前向きな意見

また、Consensus INVESTでは、これまで度々問題とされてきた「仮想通貨の有価証券問題」についても言及されています。

ここで登壇したのは、SECの長官であるJay Clayton氏です。

これまでSECは、仮想通貨に対して慎重な態度をとり続けてきており、ビットコインETFの申請についてもことごとく却下し続けてきました。

その長官であるClayton氏が登壇するのですから、今回のカンファレンスで最大の注目を浴びたといっても良いでしょう。

 

ビットコインETFはまだ先か

Clayton氏は、ビットコインETFについて、

 

ビットコインETFに必要なのは、市場操作のリスクがないこと、そして基礎となる金融商品の取引が道理にかなっている(ETFの担保となる商品の安全と管理が確保されている)ことだ。

 

と発言しており、この点での問題を拭いきれないという立場を明らかにしています。

 

市場操作のリスク

今回、ビットコインキャッシュが分裂後にハッシュ戦争が起き、相場はかなり大きな変動を見せました。

これは、ABCとSVの両陣営が、それぞれのマイニングプールで激しく争ったことが原因となっており、これは

 

仮想通貨は非中央集権的であり、特定の個人・企業・機関・国家などが操作できないはずなのに、ABCとSVのそれぞれの集団、あるいはマイニングプールという一組織が混乱を招いた。

 

とも言えます。

特定の個人や組織が資金力を以て動けば、仮想通貨の価格を大きく引き下げることもできるわけで、これでは非中央集権とは何だったのかという疑問も起こってきます。

もっとも、これまでもビットコイン価格は少数のマイナーと大口顧客によって操作されているという非難はありました。

また、ビットコインキャッシュのハードフォークが起こる直前に、仮想通貨取引所であるOKExはビットコインキャッシュ先物取引を清算したことで、市場操作を行ったという非難を受けています。

このように、市場操作を懸念される色々な問題が発生したことから、仮想通貨に市場操作のリスクがあると考えられてしまうのも無理はないでしょう。

とはいえ、通貨の発行や供給に関しては非中央集権であり、この意味では市場操作されているとは言えません。市場操作のリスクがあるのかないのか、結論がでるにはまだまだ時間がかかりそうです。

 

管理の問題

ビットコインETFを認めるにあたって、その商品がデジタル資産であるだけに、盗難や紛失への対応が完全ではありません。

日本国内だけでも、coincheckやZaifといった取引所がハッキングによって仮想通貨を盗まれています。

ビットコインETFは、その担保・基盤となる資産をしっかりと確保しなければ成り立たないため、盗難や紛失といったリスクがある以上、ビットコインETFを認められないのです。

 

カンファレンスでの好材料

ビットコインETFについては、上記のように期待させる発言が見られなかったものの、ビットコインの有価証券問題については前向きな見解をしています。

Clayton氏はこの問題について、以下のように述べています。

 

ビットコインは、中央銀行から発行されているものではなく、あくまでも支払いのためのメカニズムである。

法定通貨ではなく、法定通貨の“代替技術”である。

また、ビットコインは誰かが独断で発行しているものではなく、供給量をコントロールするものでもない。

法定通貨としてデザインされたものではなく、その代替技術としてデザインされているのだから、有価証券ではないと言える。

 

このように、Clayton氏はビットコインをあくまでも支払うための技術であり、通貨でも有価証券でもないとしているのです。SEC長官からこの発言が得られたことは、好材料と捉えてよいでしょう。

 

リップルについては沈黙

ただし、有価証券問題に揺れるリップルについては沈黙を貫いています。

具体的なことは何ひとつ語らず、「断定的な答えを出すためには、大量の情報が必要だ」と答えています。

まだまだ判断材料が足りないといったところでしょうか。

 

個別の仮想通貨について

カンファレンスでは、どの仮想通貨がデジタル通貨であり、またどの通貨が有価証券化という質問も行われていますが、Clayton氏は個別に取り締まっていく方針を語っています。

Clayton氏は、有価証券の定義を

  • 利益を期待した投資家から出資を受けている場合
  • 流通市場の取引や配当などで利益が見込める場合
  • 公募である場合

であるとした上で、

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  • 価値の保存が完全に分散化されている(供給量や情報が特定の存在によって操作されていない)
  • 取引所などでトレード可能である

という条件を備えている仮想通貨は、有価証券ではないと説明しています。

 

分散台帳技術は評価

以上のように、Clayton氏の話には良い面も悪い面もありましたが、仮想通貨の技術面は認めているようです。

分散台帳技術について、以下のように発言しています。

 

分散台帳技術は素晴らしいポテンシャルを持っている。

市場以外に多くの可能性を秘めており、多くの分野で応用できるだろう。

例えば、政府の記録を登録するためには、多くの時間とコストがかかる。

もし、分散台帳技術を活用すれば、プロセスは効率化されてコストも低くなるだろう。

SECは、投資家の興味を削ぐようなことはせず、仮想通貨の取引や発行に関する規制を明確にしていくことが重要だと考えている。

 

このことから、SECは仮想通貨を頭から否定しているわけではなく、基本的には認めていることが分かります。

消費者保護のために、市場操作などの不正行為に対処するべく、規制を進めていくという立場を強調しています。

Clayton氏は、カンファレンスにおける自身の発言を、あくまでも個人的な見解であるとしています。

しかし、SEC長官として注目を集めながら登壇しているのですから、Clayton氏の意見がSECの考えからあまりにもかけ離れたものとは考えにくいでしょう。

Clayton氏の意見がそのままSEC全体の総意とは言えませんが、ある程度は材料として考えてよいと思います。

 

 

まとめ

ビットコインキャッシュのハードフォーク以降、仮想通貨市場はかなり大きな下落となり、底値もみえない状況が続いていました。

しかし、ハッシュ戦争もそれほど長引かずに終了が宣言され、とりあえず最も大きな悪材料はなくなりました。

そして、良いタイミングでカンファレンスが開催され、ナスダックのビットコイン先物上場をはじめとした良い情報が出てきたことで、市場が持ち直す気配を見せています。

もちろん、あまりにも下落が長く続いてきただけに、ここから反転していく確信は持ちにくいですが、良い流れになっていけばと思います。

 

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