仮想通貨の根幹となる技術は、ブロックチェーンです。
仮想通貨は、ブロックチェーンによってすべての取引履歴を確実に記録することができ、その改ざんも不可能となっていることから、非常に高い安全性を保つことができているのです。
しかし、ビットコインの誕生と共に生まれたブロックチェーンも、今では仮想通貨以外のあらゆることに応用されようとしています。
それらの取り組みを知れば、より深くブロックチェーンの仕組みや可能性を知ることができ、仮想通貨の理解も深まることでしょう。
本稿では、ブロックチェーンの最前線を紹介していきます。
ビットコイン2.0とは?
仮想通貨の中でも、最も大きな時価総額を誇り、最も知名度が高いビットコイン。
ビットコインの登場によって、インターネット上では管理者を置くことなく、価値のやり取りが可能となりました。
しかし、この技術の使い道は通貨に留まりません。
ビットコインに使われているブロックチェーン技術を使えば、仮想通貨以外のことにも可能性が大きく広がるのです。
そのように、様々な用途へ応用しようとする動きの事を、ビットコイン2.0(ブロックチェーン2.0と呼ぶこともある)と言います。
ビットコイン2.0の活用として、現在注目されているのは独自通貨の発行、そしてスマートコントラクトです。
独自通貨の発行とは、それぞれの用途に合わせて、独自の通貨を発行することです。
ビットコインと同じくブロックチェーンをプラットフォームとして活用することで、誰でも簡単にそれが可能となります。
取引所で売買することも可能です。
スマートコントラクトとは、様々な資産を、定められたルールに従って自動的に移転させる仕組みのことです。
スマートコントラクトには、ビットコインのブロックチェーンではなく、独自のブロックチェーンが使われます。
従来のビットコインでは、単にデジタルに価値の交換を行なうだけでしたが、ビットコイン2.0では、その交換に様々な条件を付けることが可能となりました。
これによって、不動産の登記や契約といった様々な手続きが自動化できるほか、車のシェアリングエコノミーなども自動化される可能性があります。
企業経営にブロックチェーンが応用されることによって、現在とは全く異なる未来が作られるかもしれないのです。
ブロックチェーンで行政も変わる
ブロックチェーンを使えば、企業経営が大きく変わるかもしれません。
しかし、企業よりもずっと大きな組織、すなわち政府の運営も変わっていく可能性があります。
実際に、各国政府はブロックチェーンに注目しています。
例えば、ウクライナでは、政府が民間の企業と共同で、議決投票システムにブロックチェーンを応用し、開発を進めています。
ブロックチェーンを用いて投票を行なえば、投票結果を操作することは不可能となります。
また、陳述書などもブロックチェーンで作成していけば、改ざんが不可能になります。
このように、ブロックチェーンと行政をリンクさせることによって、政府の運営や選挙が非常に透明化されるのです。
ベルギーでも、ブロックチェーンを活用した行政サービスの試験が始まっています。
これは、ベルギーのアントワープ市で行われている「デジタル・アントワープ」という取り組みで、出生証明書や住民票、生涯学習、公共意思決定などの行政サービスにブロックチェーンを活用しようとするものです。
例えば、私たちは現在、引っ越しをすれば役所に出向いて住民票の移転手続きをしなければなりませんが、役所が開いているのは平日の17:00までであり、社会人が利用しにくいなどの難点がありました。
しかし、ブロックチェーンによってこれらの情報を管理し、パソコンやスマホから申請することによって、簡単に住民票を移転することが可能となります。
出生証明書や婚姻届け・離婚届けなども同様です。
また、高校や大学の卒業証明などもブロックチェーンで管理すれば、手続きがもっと簡単になります。
これによって、行政は大幅に簡易化されることでしょう。
エストニアでは国民の医療データの管理を、ブロックチェーンで行う試験が進められています。
スウェーデンでは、不動産登記にブロックチェーンを応用しようとする取り組みがあります。
このように、世の中には透明度が求められることや、情報量が膨大で管理や手続きが煩雑になる業務がたくさんありますが、それらにブロックチェーンを活用すれば、情報の管理は簡単になり、また情報の改ざんなども不可能になるため、透明性や防犯性が高くなります。
そんな世の中が来れば、些細な手続きにたくさんの時間を取られることがなくなり、その分の時間を活用できるようになるでしょう。
