11月に予定されているビットコインのB2Xハードフォーク問題は、これまでのビットコインキャッシュ(BCH)やビットコインゴールド(BTG)とは全く性質の異なるハードフォークで、大混乱を引き起こす可能性が高いようです。
では、なぜ大混乱に至る可能性があるのでしょうか。
先日のCointelegraphの記事がわかりやすいため、ここで翻訳しながら説明しておきたいと思います。
ビットコインとハードフォーク
10月14日に、Cointelegraphに掲載された記事で、ビットコインのハードフォークに関する危険性が示唆されています。
ビットコインのハードフォークは11月に行われるものですから、もうあまり時間的な猶予はありません。
これまでにも、ビットコインはビットコインキャッシュにフォークしたことがあり、まもなくビットコインゴールドも誕生します。
これらに関しては、ビットコインネットワークに影響を与えるものではないため、危険視する必要はありません。
なぜならば、ビットコインキャッシュやビットコインゴールドといった、ビットコインから派生したアルトコインは、ビットコインのブロックチェーンに何ら干渉するものではないからです。
そのため、これらの誕生によって、ビットコインに不具合が生じたり、ビットコインの価値が分散してしまったりすることは基本的にありません。
しかし、11月に予定されているハードフォークは、既存のビットコインのシステムに対して、SegWit2xが対立するという構造になるため、これまでとは全く異なる状況になる可能性があります。
同じハードフォークでも、その内容と影響は大きく異なるのです。
スケーラビリティ問題を解消するためのハードフォーク
すでにご存じの方も多いかもしれませんが、ハードフォークの背景に触れておきたいと思います。
ビットコインのブロックチェーンでは、チェーンを構成するそれぞれのブロックの容量が問題視されてきました。
これを「スケーラビリティ問題」と言い、4年以上も議論が続いています。
専門家の中には、ビットコインコミュニティ内では、スケーラビリティ問題をめぐって内戦状態にあると見解を示す人もいるほどであり、無視できない状態になっています。
スケーラビリティ問題とは、ブロックの容量の問題です。
ビットコインの普及が進んだり、ビットコイン投資が増加したりすることによって、これまで問題なく取引を処理していたものの、近い将来に処理が困難になることが予測されてきました。
そこで、各ブロックの容量を増加させるべきだという意見が起こりました。
ビットコインの大多数の人は、当面の対策としてブロックの容量を二倍にすることに賛成しました。
しかし、ビットコインのコア開発チームでは、取引に応じて容量を増やすのはいたちごっこになるので、技術的に、恒久的な解決策を見出すべきだと意見し、容量を増やすことに反対しました。
コア開発チームは、ブロック内により多くの取引を記録するために、SegWitというものを提案しました。
SegWitによって、ビットコインネットワークそのものを拡張することを提案したのです
2016年2月コア開発チームの代表者は、マイナーと話し合いの末、SegWitを導入するとともに、ブロックサイズを2MBに拡張することに合意しました。
この合意に関して、コア開発チームの中には反対する人もおり、その一人であるグレゴリー・マックスウェル氏は、
この話し合いは失敗だ。これでは、ビットコインの問題について教えるために渡航したはずの良心的な技術者が、ハードフォークに合意するまで、朝まで部屋に監禁され、ただの愚か者になり果てたようなものだ
と嘆いています。
SegWitのコードが公開されると、マイナーの40%がそのシステムを支持し、また別の40%はブロックの拡張を支持しました。
ここに、ビットコインコミュニティで大きな溝が生じることとなりました。
2017年5月には、ビットコインのマイナーやビットコインビジネスの代表者らが集まって会議を開き、ニューヨーク合意が締結されました。
この合意では、SegWitが2017年9月までに適用されること、ブロックサイズの拡張は2017年11月のハードフォークで行われることが合意されました。
この会議は大規模なもので、世界22か国から58社、マイニングパワーの83.28%、2050万ものビットコインウォレットが調印したことからも、規模の大きさが伺えるでしょう。
ニューヨーク合意は、SegWit2xとも呼ばれるもので、ビットコインのマイナーの95%が支持するものでした。
しかし、2017年10月初めまではSegWit2xの指示が95%を維持していたものの、主要なビットコインビジネス企業、主要マイナーなどがSegWit2xの支持を撤回したことで、10月15日時点で85%に低下しています。
そもそも、ブロック拡張ではなくSegWitだけを指示していたマイナーは、ブロック拡張も行うSegWit2xの支持には積極的ではありませんでした。
