株の信用取引と同じように、ビットコインもレバレッジ取引が可能になります。
各取引所のレバレッジの扱いや、用語や仕組みについて詳しく解説していきます。
はじめに
ビットコインを取引するにあたり、多くの取引所ではレバレッジを利かせた取引が可能となっています。
すなわち、取引所口座に実際に入金している手元資金の、数倍の金額の取引をすることができるのです。
しかし、取引所によって、レバレッジを用いた取引の名称が違ったり、制度自体が微妙に異なっていたり、そもそもレバレッジ倍数が違います。
そこで本稿では、各取引所の違いを把握するために、用語や仕組みの説明をしていきます。
レバレッジとは?
まず、レバレッジについて簡単に確認しておきましょう。
レバレッジとは、取引所口座にある手元資金に対し、数倍の取引を行なえる仕組みのことです。
例えば、手元資金が10万円である時、10万円以下の取引をするならば、レバレッジは必要ないため、「現物取引」を行なうことになります。
しかし、もし手元資金が10万円のとき、どうしても20万円の取引をしたいこともあると思います。
1株2000円で取引単位が100株の株式ならば、20万円が必要となるような場合です。
ミニ株で50株だけ買うという方法もありますが、単元未満での取引には様々な制限がつきもので、手数料が高かったり、前場あるいは後場の寄り付きでしか取引できないようになっています。
そのため、100株単位で買った方が明らかに投資しやすいのです。
そんなとき、株式投資においては、3倍までレバレッジをかけられる「信用取引」を行なうことによって、手元資金の2倍に当たる20万円の取引が可能となるわけです。
レバレッジのメリット
レバレッジのリスクについては詳しく後述するとして、ここではメリットについてお話しておきましょう。
レバレッジのメリットは、例えば株式投資において、本来ならば単元未満で買うべきところを、レバレッジによってまとまった単位での購入が可能になることです。
そうすることによって、手数料その他のメリットが得られることは、上述の通りです。
しかし、レバレッジのメリットとは、そのような仕組みの上でのメリットだけではなく、投資効率を上げるというメリットもあります。
このことについては、実際に数字を用いながら説明したほうが良いでしょう。
例えば、1株2000円の銘柄を、手元資金が10万円しかないため、ミニ株によって50株だけ購入したとします。
その後、1株2100円まで値上がりした場合、1株当たりの利益は100円であり、50株ならば5000円の利益となります。
10万円の投資に対して5000円の利益ですから、利回りは5%です。
しかし、同じ銘柄をレバレッジ2倍で取引し、100株購入したとします。
その後、100円値上がりしたならば、100株での利益は1万円となります。
つまり、10万円の投資に対して1万円の利益ですから、利回りは10%となります。
このように、手元資金以上の取引をすることによって、実際に投じた額に対する利回りが、大きく向上することになります。
レバレッジをうまく活用することによって、資産の増大スピードはかなり向上するのです。
このことは、レバレッジを用いたあらゆる投資において言えることで、ビットコインについても同様です。
レバレッジという概念は、意外なほどに、私たちの身近なところで見られるものです。
例えば不動産投資にしても、レバレッジという概念はあまり適用されませんが、実際にはレバレッジによって取引されています。
手元資金2000万円の人が、銀行からの借り入れによって2億円のマンションを購入したならば、レバレッジ10倍の取引をしているということです。
この場合にもやはり、投資効率はぐんと上がります。
手元資金2000万円で融資を受けないならば、区分所有マンションを現金で買うか、お金が貯まるまで何年もかかって、ようやく億単位の投資ができます。
マンションを買えるのはいつのことやらわかりませんし、資産の増大スピードは極めて遅いものとなります。
そんなとき、融資を受けてレバレッジをかけることによって、この問題を解決することができるのです。
同様の考え方をするならば、あらゆる企業活動でも、レバレッジをかけているケースが頻繁に見られます。
銀行から融資を受けて設備や研究に投資し、それによって利益をあげているならば、それもやはりレバレッジをかけていると考えることができるのです。
信用取引?レバレッジ取引?
あらゆる投資において、レバレッジを指すときに「信用取引」という単語を用いることがあります。
ただし、これらの呼び方は便宜上そう呼んでいるのであり、厳密にいうならば「信用取引」とは主に株式投資の際にレバレッジを用いることを指します。
手元資金以上の取引をする時、最も馴染みのあるのが株式投資の信用取引であることから、ビットコインその他でレバレッジをかける際にも「信用取引」と呼ぶことがあるのでしょう。
あるいは、レバレッジをかけないときの取引を「現物取引」と呼ぶことから、言語的な対比を以て分かりやすくするために、「信用取引」という呼称が一般化しているとも考えられます。
したがって、FXや株式や先物など、レバレッジを用いた取引の総称として言い表すならば、「レバレッジ取引」と呼ぶのが適当かと思います。
各取引所のレバレッジの比較
レバレッジをかけることができる対象、最大のレバレッジ倍数などは、取引所によって異なります。
国内の大手取引所で比較してみると、以下のようになっています。
取引所 | 取引の種類 | 最大レバレッジ |
BIT Point | 信用取引、FX | 25倍 |
bitbank trade | 先物取引 | 20倍 |
bitflyer | FX、先物取引 | 15倍 |
Zaif | 信用取引、先物取引 | 7.77倍 |
coincheck | 信用取引 | 5倍 |
以上のように、レバレッジをかけることができる最大の倍数は、取引所によって異なり、最大で25倍となっています。
取引の種類をもっと詳しくみよう
上記の表において、取引の種類がFX、信用取引、先物取引の三種類があることが分かりました。
これらの違いは微妙な部分もあり、特にFXと信用取引の違いは分かりにくいものです。
そこで、この三者についてそれぞれ解説し、類似点と相違点を見ていきましょう。
FXとは?
