ビットコイン等、仮想通貨についての税金の扱いについて、今まで不透明な部分がありましたが、国税庁から新たな見解が出ました。
利益に対して、FX等と同じように「雑所得」の扱いとなります。
はじめに
9月6日、ビットコインに伴う課税関係に対し、国税庁から新たな見解が出されました。
これまでは、ビットコイン取引によって得た利益は、譲渡所得になるのか又は雑所得になるのか、所得の区分が明確でなかったのですが、雑所得になることが打ち出されたのです。
これは一体どういうことであるのか本稿によって見ていくとともに、確定申告についての考え方なども解説していきます。
ビットコイン投資で得た利益は「総合課税」で計算
ビットコイン投資で利益を得た場合、課税方法は「総合課税」となります。
総合課税とは、1年間で得たあらゆる所得、例えばサラリーマンとしての給与所得や不動産投資による不動産所得、ビットコイン投資による雑所得などを全て合算し、総額に応じて課税していく計算方法です。
全体の所得金額が多くなればなるほど税率が高くなっていく、いわゆる累進課税とよばれる仕組みになっています。
ビットコインにも総合課税が適用され、年間のその他の所得と合算する必要があります。
したがって、ビットコイン投資を行なう人は、それによって得た利益をきちんと把握しておく必要があります。
これと併せて知っておきたいのは、ビットコインを保有しており、それを売らずに日本円などの法定通貨に換金していないときには課税対象とはならないということです。
例えば50万円で購入したビットコインが60万円に上昇したとき、10万円の含み益が出ているわけですが、これを売って60万円分の日本円を得た時にその確定した利益10万円が課税対象になるということです。
もちろん、日本円ではなくドルやユーロといった外貨に換えた場合でも、課税対象になります。
持ち続けているだけでは課税されないということを覚えておいてください。
株式投資でも、投資している銘柄の価格が上昇し、含み益が出ているだけでは課税されず、売ったときに初めて課税されます。
これと同じと考えると、分かりやすいと思います。
ビットコイン投資の利益は「雑所得」
さて、ビットコイン取引によって得た利益の所得区分が譲渡所得であるか、雑所得であるのか、つい最近まで明確になっておらず、どこで調べても「税理士や税務署によって見解が違う」と言われているのが常でした。
しかし、9月6日、国税庁から明確な方針が出され、ビットコイン取引によって得た利益は雑所得になることが発表されました。
国税庁からの発表は以下の通りです。
【ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係】
ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。
このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。
このとおり、ビットコインの所得区分は、様々な所得がある中でどこにもあてはまらない、「雑所得」になることが分かります。
雑所得は、意外に私たちの生活に密接な所得で、ビットコインによる利益以外にも、
- パチスロや競馬などで得た利益
- 私的に貸したお金の利子
- 公的年金
- FXで得た利益
- アフィリエイト収入
- ネットオークションで得た利益
などが雑所得に当ります。
ちなみに、ビットコイン取引で得た利益は雑所得になるものの、マイニングで得た利益は雑所得になるのか又は事業所得になるのか、こちらはまだはっきりしないようですが、事業(本業)としてマイニングを行っているのであれば、事業所得となる可能性は十分にあるでしょう。
ビットコイン投資は累進課税・譲渡損失の繰越控除の適用なし
ビットコイン取引による利益が雑所得になるという見解が打ち出されたことで、税制をよく知る投資家はがっかりしたと思います。
なぜならば、雑所得には譲渡所得にあるようなうまみが一切ないからです。
具体的な問題は、以下の通りです。
雑所得は利益が大きければ大きいほど、高い税率が適用されます。
最高税率は、所得税45%と住民税10%を合わせた55%です。
雑所得の計算は収入から必要経費を差し引いて行うものであり、仮に雑所得がマイナスであったとしてもゼロとして計算されるため、その他の所得との損益通算や損失の繰り越しはできません。
これが株式投資であったならば雑所得ではなく譲渡所得ですから、損失が出た場合には譲渡損失の繰越控除を適用することで、3年間にわたり損失を繰り越して利益と相殺していくことが可能となります。
また、株式投資による譲渡所得は申告分離課税となるため、累進課税の適用はなく、税率は20.315%で一定ですから、投資家にとってはメリットが大きいといえるでしょう。
ビットコイン投資は、あくまでも雑所得ですからこのような株式投資で適用されるメリットは一切受けることができません。
これに加えて、株式投資では配当金があるため、損失を配当で補填することが可能ですが、ビットコインにはそれもありません。
また、株式投資は、NISA(少額投資非課税制度)などの制度を利用することによって、値上がり益や配当金を非課税とすることができますが、ビットコインにはこのような優遇制度もありません。
したがって、税制だけでみた場合、譲渡所得と雑所得では非常に大きな違いがあり、雑所得に区分されることによって、ビットコイン投資は税務上かなり不利になることが分かります。
ハイリターンが見込める投資であるため、このデメリットを補える可能性も十分にあるわけですが、大きな利益を得れば、それだけ納付税額も大きくなるというジレンマがあります。
ちなみに、今回の国税庁の発表では、ビットコインに関する見解について発表しており、アルトコインに関する見解は出されていません。
しかし、ビットコインもアルトコインも、投資としては同じ性質のものなので、アルトコインの税制もビットコインに準ずると考えてよいと思います。
なんで雑所得になったのか!?
