7月21日に開催されたG20 が、23日に閉幕されました。
仮想通貨の世界的な規制について何らかの結論が出る可能性があるとして、投資家の注目も集まっていました。
しかし、今回もそれほど大きな結論には至らず、注目すべき議論も行われていません。
規制案の明確化も再度延長となりました。
本稿では、今回のG20 で議論された内容をまとめていきます。
結論は再び延長へ
7月21日にブエノスアイレスで開催されたG20が、23日に閉幕しました。
前回、3月に開催された際には、規制案の明確化は延長となり、今回の会合で明確化される予定でした。
しかし、今回もまた具体的な方向性は定まらず、再び10月に延期となりました。
仮想通貨という新しい技術は、まだまだ未知の部分が大きく、世界経済の成長にどのような影響を与えるのかが不明です。
それだけに、規制の方向性を決めることも困難になっているものと思います。
また、昨今の世界経済においては、アメリカと中国の貿易問題こそが最大の問題とされており、今回の会合でも貿易問題を中心として議論がなされました。
これにより、仮想通貨の問題はまだ結論を急ぐ必要はないと考え、延長とされた可能性もあります。
会合の内容
とはいえ、仮想通貨についても一定の話し合いが持たれたようです。
どのような議論がなされたのかを見ていきましょう。
FATFに国際基準の明確化を求める
まず、共同声明の中で、政府間機関であるFATF(金融活動作業部会)に対して、仮想通貨の国際基準を10月までに明確化することを求めています。
特に、マネーロンダリング対策を中心とした国際基準を求めているようです。
FATFでは、2015年6月に仮想通貨規制に関するガイダンスを公表しています。
そのガイダンスの中では、仮想通貨取引所に登録制や免許制を適用すること、顧客の本人確認を徹底すること、疑わしい取引は届け出ること、取引記録の保存を義務付けることなどを定めています。
しかし、世界の取引所の実態を見てみると、このようなガイダンスが守られているとはとても言えません。
世界的に見ても、このガイダンスを守っているのは、日本やアメリカなどの一部の国に限られています。
また、ガイダンスを守った国が、うまくいっているとも言えません。
ガイダンスを順守しているとされる日本においても、最近の取引所への業務改善命令などを見ても分かりますが、顧客の登録や資産の管理が適切に行われていないこと、セキュリティに問題があること、疑わしい取引が野放しになっていること、金融庁へ虚偽の説明が行われたことなど、様々な問題が浮き彫りになっています。
日本では、このガイダンスを基準として整備を進めた結果、現在の状況を呈していることから、現時点でのFATFのガイダンスはうまく機能していないことが分かります。
このことから、今回のG20でも、国際基準の明確化が求められたものと思われます。
仮想通貨には多くの懸念がある
G20の会合で、仮想通貨は多くの問題点を抱えていることが話し合われたことについても、触れておくべきでしょう。
G20は、消費者や投資家の保護が十分に行われておらず、脱税やマネーロンダリング、テロ資金供与などの問題が未だに根強く、市場も健全とは言えないとしています。
このほか、各国政府が発行する法定通貨のような特性を欠いており、仮想通貨と法定通貨は全く別のものと考えるべきだという意見も出ています。
このような問題は、これまでもさんざん議論されてきたことであり、特に驚くべきことでもありません。
しかし、2017年から2018年にかけて、仮想通貨を取り巻く環境は大きく変化しつつあるものの、中心とされている問題はほとんど解決されていないことが良くわかります。
もっとも、国際基準での規制案が具体的になっていない段階ですから、国際的に認識されてきた問題の解決が進まないのも、当然といえば当然でしょう。
規制案が策定された後、これらの問題がどのように解決されていくかに注目すべきと言えます。
仮想通貨の将来性への期待は深まる
まだまだ問題が多く残る仮想通貨ですが、一方で大きな期待を寄せられています。
財務省のG20の報告でも、
暗号資産の基礎となるものを含む技術革新は、金融システム及びより広く経済に重要な便益をもたらし得る。
と記載されていることからも分かる通り、仮想通貨の技術的な面については、今後の世界経済に大きな利益をもたらすものとして、共通の認識となっていることが分かります。
このことについて、今年3月のG20 では、
暗号資産の基礎となる技術を含む技術革新が、金融システムの効率性と包摂性及びより広く経済を改善する可能性を有していることを認識する。
と報告されていました。
3月の報告と今回の報告を比較すると、「経済を改善する可能性を有している」という認識から「経済に重要な便益をもたらし得る」という認識へと変化しており、将来性への期待が深まっていることが分かります。
以上のことを踏まえて、財務省の報告では、
暗号資産は、現時点でグローバル金融システムの安定にリスクをもたらしていないが、我々は、引き続き警戒を続ける。
暗号資産の潜在的なリスクを監視し、必要に応じ多国間での対応について評価するための更なる作業を期待する。
としています。
現段階において、仮想通貨は世界経済の安定性にリスクを与えるものではなく、リスクの監視を続けていく必要があると結論付けています。
このことからも、仮想通貨への規制を早急に進めていく意欲はそれほど見られず、このような姿勢も、規制案の明確化が度重なる延期につながっているのかもしれません。
参加者のコメント
今回のG20 の結果をうけて、ロシアのセルゲイ・ストルチャク財務次官は、記者団に対して以下のようにコメントしています。
仮想通貨は、金融規制や新興国への融資など、複数の協議で触れられた。
しかし、まだ共通のアプローチはないようだ。
G20 では、仮想通貨は金融の安定性においてリスクがないと認識を共有したことだけが、主な結論である。
重要なのは、仮想通貨やマイニングの技術そのものに、干渉を行わないという合意が履行されていることである。
これらの技術に対し、G20諸国の財政・経済ブロックから何らの干渉もなく、干渉しようする動きも見られない。
ストルチャク氏のこのコメントからも、仮想通貨に対するリスクでは共通の認識があることが分かります。
しかし、世界経済への仮想通貨の影響、様々な問題への仮想通貨の応用などに対し、今後とっていくアプローチという点においては、共通の認識は特になく、規制の方向性がさだまらない様子がうかがえます。
また、仮想通貨技術に対する干渉が行われておらず、さらに干渉される動きも見られないというコメントからも、G20として仮想通貨技術を認めていることが分かるでしょう。
技術としては受け入れつつも、規制への考え方では各国の歩調が合っていない状況にあると言えます。
まとめ
今回、仮想通貨の規制はどうなるかとG20の結果を注視していた人も多いと思います。
あまり重要といえる結論がもたらされなかったことで、拍子抜けしている人もいることでしょう。
果たして、10月までに規制は明確化されるのでしょうか。
再び進展しない可能性もありますが、とりあえず待つほかないでしょう。