ビットコインをはじめとする、仮想通貨ブームです。
なぜ、人々がビットコインに価値を見いだしているのでしょうか。
ビットコインに価値がある理由を説明します。
はじめに
ビットコインとは仮想通貨のひとつであり、その名の通りバーチャルな通貨であり、実体がありません。
中身を見てみれば、ただの暗号でしかないのです。
しかし、そのただの暗号が、今や(2017年8月)1BTC=30万円台という高値で取引されています。
いったいこれはどういうわけなのでしょうか。
それを知るためには、その媒体に内在する「価値」に目を向けるのが分かりやすいでしょう。
本稿では、ビットコインが価値を持つ理由を紐解いていきます。
ゴールドを通貨の基準とした金本位制
かつて、金本位制というものが布かれており、価値の基準がゴールドに置かれた時代がありました。
当時、紙幣はあくまでもゴールドと交換できるものという位置づけでした。
ゴールドは重量があるため持ち歩くには大変で、また少量でも大きな価値があったため、盗まれてしまう可能性もありました。
そこで、普段は国の金庫に預けて置いて、その代わりに紙幣(つまりゴールドの交換券)を使っていました。
しかし、それでは困ったことが起きてしまいます。
というのも、国庫に預けられているゴールドを根拠として紙幣を発行しているということは、国庫に入っているゴールドの価値以上の紙幣を発行できないということでもあるからです。
国の経済力が、その国の保有しているゴールドの量に比例してしまうことになり、やがてゴールドの奪い合いのために戦争が起きてしまうことになります。
実際、金本位制の19世紀末、南アフリカではボーア戦争という戦争が起きています。
当時から、南アフリカはゴールドをはじめとした希少金属の産出地なのですが、その金鉱をめぐって戦争が起こったのでした。
戦争に勝利した大英帝国(イギリス)は、莫大なゴールドを獲得することになります。
帝国主義の時代には、イギリスの国力は世界一であり、アメリカさえも遠く及ばなかったのですが、その国力の背景にはゴールドの存在があったのです。
ところが、世界的に産業革命が浸透すると、各国の経済力がそれぞれ目覚ましく伸びていくことになりました。
そうなると、実際には保有しているゴールド以上の経済力を持つことになるため、金本位制の「ゴールドの量=経済力」という関係にひずみが生じてきました。
これが、金本位制の限界だったのです。
現在に至るまで、人類が採掘したゴールドの総量は18万トンです。
50mプールに4杯弱という量であり、だからこそ希少価値が高いわけです。
しかし、それだけの量しかゴールドがないのですから、各国が経済力に見合うゴールドを保有することが難しくなりました。
そこで、金本位制は見直されることとなり、各国の中央政府が、各国の経済力に応じて自由に通貨を発行する「管理通貨制度」に移行していったのでした。
つまり、現在の円やドルといった通貨は、ゴールドに裏付けられて価値を保っているのではなく、円やドルそのものに価値があると信用されているからこそ、価値が生じているのです。
お金の価値の本質は信用にある
では、円やドルといった通貨に信用があり、それによって価値が生じているとは、どういう意味なのでしょうか。
この点について少し詳しく見ていきましょう。
そもそも、私たちが普段使っている円というお金、例えば1万円札というお金がありますが、言ってみれば1万円札はただの紙です。
原価にすれば20円くらいの紙なのです。
銀行に預けている1万円にいたっては、銀行のサーバーで管理される電子データに過ぎませんから、原価はゼロとなります。
つまり、私たちは原価20円の紙切れに1万円の価値があると信じているのです。
では、どうしてそのような信用が生まれているのでしょうか。
それは、その1万円を発行している国を信頼しているからです。
もし、日本という国の経済が破綻してしまえば、1万円はただの紙切れになってしまうわけですが、私たちは日本が将来的に破たんしてしまう可能性などほとんど信じず、円を保有しているわけです。
通貨の価値が、国の安全性に依存しているということは、FX取引などをかじったことがある人ならば良くわかると思います。
例えば、戦争が起きた場合などには、その国の通貨価値は下がります。
これは、戦争によってその国の経済その他が混乱し、最悪の場合には経済が破綻してしまう懸念があるからです。
他国との戦争だけではなく、内戦によって混乱に陥り、無政府状態になったりした国でも、信用は完全に失われて通貨の価値は暴落することになります。
お金の価値が暴落するからこそ、内戦前には1斤200円だったパンが、その1ヶ月後に内戦勃発すると1斤2000円に高騰したりするのです。
それから内戦が激化してさらに1ヶ月が経過すると、パンは1斤1万円とか、もっと高い価格で取引されるようになります。
そうなると、もうお金がいくらあっても足りない状況になります。
この現象を、ハイパーインフレと言います。
このように、通貨の価値は国の信頼によって左右されます。
ただの紙切れや金属に、刻印された額面の価値があると信じることができるのは、その国の経済が安定しているからなのです。
ビットコインの価値の源泉とは?
