2018年3月22日、世界最大手の仮想通貨取引所Binanceに対し、金融庁が警告を行いました。
それに対し、CEOのChangpeng Zhao氏は嘘であると発言し、その翌日には認める発言を再び行い、事態が二転三転しています。
バイナンスに対する金融庁の警告は仮想通貨市場に与える影響が大きいため、ここでまとめておきたいと思います。
金融庁がBinanceに警告発動
coincheck事件以降、仮想通貨取引所は慎重に選ぶべきだと、多くの投資家が思い知らされたことと思います。
日本の取引所の中で最も多くのアルトコインを取り扱っていたcoincheckが信用を失ったため、アルトコインの取引をしたい投資家は、海外の取引所に口座を開設する必要に迫られました。
そこで日本人の注目を集めたのが、香港を拠点とする大手取引所であるBinanceです。
Binanceは、130種類以上という非常にたくさんのアルトコインを上場させており、度々話題になる取引所です。
日本でも営業しているため、日本人投資家にも知名度が高く、coincheck事件以降、Binanceに口座を開設した人は多いと聞きます。
しかし3月22日、金融庁がBinanceに警告を出しました。
Binanceは金融庁の認可を受けずに営業している無登録業者です。
仮想通貨取引所の起こすトラブルが多発している昨今、金融庁も規制強化の姿勢を取っており、様々な命令や警告を出しています。
今回、その矛先がBinanceに向けられたのです。
金融庁はBinanceに対し、日本での営業を辞めるように警告し、営業を辞めなければ刑事告発をするとしています。
これは、金融庁がBinanceを違法営業であると言ったも同然です。
Binanceに警告が行われた理由も、無登録業者だからです。
Binanceは金融庁の認可を受けておらず、無登録業者として営業しているのには、以下のような理由があります。
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- 認可を受けている仮想通貨取引所では、本人確認を徹底したうえで口座開設を可能としているが、Binanceでは本人確認なしで口座開設ができてしまう。
これが犯罪につながる懸念がある。 - Binanceは匿名通貨を複数取り扱っている。
匿名通貨はマネーロンダリングや脱税に悪用されたり、ブラックマーケットの活性化につながるものであり、金融庁は認めていない。
以上のような理由から、金融庁はBinanceに対し、改正資金決済法に違反している疑いがあるとして警告したわけです。
この情報を受けて、仮想通貨市場は全面安の展開となりました。
バイナンスCEOの反論はパフォーマンスか?
このニュースをリークしたのは日経新聞だったのですが、BinanceのCEOであるChangpeng Zhao氏は、ツイッター上で以下のように否定しました。
日経新聞は無責任なジャーナリズムを行なっている。
私たちは金融庁と建設的な対談をしているだけで、なんの命令も受けていない。
建設的な対談中であるにもかかわらず、金融庁が私たちよりも先に新聞社に情報を伝えるとは思えない。
Changpeng Zhao氏は嘘をついていたのか?