非常に魅力的なことではありませんか。
スマートコントラクトとイーサリアム
仮想通貨で時価総額第2位の地位を築いているイーサリアムですが、正確にはイーサリアムとはプラットフォームの名前であり、その中で使われる通貨の名称は「イーサ」です。
ビットコインが誕生した数年後、2013年に論文が発表され、2014年にはプログラムに落とし込まれてイーサの販売も始まりました。
イーサリアムの最大の特徴は、スマートコントラクトという概念です。
スマートコントラクトとは、直訳すれば「賢明な契約」とでも訳すのでしょうが、その名の通り、契約の条件や内容、プロセスなどをブロックチェーン上に記録することです。
これによって、第三者を介さずに、自動的に契約の管理が可能となります。
そして、契約条件その他の確認は、全てインターネット上で可能です。
スマートコントラクトは、まだまだ新しい概念ですから、今後の発展が期待されています。
その発展の一つの形がDAO(ダオ)です。
DAOとは、自律分散型組織のことであり、中心に管理者や役員がおらず、自律的に、分散型での統治が行われる組織のことを言います。
後述する事件にまつわる投資ファンド「ダオ」も、「ダオ」という名前のファンドが存在したのではなく、DAOという概念を持った投資ファンドが誕生したと考えると良いでしょう。
ビットコインよりも新しい概念を持った組織形態です。
DAOにおいて、管理者や役員に変わって中心となるのは、ルールやプロトコルや契約です。
ビットコインにも管理者は存在していませんが、中心にはネットワークシステムが機能するためのプロトコルがあるだけです。
しかし、DAOは契約やルールも中心に据えて、機能しているのです。
今後も、ビットコイン以外に、概念を発展させた組織や仕組みが生まれてくると思います。
ちなみに、DAOに関連してDAC(ダック)という単語を耳にすることがあるかもしれません。
これは、自律分散型組織の中でも、とりわけ会社組織を指した言葉です。
DACでは、中心に社長や重役といった人間がおらず、システムに則って自動的にビジネスを回していきます。
将来的に、企業のあらゆる経営が、DACのようなシステムによって運用される時代が来るかもしれません。
これまでは機械化によって、それまで人がしていたことをロボットにやらせるという流れで組織改革が進んできましたが、もはや経営そのものが自動化される未来が見えつつあるのです。
私などは、そのように自動化されてしまうと、人間の存在意義はどうなるのだろう・・・と心配にもなりますが、これまでの歴史の中でも、人間の労働力を機械などが大きく代替した時にも、人間は自己を活かす場所を何とか見つけてきました。
スマートコントラクトによって、あらゆることが自動化されたとしても、人間の存在意義はどこかに見出せるものなのかもしれません。
実際、DAOにトラブルが起きた時、トラブルの収束へ向けて動いたのも人間です。
では、DAOのトラブルとは何だったのでしょうか。
DAOは、事業投資ファンドであるクラウドファンディングを利用して、150億円分ものイーサを集めました。
クラウドファンディングで調達された額では世界最高であり、このプロジェクトの行く末には多くの人が関心を払っていました。
期待が大きかったからこそ、150億円もの資金が集まったわけですが、当初はその期待に反することなく、システムも順調に機能しましたし、様々な投資プロジェクトも立ちあげられていました。
しかし、DAOのプログラムには脆弱な部分があり、ハッキングによって75億円ものイーサが盗まれることになりました。
これによって、DAOのシステムは崩壊してしまったのです。
その資金を取り戻すためにDAOが行った処置は、ハードフォークという処置です。
これは、事件直前の情報に巻き戻し(つまり、本来はやってはいけないブロックチェーンの巻き戻しを行ない)、そこから新しくブロックチェーンを構築することによって、事件をなかったことにしようとするものです。
しかし、ハードフォーク後にもハードフォーク前のブロックチェーンにおける、旧イーサリアムに値段がついてしまうなど、かなり後味の悪い結果になってしまいました。
各中央銀行の取り組み
ブロックチェーンに注目しているのは、企業や行政の他にも、各国の中央銀行が挙げられます。
例えば、イングランド銀行では、すぐに仮想通貨を取り入れることはないものの、銀行の決済システムにブロックチェーンを取り入れることは、非常に役立つだろうという見解を示しています。
また、各中央銀行が独自に仮想通貨を作る動きも出てきています。
