11月15日、ビットコインキャッシュのアップグレードが予定されています。
今回もブロックサイズの大幅な拡張などが予定されています。
しかし、それ以上に注目が集まっているのは、コミュニティ内で対立が起こっており、ハードフォークの可能性が高まってきていることです。
溝が埋まらないままハードフォークに至れば、ビットコインキャッシュから派生して新たなコインが生まれる可能性があります。
これを好機と捉える人々からビットコインキャッシュが買われ、短期のうちに暴騰にもつながっています。
本稿では、ビットコインキャッシュのアップグレードとハードフォークについてまとめていきます。
ハードフォークとは?
ビットコインキャッシュは昨年8月に生まれた仮想通貨であり、ビットコインから分裂したものです。
ビットコインの限界、特にブロックサイズの問題を改善するために生まれたものであり、ビットコインのブロックサイズが1MBであるのに対し、分裂当初のビットコインキャッシュは8MB、2018年5月には32MBへと拡大しています。
このように、ビットコインの抱えていた問題を大きく改善しつつ、技術的な向上を続けています。
このため、仮想通貨の主流派いずれビットコインからビットコインキャッシュにとってかわられると予想する識者も少なくありません。
このビットコインキャッシュが、11月15日に更なるアップデートを予定しています。
もっとも、今回はBitcoinABCとBitcoinSVという、互換性のないチェーンに分裂する可能性があるとして注目されています。
仮想通貨が分裂し、新たな仮想通貨が生まれることは、これまでにもしばしば起こってきたことです。
ビットコインキャッシュ自体がそうですし、最近ではあまり話題になりませんがビットコインゴールドというものもビットコインから生まれています。
イーサリアムとイーサリアムクラシックに分裂したことも、皆さんご存知のことと思います。
仮想通貨が分裂して新たな仮想通貨が生まれる時、その主な原因の一つは技術的な対立です。
ビットコインはブロックサイズに問題ありとしてビットコインキャッシュが生まれたように、技術者やマイナーの間で技術的な見解や目指す方向性が大きく異なり、妥協点が見つからなくなったとき、袂を分かつこととなります。
ハードフォークはどうなる?
今回のアップグレードに伴い、ビットコインキャッシュのコミュニティではBitcoinABCとBitcoinSVという二つのグループで対立が起こっています。
これについて、IT分野の知的所有権専門の弁護士であり、ビットコインキャッシュに関わる人物として著名であるJimmy Nguyen氏は、自身のツイッターで以下のように発言しています。
BitcoinSVは、ビットコインキャッシュから分裂したり、新しいトークンを作ったりするつもりはない。
しかし、BitcoinSVでは、ビットコインの本来のビジョンを支持するマイナーにとって、実装の明確なビットコインキャッシュを提供していくものである。
今後、ナカモト・コンセンサスのもとで、ビットコインキャッシュのブロックチェーンを賭けたマイナー投票が行われることとなる。
仮想通貨業界の識者のツイッターを翻訳してみると、分かったような分からないような内容も多く、この発言も詳しく知らない人からすれば、分かりにくいでしょう。
対立している双方の意見を比較してみると、今回の問題が多少見えてくると思います。
BitcoinABCの意見
上記の通り、ビットコインキャッシュのコミュニティ内では、11月15日のアップグレードの方向性で意見が分裂しています。
BitcoinABCでは、「OP_CHECKDATASIGVERIFY(以下、DSV)」という技術を提案しています。この技術は、異なるブロックチェーン上の資産を交換できるようにする技術であり、今回の対立の最大の争点となっています。
CTORの導入とその他の提案
この他に提案しているアップグレードの内容は、以下の通りとなっています。
仮想通貨の取引にあたっては承認作業が必要となりますが、BitcoinABCでは承認順序の変更を提案しています。
【TTOR】
現在のビットコインキャッシュでの承認順序は「TTOR(Topological Transanction Ordering)」を採用しています。
これは、特定のビットコインキャッシュが取引される際のトランザクションは、かならず取引の順番に格納されていくというルールです。
例えば、Aさん→Bさん→Cさん→Dさんの流れで同じ1BCHが流れる状況を想定してみます。
AさんからBさん、BさんからCさん、CさんからDさんへと1BCHが送られるわけですが、このそれぞれの取引でトランザクションが発生し、ブロックチェーンに書き込みが行われます。
AさんからBさん(トランザクション1)、BさんからCさん(トランザクション2)、CさんからDさん(トランザクション3)というように、3つのトランザクションが発生していますが、TTORルールでは、この時発生したトランザクションを、必ず
トランザクション1→トランザクション2→トランザクション3
という順番で記録していくことをルールづけています。
【CTOR】
しかし、「CTOR(Canonical Transaction Ordering)」へ変更された場合、トランザクションは取引の順番にかかわらず、アルファベット順に並べて標準化することができるようになります。
