今でも、ビットコインについて正しく理解している人は少数派ですが、仮想通貨元年と言われた2017年以前はほとんど認知されていませんでした。
一部の専門家がビットコインの仕組みを評価していただけです。
専門家たちは、総じてビットコインの実用性を評価しており、特に金融の効率化に多大なメリットをもたらすことを期待していました。
しかし最近では、このような期待が薄れてきています。
本稿では、ビットコイン市場に機関投資家の参入が進みつつある現状と、これによって想定される影響について解説していきます。
かつてのビットコインへの期待
ビットコインが一般的に認知される以前、ビットコインを評価していたのは一部の仮想通貨業界関係者や、経済・金融の専門家に限られていました。
仮想通貨業界では、当時からビットコインの投機性に注目し、期待していた人も多かったのですが、経済・金融の専門家の中には、ビットコインの実用性に期待していた人が少なからずいました。
例えば、経済学者の野口悠紀雄氏などがそうです。
野口氏は、金融機関を介して法定通貨で決済する仕組みは非常に効率が悪く、ビットコインの実用化によってこれを解決できるとしていました。
そして、ビットコインの認知が徐々に広がってくるにつれて、一般の投資家も「今後、ビットコインの実用化が進む。価値が上がって儲かる」と考えるようになり、急速に人気が高まり、大暴騰を演じることとなりました。
しかし近年、ビットコインの実用化は遠のいてきており、かつての専門家が期待した実用性も薄れつつあります。
これは、ビットコインの先物取引が徐々に広がってきていること、ビットコインに投資するための投資信託が人気を集めていることなどが原因です。
ビットコイン先物の広がり
ビットコインの先物取引が、CBOE(シカゴ・オプション取引所)とCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)で開始されたのは2017年12月のことです。
CBOEは今年3月に先物取引から撤退していますが、CMEは取引を継続しており、機関投資家の参加も順調に増えています。
これに加えて、Bakktでも9月23日にビットコイン先物取引の開始を予定しています。
既に、機関投資家向けに入出金サービスを開始しており、かなりの手ごたえを感じているようです。
ビットコイン先物に機関投資家が興味を示している理由には、以下のようなことが考えられます。
安全に取引できる
ビットコインを売買し、保有する際に気をつけなければならないのは、秘密鍵の管理です。
秘密鍵を紛失すれば、ウォレット内のビットコインは取り出すことができなくなります。
また、ハッキング被害によって盗まれる危険もあります。
このリスクを避けるためには、複数のウォレットに分散して管理するなどの対策が必要です。
機関投資家の運用は多額であることから、セキュリティ関連のトラブルを起こした場合の損失は計り知れません。
これは、機関投資家が仮想通貨市場に参加しにくい、大きな理由の一つになっていました。
しかし、先物取引を利用すれば、カストディアン(資産の管理を請け負う金融機関)に保管を任せることができます。
また、Bakktはサイバーセキュリティ対策にも力を入れており、365日・24時間体制でセキュリティに勤めるとしています。
セキュリティのグレードは、ニューヨーク証券取引所と同じグレードとしており、極めて高いセキュリティ性が期待できます。
このほか、Bakktはビットコインのデポジットに総額1.25億ドルの保険をかけており、これも安全性を高めています。
安心して取引できる
ビットコインの先物取引は、現物取引よりも安全であると同時に、安心であるとも言えます。
一般的に、個人投資家は一企業が運営する仮想通貨取引所で取引しています。
取引高は各取引所で異なり、小規模であり、取引所間の価格が大きく乖離することもあります。
当然ながら、多額の資金を運用する機関投資家の参加は難しい環境でした。
これに対し、現在でも先物取引を提供しているCMEの規模は、CBOEをはるかに上回っています。
このような規模の大きさから、アメリカ政府の監督下にあります。
Bakktについても、Bakktがニューヨーク証券取引所を運営するICEの傘下にあることから、規模は相当に大きいです。
CMEやBakktなどによって、先物取引が大規模に取り扱われるようになったことで、多額の資金を運用する機関投資家も安心して取引できるようになったのです。
ビットコイン投資信託も人気
ビットコイン投資信託も、機関投資家の人気を集めているようです。