例えば、スウェーデン国立銀行では、仮想通貨の検討をすでに開始していますし、カナダではCAD-coinという仮想通貨を発行するとしています。
オランダの中央銀行でも、ブロックチェーンを用いて独自の仮想通貨を作ろうとしています。
中国においても、中国人民銀行が独自の仮想通貨を作る計画を発表しています。
シンガポールの中央銀行は、三菱UFJフィナンシャル・グループや、その他の金融機関と、24時間対応の送金サービスを行なうためのテストを開始しています。
ならば日本銀行はどうかというと、欧州中央銀行との共同研究に取り組んでおり、ブロックチェーンを活用することによって、現金を使った犯罪の軽減と税金の取立を確実にすることを目指しており、また金融政策に役立てることも見据えています。
日本国内のメガバンクの取り組み
銀行は、仮想通貨の台頭を危険視しています。
なぜならば、仮想通貨はインターネット上でやり取りでき、送金コストも非常に安いからです。
特に国際送金などでは、現状では銀行を使って送金するのが主流であり、そのための送金手数料は非常に高くなっています。
送金コストの安さから、多くの人が仮想通貨を利用することになれば、銀行は送金手数料による収益を大きく損なうことになります。
また、仮想通貨が今後進化していき、様々な用途で使われるようになれば、現在銀行が行っている業務の大半を仮想通貨とブロックチェーンで行うことができるようになる可能性もあります。
そのため、銀行は仮想通貨の流行を危惧しています。
しかし、メガバンクなどの大きな銀行になると、どうせそのような時代の流れは止められないのだから、銀行側からその技術を取り込んでやれという気概で、ピンチをチャンスに転じようとする動きもあります。
例えば、メガバンクが独自に仮想通貨を発行して、ビジネスを拡大していけば、生き残りの道が見えてくるかもしれません。
独自に作った仮想通貨を用いて、短時間で送金できる、送金手数料が非常に安いなどのメリットによってサービスの質が向上し、そこにメガバンクとしての従来の信用も寄与すれば、銀行を利用したいと考える人は増えるかもしれません。
実際、2017年5月、三菱東京UFJ銀行では、「MUFGコイン」という独自に発行する仮想通貨を、試験的に導入しています。
現在の発表では、2018年度中に本格的に実用化され、一般向けにも発行が始まるそうです。
みずほフィナンシャルグループも、「みずほマネー」という独自の仮想通貨を開発しています。
みずほフィナンシャルグループでは、いずれは利用者同士が、スマホを通じてお金のやり取りをできるようにするなど、仮想通貨を活用した決済サービスを開始することを検討しているそうです。
このほか、銀行では中央サーバーによって情報の管理や取引の記録を行なっているのですが、それをブロックチェーンに切り替えることも検討されています。
というのも、中央サーバーで管理するためには、サイバー犯罪に対抗するための強固なセキュリティが必要であり、それを構築するために多額のコストがかかるからです。
しかし、ブロックチェーンではその必要がないため、大幅なコスト削減につながることが期待されているのです。
私たち利用者にとっても、仮想通貨とブロックチェーンが銀行に取り入れられ、サービスが向上すれば嬉しいことです。
地方銀行でも取り組みが進む
メガバンクだけではありません。
地方銀行でも、中央銀行やメガバンクに続いて、ブロックチェーンの応用を模索している状況です。
地銀と言っても、規模の大小は様々ですが、比較的多くの地銀で取り組みが進んでいます。
例えば、全国の地銀とネット銀行の計47行で組織された「国内外為替の一元化検討に関するコンソーシアム」が発足しています。
これは、ブロックチェーン技術を活用して、24時間365日に渡って即時送金が可能であり、しかも手数料は割安になる、利用者にとってもメリットの大きい取り組みです。
現在の送金手数料では、小口の決済になると、手数料の比率が高くなるため、小口の決済はしにくかったものです。
また、送金にしても、銀行営業時間内に送金しなければ、着金は翌日になるというシステムですから、お金の流れは実にのんびりとしたものです。
しかし、金融機関で広くブロックチェーンが取り入れられれば、もっと快適な利用ができるようになるでしょう。
地銀の中でも、特に静岡銀行の動きは注目に値します。
静岡銀行は、マネックスグループや富士市の吉原商店街振興組合などと協力し、ブロックチェーンを活用した地域活性化に取り組んでいます。
