たくさんの仮想通貨が雨後の竹の子のようにどんどん現れています。
株式が公開されることをIPOといいますが、同様のことを仮想通貨ではICOといいます。
ICOを詳しく見ていきましょう。
はじめに
仮想通貨によって行う資金調達の事を「ICO」といいます。
これは、株式市場において、未上場企業が上場するにあたり、新規公開株を投資家に広く売り、資金調達を行なうのに似ています。
つまり、資金調達方法を新規公開株によって行うのではなく、仮想通貨によって行うのです。
最近、ICOが非常に盛り上がっています。
本稿では、ICOの概要と、最近の盛り上がりの様子を解説していきます。
ICOバブルと言われるほど市場規模は急拡大
株式会社が、未上場企業から上場企業になる、つまり東証一部や二部、ジャスダックやマザーズに上場するとき、株式を証券取引所に公開し、投資家たちに広く株式を売ることで、資金調達を行ないます。
このことを、IPO(Initial Public Offering)、新規公開株と言います。
新聞でもよくみられるキーワードで、最近の有名どころではUUUMやJR九州などが上場しました。
仮想通貨業界でも似たことが行われ、資金調達を株式ではなく仮想通貨で行う「ICO(Initial Coin Offering)」という制度があります。
株式によって行うIPOとは異なり、ブロックチェーンを用いた仮想通貨によって資金調達を行なうため、資金調達に必要となるコストが10分の1に抑えられるというメリットがあります。
ICOの流れは、以下の通りです。
1、資金調達をしたいと考える個人や企業が、事業やサービスの目論見書(ホワイトペーパー)をネット上で公開する。
2、プレセールが行われ、その事業やサービスに将来性があると判断した投資家は、独自の仮想通貨を購入する。この時に購入する仮想通貨が、新規公開株にあたる。
3、プレセールが終わると、取引所に仮想通貨が上場される。上場後、さらに仮想通貨が注目されれば時価総額が上がり、注目されなければ時価総額が下がる。
ちなみに、現在仮想通貨に於いて、時価総額第2位とされているイーサリアムも、2014年9月2日にICOによって資金調達をしています。
最近では、ICOによる資金調達は、ほとんどがアメリカのベンチャー企業によって行われています。
調達総額は、2016年3月には1000万ドル、2017年4月には8000万ドル、2017年5月には2.3億ドル、2017年6月には5.6億ドルと、加速度的に増加しています。
これは、従来のベンチャーキャピタルによる資金調達よりもはるかに多く、ICOが資金調達のために非常に有効な手段とされていることが分かります。
このことを、「ICOバブル」などと呼ぶこともあります。
ICOの資金調達額をざっくり確認
ICOによって一体どれくらいの資金調達がなされているかということは、これまでの資金調達額をランキング形式で見るのが最もわかりやすいでしょう。
少し古いですが、2015年8月22日現在における、資金調達額ランキングは以下の通りです。
第1位 | Trezos | 2.3億ドル |
第2位 | Bancor | 1.5億ドル |
第3位 | Status | 9000万ドル |
第4位 | TenX | 6400万ドル |
第5位 | MibileGo | 5300万ドル |
第6位 | Sonm | 4200万ドル |
第7位 | Aeternity | 3700万ドル |
第8位 | Basic Attention Token BAT | 3500万ドル |
第9位 | Civic | 3300万ドル |
第10位 | Polybius | 3100万ドル |
第11位 | Waves | 1600万ドル |
第12位 | Iconomi | 1000万ドル |
第13位 | Gole, | 850万ドル |
第14位 | SingularDTV | 750万ドル |
第15位 | Lisk | 570万ドル |
第16位 | Digix DAO | 550万ドル |
第17位 | FirstBlood | 550万ドル |
第18位 | Synereo | 470万ドル |
第19位 | Decent | 420万ドル |
第20位 | Antshares NEO | 360万ドル |
上記のほとんどがアメリカのベンチャー企業ですが、2017年8月、日本でもフィンテックベンチャーが立ちあげられました。
仮想通貨取引所であるZaifを運営しているテックビューロ株式会社によるICOソリューションであり、COMSAという名前です。
ニュースによると、COMSAによって行われる初のICOは、COMSAのビジネスで使用される仮想通貨CMSであり、2017年10月2日にプレセールが実施されます。
8月に発表して1ヶ月足らずで、なんと登録者数は8万人を突破しさらに注目を集めており、今後の動向が気になります。
日本でもICOバブルが巻き起こる可能性は十分にありますので、皆さんも要チェックです。
ICOは判断が困難で高リスク投資に値する