ビットコイン投資信託としては、大手仮想通貨投資ファンドであるグレースケール・インベストメンツの投資信託「GBTC」が知られています。
GBTCは、ビットコインの市場価格に連動する投資成果を目指す投資信託です。
GBTCは投資信託ですから、直接の投資対象はグレースケール・インベストメンツであり、グレースケール・インベストメンツがビットコインに投資することによって、間接的に投資することができます。
GBTCの人気の理由
GBTCが機関投資家から人気を集めている理由も、ビットコイン先物取引と同じです。
つまり、安全・安心な取引ができることです。
GBTCは投資信託ですから、これに投資した機関投資家は受益証券を持つこととなり、ビットコインの現物を保有しません。
このため、ビットコインの管理に手間取ったり、セキュリティ対策にコストをかける必要もありません。
また、投資信託には販売会社・運用会社・信託銀行といった複数の機関が関わっており、信託財産は信託銀行が管理しています。
したがって、仮にグレースケール・インベストメンツが破綻した場合にも、信託財産が損なわれることはありません。
プレミアムが発生
GBTCの価格はビットコインの現物価格が基準となりますが、現在、GBTCの価格が現物価格で換算したビットコイン価格を20%以上も上回る状況となっています。
GBTCの本来の設計から考えると、ビットコイン現物価格と大きく乖離するのは不自然であり、ビットコイン現物価格とGBTC価格に生じているサヤは縮小していき、GBTC価格がビットコイン現物価格水準へと下落する可能性もあります。
もっとも、GBTC価格に生じているプレミアムは、安全に投資できることに対する上乗せと考えることもできるため、サヤが生じている状態が適正なのかもしれません。
いずれにせよ、運用成果を求められる機関投資家が、現物価格よりも高い水準でGBTCを購入しているのです。
少々高い水準で購入しても利益が得られる、という期待の表れと見ることもでき、人気の高さがうかがえます。
機関投資家の参加で遠のく実用性
上記のように、ビットコインの先物や投資信託といった投資対象が、機関投資家からの人気を集めています。
今後も、機関投資家の参加は徐々に増えていくと考えられます。
仮想通貨市場界隈では、ビットコイン市場に機関投資家が参入してくることが、ビットコイン価格の上昇要因になるとする意見もあります。
この意見は、主に流動性の増加が根拠となっています。
流動性が高まることは活発に取引されることであり、普及にもつながるため、価格が上昇するという意見も見られます。
しかし、機関投資家の参加は、それほど単純に好材料とは言い切れません。
その理由はいくつかあります。
まず、流動性は高まったとしても、実用化は遠のくと考えられるためです。
ビットコイン上昇のシナリオ
冒頭で書いたように、かつてビットコインの実用性に注目する専門家は多く、一般投資家もこの点に期待していました。
ビットコインの発行上限は2100万枚です。
ビットコインが金融に革命を起こし、スタンダードな決済手段としての地位を確立すれば、供給は限定される一方で需要が高まり、価格は上昇していくと考えるのが自然です。
また、中央銀行が管理する法定通貨であれば、金融政策によって価格を安定させることができます。
しかし、ビットコインは非中央集権的仕組みであるため、価格の安定に導く手段に乏しく、多くは自律的な調整機能に任せるほかありません。
これも、需給の不一致から青天井に価格が上昇していく原因になると考えられます。
先日、大手仮想通貨取引所BinanceのCEOであるCZ氏が、自身の公式ツイッターで、
「もしあなたが1BTCを持っているならば、あなたは世界の最も裕福な3/1000の人になるだろう。」
と発言して話題になりましたが、これも上記のような考えに基づくものです。
ビットコインが普及し、全世界で活用されるようになれば、世界人口70億人の需要に対して2100万枚の供給であることから、1000人のうち3人しか1BTCを保有できない計算となります。
このほか、ビットコイン価格が日本円にして1BTCあたり数百万円、数千万円、あるいは1億円以上になると予想する専門家もいますが、その多くがCZ氏と同じく、世界中に浸透・実用化されることを前提としています。
「普及→値上がり」のシナリオが成り立たなくなる
ところが、機関投資家の参加が増えれば増えるほど、このような値上りのシナリオが成り立たなくなります。
なぜならば、機関投資家はビットコインの実用性ではなく、投機性だけに注目して取引するためです。
先物取引や投資信託の仕組みからも分かる通り、ビットコインに投資する機関投資家は、ビットコインを実用的に(決済などのために)利用するのではありません。
