仮想通貨関連の法律はまだまだ十分に整備されていませんが、徐々に法律が設けられつつあります。
2016年に制定され、2017年に施行された改正資金決済法などが、その最たるものです。
改正資金決済法の施行によって、仮想通貨取引所の利用者の安全性が高まりました。
では、どのように安全性が高まったのでしょうか。
また、税制などはどうなっているのでしょうか。
本稿では、改正資金決済法の概要について解説していきます。
改正資金決済法で仮想通貨が「通貨」になった
仮想通貨が怖いものという認識はまだまだ根強いですが、その背景には、まだ十分な法的整備がなされていないことがあります。
実際、株式や為替、不動産、債券などの様々な資産と比較して、仮想通貨に関する法律は不十分と言えるでしょう。
デジタルで理解しにくそう、難しそうという印象も相まって、より不安視されていることと思います。
しかし、仮想通貨業界は完全な無法地帯というわけではなく、徐々に法的整備が整いつつあります。
仮想通貨に関する法律として最近施行されたものに、改正資金決済法があります。
これは「仮想通貨法」とも呼ばれるもので、2016年5月に制定され、2017年4月に施行されました。
この法律の目的は、仮想通貨の利用者を保護することです。
まだまだ仮想通貨に対する理解が進んでおらず、利用に当っては不安に思う人も多いため、その不安をぬぐい、より多くの人が安心して取引できるように、この法律によって規制されることとなりました。
もちろん、仮想通貨に投資して損失を出したときに、その損失を補ってくれるようなものではありません。
しかし、マウントゴックス社が顧客のビットコインを横領していたような、利用者側にとっては不可抗力的な損失やその他の不正、マネーロンダリングなどによって、利用者が損失を被らないように、仮想通貨法が制定されたのです。
仮想通貨法を見れば、仮想通貨の定義が分かります。
仮想通貨法の中で、仮想通貨に対する明確な定義が与えられているからです。
法律の中で、仮想通貨は次のように定義されています。
“#fff”]改正資金決済法2条5項
この法律において「仮想通貨」とは,次に掲げるものをいう。
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
仮想通貨の定義は上記です。
少しわかりづらいのであえて簡単に言うとするならば、仮想通貨とは、法定通貨と同じように使えるもので、さらにデジタルによりやり取りできるもののことを言います。
「それなら、Suicaなどの電子マネーと一緒ではないの?」と思うかもしれませんが、仮想通貨は円やドルと言った様々な通貨と交換することができる、つまり円を売ってドルを買うように、ビットコインを売って円を買うようなことができるのに対し、Suicaなどの電子マネーにはそれができません。
これは、仮想通貨と電子マネーの決定的な違いです。
しかし、それでも法律的な位置づけが曖昧だな、と思う部分があります。
それは仮想通貨の税や会計上の扱いは「資産」になるということです。
つまり、株や不動産や債券と同じ分類になり、厳密にいうと通貨ではないということです。
しかし仮想通貨は、その用途をみれば、現在資産として位置付けられている様々なものよりも、はるかに通貨としての特性を備えています。
ですから、この辺の解釈は、今後変化してくる可能性があります。
仮想通貨取引所は登録制へ
改正資金決済法によって、最も変化したことは何かというと、取引所が登録制になったことです。
驚くべきことに、改正資金決済法が施行される以前は登録制度がなく、誰でも取引所を開くことができました。
しかし、それでは利用者に損害を与える怪しい業者が取引所を開設し、マウントゴックス事件と同じような事態にもなりかねません。
そうなれば、社会は仮想通貨を再び危険視し、普及は遅れることになるでしょう。
そこで、多くの人が売買に利用する取引所だからこそ、一定の規制を設けました。
仮想通貨取引所を開くためには、内閣府に登録申請を行ない、規制をクリアした業者だけが取引所としての業務を行なうことができるのです。
その規制とは、具体的には下記の通りです。
監査の義務化
まず重要なのは、取引所の健全性を保つために、監査法人及び公認会計士による監査を義務付けたことです。