このような標準化により、長期的な視点で見た時の効率化・単純化に役立つとされているのです。
もっとも、CTORは「長期的に見て効果があると唱える技術者もいる」というものであり、短期的には大した効果が見込まれていません。
長期的に見込まれる効果の内容にしても、十分に議論されていない状態であるため、性急すぎるのではないかという意見も多々見られます。
このほかに提案されているアップグレードの内容として、
[surfing_su_list_ex icon=”icon: check-circle-o” icon_color=”#0e0ea2″]
- 「Push only」ルールの施行
- 「Clean stack」ルールの施行
という情報も散見されますが、これがどのようなルールであるのか、現在では詳しい情報を見つけることはできませんでした。
BitcoinSVの意見
一方、BitcoinSVはこのDSVを取り入れることに反対しています。
その理由は、「ビットコインの生みの親であるナカモトサトシの理念からかけ離れているから」とのことです。
BitcoinSVの「SV」は、ナカモトサトシの理念を意味する「Satoshi Vision」の略ですから、このネーミングからもグループの意図が良く分かります。
その他の提案
OP_CHECKDATASIGVERIFYへの反対だけではなく、BitcoinSVでは以下のアップグレードを提案しています。
[surfing_su_box_ex title=”ブロック容量を32MBから128MBへ4倍増” style=”noise”]
ビットコインキャッシュはブロックサイズの拡張を続けてきており、前回も8MBから32MBへと4倍増となっています。
今回もまた4倍増となる128MBの拡張を目指しているようです。[/surfing_su_box_ex]
[surfing_su_box_ex title=”4つのopコードの解禁” style=”noise”]
解禁というからには、これまで禁止されてきたopコードということになりますが、これは「OP_MUL」、「OP_LSHIFT」、「OP_RSHIFT」、「OP_INVERT」というopコードです。
これに伴い、opコードのスクリプトを201から500に増加することも提案しています。[/surfing_su_box_ex]
なお、BitcoinSVの中心人物であるクレイグ・ライト氏は、自分のことをナカモトサトシであると名乗ったこともある人物です。
ただし、ナカモトサトシを名乗ったことを売名行為として批判され、仮想通貨業界ではよく叩かれているのも目にします。
今回の対立に際しても、これを機にクレイグ・ライト氏をコミュニティから追放するべきだとする声も上がっています。
ハードフォークに至るか?
一方が主張しているアップグレードの内容を一方が反対するという形で、ビットコインキャッシュのコミュニティは二つに分かれている状態です。
このまま平行線をたどれば、ハードフォークに至ることも考えられますが、妥協してハードフォークに至らない可能性もありますし、アップデートそのものを延期することで分裂には至らない可能性もあります。
現時点では何とも言えない状況ですが、これまでも実際に意見の対立から分裂した例はいくつもあることから、その可能性はあるものとして注目しておく必要があるでしょう。
相場への影響
実際、ハードフォークが起こる可能性に期待して、ビットコインキャッシュの価格は高騰しています。
11月3日から上昇を始めたビットコインキャッシュは、48000円台から一時65000円を超える急騰を見せたのです。
ハードフォークに至った時、その元となる仮想通貨を保有していた人は、分裂後のコインが付与されます。
去年も、ビットコインを保有していた人が、ビットコインキャッシュの誕生によって思わぬ儲けを得たことが話題となり、それ以降、仮想通貨の分裂は儲ける機会として捉える見方も増えました。
今回、ビットコインキャッシュのハードフォークにおいても、これを狙った資金が流入したものと思われます。
もちろん、分裂後のコインを取引所がサポートしなければ、そのコインの価値は期待できません。
期待外れからの失望売りに見舞われれば、大きな損失につながる可能性があります。
しかし、ビットコインキャッシュの人気が高いことため、そこから分裂したコインにも価値が見込めるだろうとする見方は強く、さらにCoinbaseやBinanceといった大手取引所が、ハードフォークによってコインが分裂した際の積極的なサポートを表明していることも安心につながっています。
これにより、ハードフォークがプラスのファンダメンタルズ要因だと判断した投資家が、こぞって買いに奔ったものと見られます。
まとめ
ハードフォークへの期待から、ビットコインキャッシュは大きく変動することとなりました。
これに乗じて利益を狙いたい人もいると思います。
しかし、ハードフォークが決定的とはいいがたい段階であり、値動きが大きいほどリスクも大きくなるものです。
停滞期にある仮想通貨業界全体としては、市場にいい刺激を与えたとも言えるでしょうが、実際の投資にあたっては慎重に判断したほうが良いでしょう。
また、今回のアップグレードの内容については情報がかなり不足しており、詳しくお伝え出来なかった部分もたくさんあります。
今後、詳細な情報がわかればまとめていきたいと思っています。