BinanceがビットコインSVの上場廃止を決定。その背景と影響について

ビットコインSV(BCHSV)

昨年11月、ビットコインキャッシュのコミュニティが対立し、ビットコインABC(現ビットコインキャッシュ)とビットコインSVに分裂しました。

これがハッシュ戦争に発展したことにより、ほとんどの仮想通貨が大幅に下落し、今もその影響から立ち直ったとは言えません。

そして最近、ビットコインキャッシュ周辺の問題が再燃しつつあります。

BinanceがビットコインSVの健全性に問題があるとして、上場廃止を決定したのです。

本稿では、BinanceのビットコインSV上場廃止と、その影響について解説していきます。

BinanceがビットコインSVの上場廃止へ

世界最大手の仮想通貨取引所・BinanceのCEOであるCZ氏は、自身の公式ツイッターを頻繁に更新しており、その発言は業界内外から注目されています。

4月12日、CZ氏の公式ツイッターで、重大な発言がなされました。

それは、ビットコインSVの上場廃止を検討しているという内容です。

Binanceは、世界の仮想通貨取引所の中でも、最も活発に活動しており、ユーザー数も非常に多いことから、Binanceで上場されたり、上場廃止されたりすることによって、その通貨の価格には大きな影響が出ます。

Binanceで上場廃止となれば、ビットコインSVの価値に大きな影響を及ぼす可能性があるため、このツイートは大きな注目を集めました。

そして、この発言から数日後の4月16日、Binanceは正式にビットコインSVの上場廃止を発表しました。

発表によれば、上場廃止は4月22日19時とされており、引き出しなどの対応も7月22日19時を以て終了となるようです。

 

上場廃止の背景

なぜCZ氏が、ビットコインSVの上場廃止を検討するに至ったかと言えば、以下のような理由があります。

ビットコインSV陣営の代表であるクレイグ・ライト氏は、以前より「ビットコインの開発者であるナカモト・サトシは自分である」と主張しており、最近ではCFTC(米先物取引委員会)に対して、自分がナカモト・サトシであることを証明する書類を提出しています。

この主張は信ぴょう性に乏しいことから、イーサリアム創設者であるヴィタリック・ブテリン氏を始め、複数の業界関係者が非難しています。

ブテリン氏に至っては、自身のメディアでライト氏を「詐欺師」と痛罵したこともありました。

これに対し、ライト氏は訴訟を起こそうとしているという情報もあります。

CZ氏は、ライト氏はナカモト・サトシではないと考えており、敵対する人に対して訴訟を起こすなど、トラブルメーカーになっていると考えました。

そして、ビットコインSVのプロジェクトリーダーであるライト氏の素行が悪いことから、プロジェクトそのものの健全性が疑わしいと考え、ビットコインSVの上場廃止を決定したのです。

これまで、Binanceで上場廃止となった通貨はいくつかありますが、その際にプロジェクトリーダーの素行が問題とされたことはありませんでした。

どれも、プロジェクトの進捗に問題があったり、開発レベルに問題があったり、詐欺行為の証拠が見つかったりした場合に、プロジェクトの健全性に問題ありとして上場廃止を決定していました。

つまり、従来のBinanceの方針では、健全性に主眼を置いて、ユーザー保護のために上場廃止を決定していたと言えます。

 

 

仮想通貨業界への影響は?

今回のCZ氏の判断が、果たして正しかったと言えるかどうかについては、微妙な問題でしょう。

これが株式会社であれば、経営者がでたらめと思われる発言を繰り返し、それに対する非難に訴訟で応じ・・・といった問題行動を繰り返していれば、投資家は離れ、結果的には上場廃止ということもあり得るでしょう。

しかし、明らかな違法行為を犯している証拠はなく、経営者がトラブルメーカーというだけであれば、取引所が上場を廃止することはありません。

仮想通貨と株式会社を同列で論じることは困難です。

しかし、上場廃止に伴うCZ氏のツイートなどを見ると、個人的な感情によって上場廃止に至ったと思われかねない部分もあります。

このため、ビットコインSVの支持者達からは、「CEOの感情が取り扱い通貨を左右するのはいかがなものか」といった声も上がっています。

 

