ここ数日で、ビットコイン価格が乱高下しており、その理由は機関投資家が参入し、空売りが行われることへの警戒であったとされています。
このことは、ビットコイン価格が今まで以上に激しい値動きになる原因でもありますから、きちんと認識しておきたいものです。
しかし、それに加えて、一部ではホエールズの動向に注目が集まっています。
ホエールズもまた、仮想通貨市場を乱高下させる可能性がある勢力なのです。
2017年12月の乱高下の背景について
ビットコイン価格は、12月10日のビットコイン先物上場への期待から、12月8日には200万円台を突破しました。
しかし、その後に急落し、12月10日には150万円台に下がりました。
その後再び上昇を見せて、12月13日現在は190万円前後を推移しています。
ほんの数日の間に、最高値は1BTC240万円に迫り、その後150万円を切ったという状況ですから、かなりの乱高下であるといえます。
この背景には、
- 機関投資家による空売りへの警戒
- 大口投資家「ホエールズ」への警戒
がわりと話題にあがりますので、この二点について確認しておきたいと思います。
機関投資家の空売りへの警戒
まず、12月10日を前に急落した理由ですが、一つには12月10日のビットコイン先物上場によって、機関投資家の空売りが増加することを警戒し、利確売りが殺到したものと思われます。
ビットコインが先物取引に上場すれば、ビットコインの流動性が高まるため、価値が上がる可能性があるとして、一時はビットコイン価格が高騰しました。
しかし、先物に上場したことによって、これまでは流動性の低さを嫌って静観していただけの機関投資家が、ビットコイン取引に参入してきます。
先物取引が始まると空売りが可能となり、機関投資家が空売りする可能性も十分にあります。
機関投資家が一気に空売りをしかけ、大きく価格を下げることによって、個人投資家の証拠金以上の損失を発生させてロスカットに陥れる「ストップ狩り」を引き起こせば、大きく価格を崩すことができます。
その後買い戻すことによって、空売りを仕掛けた機関投資家は大きく利益を出すことができるわけです。
これは十分にあり得ることで、フィスコデジタルアセットグループの田代昌之氏も、
先物市場にヘッジファンドなど、歴戦のプロたちが入ってくれば、価格はもっと乱高下する。
と警鐘を鳴らしています。
12月8日の史上最高値以降、ビットコイン価格が急落していったことの背景には、この機関投資家の空売りを警戒し、利確売りが殺到したものと思われます。
12月9日朝には、ちょうどこの局面で取引が集中したことにより、ビットフライヤーのシステムが不安定になり、正午前まで復旧しませんでした。
先物上場によって、これまで以上に瞬間的に乱高下が増えることを念頭に、ビットコインFX取引をされている方は証拠金維持率は今までより高めに設定しておくべきでしょう。
大口投資家「ホエールズ」への警戒
次に、大口投資家であるホエールズへの警戒が強まっています。
ホエールとはクジラのことであり、ビットコインを大量に保有する投資家たちのことを指してホエールズと言います。
有力な説によれば、ホエールズは1000人程度で構成されており、ビットコインの全体の40%程度を保有しているとされています。
12月12日には、25000BTC(約180億円相当)ものビットコインが、何者かによって動かされたことから、ネット掲示板などでは「ホエールズが動き始めたのではないか」という噂が流れることとなりました。
そのことによって相場が大きく崩れることはなかったのですが、ビットコイン価格が上がれば上がるほど、ホエールズの存在は無視できないものになってきます。
何と言っても、ビットコインの時価総額は、12月13日現在、約33兆円であり、これは時価総額日本一のトヨタ自動車(時価総額22兆円)を大きく超えています。
その40%にあたる約18兆円分のビットコインが、一部の投資家たちに所有されているわけです。
仮に1000人の投資家によって所有されていると仮定すれば、1人あたり180億円のビットコインを保有している計算になります。
2017年で、ビットコイン価格は約12倍に上昇しました。