通常「FX」と聞けば、「外国為替証拠金取引」のことを思い浮かべると思います。
つまり、円でドルやユーロを買ったり、ドルでユーロやポンドを買ったり、外貨に投資するもののことを指すのです。
ビットコインにおいても、日本円やドルによってビットコインを買うのですから、外貨への投資のような要素があるといえます。
FXで投資する際にも、レバレッジをかけることが可能です。
といっても、足りないお金は取引所から借りるのではなく、取引所が持っている資金をそのまま使ってレバレッジをかけます。
さらに、差金決済もFXの特徴です。差金決済とは、現物とお金を交換することによって売買するのではなく、実際には手元の現物がない状態で取引し、差額分だけ取引することをいいます。
例えば、手元資金が100万円、1BTC=30万円のときに、100万円を証拠金として3倍のレバレッジかけ、10BTC買ったとします。
この時、300万円分の買い物をしたわけですが、300万円を渡すわけではありません。
1BTC=35万円になったときに10BTCを売ると、50万円の利益が出ます。
すると、350万円全額を受け取るのではなく、買値と売値の差金にあたる50万円だけを受け取ります。
その結果、口座内のお金は100万円から150万円に増えることになります。
信用取引とは?
信用取引は、主に株式投資で利用されるレバレッジです。
ビットコインにおいても信用取引が可能です。
信用取引でレバレッジをかける際には、取引所からお金を借りて売買します。
例えば、手元資金が100万円、1BTC=30万円のときに、3倍のレバレッジかけて10BTC買ったとすると、足りない200万円は取引所から借り入れることになります。
1BTC=35万円になったときに10BTCを売ると、50万円の利益が出ます。350万円を受け取り、200万円は取引所に返済され、口座内のお金は100万円から150万円に増えることになります。
FXと信用取引の微妙な違い
しかし、これだけではFXと信用取引の違いが分かりにくいと思います。
そこで、この両者の違いを明らかにするためには、「取引所からお金を借りるかどうか」ということが重要です。
FXの場合には、取引に当って取引所からお金を借りるわけではなく、取引所の資金をそのまま使い、差金決済によって決済をします。
これに対し、信用取引では、取引所から融資を受けて取引をします。
これが大きな違いです。
この違いによって、信用取引には返済期限が設けられています。
お金を借りているのですから、返す期限が設けられるわけです。
返済期限が迫り「もっと上がりそうだからまだ持っていたい」と思っても、期限が来れば売却するのが基本です。
一方、FXは融資を受けているわけではなく、返済期限が設けられていません。
これが、FXと信用取引の大きな違いです。
簡単に覚えるなら、「FXも信用取引もレバレッジのための取引ですが、FXには期限がなく、信用取引には返済期限がある」と覚えておくのが良いでしょう。
先物取引とは?
次に、先物取引とは何でしょうか。
先物取引とは、簡単に言えば、未来の特定の日に、特定の商品を、特定の金額で売買することを約束する取引方法のことです。
よく知られている先物取引には、商品先物取引、債券先物取引、株価指数先物取引などがあります。
最も知られているのが、商品先物取引でしょう。
これは、大豆はトウモロコシと言った農作物、金や銀、石油や天然ガスといった資源など、様々な商品をやり取りする先物取引です。
この他、日経平均株価先物なども良く知られていると思います。
ビットコインの先物取引も、仕組みは同じです。
すなわち、現在、ビットコイン先物が1BTC=30万円となっており、1ヶ月後には35万円になっていると予測したならば、
「1ヶ月後の今日、ビットコインを〇BTC分、1BTC=30万円で買う」
という約束をするということです。
先物取引のリスク
通常の投資に比べて、先物投資は非常にリスクが高く、怖いものだと思われがちです。
その理由はレバレッジをかけられることにあり、その意味ではFXや信用取引とはそれほど変わりません。
しかし、FXや信用取引では、現時点の価格で購入し、その後思ったように値上がりしなかった場合にも、保有期間を延ばすことができます。
例えば、値上がりを期待して1BTCを30万円で購入し、3ヶ月後に28万円となって2万円の損失となった場合にも、あえて保有し続けることができます。
これに対し、先物取引では、未来のある時点での売買を約束するものであり、思い通りの結果が得られなかった場合にも、必ず約束を履行しなければなりません。
例えば、1BTC=30万円のタイミングで、
「3ヶ月後の今日、10BTCを、1BTC=30万円で買う」
という約束したとします。
しかしその後、あまり値動きが思わしくなく、値上がりや値下がりを繰り返し、最終的に25万円のタイミングで、約束の日が来ました。
その場合、相場の価格は10BTC=250万円ですが、それを約束通り10BTC=300万円で買わなければならず、50万円の損失となるのです。
このような意味で、先物取引はリスクが高いのです。