そもそも、手元にビットコインの現物を持たなくてよいことに価値を見出し、現物水準より高くても投資するのですから、実用のために利用する意思などあるはずがないのです。
ここ数年で、ビットコイン決済を導入する企業は増加しており、普及が進んでいる証拠とも見られています。
しかし、資金量から考えて、実用化のカギを握る個人の保有量を、投機だけを目的とする機関投資家の保有量が大きく上回る可能性が高いです。
数千兆円の市場規模を誇る株式市場でさえ、90%のシェアを機関投資家が占めているのですから、2017年末時点でも68兆円程度の市場規模に過ぎなかった仮想通貨市場であれば、機関投資家が大部分のシェアを獲得することは容易でしょう。
個人も実用より投機
さらに、個人レベルでも、ビットコインの普及は進まないと考えるべきです。
現在、ビットコインを買っている人のほとんどは、実用性に注目して買っているのではありません。
「便利だから」という理由で、現金以外の形で持っていたいならば、ビットコインよりも電子マネーのほうが向いています。
電子マネーは、ビットコインよりもはるかに普及しており、実生活で活用しやすく、価値も安定しているからです。
ビットコインを買っている個人投資家は、ほとんど全員が将来的な値上がりを期待して買っていると言ってよいでしょう。
ビットコインの実用化が進み、決済などに活用されるためには、ビットコインが「お金」として機能する必要があります。
お金がお金として機能するためには、額面の価値よりも商品としての価値が低いことが大前提です。
例えば、東日本大震災復興事業記念のプルーフ金貨が良い例です。
この金貨の額面は1万円です。
一般的な通貨とは異なり、おもちゃのコインなどと判別が難しく、実店舗などでは利用できないものの、法的には1万円の価値が認められており、1万円以下の商品を買うことができます。
しかし、この金貨で1万円以下の買い物をする人はいません。
なぜならば、その金貨にはゴールドとしての、額面以上の価値があるからです。
ビットコインもこれと同じです。ビットコインが将来値上がりすると予想して買うということは、ビットコインの「投機商品としての価値」が「市場価値(額面の価値)」を上回るということであり、買い物に使う人はいないのです。
個人レベルで買われているビットコインでも、買い物に使われることはなく、現時点で普及の見込みは非常に薄いと言って良いでしょう。
考えてみれば至極当たり前のことですが、投機目的でビットコインを買いつつ、普及による値上がりを期待している人が大勢います。
これは、矛盾というほかありません。
以上のように、ビットコインの多くを機関投資家が投機目的で保有する可能性があり、同時に個人レベルでも投機目的で保有するとなれば、ビットコイン決済を導入する企業がいくら増えたところで、実用化が進むとは考えにくいです。
実用化と普及が進まなければ、専門家たちの「普及を前提とした値上がり」というシナリオも成り立たなくなります。
機関投資家がビットコイン市場に参加してくることは、今以上にビットコインの投機性が高まり、実用性が損なわれることに他ならないのです。
今後、機関投資家の参加が増えるたびにニュースになると思いますが、それによって流動性は増加するでしょうが、普及が促進されて価格の上昇につながるのではなく、むしろ普及の妨げとなり、普及に伴う価格の上昇は期待できなくなると考えるべきでしょう。
市場環境が大きく変わる可能性も
機関投資家の運用する資金は、個人投資家をはるかに上回るため、機関投資家の参加によって流動性が飛躍的に高まることは疑いがありません。
取引したいと考える人が多いほど需要は高まり、価格も上昇します。
しかし、普及による価格への影響を除外しても、流動性の増加と価格の上昇はイコールではありません。
流動性が増加した時、買いと売りのどちらに傾いたかが重要なのであって、売ろうとする機関投資家が多ければビットコイン価格は下落します。
機関投資家の取引が、大きな売り圧力になることは十分に考えられます。
なぜならば、先物市場で空売りする機関投資家も多いからです。
機関投資家の圧力はレベルが違う
ビットコインFXでレバレッジ取引をするならば、個人でも空売りは可能です。
しかし、個人の空売りによって形成される売り圧力は大きなものではなく、即座に暴落につながることはありません。
これまでのビットコイン市場で、暴落を招くレベルの大きな売り圧力になってきたとされているのは、ビットコインの大量保有者である「クジラ」と呼ばれる勢力の売りでした。