したがって、今後も離反者が増える可能性があります。
コア開発メンバーはハードフォークに強く反対しており、ブロックを拡張しない状態の、従来のチェーンを支持しています。
これは、コア開発者らがブロックを拡張したコードにソフトウェアを更新しない可能性もあるということです。
つまり、チェーンが分裂してしまうチェーン・スプリットが起こる可能性があるのです。
チェーン・スプリットから見えるビットコイン大暴落の構図
さて、最大の関心事は「今後どうなっていくか?」ということです。
まず、マイナーたちがハードフォークを支持するかどうかに注目すべきです。
今後数週間で何が起こるか分かりませんが、ハードフォークが間近に迫っているため、否定派の人は既に支持を撤回しているはずなのですが、まだ支持している状態です。
もし、11月にSegWit2xが実行され、現在の支持者である85%のマイナーが新しいコードを適用し、一方でコア開発者とその支持者が新しいコードを適用しなかった場合、チェーン・スプリットが現実のものとなります。
チェーン・スプリットが起こると、ブロックサイズが拡張されたコード上では、リプレイ・プロテクションを含まないものとなってしまいます。
リプレイ・プロテクションとは、不正送金を防ぐための仕組みなのですが、これがないことによって、あるチェーンで送金されたものが、同時に別のチェーンでも送金されてしまう現象が起こります。
つまり、まともに機能しているとは言えない状態になるわけです。
現在の状況が変わらずに進んでいけば、11月にはチェーン・スプリットが起こることが予想されます。
既存のチェーンは残るものの、その支持者は15%に過ぎません。
15%のマイナーからのサポートしか受けられなくなり、一方で分離したチェーンは85%のマイナーから支持を受けることになります。
となれば、従来のビットコインは非常に弱くなり、新しく誕生したビットコインに取って代わられる可能性が高くなるということです。
それぞれの取引所では、チェーン・スプリットが起こった場合に、両方を取り扱うのか、そしてどちらを正式なビットコインと表記して取り扱っていくのか、難しい選択を迫られています。
アメリカ最大の取引所であるBitfinexでは、既存のチェーンをビットコインと表示しつつ、新しいチェーンも追加することを表明しています。
もし、ビットコインのコア開発者と大多数のマイナーの間でビットコインが分裂してしまえば、大混乱は避けられないでしょう。
ビットコインに投資している人も、どちらを本当のビットコインと捉えていけばよいのか分かりませんし、これまでよりもずっと投資判断も難しくなるはずです。
ブロックチェーンへの51%攻撃でオリジナルビットコインは消滅?
このような問題を解決するためには、多数派が少数派を壊滅に追い込むほかありません。
そのようなことができるのかと思うかもしれませんが、案外シンプルな方法によって可能です。
SegWit2xを支持するマイナーが85%いるため、その中の一部のマイナーによって、既存の少数派ブロックチェーンに対してマイニングを行います。
そして、ある時点で51%攻撃を仕掛ければ、既存のネットワークは徐々に使用できないようになっていきます。
51%攻撃とは、ネットワーク全体の51%を支配し、不正取引を行なうことです。
ビットコイン取引では、マイニンググループの承認によって取引が行われていますが、そのマイナーの過半数に悪意があれば、正しい取引を承認しなかったり、二重支払を引き起こしたりすることが可能になるのです。
コア開発チームでは、51%攻撃が行われた場合には、既存ネットワーク上のアルゴリズムを変更することで対抗するとしています。
これは、彼ら自身がハードフォークを引き起こすということであり、更なる混乱に陥っていくのではないでしょうか。
もし、このままの流れが変わらずにチェーン・スプリットが起き、SegWit2x側に85%の支持が集まれば、従来のオリジナルビットコインは壊滅させられる可能性が極めて高いと言えるでしょう。
取引所の反応にも、あまり期待できません。
取引所がSegWit2xを支持せず、従来のビットコインだけを取り扱えば状況は変わってくるでしょうが、それはありえないことです。
15%のマイナーにしか支持されていないならば、ブロックチェーンは安全性を欠くため、そのような通貨を取り立てて扱うとは考えられないからです。
まとめ
現時点では、具体的にどうすべきかということは非常に難しい状況です。
SegWit2xを支持しているマイナーが支持を撤回して、フォーク自体が起きない可能性もあります。
また、ビットコインのコア開発チームが、チェーン・スプリットを防ぐために妥協し、SegWit2xを容認するかもしれません。
今後も、ハードフォークの時期が迫るにつれて様々のニュースが出てくると思いますが、仮想通貨は情報が命ですので、情報収集は怠らないようにしましょう。