仮想通貨ネムの価格は、長期にわたって下降トレンドが続き、ピーク時には200円を超えていたものが、最近では3円台に落ち込む局面もありました。
多額の含み損を抱えている投資家も少なくないでしょう。
長期投資を見据えているネム所有者の期待は、大型アップデートである「カタパルト」に集まっています。
今回、カタパルトのローンチ計画の発表予定が公開されたことなどにより、ネム価格が大きく上昇しています。
本稿では、ネムの価格上昇の背景についてまとめていきます。
ネムが20%の値上がり
仮想通貨ネムは、2018年1月、coincheckの大規模なハッキング被害によって、良くも悪くも話題となった仮想通貨です。
ピーク時には200円を超えたものの、その後は大きく値を下げ、2018年11月から現在に至るまで、10円以下で推移しています。
2月には一時3円台まで下落しており、好ましくない値動きが続いていました。
しかし最近、このトレンドに変化が表れています。
2月に3円台に落ち込んで以降、緩やかな右肩上がりのチャートを描いており、直近の1週間で19.8%の大幅な値上がりを見せています。
この上昇の背景には、
- ネム財団が今月8日、財団運営費として2500万XEM(日本円で約1億2500万円、1XEM≒5円で計算)の資金調達に成功したこと
- ネムの能力を大幅に向上させる「カタパルト」のローンチ計画の発表予定を公開したこと
などが考えられます。
2500万XEMの資金調達
ネム財団はコミュニティに対し、今月2月、運営資金として2億1000万XEMの支援を要請しています。
コミュニティはネム財団の要請を支持し、分割での支援が決定されました。
したがって、今回の資金調達報告は2500万XEMとなっており、それほど大きな額とも思われませんが、全体の一部の支援が完了したにすぎません。
ネム財団が要請した資金はまだ1億8500万XEMが残っており、今後長期にわたって、財団運営に良い効果が期待できます。
カタパルトのローンチ計画
ネムの値上がりは、こちらのほうがより大きな原因となっているでしょう。
カタパルトとは、ネムの機能を大きく底上げするアップデートのことです。
カタパルトの実装によって、
- トランザクションの処理速度が大幅に向上すること
- マルチレベルマルチシグネチャーの追加
- アグリゲート・トランザクションの追加
などが予定されています。
処理速度の向上
この中でも、特に注目されているのがトランザクションの処理速度です。
カタパルトの実装により、ネムの処理速度は毎秒4000件になるとされています。
これは、ビットコインの毎秒7件、イーサリアムの毎秒15件などと比べると非常に高い数値であり、クレジットカードVISAの処理速度に匹敵します。
これが実現すれば、ネムの実用性が高まることにも期待できます。
もっとも、仮想通貨の処理速度はしばしば話題になりますが、長期的に見ればそれほど重要とも思えません。
インターネットの通信速度のようなもので、いずれは処理が速くて当たり前となり、処理速度が大きな強みとされる時期は早晩終わるのではないかと思います。
マルチレベルマルチシグネチャー
マルチシグネチャーとは、定められた複数人の署名によってはじめて送金が可能となるアドレスのことで、ウォレットのセキュリティ性を高めるための仕組みです。
現在のネムには、マルチシグネチャーが備わっています。
これをベースとして、カタパルトではマルチレベルマルチシグネチャーを追加する予定です。
マルチシグネチャーでは、単一の階層で署名を集めて送金しますが、マルチレベルマルチシグネチャーでは複数の階層で署名を求めることも可能となります。
これにより、セキュリティ性がさらに高まります。
アグリゲート・トランザクション
これは、複数のトランザクションをまとめて処理する仕組みのことです。
例えば、AがBに1000XEMを売る場合には、AからBへ1000XEMを引き渡し、BからAへ5000円を引き渡す流れとなります。
このような取引では、Bが1000XEMを受け取ったのち、5000円を引き渡さずに逃げる可能性もあります。
そのような不正を防ぐために、一般的にはエスクローサービスが使われており、第三者がAから1000XEM、Bから5000円を受け取った後、Aには5000円、Bには1000XEMを引き渡すことで取引を成立させています。
つまり、A⇔Bという1回のトランザクションで完結すべきところを、A⇔第三者・第三者⇔Bという2回のトランザクションが必要となっており、第三者には手数料を支払う必要があります。
カタパルトによってアグリゲート・トランザクションが追加されれば、A⇔第三者・第三者⇔Bという複数のトランザクションを、A⇔Bという1回のトランザクションにまとめることができます。
現在普及しているエスクローサービスに手数料を支払うよりも、ネムのプラットフォームを使ったほうが、事務的にもコスト的にもメリットがあるため、ビジネスで活用される可能性もあります。
カタパルトは2018年中に実装を予定されていたものの、具体的な動きは見られませんでした。
期待が大きいアップデートであるだけに、ローンチ計画を3月末に発表することが報じられたことにより、今回の値上がりにつながったものと考えられます。
まとめ
ネムは日本ではよく知られた仮想通貨であり、コミュニティが活発であることでも有名です。
今回も、ネム財団の運営資金要請に対して支援が実行されていることから、コミュニティの結束力が強いことがよくわかります。
また、カタパルトのローンチ計画も気になるところです。
あくまでも計画の発表予定であり、ふたを開けてみなければアップデートがどうなるか分かりませんが、発表によってアップデートが遠くないことが分かれば、さらなる値上がりも考えられます。
3月末、ネム財団の発表に注目しておきましょう。
ただし個人的見解としては、新たな資金調達が必要なぐらい資金が枯渇している状況にあるということは、東証一部上場企業などでいえば、GC(ゴーイングコンサーン)の注意喚起がなされるレベルに達していると考えられ、とても長期的な視点で保有したいとは思えない仮想通貨になってしまったというのが印象です。これからはイベント発生による短期的な利ざやを拾いにいくコインとして認識した方が賢明かもしれませんね・・・。