Changpeng Zhao氏の反論によると、金融庁とBinanceは“建設的な対談”をしていたはずでした。
建設的な対談とは、両者ともに現状をよりよくするための対談であり、今回のケースならば、Binanceは日本での営業を認めてもらえ、金融庁としても問題ないとし、警告を受けることも無いということなのでしょう。
Binanceが違法性を問われ、営業を停止しなければ刑事告発すると警告されたのでは、建設的どころかBinanceにとっては破壊的な対談です。
しかし、建設的な対談をしていると発言した翌日、Changpeng Zhao氏は以下のように警告を認めるツイートしました。
先ほど、金融庁から書簡を受け取った。
当社の弁護士が金融庁に連絡をしており、直ちに改善策を見つけていく。
ユーザーの利益を保護することが、我々の最優先事項である。
ネガティブなニュースは、長期的にプラスになることもあるので心配することはない。
中国には、『変革時に新しい機会が生まれる』ということわざがある。
ツイートの中では、「金融庁からの書簡」と書かれており、警告を受けたと明記しているわけではありません。
しかし、金融庁からの警告がなされたという情報が出ており、反論の翌日に「書簡」を受け取り、書簡に対して「改善策を見つけていく」「ネガティブなニュース」という発言があることから、金融庁からの警告が正式に文書を以てなされたものと見て間違いないでしょう。
またこのツイートから、金融庁の警告に対応するために改善の必要を自覚していることも分かりますし、それがネガティブな要素をはらんでいることも分かります。
また、中国のことわざを引用して「変革時」という言い方をしていることから、大幅な改善を求められている可能性も考えられます。
同時に注目すべきは、Changpeng Zhao氏の反論の翌日に正式な警告がなされたことでしょう。
金融庁の最近の対応は迅速ですが、迅速ということは対応が一変することと必ずしも同じではありません。
前日までは建設的な対談をしていたのに、翌日には豹変して警告を与えるようなことは考えにくいでしょう。
もしChangpeng Zhao氏の発言に嘘がないならば、金融庁は警告を与える方針で進んでいるにもかかわらず、それを「建設的な対談ができている」と勘違いしていたことになります。
しかし、世界最大手の取引所のCEOたるものが、そのような勘違いをするとも思えません。
となると、Changpeng Zhao氏のツイッターにおける反論はパフォーマンス(嘘)と受け取られても仕方ありません。
Binanceの罪
ただでさえ仮想通貨取引所に対する信頼が失われる事件が頻発している昨今、Binanceの今回の対応は如何なものかと思ってしまいます。
利用者が非常に多い取引所だからこそ、よりクリーンな営業が求められるにもかかわらず、金融庁から警告を受け、刑事告発される懸念が出たということは軽視できません。
それだけならまだしも、事態の鎮静化のために嘘を吐き、その後手の平を返して顧客の慰撫を図っていることも、人によってはBinanceに不信感を抱くことでしょう。
仮想通貨業界の健全な発展のためには、仮想通貨が活発に流通する環境が必要であり、そのためには取引所の信頼性や安全性が高まることが求められます。
信頼を失うようなことをしてしまう取引所は、見方によっては仮想通貨業界の足を引っ張っているともいえるわけです。
仮想通貨が技術的に素晴らしいものであり、将来的に欠かせなくなるものであろうことは、先日のG20サミットにおいても、各国が認めたところでした。
問題は、仮想通貨業界の健全性にあり、しっかりと発展していくためには、業界全体がクリーンの意識をもっと高めるべきかと思います。
Binanceは、ハッカーに懸賞金をかけるなどの先進的な取り組みもしており、仮想通貨取引所のホープとも言える存在です。
そんなBinanceだからこそ、仮想通貨業界の発展を牽引していくべき存在です。
まだまだ未整備な業界だからこそ、Binanceのように警告を受けることもあるでしょう。
この警告を期に、Binanceがより多くの投資家から認められ、安心して取引できる取引所に成長を遂げてほしいものです。
また、Binanceが魅力的な取引所であることには疑いの余地はなく、口座を開設している、あるいは口座を開設したいと考える投資家は多いでしょう。
しかし、海外の取引所の利用にはリスクもはらんでいることを念頭に置いて取引すべきだと改めて実感しました。
まとめ
仮想通貨業界のニュースを見ていると、事態が二転三転することが多く、なにが真実なのか分からなくなることもしばしばあります。
今回の場合、「金融庁がこう動いたらしい」と価格が下がり、「でもCEOは違うと言っている」といくらか持ち直し、「いや本当だったらしい」と再び下落したわけで、市場は振り回されていました。
したがって、仮想通貨投資を行う際には、あまりニュースに左右されすぎない冷静さと慎重さが必要なのかもしれません。
ニュースは無視できるものではありませんが、敏感になりすぎるとそれに振り回されることもあります。
これも仮想通貨投資の難しさの一つと言えるでしょう。