日本のキャッシュレス化の遅れ、そしてセブン・ペイの失敗

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日本政府はかねてより、キャッシュレス化を推進しており、多くの企業がそれに追随して様々な活動を展開してきました。

最近では、PayPayやLINE Payがその最たるものであり、キャッシュレス決済は徐々に浸透しつつあります。

しかし先日、セブンイレブンでセブン・ペイを導入したところ、すぐさま問題が露呈するなどの躓きも見られ、諸外国と比較してもまだまだ日本のキャッシュレス化は遅れている状況にあります。

本稿では、日本のキャッシュレス化の動向をまとめ、仮想通貨業界への影響を考察していきます。

日本のキャッシュレス化

日本政府は、2018年からキャッシュレス化を目指しています。

経済産業省の目標では、「2025年までにキャッシュレス決済率を40%にする」としています。

これは、世界的にキャッシュレス化の普及が進んでいる流れの中で、日本も遅れを取らないようにすることが大きな目的です。

また、それと同時に、2020年に開催される東京オリンピックに備えるためでもあります。

オリンピックになると、世界中から多くの人が日本を訪れます。

このとき、キャッシュレス化が進んでいない状況であれば、技術的に遅れている印象を与えかねません。

また、キャッシュレス化の普及率が諸外国より大幅に低ければ、外国人に不便を強いることとなります。

決済の様々な場面での混乱、さらには換金所などでの混雑なども招き、オリンピックによる経済効果を減少させることにもなりかねません。

このため、政府はキャッシュレス化の推進を目指しているのです。

 

キャッシュレス化の現状

現在、日本で広く普及しているのは、Suicaをはじめとする交通系のカード決済でしょう。

しかし、クレジットカード、電子マネー、デビットカードなどによる決済は、まだまだ十分に普及しているとは言い切れません。

これは、日本と諸外国のキャッシュレス決済率を比較してみると、よくわかります。

野村総合研究所の2016年のデータによれば、諸外国のキャッシュレス比率は以下のようになっています。

 

1位:韓国(96.4%)

2位:イギリス(68.7%)

3位:オーストラリア(59.1%)

4位:シンガポール(58.8%)

5位:カナダ(56.4%)

6位:スウェーデン(51.5%)

7位:アメリカ(46.0%)

8位:フランス(40.0%)

9位:インド(35.1%)

10位:日本(19.8%)

11位:ドイツ(15.6%)

 

※中国は詳細なデータがないものの、2015年時点で約60%とするデータ有り。

 

韓国のように、普及率が100%に迫る国は例外としても、日本はインドにも大きく遅れをとっており、先進国の中でも特にキャッシュレス化が遅れていることが分かります。

先進国の中で、同じく遅れをとっているのはドイツです。

ドイツと日本は民族性が似ており、質実剛健の風があると言われます。

この民族性から、実態のある確実な「現金」を重視する傾向が強く、あまりキャッシュレスというものを好まないとも言われます。

もっとも、日本では仮想通貨の取引も盛んですし、必ずしもキャッシュレスを忌避するものではないでしょう。

実際、PayPayやLINE Payといった新しい電子マネーも、比較的浸透しつつあるように思います。

特に、これら二つの電子マネーは、全てのコンビニで利用可能となっています。

 

セブン・ペイの失敗

ただし、長らくキャッシュレス化が進まなかった日本において、急速にキャッシュレス化の推進を目指したことで、問題も出てきています。

その最たる例が、セブン・ペイの失敗です。

様々な企業がキャッシュレスサービスを開始する中、セブンイレブンでも7月1日、「セブン・ペイ」というスマホ決済サービスを開始しました。

しかし、サービス開始直後に不正アクセス被害が続出し、3日にはサービスの停止に至っています。

現時点で、900人以上のIDが乗っ取りに遭い、被害総額は5500万円となっています。

 

セブン・ペイの甘さ

セブン・ペイの公式サイトを見てみると、

 

  • 最短2タップで簡単登録
  • セブンイレブンで手軽に使える
  • nanacoポイントが貯まる

 

といった、利便性を押し出す内容となっています。

そもそも、コンビニという業態の語源である「Convenient」からして「便利」という意味であり、キャッシュレス決済も利便性を追求するものですから、このようなスタンスには何ら問題はないでしょう。

しかし、利便性を求めるあまり、システムがあまりにも脆弱であれば、大きな問題です。

セブン・ペイの小林社長は、

 

