投資の世界、特に株式投資の世界で言われることですが、複数の銘柄に分散投資するのが基本であり、集中投資は良くないやり方であるとされています。
投資先を分散することによって、一部の損失を利益でカバーして損失を防ぎ、全体ではそこそこの利益が出るというものです。
しかし、集中投資が良いとする論調があるのも事実です。
実際のところ、集中投資と分散投資はどちらが良いのでしょうか。
そして、仮想通貨投資にもそれは当てはまるのでしょうか。
分散投資とは?
投資における鉄則の一つに、分散投資をすることが挙げられます。
これは、投資対象を一つに集中させず、複数に分散させる投資手法のことです。
株式ならば数銘柄から数十銘柄を選んだりします。
どの程度分散させるかについては投資家によって見解が様々で、少ない人では3銘柄、多い人では10~20銘柄程度で、機関投資家になると数百銘柄を保有していることもあります。
株式だけに限らず、資産全体を債券、不動産、外貨、預金などに分散することを、分散投資ということもあります。
なぜ分散投資をするのかといえば、投資の安全性を高めるためです。
分散投資を推奨している投資家の多くは、成長株を掘り起こして積極的に投資していくよりは、それなりに満足できる利益を求めて、複数の銘柄に投資します。
一つの銘柄に投資をすれば、その銘柄が値上がりするはずだという予測が外れて値下がりした場合、大きく損失を被ることになります。
しかし、利益が出るであろうと思われる10の銘柄に投資しておけば、読みが外れて3銘柄が下落しても、読みが当たった他の7銘柄の利益によって下落分をカバーし、利益を得ることができるのです。
投資に精通していない人なども、分散投資をしておくことによって、損益がプラスマイナスゼロになる可能性が高くなります。
プラスマイナスゼロの結果を得るということは、投資においては非常に重要なことです。
もちろん、資産を増やすために投資しているのですから、最終的にはプラスになったほうが良いでしょう。
しかし、いつもそう上手くいくわけではありません。
プラスならば大満足、プラスマイナスゼロならばまあまあ満足、マイナスならば大失敗といったところです。
なぜマイナスは大失敗なのでしょうか。
それは、損失はそれ以降の投資のパフォーマンスを低下させることになるからです。
仮に100万円を投資した人が、失敗して20万円のマイナスになると、残りの資金は80万円となります。
100万円を持っていた時は、10万円の利益を得るための利回りは10%で良いのですが、80万円を持っている時に10万円の利益を得るためには、12.5%の利回りが必要となります。
投資の経験者ならば、利回りを1%、2%と上げていくことの難しさは誰もが知っているものです。
損失を被れば、従来望んでいた利益を得るためにはより高い利回りが必要となります。
それだけに、一発逆転の無茶な投資をするようになりがちです。
そのような状態を招けば、おそらく投資は失敗に終わってしまうことでしょう。
だからこそ、投資ではマイナスにならないことが最低限必要であり、何らかの出来事によって状況が大きく変わってしまった場合でも、マイナスをできるだけ軽微にする必要があります。
そのためには、1銘柄に集中投資するよりも、複数銘柄に分散投資したほうが良いというわけです。
集中投資とは?
これに対して、集中投資とは、その名の通り単一の銘柄に全資産を投じるものです。
集中投資のメリットは、予測が当たった場合にたくさんの利益を得られることです。
例えば、100万円の資金があり、それを10銘柄に10万円ずつ分散投資したとします。
このうち1銘柄の株価が2倍になったとしても、その銘柄に投資しているのは10万円ですから、得られる利益は10万円です。
しかし、2倍に上昇した銘柄に、全額の100万円を投資していたならば、得られる利益は100万円になります。
このように、推測が当たった場合に利益を最大化するためには、集中投資が良いのです。
実際、絶対に上がる銘柄を知っていたと仮定するならば、その銘柄に全額を投資すればよいのであって、分散投資をする意味は全くなくなるでしょう。
そのような状況での分散投資は、いたずらに投資のパフォーマンスを低下させるだけです。
実際、銘柄研究を徹底的に行い、「この銘柄ならいける」と確信して集中投資し、大きく儲ける投資家もいます。
守りながら資産を増やす分散投資が吉
しかし、多くの投資家は原則に従って、やはり分散投資しておくのが良いといえるでしょう。
いくら集中投資に値する大丈夫そうな銘柄があったとしても、市場参加者の中には海千山千の投資の玄人がたくさんいますから、その人達も気づいていない銘柄を見つけ出せる確率は、極めて低いといってよいでしょう。
