2017年11月9日から12日にかけて、ビットコインキャッシュが高騰しました。
その後、短期の暴落も見せつつ、現在は14万円前後で推移しています。
仮想通貨が異常な乱高下を見せる時には、原因不明のまま乱高下することもありますが、今回の高騰には色々な原因が見られるようです。
本稿では、ビットコインキャッシュ高騰の背景に迫っていきましょう。
ビットコインキャッシュが時価総額第2位に
11月9日から、にわかにビットコインキャッシュの高騰が始まりました。
ここ数か月間、ビットコインキャッシュは3~5万円程度をキープしてきたのですが、11月に入ってから徐々に価格が上昇しはじめ7万円台となり、9日からの更なる高騰で、12日には一時30万円近くまで急騰し、数十分後には20万円を割るという乱高下を見せました。
11月13日18時現在、13万8000円となっています。
仮想通貨らしい値動きを見せたビットコインキャッシュですが、この一瞬の高騰によって時価総額が300億ドルを突破し、長らく時価総額第2位の座を保持してきたイーサリアムを追い抜くこととなりました。
数日でイーサリアムを抜き去ったことで、市場からは驚きの声が上がりました。
この背景には、ハッシュレート(採掘速度。取引の承認速度)の上昇、大手マイニンググループからの支援、ビットコインの送金詰まりなど、色々なことが原因と考えられています。
ビットコインキャッシュ急騰の背景
12日までで一服した高騰ですが、その直接的な原因は、ビットコインのマイナーがビットコインキャッシュのマイニングに移行したためだと言われています。
このことによって、ビットコインキャッシュはビットコインと比べ、2倍のハッシュレートとなっています。
当然ながら、ビットコインのハッシュレートは低くなりました。
ハッシュレートが低くなるということは、送金や取引が反映される速度が遅くなるということです。
仮想通貨は、「取引速度が他の仮想通貨の〇倍」「アップデートで取引速度が速くなる」などということが価値につながることからも分かる通り、取引記録の承認速度が遅くなるということは致命傷です。
では、なぜビットコインキャッシュにマイナーが移行しているのでしょうか。
その理由は、
- 収益性が良い
- マイナーの思惑
の二点です。
この二点に関し、少し詳しく見ていきましょう。
収益性が良い
まず、ビットコインキャッシュの難易度が低下したことから、ビットコインをマイニングするよりも、ビットコインキャッシュをマイニングした方が収益性が高くなることから、マイナーが移行しています。
ビットコインキャッシュは、マイニング難易度が定期的に調整されており、マイニングが集中していれば難易度が上がり、マイニングが集中していなければ難易度が下がるようになっています。
今回、ビットコインキャッシュのマイニング難易度が下がったことで、マイナーが集中してハッシュレートが上がり、価格も上がったということです。
しかしながら、マイニングが集中したことによって、今後マイニング難易度は上昇するわけですから、マイナーが再び離れていく可能性はあります。
12日には20万円を超えていたものが、翌日には13万円台まで低下していることは、その表れと言えるかもしれません。
このことを単純に受け取るならば、ビットコインキャッシュの価格はマイニング難易度に左右されやすいということであり、価格の安定性に疑問が残ります。
しかし、以下の理由から、ビットコインキャッシュの価格は今後も高値を維持するとの意見も多数みられます。
マイナーの思惑
それは、マイナーの思惑です。
10月末にはビットコインゴールドが誕生し、Segwit2xが11月中旬に予定されていたものが延期となるなど、色々な混乱が見られていた中で、ビットコインのハッシュレートがビットコインキャッシュに大きく移動すれば、ビットコインの送金速度は遅くなり、信頼を失うことにもなりかねません。
その反面、ビットコインキャッシュがハードフォーク(アップデート)によって、ハッシュレートを高水準に安定させられるといわれています。
これによって、信頼性を高めることができれば、ビットコインキャッシュがビットコインの地位を奪える可能性も出てくるでしょう。
そうなれば、今以上にビットコインキャッシュの価格は向上すると考えられます。
それが期待できることもあり、またビットコインキャッシュのマイニング難易度が低かったことも後押しとなって、ビットコインキャッシュにハッシュレートが集まったわけです。
したがって、上記において、「ビットコインキャッシュの価格の安定性には疑問が残る」と述べましたが、実際にはビットコインキャッシュの価格は今後も高値を維持するという意見も強くなっています。
ビットコインの価格はどうなる?