価格は大幅下落

また、Binanceの動きは、対象通貨の価格に大きな影響を与えます。

実際、ビットコインSVの上場廃止が発表された後、ビットコインSVの価格は急落しており、発表前後で8000円台から6000円台へと、約25%の下落を見せています。

さらに、Binanceの判断に追従したかどうかは定かではないものの、Binanceの発表後、ビットコインSVの廃止運動が広がっています。

4月17日現在、仮想通貨取引所のクラーケン、仮想通貨ウォレットを提供するShapeShiftやBlockchain.comが、ビットコインSVの廃止を表明あるいは検討しています。

これも、ビットコインSVの価格下落につながったと考えてよいでしょう。

ビットコインSVを取り扱う取引所やウォレットが減少すれば、ビットコインSVの流動性が低下し、価格下落につながると考え、売りに動く投資家が増えたのです。

ビットコインSVを支持し、投資していた人の中には、CZ氏の決断によって損失を被った人も多いでしょう。

このようなことからも、支持者がCZ氏を非難するのは無理もありません。

ビットコインSVの上場廃止が相次げば、この混乱は深まっていくでしょう。

 

 

混乱が広がる懸念

さらに、ビットコインSVを廃止する取引所と、廃止しない取引所で対立が起こる可能性もあります。

CZ氏は、仮想通貨業界に混乱をもたらすライト氏に対して、自身のツイッターで

 

これ以上ナカモト・サトシを自称したり、業界の人間を攻撃すれば、仮想通貨BSVの上場廃止も辞さない

 

と非難しています。

この中には、「これ以上トラブルを起こすなら」という意味も含まれていたことと思います。

しかし、Binanceの上場廃止の判断をきっかけとして、トラブルが広がっていく懸念も出てきています。

ナカモト・サトシを自称するクレイグ・ライト氏、それを非難するCZ氏、そこから上場廃止の動きが起こり、ビットコインSVの価格は大幅下落に至ったということは、仮想通貨業界の一部のキーマンの動きによって、仮想通貨本来の価値とは無関係に、価格が乱高下するということでもあります。

これにより、仮想通貨は投機性が高い、リスクが高い、果たして健全と言えるのだろうか、と疑問視する人も少なくないでしょう。

最近、仮想通貨市場が上向き始めていたところ、また懸念すべき問題が出てきたという印象があります。

 

日本の取引所の動きは?

今回の騒動によって、日本の仮想通貨取引所でも変化が起きています。

日本の仮想通貨取引所では、現在、ビットコインSVを取り扱っている取引所はありません。

昨年11月、ビットコインキャッシュが分裂した際にも、ビットコインSVではなく、付与されるべきビットコインSV相当額の日本円を支払うことで対応すると発表しています。

今回の騒動で大きな動きにでたのは、SBIVCです。

SBIVCは、4月下旬を目途にビットコインキャッシュの上場を廃止すると発表しました。

SBIVCでは、去年11月の分裂騒動の際、BCHのティッカーを引き継いだビットコインABCをビットコインキャッシュとして認めています。

しかし、BinanceがビットコインSVの上場を廃止し、騒動が広がっていることから、再度大きな対立・衝突が起こることを懸念し、ビットコインキャッシュの上場廃止を決定したと考えられます。

SBIホールディングスの北尾社長も、かねてから仮想通貨コミュニティの対立、それによる価格の大幅な減少、仮想通貨業界への影響などに懸念を示してきました。

今回、ビットコインキャッシュの上場廃止を決定したのも、そのような懸念によるものと考えるのが自然です。

このように、BinanceがビットコインSVの上場廃止を決定したことによって、ビットコインキャッシュの上場を廃止する取引所も出ていることに注目しておくべきでしょう。

今後も、思わぬ形でトラブルが発展していく可能性があるため、アンテナを張っておくに越したことはなさそうです。

 

 

まとめ

今回のBinanceの判断については賛否両論であり、果たして正しかったか、正しくなかったかについては、時間が経ってみなければ分かりません。

しかし、この判断によってビットコインSVの支持者がCZ氏を非難していること、ビットコインSVに投資していた人が損失を被っていること、業界内に波紋が広がっていることは事実です。

今後の進展に注目しておきましょう。

 

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