クジラの売りによって暴落を引き起こすとき、それは空売りによる売り圧力ではなく、現物の大量の売りでした。
つまり、値下がりを見越しての売りではなく、保有しているビットコインを利確したり、ポジションを調整したりするための売却です。
ビットコインの大量保有者が、現物を一度に売るだけで、ビットコイン市場は容易にかき回されてきたと言えます。
多額の資金を運用する機関投資家が、多額の資金を背景とする証拠金取引によって、ビットコインを大量に売ったとすれば、クジラとは比べ物にならない影響を持つはずです。
ボラティリティは低下する可能性
もっとも、売り圧力が一方的に大きくなるのではなく、買い圧力も大きくなると考えられます。
このため、機関投資家の参加によって、暴落・暴騰が起きやすくなるとは限りません。
ただし、ビットコイン市場が、個人投資家主導から機関投資家主導へと転換していくタイミングでは、機関投資家の動きが市場をかき回すことも考えられます。
例えば、
- 実用化に伴う上昇を期待し、ビットコインを買う個人投資家が増える
- ビットコイン価格がしばらく上昇を続け、徐々に参加してくる機関投資家もその流れに乗ってビットコインを買い、価格がさらに上昇する
- 機関投資家の参加は続き、空売りの機会を伺う勢力も増えてくる
- さらなる上昇を期待する個人投資家を尻目に、機関投資家が売りに走り、一気に売り崩される
といった流れです。
しかし、機関投資家の参加が増えることは、基本的には市場の安定・ボラティリティの低下につながると考えられます。
これは、ビットコイン市場の主導権が、アマチュアである個人投資家から、プロである機関投資家に移るためです。
機関投資家はプロ集団
個人投資家の中にも、ビットコイン投資だけで生計を立てるプロがいますが、それは全体のごく一部に過ぎません。
多くの人は、「ともかく持ち続けていればいずれ値上がりする」と期待して無計画に投資したり、「うまくいけば大儲けできるかもしれない」と射幸心に駆られて投資しています。
しかし、機関投資家の最大の目的は資産を殖やすことです。
成績が悪ければ、顧客から資金を集めることが難しくなり、機関の運営に支障をきたします。
このため、機関投資家は運用成績を少しでも高めるために、超一流の頭脳を集め、膨大なデータを駆使し、緻密に投資していきます。
いわば、機関投資家は投資のプロ集団です。
さらに、顧客離れを防ぎ、新規顧客を獲得するためには、他の投資機関に勝る成績を挙げる必要があります。
プロ集団同士で鎬を削ってきた、まさに海千山千の猛者なのです。
その猛者が、時に個人投資家では思いもよらないような、思いついても資金的に到底実行できないようなこともやってのけます。
大量の投機的売買によって、人為的に作った相場で大儲けする「仕手戦」がその代表例です。
利益につながる取り組みであれば、まさに「何でもやる」といったスタイルです。
このように比べてみると、資金量はもとより知識、技術、データ分析、経験などのあらゆる点で、個人投資家は機関投資家に太刀打ちできません。
世界的なファンドマネージャーであるチャールズ・エリスは、機関投資家に支配された市場に、個人投資家が挑むのは『敗者のゲーム』であると言っているほどです。
ビットコイン市場の乱高下
現在、ビットコイン市場でしばしば暴落を引き起こすクジラの売り圧力は、それがクジラによるものかどうか断定できないケースも多いです。
また、混乱を招くこともありますが、一時的な混乱に留まることがほとんどです。
このため、いつ起こるかわからない、実態の掴めない勢力の売り圧力を懸念する「弱気の見通し」はそれほど強くありません。
むしろ、発展途上にある仮想通貨市場では、材料が価格に与える影響を把握することが難しく、様々なニュースが好材料とみなされ、強気の見通しが主流となっています。
中長期の下落トレンドでも、ちょっとしたニュースで買われることが多く、トレンド転換には不十分なものであっても、「いよいよトレンドの転換か」といった雰囲気になります。
このように、これまでのビットコイン市場では、弱気の見通しが市場価格に反映されるよりも、むしろ強気の見通しが市場価格に反映されることが多かったと言えます。
また、アマチュア主導の市場であることから、ニュースの持つ実質的な影響とはあまり関係なく、暴騰・暴落が引き起こされることもありました。
さらに、出来高の水増しなどによって価格が操作されている可能性、ステーブルコインの裏付け資産が不十分である可能性なども指摘されています。
これが、知識・技術・経験・情報が不十分な個人投資家を混乱させ、乱高下の大きな原因となっています。
理不尽な値動きが減る