では、なぜ同じ投資であるのに、株式投資とビットコイン投資では、税制に大きな隔たりがあるのでしょうか。
株式投資と同じように譲渡所得にすればいいのに、と思う人も多いかと思います。
その疑問を解くためには、株式と仮想通貨の性質の違いに着目する必要があります。
株式は、投資対象になるものではありますが、「企業の事業を支援するためである」という性質を持っています。
企業が事業に失敗すれば、当然損失を被ってしまうわけですが、そのリスクを背負って事業を支援しています。
だからこそ、株主は配当という形で利益の分配を受ける権利を持っているとされます。
また、株主という支援者がいることによって、企業は発展していくことができます。
企業が発展すれば、そこから雇用も生まれ、税収も多くなり、国が豊かになっていきます。
だからこそ、国は株主に対してできるだけ優遇し、株式投資を促しているのです。
一方、ビットコインをはじめとした仮想通貨はどうでしょうか。
ビットコインは決済手段という側面を持っていますが、それによって国が豊かになるものではありません。
いくら仮想通貨投資が盛り上がったとしても、それに伴って一部の企業や個人が儲かるだけです。
ブロックチェーンが日本経済を成長させることはあっても、ビットコインが国の成長に大きく貢献するとは考えにくいといえます。
むしろ、投資ではなく投機としての側面が強い仮想通貨投資は、貧富の格差が広がることになったり、一攫千金を狙って破滅する人が増えたりと、国にとって好ましくない結果をもたらしかねないものです。
だからこそ、税制面で優遇する必要は全くありませんし、むしろ税務的に厳しくすることこそ、国側にメリットがあるのではないでしょうか。
仮想通貨はFXの税制に足並みを揃える?