そもそも、地銀の融資先の多くは地元企業であることからもわかる通り、地銀は地方密着型の方針を取っていることがほとんどです。
だからこそ、静岡銀行は、銀行の力によって地域を盛り上げるために、ブロックチェーンの活用を勧めているのです。
例えば、ブロックチェーン技術を応用したお買い物補助ポイントサービスがあり、これはスマホ上のウォレットにポイント型クーポンを配信することによって、地元商店街での買い物を促そうとするものです。
ブロックチェーンをクーポンと連動させる取り組みは、全国初です。
将来的には、この静岡銀行のようなスタンスで、地域密着でブロックチェーンを活用する地銀が増えていく可能性があります。
例えば、地銀が独自に仮想通貨を発行し、地域経済の活性化のために使えると言った仕組みです。
どのような取り組みが行われていくか、大変興味深いところです。
ブロックチェーンでビジネスが変わる
最近、様々なものをシェアする動きが世界的に高まっています。
車のライドシェア、つまり相乗りは海外ではかなり広まっていますし、複数人で車をシェアするカーシェアは日本でも次第に広がってきました。
中国では、自転車のシェアサービスの利用者が1億人にも上るそうです。
空き部屋をシェアするAirbnbなどは、日本ではまだ法的整備が進んでいないために難しい部分はありますが、それでも活用したいと考えている不動産のオーナーは大勢います。
限りある資源、あるいは余っている資源を有効活用するというのが、シェアリングサービスの基本的な理念です。
現代人の考え方に沿っているため、急速に普及しています。
このシェアリングサービスに、ブロックチェーン技術を応用しようとする動きがあります。
例えば、La’Zooz(ラズーズ)という構想があります。
これは、分散型のライドシェアを目指すサービスです。
現在ライドシェアでは、管理者がいるため手数料が発生しているのですが、そこにブロックチェーン技術を応用して管理者を廃し、プログラムによって運営を行なうのです。
サービス内ではZoozという独自の仮想通貨を使うことを検討しています。
ライドシェアに車を提供する人に対しては、報酬としてZoozが支払われるという仕組みです。
他にも、Storj(ストレージ)という構想があります。
これは、分散型のクラウドストレージサービスです。
クラウドストレージとは、インターネット上でデータを保管するサービスであり、Dropboxなどは多くの人が知っていると思います。
仮想通貨にブロックチェーンを使う場合、マイナーが取引情報を共有して、防犯などに役立てています。
これと同じように、クラウドストレージでもブロックチェーンを応用することで、ユーザー間でデータを共有することができます。
情報をたくさん保存したいユーザーが、自分の空き容量が一杯になった場合、他人の空き容量に保存することもできるわけです。
もちろん、他人の空き容量に自分のデータを保存しても、そのデータ自体は暗号化されているため、ファイルの所有者だけしか見ることができず、セキュリティ面での心配はありません。
自分の空き容量に、他人のデータの保存を受け入れたユーザーは、SJCXという仮想通貨を受け取ることができます。
このように、ブロックチェーンでビジネスが変わっていきますが、シェアリングエコノミーとブロックチェーンの相性は抜群に良いといってよいでしょう。
ハイパーレッジャープロジェクト
ブロックチェーン技術の推進のために、2016年2月にハイパーレッジャープロジェクトという共同事業体が発足しました。
世界中の多くの企業がかかわっているプロジェクトであり、有名どころを挙げるならばJPモルガン、日立、IBM、富士通、インテル、R3などが参加しています。
世界の名だたる企業が参加していることからも、この事業体の本気度が窺えようというものです。
このプロジェクトの目標は、ブロックチェーンをより簡単に事業に活用できるように、オープンソース環境を開発することにあります。
現在のブロックチェーンは、ビットコインと同時に開発されたものであり、主に仮想通貨の流通を前提として作られています。
そこで、ハイパーレッジャープロジェクトでは、ブロックチェーンをあらゆるビジネスに活用できる形にしようと開発に励んでいるわけです。
このプロジェクトのブロックチェーンは、実際に活用されています。
例えば、イギリスのエバーレッジャーはこのプロジェクトのスタートアップ企業です。
エバーレッジャーでは、ビジネス向けに開発されたブロックチェーンによって、ダイヤモンド鉱山から購入者に至るまでの全取引を記録し、追跡を可能とし、認定書などの管理にも役立てられるようになっています。