ICOでは、詐欺まがいのことが行われた事例も多く、投資したからと言って必ず儲けられるものでもないため、慎重に取り組む必要があります。
しかし、ICOで新規上場する仮想通貨に投資して、億万長者になった人もたくさん存在しています。
彼らは、仮想通貨による知識が豊富であり、これから新規上場する仮想通貨があれば、ホワイトペーパーを読み、技術的に信頼でき、需要もあるだろうと判断したならば投資し、その読みが当たった場合に大きく儲けています。
しかし、一般の投資家がICOに挑戦してみるべきかどうかというと、かなり危険だといってよいでしょう。
まず、ITエンジニアでない一般の投資家が、ホワイトペーパーを読んだ時に、それが果たして詐欺であるのか、信頼できるのか、信頼できても儲けられる見込みがあるのかといったことを、正しく判断することは非常に難しいのが実態です。
投資してみるのも悪いとは言いませんが、正確に判断できないままに投資するならば、詐欺に遭ってしまう可能性も十分にあるわけで、そのリスクは十分に認識しておく必要があるでしょう。
筆者個人としては、手を出さない方がよいだろうと考えています。
実際、筆者もITエンジニアリングに関する知識があまりなく、正確な判断が難しいため、手を出す気はありません。
上場後に動向を見極め、できるだけ値上がりの初動の段階で少しずつ投資する方が、危険は少ないと考えるからです。
ICOに便乗した詐欺の実態
では、ICOに便乗した詐欺の実態を見てみましょう。
まず前提として、仮想通貨を使った詐欺はこれまでにもありましたし、今後もしばらくなくならないだろうと思います。
仮想通貨に関する法律としては、2017年4月に施行された改正資金法がありますが、これは犯罪抑制というよりも利用者保護といった意味合いが強く、仮想通貨による犯罪を未然に防ぐための具体的な法整備は、まだまだ整っているとは言えない状況です。
特に、2017年は仮想通貨元年と言われ、多くの仮想通貨の価格が伸びています。
これは、ビットコインだけではなくアルトコインも含め、人々が仮想通貨への投資に積極的になっていることの現れでもあります。
言い換えれば、仮想通貨を使ってお金をだまし取るには、都合の良い環境であるとも言えます。
そして、仮想通貨に関する詐欺で最も多いのが、ICOに便乗した詐欺です。
アメリカでは、既にICOでは多数の実績があり、新規上場と共に数億円以上のお金を簡単に集められるケースが多数みられます。
だからこそ、「将来的に公開しようと思っているとして、未公開仮想通貨に投資させる」という形での詐欺が増えているのです。
仮想通貨詐欺と呼ばれるからに非常に複雑な仕組みを用いてコンピューターによってデジタルな方法でお金を奪っているように思えるかもしれません。
しかし実際には、かなりアナログな方法で詐欺が行われていることもあります。
よくあるのは、「仮想通貨投資の勉強会」などといった体で集会を開きます。
勉強会というくらいですから、十分に知識のある人は興味を持たず、参加者の多くは「仮想通貨に興味はあるものの、知識がない人」ばかりです。
その勉強会で、ブロックチェーンの仕組みを解説しながら安全性を強調し、ビットコインやイーサリアム、その他のアルトコインが高騰している現状を伝え、最後に詐欺話を持ち掛けます。
すなわち、
「仮想通貨投資は極めて安全で、高騰する可能性も非常に高く、投資対象としてはこの上なく優れているものです。
私どもも、近い将来に新規公開しようと思っている仮想通貨があります。
ICOしたら、きっと数百倍に値段が上がることでしょう」
などと持ち掛け、投資する人を募るのです。
勉強会の実態を見てみると大抵はこんなもので、勉強会の場で現金を回収することもあります。
ブロックチェーンを用い、スマホやパソコンから簡単にお金がやり取りできるのが仮想通貨の大きな特徴であるのに、集会場で現金を回収しているのですから、こんな荒唐無稽な話はないでしょう。
もちろん、100%詐欺だといって差し支えありません。
STATUSのプレセールで詐欺の被害発生
先日(2017年6月21日)、仮想通貨Statusのプレセールがありましたが、ここでも詐欺が行われました。
この詐欺は、勉強会を開くアナログな手法よりも巧妙でした。
この詐欺ではStatusのプレセールに合わせて詐欺サイトをオープンさせ、Statusの買い付けのための送金先として、詐欺サイトに口座を公開します。
しかし、そこに送金すれば、二度とお金が返ってくることはなく、もちろんStatusに投資できているわけでもありません。
ちなみに、この巧妙な詐欺サイトは、一晩で600万円もだまし取ったそうです。
まとめ
ICOに見られる通り、仮想通貨の台頭に伴い、資金調達の方法も多様化しています。
昨今のICOの盛り上がりは尋常ではなく、今後の動向も興味深いところです。
また、仮想通貨の最新の動向を知るにあたっても、どのようなICOが行われているのかに注目することによって、得られる情報も多いと思います。
やや複雑な面もありますが、皆さんもICOに目を向けてみてはいかがでしょうか。