事前に脆弱性は見つかっていなかった。原因は調査中である

と発表しているのですが、セキュリティ性に問題があったことは明らかです。

なにしろセブン・ペイには、今や仮想通貨業界では常識となっているSMS認証や二段階認証などの機能が備わっておらず、さらにメールアドレス・電話番号・生年月日の情報だけでパスワードをリセットできる仕組みになっていたのです。

確かに、これならば何度も認証せずにラクに利用できます。

登録もパスワード設定も簡単です。

しかし、その結果としてこのような事件が起きてしまったのです。

今回の不正利用では中国人が逮捕されており、警視庁は国際的な犯罪組織が関与しているとして捜査しています。

セキュリティ性の向上に苦心している仮想通貨取引所でさえ、ハッキング被害に遭うことがあるのです。

セブン・ペイのようなシステムでは、国際的な犯罪組織の手にかかれば実に簡単に不正利用できるものであり、不正利用されないほうがおかしいというレベルです。

BBCニュースでは、この事件を「あっさり不正アクセス許す」と題する記事にまとめていますが、まさに「あっさり」とは言い得て妙です。

 

仮想通貨業界への影響は?

日本のキャッシュレス化の遅れ、国をあげてのキャッシュレス化の推進、そして今回のセブン・ペイの問題によって、仮想通貨業界にはどのような影響があるのでしょうか。

まず、キャッシュレス決済が普及すれば、現金を伴わない決済に抵抗がなくなる人が増えるため、仮想通貨業界にも良い影響が表れるでしょう。

しかし、これは直接的な影響ではなく、間接的な影響です。

したがって、政府がキャッシュレス化を推進していること、またセブン・ペイの問題を受けての対応などによって、仮想通貨業界に直接的に大きな影響があるとは考えにくいです。

それでも、間接的には様々な形で影響してくると思います。

今回のセブン・ペイの問題に関して言えば、仮想通貨業界が見直される一つの契機になる可能性があります。

日本の仮想通貨業界でも、これまで何度か、セキュリティ性に端を発する社会問題を引き起こしてきました。

そのたびに、仮想通貨業界は金融庁からの強い規制を受け、問題のある業者は淘汰されつつ、健全な業者だけが生き残り、セキュリティ性も随分と改善され、業界の健全化は大きく進みました。

日本の仮想通貨業界は、多くの問題を一つずつ解消してきたと言えるでしょうが、それより遅れて出てきたキャッシュレスサービスは同じ轍を踏むように、様々な問題に直面している印象があります。

これは、政府が2018年から急速にキャッシュレス化の促進を始めたこと、また仮想通貨に比べて参入障壁が低いこと、これによって多くの企業がキャッシュレスサービスを展開し、シェアの獲得競争が激化したことが原因でしょう。

もう少し緩やかにキャッシュレス化を進めればよかったのでしょうが、あまりにも急速に競争が展開していったため、常識的には考えられないようなセキュリティ性の甘さでサービスが開始され、社会問題を引き起こす会社も出てきたのです。

もちろん、2018年初頭のCoincheck事件でも、仮想通貨業界としては考えられないセキュリティの甘さであるとして随分叩かれていましたが、セブン・ペイの甘さはそれをはるかに上回るものです。

技術やサービスなどというものは、黎明期の未熟な段階では、様々な問題が起こるものです。

また、これによって技術やサービスが成長していくのも事実です。

したがって、セブン・ペイの問題によって、闇雲に進められようとしていたキャッシュレス化に一旦調整が入ることで、キャッシュレス化がより健全な形で普及していけば、これが仮想通貨業界にも良い影響を与えることになるでしょう。

また、キャッシュレスサービスを展開する企業の姿勢が明らかになったことで、既に多くの問題を乗り越えてきた仮想通貨業界の信頼が、相対的に高まることにもつながるかもしれません。

このように、キャッシュレス化の流れは、促進される流れによっても、またセブン・ペイのような問題が起きる流れによっても、間接的に良い影響を受けるものと思います。

 

まとめ

セブン・ペイの問題は、その内容を見てみると呆れかえってしまうほどのものでした。

これにより、キャッシュレス決済への信用が揺らぎ、普及の妨げになることも考えられます。

しかし、これはセブン・ペイが大きな問題を抱えていただけで、キャッシュレス決済そのものはこれまでと変わらず推進されていくでしょう。

政府によって、何らかの規制が加えられる可能性もあり、結果的には健全化の良い材料となるはずです。

このような動きは、仮想通貨業界にも間接的に良い影響を与えるものですから、今後もキャッシュレス化の動きには注目していきましょう。

 

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