また、先物上場によって、機関投資家の空売りによる下落が起こりやすくなっていることを考えると、ホエールズたちが一部のビットコインを売却することは十分に考えられ、それによって価格が急落する恐れもあります。
このことについて、AQRキャピタル・マネジメントの金融市場リサーチ前責任者兼運用ディレクターのアーロン・ブラウン氏は、ホエールズが保有しているビットコインの半分を売るのではないかと予測しています。
さらに怖いのが、この1000人のホエールズたちは、互いに連絡を取り合うことができると考えられることです。
この1000人は、ビットコインがまだほとんど知られていない頃からの保有者であると考えられており、彼らが知り合いであるとされています。
彼らが互いに連絡を取り合い、協力し合って市場を操作することは、全く不可能なことではないのです。
実際、仮想通貨市場の重要人物も、ホエールズたちを警戒し、以下のような発言をしています。
ホエールズは数百人だと思います。
彼らは、お互いに連絡を取れる関係にあり、実際に通話もしているでしょう。
(Multicoin Capitalの運営パートナーであるKyle Samani氏)
ビットコインはデジタル通貨であって、証券ではありません。
特定のグループ(ホエールズ)が協力し合い、数分の内に市場価格を動かすことに、違法性はありません。
(Ross&Shulgaの証券弁護士であるGary Ross氏)
どのような資産クラスにあろうと、大口投資家や機関投資家は、協力し合って価格を操作することができます。
また、実際に操作しているでしょう。
仮想通貨市場は未熟であり、投機的な性質も強いため、価格操作が非常にしやすいのです。
(BlockTower Capitalの共同設立者であるAri Paul氏)
Ross氏が言うように、現在、仮想通貨取引への規制は整備が遅れているため、相場操縦になんら違法性はありません。
相場操縦のために噂を広げた場合にも、詐欺行為として摘発を受けることはなく、取引所が口座を凍結するくらいの対応しかできないのが現状です。
ただし、ビットコインの初期からの投資家であり、ホエールズの一人と思われるRoger Ver氏によると、
ホエールズたちは、お金を自分の意思で動かすことができますし、ホエールズが一斉に動くこともあり得るでしょう。
もっとも私は、過去に誰かとそのようなことをしたことはありません。
と言っています。
ただし、この発言に対する真偽は定かではありません。
ホエールズの存在を知るにつけ、ビットコイン市場の透明性が疑われます。
一部の人々が価格を操作する力を持っており、そのような行動に出た時、それを早い段階で知り得る人もまた一部のヘッジファンドマネージャーなどに限られるのです。
このことに対して、ビットコイン専門の弁護士であるMartin Mushkin氏は、
それが証券ビジネスならば、関連する事柄は全て公開されなければならず、透明性があります。
しかし、仮想通貨では何が起こっているのかを把握するのは極めて困難です。
仮想通貨市場に透明性はありません。
と答えています。
ビットコインに見られるこれらの傾向は、他のアルトコインでも見られます。
したがって、仮想通貨全般において、一般の小口投資家は、かなり不利な状況を強いられる可能性があります。
大口とそれに追随する勢力が大きく動いた時、大きく後手に回る可能性が高いのです。
ただし、ホエールズの多くは、仮想通貨のプロジェクトを進めていくチームの一員でもあるため、仮想通貨が今後も長期的に成長していくと考えているならば、決して売らずに保有し続けることでしょう。
ホエールズの動きによって、価格が崩壊することもないと思います。
それでも、仮想通貨を取り巻く環境は非常にスピーディに変化しており、ちょっと前の常識が今日の非常識になっているかもしれません。
そのような状況になれば、ホエールズは一般投資家がまだまだ熱狂している時に大きく売りに出るでしょうから、それによって価格崩壊が起きる可能性があることも視野にいれておきましょう。
まとめ
今後も仮想通貨市場は拡大成長し、ビットコイン価格はもっと伸びるという予想が大半です。
仮想通貨へ投資する人口も急増するでしょうが、短期的な急落を何度も繰り返して上昇していくと思われますので、リスク管理はしっかりと行いながら投資すべきだといえるでしょう。