仮想通貨(暗号通貨)を始めるなら仮想通貨JAPAN | 仮想通貨は世界を変える、仮想通貨で世界は変わる。 https://kasou-tsuuka.jp 仮想通貨は世界を変える、仮想通貨で世界は変わる。 Thu, 03 Oct 2019 01:18:56 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=5.2.20 https://kasou-tsuuka.jp/wp-content/uploads/2017/08/kasou-tsuuka-favicon-150x150.png 仮想通貨(暗号通貨)を始めるなら仮想通貨JAPAN | 仮想通貨は世界を変える、仮想通貨で世界は変わる。 https://kasou-tsuuka.jp 32 32 リブラ構想の公表から3ヶ月。抱える問題を深掘りする https://kasou-tsuuka.jp/libra2/ https://kasou-tsuuka.jp/libra2/#respond Thu, 03 Oct 2019 01:18:56 +0000 https://kasou-tsuuka.jp/?p=5071 今年6月18日、フェイスブック社が独自通貨・リブラのホワイトペーパーを公表してから、まもなく3ヶ月になります。

公表直後から大きな反響があり、国際経済・金融の中枢では強い懸念を表明してきました。

ただし、その懸念について詳しい声明は出されておらず、リブラの問題とは何であるのか、分かりにくい状況が続いています。

リブラの公表から現在まで、多くの識者が述べてきました。

本稿では、それらの意見をまとめることで、リブラの問題を深掘りしていきます。

リブラの公表からまもなく3ヶ月

今年6月、フェイスブック社が仮想通貨・リブラのホワイトペーパーを公表し、大きな話題となりました。

当初、仮想通貨業界は好感を以てリブラを迎えました。

その理由の多くは、リブラの普及によって、既存の通貨からデジタルな通貨への移行がスムーズになり、仮想通貨全般に対する世間の意識も変わり、普及につながると考えられたためです。

リブラ構想では、新技術の活用によって利便性が向上することを目指しています。

技術の発展のためにも、積極的な活用は欠かせません。

科学の歴史は、一面において「利便性の追求の歴史」でもあるのですから、リブラ構想が利便性の向上を目的とすることも問題ないでしょう。

しかし、リブラに対する否定的な意見も強く、特に既存の金融システムの当事者においては、リブラが金融・経済に混乱を引き起こす可能性があるとして、強い懸念を示しています。

