日本仮想通貨交換業協会は、日本の仮想通貨交換業者16社が集まって発足し、仮想通貨業界の健全な発展のために、自主規制ルールを定めていく団体です。
今月24日、この協会から自主規制ルールが発表され、仮想通貨取引のレバレッジを4倍に制限していくことが報じられました。
仮想通貨取引のレバレッジが4倍に制限されることで、仮想通貨業界にはどのような影響がもたらされるのでしょうか。
日本仮想通貨交換業協会について
今年4月、金融庁から認可を受けている仮想通貨交換業者が中心となり、自主規制団体を発足させたことは記憶に新しいと思います。
この自主規制団体を、日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)と言います。
日本仮想通貨交換業協会は、仮想通貨業界の健全な発達を目的として、様々な自主規制ルールを定めていくことを打ち出していましたが、4月に発足以降、あまり目立った動きは見られませんでした。
日本仮想通貨交換業協会の公式サイトの更新履歴を見てみても、自主規制の発表はなされていません。
6月には、仮想通貨交換業協会に加盟する業者6社に対し、金融庁から業務改善命令が出されました。
このことにより、仮想通貨交換業協会の副会長を務めていたbitflyerの代表である加納裕三氏、およびビットバンクの代表である廣末紀之氏が協会の副会長を辞任しています。
発足後2ヶ月にして協会内に混乱が見られることから、協会のありかたに疑問を呈する声も一部に見られます。
しかし、現時点において、日本の仮想通貨業界の自主規制ルール策定を行う団体は日本仮想通貨交換業協会のみであり、この協会の動きは以前として注目を集めています。
仮想通貨のレバレッジについて
このような中で、日本仮想通貨交換業協会は24日、仮想通貨取引のレバレッジ上限を4倍に制限する自主規制ルールを発表しました。
現在、日本の仮想通貨取引所におけるレバレッジ取引は、Zaifの25倍が最大となっています。
日本最大の取引所であるbitflyerは15倍です。
株式の信用取引の最大レバレッジは3倍、FXの最大レバレッジは25倍に制限されており、仮想通貨における最大レバレッジの25倍も、それほど高い数値には見えません。
しかし、株式はもとよりFXと比較しても、仮想通貨はボラティリティが非常に大きいことから、株式と仮想通貨におけるレバレッジ3倍、FXと仮想通貨におけるレバレッジ25倍を比較すると、同じ倍率でも仮想通貨のリスクはかなり高くなります。
ただし、投資においてリスクとリターンは比例するのが一般的であり、リスクが高いということは期待できるリターンも高いということでもあります。
ボラティリティが大きく、リスクも高い仮想通貨取引においては、適切なタイミングで高いレバレッジをかけることによって、大きな利益を狙うことができます。
これが、仮想通貨取引の大きな魅力でもあります。
このように、仮想通貨取引の大きな魅力は、高いリスクにあると考えることもでき、この意味では仮想通貨取引におけるレバレッジがその魅力をもたらしているとも言えます。
したがって、レバレッジが4倍に規制されるということは、この魅力を大きく損なうことにもなるため、仮想通貨取引から顧客が離れることになるのではないか、という懸念もあります。
自主規制は吉と出るか、凶と出るか
しかしながら、現在の仮想通貨取引は投資というよりも投機です。
また、株式やFXなどの投資を経験したことがない人が、仮想通貨投資がにわかに盛り上がったことで、仮想通貨投資に手を出していることも問題と言えます。
先読みが非常にしにくい仮想通貨への投機、なおかつ投資経験があまりない人の多くの参入という要素だけでも、仮想通貨のボラティリティが非常に大きくなり、リスクを高めることにつながっています。
これに加えて、手持ち資金よりも多くの取引ができるレバレッジが加わると、ボラティリティとリスクはさらに高まります。
先読みが難しいものの仮想通貨の将来は明るいとする声も非常に多く、また資金管理を深く考えない投資初心者が多く参加している状況の中で、高いレバレッジが可能となれば、価格の不安定さに拍車がかかり、ボラティリティが大きくなるのです。
このように、高いレバレッジによって投資家が高いリスクを負うこととなり、実際に大きな損失を被るケースも少なくありません。
これまでにも度々、仮想通貨取引のリスクの高さが問題視されてきた経緯を考えると、投資家保護のためにも、レバレッジの制限によって仮想通貨取引のリスクを低減する必要があります。
レバレッジを低く制限しておけば、仮想通貨投資をギャンブルのように捉え、ハイリスクハイリターンの投機行為を安易に行うユーザーは魅力を感じなくなり、そのようなユーザーの利用が減少する可能性が高いです。
そうなれば、価格に不安定さをもたらす要因が減り、ボラティリティの安定につながります。
もちろん、これによって仮想通貨市場に流れる資金が減り、流動性が低くなることで、却ってボラティリティが高まる可能性もあります。
しかし、レバレッジを4倍程度に抑えておけば、投資家に致命的な損失を与える可能性は低くなり、投資家保護につながることでしょう。
さらに、昨今の仮想通貨業界の動向を見てみると、機関投資家が仮想通貨市場に参入する環境が整備されつつありますし、仮想通貨の需要も漸次高まっていくと予測されています。
これにより、仮想通貨市場への資金の流入が増えると考えられ、流動性も次第に高まっていくことでしょう。
以上のことから、日本仮想通貨交換業協会がレバレッジを4倍に制限することによって、ハイリターンを期待できる魅力が損なわれたり、日本国内の顧客離れにつながるマイナス面よりも、仮想通貨業界の健全な発展につながるというプラス面の方が大きいのではないかと思います。
日本仮想通貨交換業協会の方針
日本仮想通貨交換業協会は、仮想通貨取引のレバレッジを4倍に規制するにあたり、まずは参加する仮想通貨交換業者16社の合意を目指すようです。
合意に至れば決定となる見通しです。
また、合意後すぐに4倍に規制するのではなく、各仮想通貨交換業者がレバレッジ倍率を自由に設定できる期間を1年間設け、次第にレバレッジ4倍への制限を進めていくようです。
このほか、仮想通貨交換業協会では、顧客の担保を上回る損失が発生した場合に協会への報告を義務付けること、システムの安全対策や広告に関するルール、インサイダー取引に関するルールなども定めていくとしています。
まとめ
日本仮想通貨交換業協会が、ついに具体的な自主規制に動き始めました。
発足間もない段階ですから、今後の自主規制がどのように進められていくのか、打ち出された自主規制がどのような影響を与えるのか、まだまだ分からないことが多いです。
しかし、日本の仮想通貨業界において、自主規制を設けていく協会は日本仮想通貨交換業協会しかありませんから、この協会が日本の仮想通貨市場に与える影響は小さくないはずです。
今後も、協会の動きには注目が集まることでしょう。