ビットコインキャッシュのハードフォーク後の経過まとめ

ビットコインキャッシュ(BCH)

当サイトでもお伝えしていた通り、ビットコインキャッシュのハードフォークは実行され、それが相場に大きな混乱を招いています。

特に、仮想通貨の非中央集権的な仕組みを否定してしまう懸念も出てきています。

しばらくハードフォークから5日が経過した今、ハードフォーク後の経過をまとめておきたいと思います。

価格への影響

ビットコインキャッシュのハードフォークが予定通り実行されたことで、仮想通貨市場は大きな下落を見せています。

主要仮想通貨の値動きを見てみると、11月20日0時現在、ビットコインは約56万円、イーサリアムは約1万7000円、リップルは約54円、ライトコインは約4200円、ビットコインキャッシュは約4万円となっています。

これをハードフォーク直前の価格と比較してみると、ビットコインは約20%の下落、イーサリアムは約27%の下落、リップルは約5.5%の下落、ライトコインは約27.5%の下落、ビットコインキャッシュに至っては約55%の下落となっています。

リップルが想像以上の底堅さを見せたこと、ビットコインキャッシュが50%以上の下落を見せていることに驚きですが、暴落後の反騰もそれほど目立ったものがみられません。

ハードフォークに至ったビットコインキャッシュだけではなく、他の仮想通貨にまで大きな下落を引き起こしている原因は、以下のようなものが考えられています。

 

 

非中央集権化への疑問

今回のハードフォークでは、ビットコインキャッシュがBitcoin ABCとBitcoin SVに分かれて争っています。

ハードフォーク後、生き残りをかけて両者が争っているのですが、「ハッシュレート」というものが、この争いの中心になっています。

ハッシュレートは、「ハッシュパワー」「トランザクションハッシュ」などともいわれますが、簡単に言えばマイニングの際の計算速度や処理能力を表したものがハッシュレートです。

複雑な演算を行うことでブロックを生成している仕組みをPoWと言い、PoWを採用している仮想通貨では、マイナーが互いにハッシュパワーを競い合っています。

 

どちらかしか生き残れない

さて、今回ビットコインキャッシュから分裂したBitcoin ABCとBitcoin SVですが、この二つの通貨はビットコインとビットコインキャッシュが分裂したときのように、並行して存在していくことができません。

なぜならば、今回のビットコインキャッシュのハードフォークでは、リプレイプロテクションというものが実装されていないからです。

リプレイプロテクションとは、分裂後の二つの通貨が互いに別のものであると認識するための仕組みです。

これが実装されていないということは、Bitcoin ABCとBitcoin SVの両方のチェーンを識別することができないため、送金などに混乱を招きます。

どちらか一方だけしか生き残れないため、Bitcoin ABCとBitcoin SVは、互いに「自分こそがBCHのチェーンを引き継ぐ真の通貨である」と主張して譲らない事態となっています。

リプレイプロテクションによって識別できない場合、ブロックチェーンの本来の仕組みとして、「チェーンが分岐してしまった場合、一番長いチェーンを本物とみなす」というルールによって識別していくこととなります。

個人や組織が悪意を持ってチェーンを改ざんして分岐が生じたとき、もともとの長いチェーンが本物であるという仕組みを作っておくことによって、そのような悪意の改ざんを防ぐことができます。

逆に言えば、本来のチェーンよりも長いチェーンを作ってしまえば、本来のチェーンを否認して乗っ取ることもできてしまいます。

これを51%攻撃と言います。

したがって、ハードフォーク後に生き残っていくためには、Bitcoin ABCとBitcoin SVはお互いに分裂したチェーンをどんどん生成して長くしていき、自分のチェーンが真のチェーンとして認められる状況を作っていく必要があります。

 

ハッシュウォーが起こる

このため、今起こっているのが「ハッシュ戦争」です。

ハッシュパワーによる戦争であり、Bitcoin ABCとBitcoin SVは互いのマイニングプールをフル稼働し、ハッシュレートを引き上げて激しく争っています。

ハードフォークに至る前の段階で、Bitcoin SV側がハッシュレートを急激に引き上げ、ハードフォーク後にすぐさま争いを制していく姿勢を見せました。

このため、もし分裂となれば、Bitcoin SVが優勢で進展するかと思われていました。

しかし、実際にふたを開けてみると、予想に反した状況となっています。

ハードフォークが実行されるブロック「556767」に到達し、Bitcoin ABCが生成したブロックをBitcoin SVが無効としたことにより、ビットコインキャッシュはついに分裂となりました。

この後、両派閥がそれぞれのチェーンでマイニングを始めたところ、Bitcoin ABCを率いているマイニングプールであるBitcoin.comが、Bitcoin SV以上にハッシュレートを集中させたことにより、まもなくBitcoin ABCが優勢の状況となりました。

現在ではBitcoin ABCが優勢な状況となっていますが、Bitcoin SVを率いているクレイグ・ライト氏は、今後もBitcoin ABCとの戦いを続けていくことを表明しています。

実際、クレイグ氏は

 

ハッシュ戦争はマラソンのようなものだ。

 

と発言しており、ハッシュ戦争の長期化をにおわせています。

すでに現時点で、Bitcoin ABCとBitcoin SVは両者ともに巨額の損失を出しています。無理矢理にハッシュレートを高めたため、莫大な電力を消費したことによる損失です。

このままの流れが続いて、ハッシュ戦争が泥沼化していけば、両陣営の資本力はどんどん先細っていくでしょう。

後に引けない戦いですから、どちらかがつぶれたころには、残った一方もかなり体力を消耗しており、コミュニティとしても大きく弱体化しているかもしれません。

また、戦いが長引けば長引くほど、これまでビットコインキャッシュを支持してきた人たちが、愛想をつかして投げ売りをはじめ、価格はさらに下落していく可能性も考えられます。