各国の政府や規制当局、中央銀行などは、強力な規制が必要であるのと見方で一致しています。

これは、リブラが国際的な通貨制度、各国の金融政策といった、いわば世界の金融・経済を支えている仕組みを崩壊させる危険性があるためです。

しかし、この危険性に対処するために、規制や国際監視ルールがどうあるべきか、具体的な方法論として語られることはなく、単に懸念を表明するに留まっていました。

リブラのホワイトペーパーが公表された直後のG20でも、「規制すべきだ」という表面的な基本方針が打ち出されただけです。

このため、リブラへの規制がどのような方針で進められるのか、これによって仮想通貨業界がどのように影響を受けるのかについて、見通しをつけることが難しい状況です。

リブラのホワイトペーパーが公表されてから、まもなく3ヶ月が経過します。

強い懸念があることから、たった3ヶ月の間に急速に議論が進められたことで、規制のあり方や国際監視ルールについて、具体的に語る識者も増えています。

それを知ることによって、リブラを否定する根拠を深く知ることができます。

現状では、このような識者の意見が、今後の規制の方針を知る唯一の手がかりと言って良いでしょう。

これを頼りに、リブラによって懸念される影響を、以下で具体的に見ていきます。

金融政策への影響

リブラに対する懸念のうち、最も大きなものは金融政策への影響です。

現在の制度では、中央銀行が金融政策を実施することで、経済の安定を図っています。

このことは、中央銀行の機能の一部を見るだけでも理解できます。

例えば、各国の中央銀行は銀行券(法定通貨)の発行権を持っており、これによって通貨発行益を得ています。

具体的には、中央銀行は発行した銀行券を使い、中央政府が発行する国債を買い入れたり、民間の銀行に貸し付けたりします。

発行された銀行券は負債に計上され、国債や貸出金は資産に計上されるため、無利子の負債と有利子の資産が同額となり、利息分だけ利益になります。

これを、通貨発行益といいます。

中央銀行は、利益の追求のために通貨発行益を得ることができません。

それが認められてしまうと、通貨発行益を得るために需要を上回る銀行券が発行され、過度なインフレを引き起こす可能性があるためです。

このため、銀行券は需要相当を発行上限としているほか、中央銀行が得た通貨発行益は公共に還元すべきという考えが根底にあり、国庫に納付することが義務付けられています。

納付金の使途も、公共サービスの原資などに限られています。

通貨発行益は、金融政策の柱として重要なものです。

政府が、財政収入を得るために国債を発行するとき、中央銀行が銀行券を発行して国債の買い入れを進めることが大きな意味を持ちます。

国債は、返済されるという信用がなければ成り立ちません。

財政収支が赤字の政府では、償還のための原資が不足していますが、デフォルトを起こせば国債が暴落し、経済に大きな混乱をきたします。

そこで、償還のための原資をさらなる国債の発行で賄うわけですが、ここでも中央銀行が国債を買い支える「国債買い切りオペ」が重要となります。

このように、中央銀行の銀行券発行と通貨発行益は、金融政策に大きな影響をもちます。

通貨発行益の元となる銀行券は、法定通貨への需要によって発行上限が決まるのですから、リブラが普及することで法定通貨の需要が減っていけば、銀行券の発行上限も減っていきます。

当然ながら、発行できる銀行券が少なくなれば、国債の購入や、民間銀行への貸し出しも減ります。

国債買い切りオペによってデフォルトを防ぐことも難しくなりますし、民間銀行が中央銀行から資金を調達し、民間に投融資することも難しくなります。

国庫に納入される通貨発行益が減ると、財政収支の悪化につながります。

また、リブラ協会はリブラを発行し、裏付け資産として法定通貨や国債を買い入れることで、中央銀行の通貨発行益に相当する利益を得ることができますが、これを国庫に納付することはなく、リブラ協会の運営費に充てるとしています。

以上のように、中央銀行とリブラ協会では、通貨の発行によって経済に与える影響が大きく異なります。

リブラが、利便性の高い通貨として機能することで、中央銀行の金融政策が効果を失い、経済が混乱し、利便性どころの話ではなくなる危険性があるのです。

リブラが認められ、普及してくためには、金融政策への影響を抑え込むための規制が絶対的に必要となります。

そのような規制を作り上げることは容易ではなく、リブラ構想が強く抑えつけられる最大の原因となっています。

国際通貨制度への影響

次に、国際通貨制度への影響も懸念されています。

現在の国際通貨制度は、各国の中央政府が発行する法定通貨が、うまく循環することで成り立っています。

各国の法定通貨は、時に不安定な状態に陥ります。

戦争、政治体制の崩壊、金融危機などによって中央銀行が機能しなくなり、自国の法定通貨が信用を失えば、自国の経済に大きな混乱が起こります。

これが、国際経済に与える影響も少なくありません。

例えば、ベネズエラではハイパーインフレが起こり、国民が自国通貨を信用しなくなりました。

資産を守るために、ビットコインが盛んに買われたことも記憶に新しいです。

もっとも、ベネズエラのビットコイン需要は、ベネズエラの通貨制度を安定させる動きではなく、単なる資産防衛の動きにすぎません。

ハイパーインフレが吹き荒れる状況では、早急に資産を防衛するためにはビットコインも有用ですが、実用性を考えると米ドルが圧倒的に優れています。

自国通貨の信頼が崩壊した時、普通であれば米ドルによって代替されます。

米ドルは基軸通貨であり、極めて信用が高いため、国民は自国通貨をドルに替えて決済・預金・納税などに使うのです。

ドル化が起こった国では、ドルの流通を認めることもあります。

これを「ドル化」といいます。

もし、リブラが普及し、利便性の高い決済手段として確立されれば、自国通貨の信用が崩壊した国では、ドル化ではなく「リブラ化」が起こる可能性もあります。

しかし、自国通貨を他の通貨によって代替する点では同じでも、アメリカの中央銀行が信用を担保するドルに代替する場合と、リブラ協会が信用を担保するリブラに代替する場合とでは大きく異なります。

現在、仮想通貨は決済手段として一般的ではなく、膨大な決済に技術的に耐えうる保証がありません。

一国の通貨が全てリブラに代替され、国内外で膨大な決済に使われたとき、処理しきれない可能性があります。

また、決済処理に問題は起きないドルでも、自国経済がアメリカの中央政府の金融政策に左右されたり、自国通貨を放棄することで通貨発行益を得られなくなったり、自国通貨とドルが対立して一国二通貨体制の弊害が起きたりと、様々なデメリットがあります。

基軸通貨で代替するドル化でさえ多くの問題を抱えているのですから、リブラ協会が発行する新興のデジタル通貨・リブラであれば、ドル化以上に深刻な問題が起こるかもしれません。