ここまで読んで分かったと思いますが、ビットコインキャッシュの価格が高騰した背景の一つに、ビットコインの信頼の低下があります。
ビットコイン価格は、この1ヶ月で高騰しており、11月8日には85万円を記録しました。
それが、12日には66万円程度に下落し、ビットコインの市場シェアも62%から53%に低下しました。
ビットコインキャッシュの値動きとは真逆の動きをしており、このことからも、ビットコインキャッシュの上昇はビットコインの下落、またビットコインの上昇はビットコインキャッシュの下落という構図が見て取れると思います。
今後は、ビットコインキャッシュとビットコインの価格は、合わせて見ていく必要があるでしょう。
この価格の変動には、これまでも述べてきた通り、ハッシュレートが大きく関連しています。
ビットコインのマイナーがビットコインキャッシュに移行し、ビットコインのハッシュレートが低下した結果、ビットコインの送金詰まりが起こり、ビットコインの信頼が低下しているのです。
すでにご存じの方が多いと思いますが、ビットコインはブロックチェーン技術によって成り立っており、ブロック内に取引を記録してチェーン状につないでいきます。
この時、取引に間違いがないことを確認するのがマイニングです。
マイニングに成功したマイナーは、報酬としてビットコインを受け取ることができます。
マイナーがいなければ、ビットコインは成り立ちません。
しかし、これまでビットコインのマイニングにあたってきた大手のマイニンググループが、ビットコインからビットコインキャッシュにマイニングを切り替えたことによって、ビットコインの取引承認スピードが大きく低下し、ビットコイン詰まりが起こりました。
このビットコイン詰まりによって、取引がなかなか承認されなくなり、詰まったビットコインの総額は770億円にも上ります。
これは、データ量にして100万バイト、件数にして約11万5000件とのことです。
価格下落のその他の理由
ビットコインの価格下落は、色々な事態が重なったからだといえるでしょう。
10月末のハードフォークでビットコインゴールドが付与され、11月中旬にはSegwit2xによってB2Xが付与されるとされていたことから、ビットコインに資金が流入していました。
それによって高騰していたものが、Segwit2xの延期に伴い、ビットコインからアルトコインへと資金が流出していったわけです。
また、このように価格が急騰・急落を繰り返しているということは、ビットコインの取引量も非常に多くなっているということであり、取引手数料も高くなっています。
これもビットコインの不人気の原因となり、資金の流出を招いているのです。
一説によると、取引量の急増はビットコインの混乱だけではなく、ダミーの取引によって取引件数を増やしている勢力があるとの見方もあります。
もっとも、これは今に始まったことではなく、以前から大量のダミー取引を繰り返す勢力は問題として挙げられていました。
これによって取引手数料が上がるたびに、ビットコインからアルトコインへと資金が流れ、ビットコイン価格の安定性は低下していたわけです。
今回、そのようなダミー取引が増加したかどうかは定かではないですが、その可能性は否定できません。
それによってビットコインからアルトコインへと資金が流れる現象が起き、流入先がビットコインキャッシュになったという側面も考えられるわけです。
ビットコインキャッシュの今後
ビットコインキャッシュは、今後も高値を維持するとの見方が強いのですが、その意見に異を唱える意見もあります。
これは、別に驚くに足りないでしょう。
ビットコインでさえ、一部では「詐欺だ」「バブルだ」「過大評価されている」という意見がある一方で、「ビットコインはまだまだ上昇する」「1BTC=10万ドルまで上昇する」などという、真逆の意見もあるわけですから。
どちらが正しいか、正確に判断するのは難しいでしょう。
ビットコインキャッシュでも、一部では継続的な成長は見込めないとする意見があります。
なぜならば、ビットコインキャッシュへの資金流入は一過性のものであり、また取引高の半分が韓国市場に集中しているからです。
Xapo社のテッド・ロジャース氏は、以下のように語っています。
ビットコインキャッシュは急騰したが、これが持続可能になるには早すぎる。
ビットコインキャッシュの高騰には、まだ明確な根拠がない。
ビットコインキャッシュは、すぐに急落するだろう。
実際、ビットコインのマイナーがビットコインキャッシュのマイニングに移行した背景には、上記の通り収益性の問題がありました。
もし、ビットコインキャッシュのマイニング難易度が上がれば、マイナーは再びビットコインのマイニングに戻るかもしれません。
ビットコインキャッシュの高騰の原因として、マイニングの収益性が大きな理由を占めているとすれば、ビットコインキャッシュは常にマイニング難易度が安定して低くなっておく必要があり、ビットコインよりもマイニング難易度が上がれば、すぐにマイナー離れを起こしてしまうことになります。
ただし、このような短絡的な見方は、間違いのもとになるかもしれません。
そもそも、ビットコインとビットコインキャッシュは目指すものが異なるわけですから、それぞれが独自に成長を続ける可能性もあるわけです。
実際、ビットコインの専門家であるアンドレス・アントノポロウス氏は、
ビットコインとビットコインキャッシュは共存し、異なるユーザーを獲得できる。
ビットコイン、ビットコインキャッシュ、リップル、ライトコインは全て、それぞれ異なる哲学・構造・インフラを持っているのだ。
と、共存共栄が可能であると言っています。
今回のビットコインキャッシュの高騰がどうなっていくか、数日のうちに明らかになると思います。
13日現在では、ビットコインキャッシュの時価総額は、再びイーサリアムを下回るようになっていますが、今後数日の値動きに注目したいと思います。
まとめ
この数日間、ビットコインキャッシュは一時30万円近くに迫り、数十分で再び十万円台に落ちるなど、かなり恐ろしい乱高下を見せました。
仮想通貨の怖さ(人によっては面白さ)を十分に演出したと言ってよいでしょう。
従来の法定通貨では考えられない要因によって、価格が乱高下することがあるのが仮想通貨の世界です。
雰囲気で投資する人が多い昨今ですが、今回のビットコインキャッシュの高騰は、今一度、情報取集の大切さを実感させてくれる出来事であったことは間違いないでしょう。