この取り決めによって、取引所は年に1回、内閣府に報告書を提出することが義務付けられ、報告の内容に問題ありと判断された場合には、業務改善命令あるいは業務停止命令がなされます。
仮想通貨への信頼性が低い状況の中で、そのような命令が出されれば、たとえ運営を継続できたとしても信用は失墜し、顧客はたちまち逃げてしまい、経営は立ち行かなくなるでしょう。
そうならないためにも、取引所は健全な運営を心掛ける必要があります。
財務的要件として資本金1000万円以上
改正資金決済法では監査だけではなく、財務的なことに関する取り決めもなされています。
規制をクリアし、取引所として登録するためには、資本金が1000万円以上あること、純資産がマイナスではないことが必要となったのです。
とはいえ、これはなんら厳しい取り決めとは言えず、本当に最低限の財務的要件と言ってよいでしょう。
顧客資産の分別管理
このほか、顧客の資産を分別管理することが義務付けられました。
これは、取引所の所有する資産と、顧客から預かっている資産を別々に管理するということです。
そうすることによって、顧客の資産が取引所の管理運営に流用されたり、横領されたりする危険性がなくなり、また取引所が破綻した場合にも、顧客の資産が債権者に差し押さえられることはありません。
具体的には、取引所は顧客の資産を専用の信託銀行などに預け入れることで、管理することが求められます。
税制はどうなっている?
改正資金決済法によって、仮想通貨は通貨として(厳密に言えば資産として)認められることとなりました。
となると、気になってくるのは税制です。
お金に関するあらゆることには、特に免税措置がなければ税金がかかってくるのが一般的ですが、仮想通貨はどうなるのでしょうか。
以前は、仮想通貨にも消費税がかかるとされていました。
日本円で商品を購入した時に8%の税金がかかるのと同じく、ビットコインなどの仮想通貨を買った時にも8%の税金がかかっていました。
しかし、円でドルを買う時には消費税がかからないのと同様に、仮想通貨も通貨として認められたことで、購入しても消費税はかからなくなりました。
消費税が8%かかった状態が続いていれば、今ほど仮想通貨投資は盛り上がっていなかったかもしれません。
何しろ、仮想通貨を購入した時点で、手数料などの取引コストを別勘定としても、マイナス8%の状態から投資が始まることになるわけですから・・・。
このような効率の悪い投資はやってられないというのが、少しでも知識や経験のある投資家の共通した意見です。
しかし、今では消費税が非課税となっているので安心してください。
次に所得税ですが、これはまだ法律によって明確化されていないところで、税務署や税理士によって意見が分かれています。
まず所得の区分についてですが、営利目的でトレードを頻繁に繰り返している方であれば、事業所得又は雑所得になると考えられます。
一方では、株式投資と同様に譲渡所得になるという考え方もできます。
この辺は個別具体的な取引の実態にあわせて、担当税理士や所轄税務署に相談した方が賢明でしょう。
次に意見が分かれるポイントとしては、仮想通貨同士の取引によって得たキャピタルゲインの取扱いについての課税時期(認識時期)の問題です。
この点に関し、原則的な考え方に立ち返ると、仮想通貨同士の取引であったとしても、購入した仮想通貨を売却して評価益から売却益として認識された時点が課税時期になると思われます。
しかしながら、いくら売却益が出たとしても、日本円にした時にまた売却損益が発生することおよび税金の納付は日本円で行うことから仮想通貨のままの状態で課税対象としてしまうと納税資金が確保できないという問題も生じそうです。
個人的には、仮想通貨同士の取引から発生した売却益はその時点では認識せず、日本円に戻した時に売却益を認識した方がシンプルでわかりやすく混乱も生じないと思っています。
まとめ
改正資金決済法が施行されたことによって、利用者にとっては安全性が高まり、非常に良い流れができています。
取引所は登録制となり、様々な義務をこなし、利用者の保護に努めていかなければならなくなりました。
また税制については、今後も注目されることでしょうから留意しておくべき問題です。
今後さらに法的整備が整えば、仮想通貨をより安全に取引できるようになってくると思います。
新たに法律が制定されれば、その都度解説したいと思っています。