6月22日、金融庁が認可済みの仮想通貨交換業者6社に対して、業務改善命令が出されました。
その理由は、顧客の管理態勢や資産管理状況、反社会勢力との取引などが問題視されたためです。
業界全体の健全性に大きな疑いを投げかける今回の発表について、詳しく見ていきましょう。
仮想通貨交換業者に業務改善命令
6月19日、金融庁が発表したところによれば、bitflyerを始めとした、複数の国内の仮想通貨交換業者に対し、業務改善命令を出すとしていました。
この時の報道では、「5社以上に業務改善命令を出す」とのことで、正確な数は曖昧でした。
しかし、本日6月22日、財務局から正式な発表がなされ、
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- bitflyer
- QUOINE
- ビットポイントジャパン
- BTCボックス
- ビットバンク
- テックビューロ
の6社に対し、業務改善命令が出されることが分かりました。
なお、bitflyer、QUOINE、ビットポイントジャパン、BTCボックス、ビットバンクは関東財務局、テックビューロは近畿財務局からの発表となっています。
テックビューロは、3月8日の業務改善命令に続き、二度目の業務改善命令となりました。
これは非常に重大なニュースだと捉えるべきでしょう。
注目すべきは、今回の処分対象になっている6社は、全て仮想通貨交換業者として認可済みの業者であることです。
特にbitflyerは、世界の取引所の中でも安全性ランキングで1位に輝いた実績があり、クリーンなイメージを勝ち取っていました。
しかし今回、業務改善命令を受けたことで、驚いている人も多いかと思います。
筆者も、bitflyerに口座を開設しているため、驚いている次第です。
各取引所の問題点
今回の業務改善命令について、何が問題視されているのか、財務局が発表したところをまとめてみましょう。
[surfing_su_box_ex title=”bitflyer” style=”noise”]
- 経営陣は、コストを抑えることを優先して、内部監査を含めた内部管理態勢を整備していないこと
- 監査等委員会及び取締役会が牽制機能を発揮していないこと
- 登録審査等に関して当局等へ事実と異なる説明等を行っていたこと
- マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策、利用者財産の分別管理及び帳簿書類の管理、不正アクセスによる仮想通貨の不正流出の未然防止などの内部管理態勢において問題が認められたこと
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顧客財産の分別管理や帳簿管理に問題があるとされたことは、仮想通貨交換業者としては大きな痛手になることでしょう。
また、不正アクセスによる仮想通貨流出の防止策も不十分とのことは、ハッキング被害に遭う可能性があると言われたようなものです。
なお、bitflyerにおける「登録審査等に関して当局等へ事実と異なる説明等を行っていたこと」とは、記者会見の内容によると、反社会勢力のチェック体制についてのようです。
今回の業務改善命令では、各社に反社会勢力との取引があったことが示唆されていますが、具体的な件数などは非公表です。
しかし、bitflyerのみ、反社会勢力のチェック体制において、金融庁への説明が異なっていたことが発表されています。
ただし、意図的に異なる説明をしたわけではなく、十分な確認をせずに金融庁への説明を行なっていたようです。
[surfing_su_box_ex title=”QUOINE” style=”noise”]
- 仮想通貨交換業の主要な業務を委託しているグループ子会社に対し、委託業務の適正かつ確実な遂行を確保するための措置を講じていないこと
- 法定帳簿が長期間に亘り未作成の状態であること等を取締役会等へ報告していないこと
- マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策、反社会的勢力等との取引の未然防止、利用者財産の分別管理及び帳簿書類の管理などの内部管理態勢においても問題が認められたこと
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QUOINEも、利用者の財産や帳簿の管理が不十分であったことが問題視されています。
また、QUOINEも、反社会勢力との取引未然防止への取り組みが問題視されていることから、反社会勢力と取引があった可能性が疑われます。
[surfing_su_box_ex title=”ビットポイントジャパン” style=”noise”]
- 業容拡大を優先・重視する一方で、利用者の預託した金銭が帳簿上の残高を継続的に下回る状況が予想されると報告されるも、取締役会で解消策を検討していないこと
- マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策、利用者保護措置、システムリスクなどの内部管理態勢においても問題が認められたこと
[/surfing_su_box_ex]
利用者の資産管理状況に問題があり、解決策もないならば、利用者は安心して資産を預け、取引をすることができません。
これも、利用者保護の観点から大きな問題です。
[surfing_su_box_ex title=”BTCボックス” style=”noise”]
- 業容拡大を優先・重視する一方で、代表取締役に権限が集中し、取締役会及び取締役等がそれぞれの権能、職責を十分に果たしていないこと
- システムリスク、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策、反社会的勢力との取引の未然防止などの内部管理態勢においても問題が認められたこと
