今年1月、coincheckがハッキング被害を受けて大きな話題となりました。
マネックスグループに買収されて以降、特に大きな動きがみられなかったのですが、10月30日、ついに新規口座開設を再開することが発表されました。
この発表は、ポジティブなニュースとして受け止められ、市場も反応を見せています。
本稿では、coincheckの発表の内容と影響、今後の見通しなどについてまとめていきます。
coincheckが新規口座開設を再開
2018年1月、coincheckはハッキング被害により、約580億円相当のNEMを流出させました。
NEM財団は流出したNEMを追跡したものの、結局取り戻すことはできずに後味の悪い結果に終わりました。
これにより、coincheckは業界外から大きなバッシングを受けたのはもちろんのこと、仮想通貨に対する不安を引き起こして仮想通貨普及の妨げになったことで、業界内からも手痛い批判を被ることとなりました。
あれから約9ヶ月が経過した今となっては、これはこれで良かったのかもしれないとも思えます。
coincheck事件をきっかけとして、金融庁は非常に厳しい姿勢で規制を検討するようになり、自主規制団体も様々な取り組みを実施し、仮想通貨業界の健全化に努める動きが強まりました。
これにより、実際に健全化に拍車がかかったと思います。
つい先日も、Zaifがハッキング被害を受けて問題となりましたが、このような事件を経て、徐々に業界が健全化していくものなのかもしれません。
さて、筆者はcoincheckに口座を開設しており、しばしばcoincheckからのメールを受け取ります。
10月30日に送られたメールでは、coincheckがついに新規口座開設を再開することが通知されました。
元々、coincheckの口座開設は、顧客の資産保護や不正送金の原因究明のために停止されたものでした。
同時に、業務改善に注力するための期間でもあったとしています。
あのような大きな事件を起こしていながら、新規口座開設を継続することは事実上不可能でしょうから、特に不正送金の原因究明といった理由は単なる名目に過ぎないものと思います。
業務改善に注力し、新規口座開設を再開するための体制を整えていたというのが本当のところでしょう。
しかし、理由はどうであれ、良くも悪くも知名度の高いcoincheckが新規口座開設を再開したことは、注目に値することだと思います。
事件後にマネックスグループから買収され、ガバナンスや経営体制を再構築してきたことから考えても、以前のcoincheckよりずっと信頼できる取引所になっていることでしょう。
また、新規口座開設再開と同時に、BTC、ETC、LTC、BCHの入金が再開され、ETC、LTC、BCHの購入も再開されています。
市場への影響は?
もっとも、coincheckが新規口座開設を再開したといっても、coincheckは現在みなし業者に過ぎません。
coincheck事件以降、金融庁の審査は厳しくなっており、認可登録に慎重になっています。
しかし、市場への影響や関心度は高く、coincheckが新規口座開設を再開することが発表された直後、ビットコイン価格は一定の反応を見せています。
やはり、大きな事件を起こし、規制強化の原因ともなった取引所が新規口座開設を再開したことは、ポジティブなニュースとして捉えられたようです。
coincheckが事件後に新規口座開設を停止し、その後業務改善命令を受けたbitflyerも新規口座開設を停止しました。
Zaifもハッキング被害を受けて、新規口座開設を停止しています。
2018年を通して、日本を代表する仮想通貨取引所が相次いで口座開設を停止したことは、仮想通貨業界の抱える問題の大きさを痛感させました。
このような流れが続けば、仮想通貨投資に新規に参入する人がなかなか増えず、市場への資金流入が抑制され、流動性は低下し、色々な問題へとつながっていきます。
しかし、coincheckが新規口座開設を再開したことで、このような悪い流れが断ち切られる可能性が見えてきています。
coincheckはもう安全?