また、自国通貨の信用が崩壊した国がドル化する流れから、リブラ化する流れに切り替わることで、為替相場や国債市場にも必ず影響が出てくるはずです。

安定性への不安

リブラは仮想通貨の一種でありながら、ビットコインなどの一般的な仮想通貨とは大きな違いがあります。

それは、多くの仮想通貨が今や投機の対象となっているのに対し、リブラは決済手段として普及し、既存の通貨の代わりになる可能性があることです。

リブラは、ステーブルコインとして機能します。

リブラの価値は、既存の法定通貨を裏付けとしているため、法定通貨の範囲内でしか発行することができず、価格が極端に変動しにくいのが特徴です。

だからこそ、価格変動によって利益を得ようとする、投機の対象にはなりにくいのです。

しかし、これを以て本当にリブラが安定しているのかといえば、そうとも言い切れません。

まず、リブラは世界中で利用されることを目指しており、リブラ協会がリブラを監督することになります。

各国における中央銀行的な存在になるわけですが、複数の企業によって構成されるリブラ協会がどれほどの監督機能を持っているのか、存続性はどうであるのか不明です。

少なくとも、一国の中央銀行に比べれば、監督機能も持続性も劣っていると考えるのが自然です。

中央銀行よりも破綻する危険性が高いと言えますが、リブラ協会が破綻した際のルールは定まっていません。

また、通貨としての安定性にも疑問が残ります。

法定通貨の安定を図るのは中央銀行ですが、リブラには安定へ導く中央銀行が存在しません。

リブラ協会が、裏付け資産の構成を決めることで安定を図ることはできますが、中央銀行のように公的な働きかけによって安定させることはできず、アルゴリズムだけが頼りです。

暗号技術はまだまだ発展途上にあるため、アルゴリズムだけを頼りにしている体制は、はなはだ心もとないといえます。

不正利用の懸念

最後に、マネーロンダリングやテロ資金供与、脱税・租税回避といった問題への懸念があります。

リブラでも、他の仮想通貨でもそうですが、仮想通貨は透明性を問題視されています。

仮想通貨は、ブロックチェーン技術によって、取引記録が全て記録されることから、透明性に優れています。

もちろん、取引記録が残っており、改ざんできない仕組みによって、記録をたどることで不正取引を特定することができます。

この点では、不正の防止に役立ちます。

とはいえ、これまで起こったハッキング被害を見ても、ブロックチェーンの取引記録によって、流出した仮想通貨を追跡することはできたものの、途中で足取りが分からなくなる、犯人を特定できないといった結果に終わっています。

このため、ブロックチェーン技術を用いているリブラには一定の透明性があるものの、不正防止のための機能は不十分と言えます。

米同時多発テロが起きた2001年以降、国際銀行システムの透明性を確保するために、世界中の銀行で取り組みが進められてきました。

これも十分とは言えませんが、約20年をかけて透明性が大きく高まったことは事実です。

透明性の確保に努めてきた銀行でも不十分であるのに、銀行でもないIT企業が透明性を確保できると主張したところで、素直には受け入れられないのが普通です。

サイバー攻撃によって仮想通貨の流出が後を絶たず、不正の技術が不正防止の技術を上回っている現状を見ても、リブラが不正に利用されないとは言い切れません。

仮にリブラが認められるとしても、決済手段である以上、リブラもマネーロンダリングその他の不正利用を防ぐために、国際ルールに従うことになるでしょう。

例えば、一定額以上の送金では厳しい本人確認が求められるなど、様々な制限が課せられるはずです。ルールの準拠に伴い、手数料も発生します。

そうなれば、リブラの最大のメリットである手軽さやコストの低さが損なわれ、魅力がなくなります。

最近では、既存の通貨を通じて、送金を効率化する取り組みも進められています。手軽さや低コストといったメリットを失えば、多くの人はリブラよりも既存の通貨を選ぶでしょう。

リブラ構想の中心となるフェイスブックは、情報管理で糾弾された過去もあり、リブラの安定性・安全性も不安となれば、安定性・安全性が確保されており、慣れ親しんだ通貨のほうが魅力的であり、リブラが普及していく余地はなくなっていくと考えられます。

仮想通貨業界には良い影響も

現在、仮想通貨業界ではリブラの話題も落ち着き、リブラに強い期待を抱く声は少なくなっているように思えます。

ただし、仮想通貨業界が当初抱いた「仮想通貨の普及・認知の向上につながる」という期待は、ある程度期待通りになっているとも言えます。

リブラの反響は大きく、新聞や経済誌などで取り上げられることも多く、その周辺でビットコインに関する記事が掲載されることも増えているためです。

日経新聞などでも、リブラ周辺の話題がしばしば取り上げられています。

広く普及している媒体を通じて、多くの人が仮想通貨を知る機会を得られるようになったのです。

もちろん、このような媒体では総じてリブラに否定的であり、仮想通貨に対しても積極的に肯定する意見はあまり見られません。

しかしながら、リブラへの否定に始まり、それと対比する形でビットコインなどのポジティブな特徴が語られることもあります。

リブラには逆風が続いているものの、これをきっかけに仮想通貨に興味を抱く人が増えたり、仮想通貨を正しく理解する人が増えることになれば、仮想通貨業界全体にとっては良い流れといえます。