プロ集団である機関投資家の参加が増えることで、ビットコインの動きは今よりも合理的なものになるはずです。
もちろん、本来相場とは合理的なものではなく、機関投資家の比率が高まっても、理不尽な値動きはなくなりません。
しかし、今の値動きと比べると、随分と合理的なものになっていくと考えられます。
例えば売り圧力にしても、機関投資家が増えることで、理不尽な売り圧力と暴落は起きにくくなるでしょう。
多くの機関投資家が参加すれば、プロによって材料が的確に判断され、正しい情報を根拠として、ビットコインが計画的に売買されるようになります。
機関投資家の働きかけにより、取引所などが不正を働く余地もなくなっていくでしょう。
クジラだけではなく、空売りする機関投資家も売り圧力となり、それを熟知する機関投資家も大勢参加することで、これまで強気の見通しが反映されやすかった市場価格は、弱気の見通しも織り込むようになります。
つまり、ビットコインがそれなりに説明のつく価格に落ち着く可能性が高まるのです。
「まだまだ上がる」と考えて買いまくるアマチュアによって過度に値上がりしたり、一時的な恐怖によって売りまくるアマチュアによって過度に値下がりしたりすることは減ります。
このように、完全に合理的にはなり得ないとしても、今よりも値動きは合理的になり、ボラティリティも低下するはずです。
長年、ボラティリティの高さは仮想通貨の大きな問題とされてきました。
機関投資家の参加によってボラティリティが低下するならば、仮想通貨業界にはプラスになると言えるかもしれません。
機関投資家の参加を正しく考える
以上のように、
- ビットコインの実用化・普及が遠のく
- ボラティリティが低下し、暴騰・暴落が抑制される
といった流れを考えると、機関投資家の参加とビットコイン価格の関係はなかなかに複雑です。
少なくとも、実用化に伴う暴騰は期待しにくくなるでしょうが、純粋に投機面に注目するならば、機関投資家の参加がビットコイン価格の上昇を引き起こす可能性もあります。
現在、ビットコイン市場はかなり規模が小さいです。
多くの機関投資家がビットコインへの投機に興味を示し、たくさんの資金が流入した場合、ビットコインの発行総数は限られているのですから、流入する資金量が多ければ多いほどビットコイン価格は上昇し、市場規模は拡大していきます。
この意味において、機関投資家の参加はビットコイン価格の上昇要因になり得ます。
しかし、機関投資家の参加によって、市場の様子が大きく変わることは覚悟しておかなければなりません。
ビットコインへの期待、仮想通貨市場におけるビットコインとアルトコインの関係、世界的な規制のあり方、ニュースが市場に与える影響、仮想通貨業界を取り巻く環境など、多くの変化が起きるはずです。
特に、ニュースの解釈(例えば実用性に着目したニュースのインパクトが小さくなること)や投資のスタンスなどを変えることが重要になるでしょう。
プロ集団とまともに戦えば、個人では太刀打ちできない可能性が高いのですから、市場で儲けたいならば、
- 試し玉を経て本玉に入る、ツナギやナンピンを適切に利用するなどの相場技法を学ぶ
- 実践を通して経験を積み、相場技法を磨く
- 長く生き残るために資金管理を徹底する
などの技術面が重要になることは間違いありません。
このほか、自分で売買するのではなく、GBTCのような投資信託を買って、運用をプロに任せるのも良い方法です。
機関投資家の参加によって理不尽な値動きが減り、大儲けは難しくなっていくのであれば、僥倖を狙って個人で投資するよりも、プロに任せたほうが賢明でしょう。
ビットコイン市場にプロのプレイヤーが少ない今、運用をプロに任せるというスタンスは一般的ではありません。
しかし、機関投資家の参入によって投資環境が変われば、そのようなスタンスも十分にあり得るのです。
まとめ
本稿では、ビットコイン市場に機関投資家の参加が徐々に増えてきていること、それによって想定される影響について詳しく解説しました。
今後、機関投資家の参加がどのように推移していくか、まだまだ不明なことも多いです。
機関投資家の動きはまだまだ始まったばかりですし、顧客の利益を第一に考える機関投資家のことですから、短期間のうちに、大胆に参加してくるとは考えにくいです。
機関投資家の動きが、市場に目立った影響を与えるには、まだ時間がかかるかもしれません。
それに合わせて、個人も柔軟に変化していく必要があるでしょう。
機関投資家の影響を事前に知り、備えておくために、本稿が役立てば幸いです。
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