今回の発表は、あくまでも見解の発表です。
譲渡所得になるか、雑所得になるか、曖昧であったところを、国税庁が一定の方向性を示したということです。
国会の承認を得ているわけではありませんから、今後、変わってくる可能性もゼロではありません。
しかし、上記のように、国と投資家で利害が一致している株式投資は譲渡所得、国と投資家で利害が一致していないビットコイン投資は雑所得という見解なのですから、それが覆る可能性は低いといえます。
また、「あくまで見解であって、決定ではないから・・・」と考えて、見解に逆らう節税を試みたとしても、結局は無駄に終わる可能性が高いでしょう。
わかりやすく考えるならば、ビットコインはFXに似ているといえます。
FXで買うものは外貨であり、決済手段としての側面があります。
値動きが激しいことや配当がないことも共通点です。
あくまでも決済手段であり、必ずしも国との利害が一致するわけではなく、値動きが激しいゆえに投機としての側面も強いです。
こう考えると、FXとビットコインは似ており、どちらも雑所得であることに納得がいきます。
ただし、FXの所得の区分は雑所得ですが、総合課税ではなく申告分離課税が適用され税率は一律20.315%です。
またFX取引による損失を3年間にわたり繰り越して利益から控除することができると実は所得の区分は雑所得ですが、株式投資と同じように整備されています。
つまり、FXと同様の性質の投資商品であることを鑑みると、将来的には仮想通貨投資においても、申告分離課税&損失の繰越控除が適用され、FX投資と足並みを揃える可能性は十分にあるのではないでしょうか。
ビットコインと確定申告
“#eee” radius=”20″]ビットコインによる利益が雑所得になることを踏まえて、確定申告を考えていきましょう。
ビットコインで利益を得た場合、原則的に確定申告が必要となります。
「原則的に」とは、給与所得者であれば、給与所得以外の所得の金額の合計が20万円以下であれば、確定申告は不要となり、この場合は例外になるという意味合いです。
確定申告に馴染みのない人ならば、確定申告しなくてもバレないだろうなんて、安易に考えてしまうかもしれません。
しかし、皆さんもご存知の通り、ビットコインはブロックチェーン技術を根底としており、取引記録は全て記録されています。
そして、オープンソースですから、記録は誰でも確認が可能です。
したがって、調べようと思えば簡単に調べられるため、税金はしっかりと納めるようにしましょう。
筆者は以前、「ビットコインは売却して利益を得た時点で課税対象となるのだから、含み益が出た状態のビットコインで買い物をすれば節税になる」、と書いたことがあります。
しかし今回の国税庁の見解により買い物した時点で利益が出ていれば、それは課税対象になってしまいます。
たしかに、含み益が出ている状態では課税されないのですが、それで買い物をした場合、売却した時に得られる現金的価値によって消費活動をしたということになるため、買い物に使った分の利益分が課税対象になるということです。
したがって、これも確定申告の対象となります。
また、含み益が出ているビットコインでアルトコインを購入した場合にも、売却した時に得られる現金的価値によってアルトコインを購入しているわけですから、やはり利益分は確定申告の対象になると思います。
しかし、これは現実的に困難です。
ビットコイン価格は刻刻と変化しているのに、買い物をした時点でのビットコイン価格がいくらで、含み益がいくらなのか、買い物に使った分の利益分がいくらであり、それによって課税額がいくらなのか・・・といった計算をすることは非常に煩雑で、現実的に不可能です。
したがって、確定申告は原則的にすべきではあるものの、実際にはどうやって計算するのか確定申告時期になってみないと不明です。
ビットコインの上昇分によって、個人で飲食をした場合にも、厳密に言えば課税対象となるわけですが、国税庁がそこまで突っ込んでくる可能性は低いように思います。
この「厳密にはそうすべきだけれども、そうできない場合には仕方ない」というケースはしばしばみられます。
例えば、ポイントなども厳密に言えば儲けです。
商品を1万円分買ったら福引ができて、それによって1000ポイント当ったなどと言う場合には、これも雑所得になります。
しかし、これを確定申告する人はいません。
税務署も責めません。
細かなことまで全て確定申告するのは、現実的に不可能だからです。
しかし、ビットコイン→イーサリアム→ビットコイン→リップル→ビットコイン・・・と交換していくうちに、最終的に大きな利益を得た場合などには、当然申告しなければなりません。
結局、「厳密にはそうすべきだけれども、そうできない場合には仕方ない」ということであって、常識的にみて悪質な税金逃れだと判断されてしまえば、脱税として罪に問われることにもなりかねません。
まとめ
ビットコインを取り巻く税制は整備されつつあります。
当サイトでも税制について解説していくことがありますが、最新の記事を参考にしてください。
ビットコインが雑所得に区分されたことで、株式投資のような優遇制度は受けられないことが分かりました。
ハイリターンであり、時代の流れにもマッチしているビットコイン投資は、大きく儲けられる可能性が高いとされています。
しかし、儲けが大きければ課税額も大きくなるため、実際には思っていたほど儲けられなかった、と感じる人も出てくるかもしれません。
筆者個人としては、FX投資と足並みを揃える税制面の整備を心待ちにするばかりです。
国税庁のビットコイン取引による利益の見解が発表されたとしても、依然として不明な箇所は残りますので、確定申告する際には、所轄税務署に事前照会した方が良いでしょう。