しかし、ビットコインは特定の国が発行するものではありません。
ならば、信用の源泉はどこにあるのでしょうか。
ビットコインの信用の源泉は、大きく分けて三つあります。
それは、
誰も偽造できないこと
特定の国や企業に左右されないこと
発行量に上限があること
です。
これらについて詳しく見ていきましょう。
誰も偽造できない
ビットコインは、技術的に考えて、誰かが勝手に偽造や改変することができません。
特定の国や組織が関わっていたならば、その通貨を密かに偽造したり、改悪したりすることはできますが、ビットコインには特定の国や組織が関わっておらず、過去の取引記録を複数の参加者が確認して認証する仕組みになっています。
だからこそ、誰も偽造したり、過去の取引履歴を改変したりすることはできません。
逆に言うならば、もしビットコインのシステムに攻撃する技術が開発され、ビットコインの過去の取引記録を書き換えられるようになったりすれば、ビットコインは信用を失って、暴落していくでしょう。
実際、ビットコイン以外の仮想通貨ではそのような問題が起きたことがあります。
特定の国や企業に左右されないこと
繰り返しになりますが、ビットコインは特定の国や企業によって発行されているものではありません。
これが特定の国や企業によって発行されているものならば、常に国や企業の思惑に左右され、意図的に量を増減させることもできるのですから、信用と価値は決して一定しないでしょう。
しかし、ビットコインはシステムによって運営されています。
マイナーと呼ばれる存在がブロックチェーンを維持し、10分毎にビットコインの取引履歴を承認していきます。
このとき、真っ先に承認に成功したマイナーには、新規発行のビットコインが与えられます。
このようなシステムによって発行されるビットコインは、国や企業といった特定の組織の思惑によって、流通量が急激に増えたり、減ったりすることはなく、一定のスピードで発行され続けています。
つまり、そもそもビットコインには流通量をコントロールするという発想がありませんから、信用と価値が一定するのです。
発行量に上限があること
最後に、ビットコインの発行量は、あらかじめ上限が決められています。
ビットコインはデータに過ぎないのですから、発行しようと思えば無限に発行することができます。
しかし、ビットコインの発行総量はあらかじめ決まっており、2141年をめどに2100万枚を発行し、それが上限になる計画で発行が進められています。
発行量に上限があるということは、ゴールドに似ているでしょう。
希少な金属であるということが、ゴールドの価値の源泉であるのと同様に、ビットコインも発行量の上限を明確に決めることによって、希少価値がもたらされているのです。
まとめ:ビットコイン≒ゴールドのイメージ
ここまで読めばわかると思いますが、ビットコインの存在は通貨と言うよりも、むしろゴールドに似ていると言ってよいでしょう。
有限だからこそ価値が高く、時間が経過し上限に近づくほど希少価値が高まっていくのです。
ビットコインの投資が過熱している理由もここにあります。つまり、ビットコインには発行量に上限があるため、そのうち価値が高まっていくことを見越して、今のうちにビットコインを買っておこうとする人が非常に増えているのです。