もちろん、少額で取引するならば、損失になったとしてもそれほど問題はないでしょう。
しかし、レバレッジをかけて多額の取引をした場合には、ひどい損失を被る可能性があります。
そして、そもそも投資というものは、未来のことは結局わからないから、あてにしてはいけないという論調がかなり強いことを忘れてはなりません。
為替にしろ、株式にしろ、仮想通貨にしろ、未来の値動きは正確にわからないのです。
もちろん、「こうなるかもしれない」と「流れを読もうとする」ことはできますが、それも結局は予測に過ぎません。
その道の熟練者ならば、精度の高い予測が可能でしょうが、それでも先物で大敗を喫することがあるのです。
したがって、一般の投資家が、高いレバレッジをかけて先物取引をするのはお勧めできません。
ギャンブルもギャンブル、それもかなり分の悪いギャンブルになる可能性があります。
もちろん、将来的に仮想通貨の価格は上昇していくというのが、スタンダードな見解となっています。
しかし、万が一のことを考えると、決済のタイミングと価格を固定してしまう先物取引は、避けた方が良いでしょう。
同じように将来の値上がりを期待してレバレッジをかけるにしても、FXか信用取引を利用したほうが安全です。
類似点と相違点
では、上記の三種類のレバレッジ取引について、類似点と相違点を見てみましょう。
類似点:レバレッジをかけられる
類似点といっても、殊更言うほどのことはないかもしれません。
なぜならば、これら三種類の共通点は、手持ち資金以上の取引ができることだからです。
相違点1:取引期限の違い
次に、相違点を見ていきます。
相違点としてまず挙げられるのは、取引期限の違いです。
レバレッジ取引によってビットコインを買った場合、そのビットコインをいつまでも持ち続けられるのか、あるいはある時点で決済しなければならないのか、という違いがあります。
それをまとめると、
FX・・・期限なし
信用取引・・・期限あり
先物取引・・・期限あり
となっています。
まずFXですが、FXは上記の通り融資とは異なる性質であるため、基本的にはいつまでも保有することができます。
何年でも持ち続け、自分が好きな時に売ることができるのです。
ただし、以下のように金利の支払いがありますから、あまりにも長期にわたって保有すると、利益に響くことになるため、長期保有には向きません。
信用取引は、取引所から融資を受けて取引するものであるため、返済期限があります。
返済期限が来れば、その時の価格で決済することを求められますが、まだ保有を続けたい場合には、再借入れによって取引を継続することができます。
先物取引にも返済期限があり、このことを「限月(げんげつ)」と言います。
限月とは、上記の「未来の特定の日に、特定の商品を、特定の金額で売買することを約束する」の「特定の日」に当たります。
限月が来る前にいいタイミングが来たと思えば、そこで取引を終了させることができますが、限月が来たら必ずその時点で決済しなければなりません。
相違点2:手数料の違い
次に挙げられるのは、手数料の違いです。
この手数料は、取引の種類や取引所によって色々な名前で呼ばれており、借入手数料、レバレッジ手数料、取扱手数料、スワップポイントなどと呼ばれます。
呼び方は違いますが、どれもおおよそ同じことを意味していると考えて差し支えありません。
大手取引所の手数料は、下記の通りとなっています。
取引所名 | 1日当たりの手数料 | ||
買い | 売り | ||
FX | bitflyer | 0.04% | 0.04% |
BITPoint | 0.035% | 0.035% | |
信用取引 | coincheck | 0.04% | 0.005% |
BITPoint | 0.035% | 0.035% | |
Zaif | 0.039% | 0.039% | |
先物取引 | Bitbank Trade | 不要 | 不要 |
bitflyer | 0.04% | 0.04% | |
Zaif | 0.039% | 0.039% |
これらの手数料は、毎日支払う必要があるため、長期取引では投資効率を下げる要因になりかねません。
しかし短期投資ならば、それほど問題ないでしょう。
ビットコインの値動きは非常にはげしいため、このようなわずかな手数料がかかったとしても、誤差の範囲内だとも考えることができます。
とはいいつつも、やはり手数料が安いに越したことはないので、取引所を選ぶ際には、手数料が少しでも安い取引所を選んだほうが良いでしょう。
まとめ
以上のように、取引所によって手数料や取引可能なレバレッジの種類は様々です。
口座の開設に当っては、自分の希望する取引が可能な取引所を選ぶことと、レバレッジの最大倍数が自分の目的に合う取引所を選ぶことが大切です。
その上で、手数料ができるだけ安い取引所を選べば、きっと有利にレバレッジ取引ができることと思います。
ここまでレバレッジ取引について説明してきてなんですが、仮想通貨ではボラティリティが高くレバレッジ取引は非常にリスクが高く危険ですので、個人的にはお勧めしておりません。