仮想通貨市場の行く末を予測していくためには、世界各国の規制の動きを正確に把握していく必要があります。
ここ短期間のうちに、韓国・中国・アメリカといった仮想通貨主要国で、規制や方針が発表されましたので、ここでまとめておきたいと思います。
韓国:公務員の仮想通貨保有・取引を禁止
今回出たニュースの中でも最も気になったのが、韓国政府の発表です。
3月1日の韓国新聞社であるMKNの報道において、韓国国内では、公務員の仮想通貨保有・取引を禁止するという発表をしました。
なお、全ての公務員に対して一律に仮想通貨の保有と取引を禁止したのは世界初です。
発表によると、
“#eee” radius=”20″]公務員は、公務員法によって自制の義務を負っている。
仮想通貨取引にかかわった公務員は懲戒処分とする。
とされています。
この発表を額面通りに受け取るならば、仮想通貨取引を行なうことは自制の義務を怠ったということになります。
つまり、
“#eee” radius=”20″]仮想通貨ブームによって利益を求める人が世界中で増加している昨今、公務員たる者は私利私欲に奔らず自制せよ。
仮想通貨を保有した時点でその兆候ありとみなし、懲戒処分を下す。
ということにも受け取れます。
保有までも禁止するとなればかなり厳しいようにも思えますが、現時点では仮想通貨を実生活で活用する機会は少なく、法定通貨の方がはるかに利便性が高いため、保有している時点で取引前提の行為と考えるのが普通です。
だからこそ保有さえも禁止しているのでしょうが、かなり徹底したやり方だと言えるでしょう。
もとを正せば、仮想通貨は本来、投資のためのものではなく、通貨として生まれたものです。
仮想通貨を、実生活で活用していく人が増えていかなければ、本来の意味での仮想通貨の普及はあり得ません。
投資だけならばまだしも保有まで無暗に禁止してしまうと、仮想通貨の存在意義が疑われることにもなりかねません。
しかし韓国では、公務員が保有することを許しておらず、仮想通貨が「技術的に優れており、生活を豊かにしてくれる手段」としてではなく、「投機のための手段」と国として認めたような印象さえあります。
確かに、韓国は2018年2月のデータを見てみると、世界第3位の取引量を誇っています。
仮想通貨に対する規制が整備されておらず、実用化もしていない、価格も定まっていない状況で仮想通貨を取引するとなると、投資というよりも投機の意味合いが強くなってきます。
韓国政府は、この状況を改善するために、今回の発表に至ったものと思います。
また、2018年1月、韓国の金融監督院の高官が、仮想通貨のインサイダー取引で告訴されたことも、今回の発表に大きな影響を与えているものと推測されます。
ちなみに韓国政府は、2017年12月に仮想通貨の全面禁止を発表し、後に撤回しており、その際には仮想通貨の保有・取引に圧力はかけないとしていました。
しかし、今回のような発表に至っていることを考えると、仮想通貨の価値や意義が定まっていない現時点においては、政府の方針がコロコロと変わるのは仕方がないことなのかもしれません。
「あの国がこんな発表をした」というようなニュースはしばしば出てきますが、それがその国の絶対的な方針とは思わない方が良いでしょう。
国の方針は変わるものですし、特に暗中模索で規制している仮想通貨においては、短期間のうちに大きく方向転換が行われる可能性も十分にあると思います。
中国:WeChat上での仮想通貨取引を禁止
中国で最も普及しているチャットアプリにWeChatというものがあります。
これは中国国内最大手の通信会社であるTencent社が提供しているものです。
チャットの他に無料通話もできますから、日本におけるLINEと同じようなものだといえるでしょう。
3月6日のニュースによると、中国の規制当局は、WeChat上での仮想通貨取引を禁止することを発表しました。
取引が発覚したアカウントは停止・削除されるとのことで、これによって仮想通貨取引の抜け道をどんどん断っていく方針のようです。
中国では、2017年9月に仮想通貨取引を全面的に禁止する指令を出し、取引所にも取引停止を命じてきました。
それでも、中国国内の一部の投資家は、オフショア取引によって国外の取引所で取引を行なっていました。
チャットアプリ上での仮想通貨取引というと、日本人にはあまり馴染みがなくイメージが沸かないと思いますが、この取引に利用されていたのが、WeChatだったのです。
これを問題視した規制当局は、WeChat内での取引を監視した結果、WeChatでの仮想通貨取引を一切禁止すべきだという結論に達したようです。
独裁体制を築くためには、文化大革命のような歴史的大事件も起こした中国共産党のやり方を考えると、仮想通貨への弾圧は今後も続くように思われてなりません。
ただし、中国政府は、あくまでも仮想通貨取引の投機に否定的な見解を示しているのであり、仮想通貨の技術的な面は支持しています。
国家主導で仮想通貨を発行しようという動きがあるようですし、国家が管理する仮想通貨取引プラットフォームを作ろうとしているという噂もあります。
仮想通貨と、その根底となっているブロックチェーン技術が認められていることが、せめてもの救いと言えるでしょう。
アメリカ:証券取引委員会(SEC)が仮想通貨取引所を規制
アジアからアメリカに目を転じてみると、アメリカでは、セキュリティ・トークンに対する規制が発表されました。
セキュリティ・トークンとは、配当あるいは価格上昇による将来的な利益が期待されるトークンのことです。
簡単に言えば現在はプラットフォームが未完成であるが、ホワイトペーパーやロードマップを発表するなどしてトークンセールを行った、いわゆるICOトークンのことです。
セキュリティ・トークンは連邦証券規制の対象となっています。
3月7日の発表によれば、取引プラットフォームにおいてセキュリティ・トークンを取り扱っている仮想通貨取引所は、潜在的に違法営業をしているとみなすとしました。
具体的には、以下のように発表されています。
“#eee” radius=”20″]取引プラットフォームにおいて、セキュリティ・トークンとみなすことができる仮想通貨を取り扱う場合には、SEC(アメリカ証券取引委員会)に登録するか、登録の免除申請をしなければならない。
SECには投資家保護という使命がある。
連邦証券法に基づき、今後もプラットフォームへの規制を行なっていく。
なお、SEC議長のジェイ・クレイトン氏によると、現在発行されている仮想通貨の大部分が、セキュリティ・トークンとしての要素を持っているといっています。
セキュリティ・トークンに対する規制は、既に上場しているトークンと、これからICOによってトークンセールを行うものの両方に対して行われます。
これを受けて、3月9日には、BittrexからMaidsafe Coinが上場廃止となっています。
Maidsafe Coinのように未完成のまま上場している仮想通貨は多数存在しており、今後、上場廃止が相次ぐ可能性が噂されています。
まとめ
仮想通貨に対する整備がなされていない現在、色々な規制が手探りの中で進められています。
規制の中には、仮想通貨市場の将来のために好ましいものもあれば好ましくないものもあるでしょう。
どちらにしても2018年は仮想通貨の規制元年として今後も法的整備が進むことになりそうです。
仮想通貨市場に大きな影響を与える規制も中にはあることを念頭に置いてリスク管理には気をつけましょう。