以上のように、coincheckの新規口座開設再開は仮想通貨業界にとっては大きな一歩であり、ポジティブに捉えられるニュースだったといえます。このことは、この発表直後にcoincheckを買収したマネックスグループの株式が急騰していることからもうかがえます。
マネックスグループと言えば、10月29日に決算説明会を行っていますが、この説明会でcoincheckの業務改善についても触れています。
それによれば、coincheckはまだ認定業者ではないものの、経営管理体制をしっかり構築してきたことから、金融庁から正式に認可されるのはもうすぐだと述べています。
具体的には、「認可が想定より遅れているのはなぜか」という投資家の質問に対し、
当社としては、認可を受ける準備は完了したと考えており、当局の判断を待っているだけの状態にある。
いつ再開とは明言できないものの、感触としてはもう間もなくではないかという手ごたえがある。
しかし、coincheckだけではなく、外部環境に左右されるので何とも言えない。
と答えています。
また、業務改善は完了したのかという問いに対しても、
すでに全て完了しており、報告も完了している。
継続確認が必要な内容については継続して報告している。
と答えています。
coincheckの認可を左右する「外部環境」については、詳しくは述べられていないのですが、2018年を通して規制強化の流れが強まったことから、場合によっては認可が遅れる可能性もあるということだと思います。
9月にZaifがハッキング被害を受けたばかりであり、金融庁が「この業者は問題ないと認める」とした業者が多くの問題を抱えていたのですから、同じ間違いを二度と犯すわけにはいかないでしょう。
以前、大きな問題を起こしたcoincheckを「もう大丈夫」と認可し、また問題でも起これば、金融庁のやってきたことに疑問が持たれることとなります。
したがって、coincheck自体がしっかりと体制を整えていても、正式な認可は遅れる可能性があります。
これまで、金融庁が認可した業者に問題が見つかることも多々ありました。
しかし、金融庁が審査内容を厳しくしたことにより、認可を受けていない業者に比べて、認可を受けた業者の方が安心して取引できることは間違いないでしょう。
あえて認可を受けていない業者で取引する必要はありませんから、coincheckに口座を開設したいと思っている人も、認可を受けるまで待ったほうが良いと思います。
認可の見通しは立っている
coincheckが認可を受ける可能性を示唆するのは、マネックスグループの決算説明会だけではありません。
仮想通貨交換業協会(以下、JVCEA)の動きからも、それが窺えます。
金融庁に沿って色々な動きを見せているJVCEAでは、29日、みなし業者の入会受付を開始しています。
これまで、JVCEAは金融庁の認可済み業者だけで構成されてきました。
しかし先日、金融庁から自主規制団体としての認定を受けたことで、業界健全化のための更なる取り組みとして、みなし業者の入会を受け付けることが発表されたのです。
すでに入会している認可済み取引所を「第一種会員」とするのに対し、JVCEAに加入を許されたみなし業者は「第二種会員」として位置づけられます。
その後、正規の取引所として認可された業者は第一種会員へと昇格するものです。
第二種会員の候補の筆頭には、coincheck、みんなのビットコイン、LastRootsの名前が挙がっています。
coincheckはマネックスグループ、みんなのビットコインは楽天の子会社であり、LastRootsはSBIホールディングスの出資を受けています。
このような大企業の資本が入った取引所は、早い段階で第二種会員として入会する可能性が高いと目されているようです。
また、第二種会員として真っ先に名前が挙がるからこそ、いずれは第一種会員への昇格を有力視できるとも言えるでしょう。
この点から考えても、coincheckが金融庁から認可を受けるのは、そう遠くないのかもしれません。
まとめ
coincheckが新規口座開設を再開したことは、日本の仮想通貨業界にとって、久々に良いニュースだったと思います。
新規口座開設を再開したとはいえ、coincheckは未だにみなし業者であり、まだ正式な認可に至るタイミングは不明ですが、いずれ認可されるとの見方も強いです。
coincheckが認可を受けることになれば、ある意味でハッキング被害を乗り越えたとも言えますから、それも良いニュースになると思います。
市場への影響も考えられるため、今後もcoincheckの動きには注目する必要がありそうです。