これによって、透明性の高い取引が可能となり、購入者も安心して購入できるのです。
このように、ビジネスにブロックチェーンを活用しようとする動きは、かなり現実性が濃厚になってきています。
IoTもブロックチェーンで加速
最近、IoTという言葉を聞くことが多くなってきました。
IoTとは「Internet of Things」の略であり、様々なモノをインターネットに連携させるという概念で、モノのインターネットともいわれています。
IoT自体、まだまだ普及の途上だったのですが、このIoTがブロックチェーン技術によって、早くも進化しようとしています。
従来のIoTでは、デバイスから情報が送信され、その情報を中央集権的にコントロールするものでした。
だからこそ、システム管理の運営コストがかかるという問題がありました。
ここまで読んできた皆さんは、もうピンときたでしょう。
この、従来の中央集権的性質を、ブロックチェーンの活用によって大きく改善するのです。
すなわち、ブロックチェーンによってシステムを運営することで、運営コストを大幅に引き下げ、セキュリティもより強固なものにするのです。
IoTとブロックチェーンの組み合わせは、実用化の日も近そうです。
セゾン情報システムズとGMOインターネットグループは、共同で宅配ボックスの試験を開始しています。
IoTとブロックチェーンを組み合わせることによって、本人だけが受け取れる宅配ボックスを開発しているのです。
宅配ボックスは、まだまだ普及の途中ですが、宅配業者の再配達の手間を省き、また受取人も配達されるタイミングで在宅の必要がないことから、運送業界からも、消費者からも望まれているものです。
望まれているからこそ、マンションなどに設置すれば物件価値が高まるため、不動産業界でも導入が進みつつありました。
しかし、宅配ボックスには難点がありました。
それは、配送先を間違ってしまったり、宅配ボックスに入れた荷物が盗難に遭ったりすることによって、荷物が紛失する恐れがあることです。
そこで、ブロックチェーン技術を応用すれば、本人だけが受け取るシステムが可能となるのです。
ブロックチェーンでは、取引の流れや商品の流れ、契約の流れと言った、様々な「流れ」と「履歴」を記録するのに長けています。
その特徴を活用すれば、商品の流れをブロックチェーン上に記録し、宅配業者が確実に把握した履歴も残し、受取人はスマホを使って本人が受け取った記録を残すことができます。
もし、誤配達や盗難があれば、ブロックチェーンの記録をさかのぼって確認することで、トラブルが起こった時点を特定することができます。
そうなれば、宅配ボックスによって宅配の効率が上がるだけではなく、紛失した荷物を追って面倒な業務をこなす必要もなくなります。
このほかにも、保険会社の取り組みとして、自動車の利用者の運転内容をブロックチェーンに記録していき、正確な自動車保険料を割り出そうとする動きもあります。
これならば、本当は危険な運転をしていて、運よく事故を起こしてこなかった人に割安な保険料を適用してしまうことも無くなりますし、極めて安全運転に努めていて、運悪く事故を起こしてしまった人に割高な保険料を適用してしまうことがなくなります。
また、わざと事故を起こして保険料をだまし取ろうとする保険金詐欺も不可能になりますし、本当に事故を起こした人が事故を証明することも容易になります。
現在の保険制度では、事故の現場を直接見ることができないため、「この事故は5:5だ」とか、「いや6:4だ」とか揉めて、なかなか保険料が下りずに困ってしまうこともあります。
ブロックチェーンに記録されれば、そのようなことも少なくなるでしょう。
ブロックチェーンの「すべて間違いなく記録され、改ざんもできない」という技術が、様々なビジネスシーンで活用できることがよくわかると思います。
音楽業界もブロックチェーンで変わる
ブロックチェーンのビジネスへのあらゆる応用のうち、皆さんの日常生活にも密接な関係にある「音楽」にも応用が検討されています。
例えば、Uproovというアプリがありますが、このアプリでは、ブロックチェーンが用いられています。
すなわち、ブロックチェーンを利用しているため、アプリを通じて投稿された映像や音楽、画像などには全て著作権を適用することができるのです。
もし、自作の音楽をアップしたところ、それが他人の動画内などで勝手に使われていたならば、ブロックチェーンに記録されている確かな記録をもとに証明することができます。
ブロックチェーンをこのように活用することは音楽活動をする人ばかりでなく、写真家などにもありがたいサービスになることでしょう。
