1月16日、ビットコインの大暴落をきっかけに仮想通貨市場のほぼすべてのアルトコインがビットコインに引きずられる格好で急落しました。
この暴落の背景には、世界的に規制が強まっていくことへの恐怖感がある中で、中国が再び大々的な規制強化を始めることが報じられたことが原因だと考えられます。
本稿では、今回の暴落の原因を考察しておきたいと思います。
仮想通貨暴落の背景
1月はじめ、200万円を超えていたビットコインは、8日あたりから下落を始めました。
下落基調がじわじわと続く中、16日から17日にかけて大暴落が起きました。
ビットコイン価格が160万円台から90万円台後半と100万円の大台を割り込むまで急落してしまったのです。
基軸通貨であるビットコインは他の仮想通貨にも影響を与え、アルトコイン全面安の様相となりました。
時価総額第2位のイーサリアムは10万円の大台を割り込み、最近何かと話題の時価総額第3位のリップルも100円の大台を割り込んでしまうという異常事態でした。
なぜこのような暴落が起こったのかと言うと、世界的に仮想通貨を規制する流れが出てきていることに原因があります。
昨年は中国の大々的な規制によって大暴落を経験し、そこから復活した仮想通貨市場は急激に市場を拡大させていきました。
しかし、12月半ばにはフランスがG20サミットでビットコイン規制の意向を示し、先日も当サイトで紹介した通り、韓国でも仮想通貨全面禁止の報道が出て話題となりました。
韓国の仮想通貨全面禁止については、その後撤回の報道があって沈静化しましたが、それでも世界的に仮想通貨が規制の波にさらされていくのではないかと言う懸念があり、投資家心理には恐怖が芽生えてきています。
そして1月15日には、ドイツ中央銀行のヨアヒム・ビュルメリング理事が、ビットコインを初めとした仮想通貨の規制を、世界規模で行なうべきだとの考えを示しました。
確かに、現在の仮想通貨市場は無法地帯の感があります。
市場で行われる価格操作にも罰則がありませんし、小さな取引所では横領が行われる懸念があったり、取引プラットフォームのセキュリティの脆弱性が指摘されることもあります。
また、マネーロンダリングに利用されていることは、随分と長く議論されてきました。
このほか、仮想通貨を利用した詐欺も多発しています。
このような問題を抱える仮想通貨市場が発展していくためには、規制は不可避です。
非中央集権的なビットコインは、政府の規制を受けにくいとされてきましたが、実際に規制しようとしてできないわけではありません。
それでも、仮想社会には国境という概念が通用しないため、各国がバラバラに規制していたのでは効果が薄いので、世界規模で足並みをそろえて規制していこうとする動きが出てきているわけです。
現在、各国の規制は対応が様々に分かれています。
しかしながら、どの国でも緊急に対応を迫られているのは事実でしょう。
もっとも、一口に規制と言っても、大きく分けて二通りに分けられます。
一つは仮想通貨市場の発展に寄与しますが、もう一つは仮想通貨市場を失速させるものです。
つまり、
“#fff”]1、
仮想通貨を基本的には受け入れるものの、仮想通貨のリスクを投資家に警告し、不正取引やマネーロンダリングを厳しく取り締まりながら、環境を整備していく。
これによって、仮想通貨市場に一時的な障害になる可能性もあるが、長期的には市場の発展に寄与する。
“#fff”]2、
仮想通貨を基本的に受け入れない。
既存の金融システムや国民保護のために、仮想通貨を完全に禁止する。
これによって、仮想通貨市場の成長が鈍化する、あるいは壊滅する。
仮想通貨は国境を問わないものであり、一方で国ごとに法律や経済環境が異なります。
そこで、世界規模での対応が検討されているわけです。
もし、上記1のように仮想通貨を受け入れることを前提として、世界規模の規制を行なっていくならば、仮想通貨市場は発展していくことと思います。
しかしながら、上記2のように仮想通貨を受け入れないことを前提として、仮想通貨を完全に禁止する方針で世界規模の規制が行われれば、仮想通貨市場は壊滅することでしょう。
中国が仮想通貨を全面的に禁止した時、仮想通貨市場は大暴落しました。
韓国が同様の対応をした場合にも、同レベルの影響をもたらすと予測されていました。
このように、取引規模の大きい一国が仮想通貨禁止の姿勢を見せただけで、市場は大きく動揺します。
これが世界的なレベルで行われるとなれば、仮想通貨が価値を失うのは火を見るより明らかです。
中国の影響は未だに健在
昨年9月の大暴落は、中国の規制強化によって起こったものでした。
中国の影響力はいまだ健在です。
上記のように、世界的な規制の流れによって、投資家に恐怖心が芽生えてきたところで、中国が仮想通貨の規制を強化する予定であると報じられたことが、今回の暴落の直接的な要因であったと考えられます。
この規制強化では、仮想通貨への監視を一層強化するものです。
中国当局は、中国国内から取引を行なうことができる、国内外の仮想通貨取引所へのアクセスを遮断することも検討しているといいます。
現在の中国では、国内の全てのネットワークを国に管理されており、国外では利用できるインターネットサービスが中国国内では一切使えないという状況が珍しくありません。
ですから、当局がその気になれば、仮想通貨関連の全てのアクセスが不可能になることも、ありえないとは言い切れないでしょう。
これまでの規制は、ICOや主要取引所の運営を禁止するなどの措置であり、主に取引所の運営に関する規制でした。
しかし、ネットワークそのものへの規制となると、中国人投資家の置かれる状況はさらに厳しいものとなります。
現時点では、仮想通貨の個人間取引は対象外になるとしています。
しかし、裏を返せばそれ以外の取引は規制の対象になるという可能性もあります。
ロイター社の報道によれば、中国人民銀行のPan Gongsheng氏は、プロバイダーを介する取引を完全に規制すべきとすることを促しているそうです。
またPan氏は、今後、多くの仮想通貨取引所やビットコインサービスをターゲットとして、規制を強めていくことを示唆しています。
この他にも、インターネットにおけるアクセスの制御、中国国内のユーザーに仮想通貨取引を提供している取引所とモバイルアプリの検閲も行うことが示唆されており、強烈な規制が布かれる可能性があることが分かります。
世界規模での規制の流れがあり、中国が真っ先に規制強化に乗り出そうとしています。
中国の規制によって、規制の前例ができてしまい、この規制が世界規模での規制に多少なりとも影響を与えるならば、仮想通貨市場の成長に水を差す可能性が高いです。
仮想通貨市場の暴騰や暴落の背景を正確に把握することは難しい側面がありますが、今回の暴落は、おおよそ以上のようなことを背景として起こっているのではないかと考えられます。
まとめ
このような世界規模の取り組みには、今後も注視していく必要があるでしょう。
特に、日本も参加するG20サミットには注目です。
2018年4月にも、G20サミットがアルゼンチンで行われるため、大きな動きに備えておきたいものです。