[/surfing_su_box_ex]
代表取締役に権限が集中している状態では、社内管理態勢がうまく構築されることはありません。
また、反社会勢力との取引未然防止への取り組みが問題視されているため、BTCボックスも発表における「反社会勢力の取引を確認している」うちの一社である可能性があります。
[surfing_su_box_ex title=”ビットバンク” style=”noise”]
- 業容拡大を優先・重視する一方で、社内規程は、業務の実態とかい離した内容のものが大宗を占め、実際の管理で活用されていないこと
- 利用者の預託した金銭が帳簿上の残高を頻繁に下回る事態が発生するなど、利用者財産の分別管理のほか、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策、外部委託先管理などの内部管理態勢においても問題が認められたこと
[/surfing_su_box_ex]
ビットバンクでは、社内規程が業務の実態と乖離している、つまり実際の業務において社内規程の多くが守られていないことが問題視されています。
社内規程について触れられているのはビットバンク一社です。
また、ビットバンクでも、利用者の資金管理状況に問題があるとされていることも見逃せません。
[surfing_su_box_ex title=”テックビューロ” style=”noise”]
- システム障害や多発する苦情等、テックビューロが直面する経営課題に対し、組織的かつ計画的な対応が行われていないこと
- 法令遵守、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策、利用者財産の分別管理などの内部管理態勢においても問題が認められたこと
[/surfing_su_box_ex]
システム障害や苦情が多く発生しており、十分に対応できていないため、利用者保護の観点から問題ありとされているようです。
また、法令を守っていないということも、信用が求められる仮想通貨交換業者としてはふさわしくないことと言えます。
このほか、利用者の財産管理にも問題があったようです。
上記のように、利用者の資産管理状況に問題があったり、反社会勢力との取引が問題視されていることが分かります。
仮想通貨交換業者として厳しく守られるべき「利用者保護」と「反社会勢力との取引防止」ということにおいて問題があるのですから、名だたる業者も想像以上にボロボロだったという印象を受けます。
また、「一部の業者」という言い方で濁されていますが、一部の業者は反社会勢力を確認するデータベースがないという状況とのことです。
つまり、反社会勢力との取引を未然に防止する術を持っていないということです。
これは、衝撃的な事実であると言ってよいでしょう。
金融庁のこれまでのやり方を見ていくと、匿名通貨を一切認めない姿勢からも分かる通り、反社会勢力が仮想通貨を悪用することを防ぐことに腐心してきたことが分かります。
しかし、肝心の取引所が反社会勢力との取引を防ぐ術を持っていなかったのです。
このことから、金融庁の方針の真逆を行く業者が認可を受けていたという実態が明らかになったとも言えます。
これまで、「金融庁の認可を受けている業者ならば大丈夫、それ以外は危ないかもしれない」といった風潮がありました。
しかし、今回の報道から、決してそうとばかりも言えないことが分かります。
bitflyerの最新の対応
この6社のうち、現時点ではbitflyerが最も早く対応を打ち出しています。
それは、新規顧客の受け入れを停止し、本人確認と経営体制の改善を急ぐというものです。
具体的には、以下のような発表がなされています。
「当社におきまして、一定のお客様に対して実施が義務付けられている本人確認プロセスに関し、運用の不備が認められました。
当社では、このような事態が発生した原因調査を行い、速やかに適正な管理体制を構築するための改善プランとして、既存のお客様に対する本人確認状況の再点検を行うことを決定いたしました。」
業界最大手であり、健全性が極めて高いという印象のあったbitflyerでも、本人確認プロセスに問題があったと認めていることが分かります。
日本の仮想通貨交換業者も、まだ本人確認などといった、これまで何度も問題視されてきたことで足踏みしている状況が浮き彫りとなりました。
4月末には、認可済みの仮想通貨交換業者が集まって自主規制団体が発足していますが、規制団体の副会長はbitflyerの代表取締役である加納裕三氏が就任していました。
この規制団体は、仮想通貨業界が抱える問題の解決と、業界の健全な発展を目指すとしていましたが、今回、規制団体を構成している16社中の6社が処分を受けることとなりました。
仮想通貨業界の問題の解決と健全な発展を目指すはずが、その目的に逆行する結果となっています。
なお、bitflyerでは、取引や入出金の停止などは行われないようなので、その意味では既存の顧客に大きな影響はないようです。
まとめ
今回の報道は、業界全体の健全性を疑われても仕方がないような、大きなニュースであったと思います。
金融庁から認可を受けた業者ならば安全という認識が広まっていた昨今、今回の報道は予想だにしなかったものでした。
どの業者を選べば安全かということも、利用者にとっては良くわからない状況になっています。
しかしこれは、あくまでも仮想通貨交換業者における問題であり、仮想通貨やブロックチェーン技術そのものには何ら問題なく、これまでと変わらず革新的な技術に位置付けられます。
その点は勘違いしないようにしたいものです。
これから仮想通貨投資を始めるにあたって、口座の開設先を探している人もいると思いますが、業者選びにはこれまで以上に慎重になる必要があるでしょう。