ほかにも、dotBCというシステムでは、特に音楽に特化しています。
音楽ファイルの中に、権利者や、それに関わる人の収益配分などを全て埋め込み、ブロックチェーンに記録しておきます。
このシステムは、2016年8月にすでに公開されています。
dotBCの仕組みをもう少し詳しく解説しておくと、dotBCでは、権利者や権利者間の収益配分などの情報、すなわちメタデータを音楽ファイルに埋め込みます。
このファイルがブロックチェーンに紐づけされることによって、その音楽がダウンロードされたときや、テレビで放送されたとき、カラオケで歌われたときなど、収益が発生する様々なタイミングで効果を発揮します。
つまり、権利関係がブロックチェーンに確実に記録されており、対価の計算と支払いが自動で行われるのです。
もともと音楽業界では、著作権の移転や権利関係や収益配分などで、トラブルになることが少なくありませんでした。
しかし、ブロックチェーンの活用によって、それも解決されようとしているのです。
電力取引にもブロックチェーン
ブロックチェーン技術は電力取引にも活用されようとしています。
といっても、これは企業間取引ではなく、個人間取引です。
すなわち、自宅などに太陽光発電システムを導入し、発電した電力を、他の家に直接販売することができるのです。
実際、アメリカでは実用化されており、2016年4月にはイーサリアムを介して、ブロックチェーンを使った電力の個人間取引が行われました。
これは、ブロックチェーンを用いた電力の個人売買では最初の事例となりました。
このような電力の個人間取引は、クリーンエネルギーのスタートアップ企業と、分散型アプリケーションのスタートアップ企業が共同で開発したものです。
この会社のシステムを使うことで、電力会社や個人宅やその他の、ありとあらゆる施設で発電された電力を、イーサリアムのブロックチェーン上で記録することができます。
そして、仮想通貨によってやり取りすることで、各家庭の間で電力の売買が可能となりました。
これまで、太陽光発電で発電した電力は、その時に決められていた売電価格で電力会社が買い取りを保証していました。
日本でも、太陽光発電の普及が始まった当初はかなり高い価格での買取りが保証されていましたが、今ではすっかり低迷しています。
しかし、この仕組みを使うことで、電力を様々な価格で売ることができます。
売る側は、電力会社の買取価格より高く売ることができ、買う側は電力会社から買うよりも安く買うことができます。
各家庭で発電された電力が、ますます有効活用されるようになるでしょう。
日本でも、既に電力自由化が始まっています。
この基盤があれば、どこから電気を買っても基本的には自由なのですから、個人宅から電気を買う時代が来るかもしれません。
ハイパーレッジャープロジェクト「いろは(Iroha)」とは?
では、最後に「ハイパーレッジャープロジェクト」の注目プロジェクトである「いろは(Iroha)」についてみておきましょう。
既にハイパーレッジャープロジェクトについては触れましたが、なかでも注目されているプロジェクトが、スタートアップ企業のソラミツが推進する「いろは」というものです。
名前からも日本らしさがうかがえますが、「いろは」は日本を代表するブロックチェーン系ソフトウェアとして、日立製作所、パナソニック、NTTデータなどの協力もあり、順調に開発が進んでいます。
ちなみに、ソラミツでは身分証明のためにブロックチェーンを用いるプラットフォームの開発も進めています。
皆さんも、人生の様々な場面で身分証明を要求され、その度に身分証明で必要とされる情報が異なることもあり、煩わしく感じたことがあると思います。
しかし、ブロックチェーンを使うことで身分証明の標準化がなされ、さらに各人の情報がブロックチェーンに記録されるようになれば、身分証明がかなり簡単になることでしょう。
まとめ
本稿で紹介してきた通り、ブロックチェーンは様々なことに応用されようとしています。
当初は、仮想通貨のために開発されたブロックチェーンでしたが、そこにはあらゆる可能性が秘められていたのです。
そのことが、本稿を通じて分かったと思います。
ブロックチェーンという技術によって、私たちの生活が驚くほど快適になるのです。
そう考えるとワクワクしてきませんか?
今後も、ブロックチェーンによって、私たちが予想だにしなかったサービスが登場してくることでしょう。
ブロックチェーン技術とはビジネスに革命をもたらすほどの画期的な発明だったわけです。