 

非中央集権制を揺るがす問題

このハッシュ戦争によって、大きな問題が引き起こされました。

それは、非中央集権制が成り立たないのではないかという懸念が生じたことです。

ビットコインをはじめ、多くの仮想通貨は非中央集権的な仕組みを持っているとされており、それが仮想通貨の大きな魅力と考えられてきました。

「非中央集権」とは、特定の国や機関や個人によって管理されることなく、ブロックチェーン上で機能していくことから、特定の管理者が存在しないという意味です。

非中央集権であることによって、法定通貨とは異なるフェアな通貨であるとされてきました。

しかし、今回のハッシュ戦争を見てみると、これまで声高らかに素晴らしさを語ってきた「非中央集権的な通貨」とは何だったのかという疑問が出てきます。

Bitcoin ABCとBitcoin SVのどちらが勝利したにせよ、それはマイニングプールという特定の組織が力にものを言わせて相手をつぶして生き残ったということです。

さらに、ハードフォーク直前にはBitcoin SV側のハッシュレートが70%のシェアを獲得していたにもかかわらず、その1日後にはBitcoin ABCがシェアを奪還しています。

大量のマイニングマシンを使い、膨大な電力を消費し、莫大な資金を注ぎ込みながらシェアを獲得したのですから、これはいわば、

 

特定の個人や組織が、資金にものを言わせて通貨の価値や将来をコントロールできる。

 

といも言えます。Bitcoin.comというマイニングプールの力でそれができるのですから、例えば、より大きな資金力を持つ企業や政府が同じようなことをすれば、PoWを採用しているどのような仮想通貨でも同じ状況を引き起こすことができるでしょう。

特定の個人や組織や政府に左右されない、非中央集権的な通貨という謳い文句で人気を集めてきた仮想通貨が、大きく信頼を失う事態と言えます。

仮想通貨がコンビニ決済に使われる日は近い、これからは仮想通貨で送金される時代だなどともいわれてきました。

仮想通貨の普及を目指して、仮想通貨業界は整備を進めてきました。

しかし、普及するも何も、非中央集権という根幹的な仕組みが否定されかねない状況なのです。

 

PoW通貨の暴落

このように、非中央集権制が成り立たなくなる問題が起こったことにより、PoWを採用している仮想通貨も軒並み下落することとなりました。

ビットコイン、イーサリアム、ライトコインといった通貨が大きく下落した理由は、ここにあると考えられます。

これに対し、PoW以外の仕組みを採用しているリップルやステラといった仮想通貨は、それほど大きな下落には至っていません。

PoW問題を懸念して、PoW通貨から資金を逃がそうとする投資家が、リップルやステラを買ったとも考えられます。

 

 

取引所に混乱も

このほか、ビットコインキャッシュのハードフォーク後、いくつかの取引所で対応が異なることによって混乱が起きています。

特に、ティッカーシンボルでの混乱が見られています。

ティッカーシンボルとは、市場の投資対象を識別するためのコードのことです。

外国為替市場における米ドルはUSD、日本円はJPY、米国株式市場におけるアップルはAAPL、アマゾンはAMZN、仮想通貨市場におけるビットコインならばBTC、ビットコインキャッシュならばBCHなどと表現されますが、このアルファベットコードがティッカーシンボルです。

ビットコインキャッシュの分裂後、真っ先に動いたのは大手取引所のBinanceでした。

Binanceでは、分裂後間もない16日13時時点で、分裂したそれぞれの通貨をBCH ABC、BCH SVと名付けました。

つまり、BinanceではBitcoin ABCとBitcoin SVのどちらかにBCHのティッカーを引き継ぐのではなく、それぞれにティッカーを分けて上場すると発表したのです。

その後まもなく、BCH ABCとBCH SVを1:1の割合で配布したことも発表され、BCHABC/BTC、BCHABC/USDT、BCHSV/BTC、BCHSV/USDTの4ペアの取引の開始も発表されました。

しかし、その二日後、大手取引所のHuobiでは、Bitcoin ABCを正式なビットコインキャッシュとみなし、BCHのティッカーを引き継がせることを発表しました。

そして、Bitcoin SVをBSVと名付けることとしました。

その理由は、Bitcoin ABCがブロックチェーンにリプレイプロテクションを実装することを確認したから、と言うものでした。

Bitcoin ABCがリプレイプロテクションを実装すれば、Bitcoin ABCとBitcoin SVの識別が可能となります。

ここにおいて、ともに世界最大級の取引所であるBinanceとHuobiの間で、大きなズレが生じることとなりました。

リプレイプロテクションに対する認識や、ティッカーの考え方についても大きくズレが発生しており、これも混乱につながっています。

もっとも、このような混乱は時間が解決してくれることでしょうから、それほど大きな問題とは言えません。

それよりも、各取引所がどのような判断をするかによって、Bitcoin ABCとBitcoin SVの動静を知る手がかりになりますから、そのような見方をしたほうが参考になるかもしれません。

 

まとめ

ビットコインキャッシュのハードフォークは、表面的には多くの仮想通貨の暴落を引き起こしました。

しかし、もっと深い部分での問題を見てみると、非中央集権という仕組みへの信頼が根底から揺るがされるような問題とも言えます。

もちろん、51%攻撃の懸念は以前からしばしば取り上げられており、仮想通貨の非中央集権的な仕組みに疑問が持たれることはありました。

今回、それが表面化することとなり、仮想通貨業界には大きな課題が残されたと言えるでしょう。

仮想通貨の普及などにも大きく影響してくる問題ですから、今後の流れにも注意が必要です。

 

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