「これならいける!」と思ったとしても、それは単なる思い込みであるか、すでに出遅れています。
出遅れた状態で買うと高値で掴まされたり、売り煽りに遭って大きく損をしてしまう可能性が高いです。
分散投資は、損失を防ぎながら、無理なく利益を得ていく方法です。
いわば、守りながら増やしていくのです。
一方で集中投資は、損失を覚悟の上で、積極的に利益を求めていく方法です。
いわば、攻めて攻めて、資産を増やしていくのです。
このように、分散投資と集中投資では、同じ投資でも目的が異なります。
本稿をお読みのあなたが投資の達人でなければ、分散投資しておいたほうが無難であるといえます。
仮想通貨投資でも分散投資の鉄則は守ろう
分散投資したほうがよいという鉄則は、仮想通貨に対しても当てはまるのでしょうか。
結果から言えば、当てはまるといってよいでしょう。
仮想通貨は、末端のアルトコインなども含めると、1000種類以上あるとも言われています。
その中で、日本国内で取引できる仮想通貨は、15種類程度です。
ですから、分散投資と言っても、このような限られた種類から分散投資していくことになるでしょう。
海外の取引所を使うならば、日本では取り扱われていないアルトコインにも投資することができます。
しかし、それらのアルトコインについては、すでに国内で取引されているアルトコインと比較して情報があまりないケースが多いものです。
投資に当っては、情報をよく把握した上で投資することもまた鉄則ですから、日本国内で取り扱われていないアルトコインには手を出さない方が安全といえるでしょう。
仮想通貨は、価格変動率(ボラティリティ)が非常に大きいものです。
だからこそ、集中投資した場合には、爆発的な利益を見込めます。
例えば、2017年8月は、多くの仮想通貨が激しく値上がりしています。
7月31日時点で198円であったリスクは、9月1日には816円へと上昇しています。
実に4倍の値上がりです。
手元に100万円の資金を持っている人が、リスクへの一点張りをしたならば、300万円の利益を得られていました。
だからこそ、仮想通貨への集中投資は非常に良い方法であると考える人もいるでしょう。
しかし、これは結果論に過ぎません。
リスクが高騰を始める8月19日以前に、果たして全額を投じることができたでしょうか。
おそらく、できない人がほとんどでしょう。
仮想通貨は、国内で取引されているものでも、その仮想通貨の仕組み、特徴、目的などを、完璧に理解して取引している人は多くありません。
全てを知り尽くし、「今後上がっていくに違いない」という確信があれば、特定の仮想通貨への一点張りも可能でしょうが、多くの人はこの確信を持つことができず、仮に一点張りしても、それはカジノのルーレットで特定の番号に一点張りしているようなもので、不安で不安で仕方ないことでしょう。
そして、価格変動率が大きいということは、単に大きく上がる可能性があるだけではなく、当然ながら大きく下がる可能性もあります。
1日で10%以上も下げることが普通にあるのです。
なかなか上がらずに下がり続け、かなり苦しい投資を強いられる可能性もあります。
例えば、2017年6月9日時点で、オーガーは3929円でした。
しかしその後下落し、多少の反発はあっても値が戻らず、ついに7月17日には1809円まで下げました。
その後膠着状態が続き、8月に大幅に値上がりしたものの、一時的に3200円程度に戻しただけです。
この状況で、100万円をオーガーに1点張りしたならば、長期にわたって50万円もの含み損を抱え続けることになります。
全資金を投入した人が、そのような状況下で、投げ売りをせずに持ち続けるというのは容易なことではありません。
仮想通貨への1点張りには、このような心配があります。
また、ダオのように、最初は誰もが期待していた仮想通貨が、短期間のうちに破たんしてしまい、価値を失ってしまうこともあります。
この場合、1点張りした資金はほぼゼロになってしまいます。
まとめ
以上のことから、株式投資と同じく、仮想通貨も分散投資がおすすめです。
その分散投資というのも、海外のあまり知られていない仮想通貨ではなく、ある程度の安全性や需要が見込まれ、日本でも取り扱いが開始されている仮想通貨に分散投資をするのが良いのではないでしょうか。
ビットコインやイーサリアムといった手堅い仮想通貨の他にも、リップルやネムといった今後を嘱望される仮想通貨もありますし、モネロやリスクやライトコインといった今後も値上がりしていきそうな仮想通貨だってあります。
それらを選んで均等に投資していくことが大切です。
そうすることによって、リスクを低く抑えつつ、それなりに満足のいく利益を得られるはずです。