リブラは、仮想通貨業界全体にとって、良くも悪くも様々な影響を与えています。

今後も注目しておくべきでしょう。

まとめ

識者の見解によって、リブラが多くの問題を抱えていることが分かります。

リブラには、既存の金融制度を脅かす可能性があるため、強く懸念されているのです。

仮想通貨やデジタル決済は、技術面では大いに伸ばしていくべき分野です。

しかし、フェイスブック社は早期のローンチを目指して動いています。

技術の醸成に伴って、既存のシステムを良い方向で、徐々に変化させていくのではなく、混乱を招く可能性があるならば、金融システムの当事者は待ったをかけるほかありません。

本稿で述べた懸念のうち、不安定性と不正への懸念は、リブラだけではなく、多くの仮想通貨に共通することです。

これらの懸念にどう対処していくか、国際的な規制の動きには注目しておきましょう。

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Zaifのハッキング被害から1年が経過。捜査は難航を極める https://kasou-tsuuka.jp/zaifhacking/ https://kasou-tsuuka.jp/zaifhacking/#respond Thu, 03 Oct 2019 01:17:30 +0000 https://kasou-tsuuka.jp/?p=5069 今年9月14日、Zaifのハッキング被害によって約67億円相当(当時の時価)の仮想通貨が流出してから1年が経過しました。

その間、フィスコがZaifを承継したり、テックビューロが仮想通貨交換業を廃業したりしていますが、事件は未だ解決していません。

大阪府警からも、捜査が難航していることが発表されています。

本稿では、Zaif事件の捜査の概況と、仮想通貨業界・仮想通貨市場への影響を解説していきます。

Zaifのハッキング被害から1年

早いもので、テックビューロが運営する仮想通貨取引所Zaifがハッキング被害に遭ってから、1年が経過します。

ハッキング被害は9月14日に起こったとされており、これがテックビューロのプレスリリースで公表されたのは9月20日でした。

これをさかのぼること約8ヶ月、Coincheckが約580億円相当の仮想通貨を流出させたことに比べると、Zaifの被害は小さく、当時の時価で約67億円相当でした。

Coincheckのハッキング被害は、容疑者の特定には至っていないものの、徐々に解明されつつあります。

国連安保理事会でも、北朝鮮が仮想通貨取引所に組織的な攻撃を仕掛けていることが報告されており、被害の一部にCoincheckが含まれていることが分かっています。

ただし、Coincheck事件も全貌の解明には至っておらず、同じくZaifの被害も捜査は難航しているようです。

大阪府警の発表によれば、Zaif事件で流出した仮想通貨は、海外20ヵ国超、口座数にして数十万以上に拡散されているとのことです。

このように拡散している状況を把握できたのは、今年に入ってからのことです。

大阪府警は、今年1月、口座間の移動を繰り返す仮想通貨を追跡できるソフトを導入し、これによって拡散状況を把握できるようになったのです。

捜査は難航

大阪府警は、不正アクセス禁止法違反容疑で捜査を進めており、

 

「容疑者の所在は、海外も含めたあらゆる可能性を探っている。関係機関や各国警察と協力し、地道に進めるしかない」

 

と発表しています。

しかし、捜査の進捗は「拡大状況の把握」に留まります。

拡散状況を把握できても、それは捜査が困難になりつつある状況の把握に過ぎず、解決につながるものではありません。

ブロックチェーン技術の強みは、ブロックの取引記録の改ざんが困難あり、追跡することで不正を特定できることにあります。

小規模な不正であれば、取引記録を地道にたどっていくことで、解決の糸口を掴めます。

しかし、これだけの規模で拡散してしまえば、追跡が拡散に追いつかず、ブロックチェーン技術の長所も活かすことはできません。

海外20か国超に拡散しているため、日本の警察庁や外務省を通じ、拡散した国の当局と連携して捜査していく必要があります。

すでに、大阪府警は各国当局に口座情報の照会を求めていますが、仮想通貨に関する規制は国ごとに異なり、流出に関する法律がないため、協力が得られないケースも出てきているようです。

また流出した仮想通貨は、1年で数十万以上の口座へと猛スピードで拡散しただけではなく、今も拡散し続けています。

犯人は、追跡されないために入念に対策しており、拡散の規模から組織的な犯罪の可能性も高いです。

海外当局と連携が取れないうちに、追跡困難なほどに拡散するとも考えられます。

犯人の逃げ足は速く、大阪府警が地道に捜査を進めるうちに、犯人の特定は不可能になってしまうかもしれません。

仮に、海外当局と早急に連携を取ることができ、口座情報を取得できたとしても、これだけ巧妙に捜査を攪乱してくるのですから、足のつく情報が出てこない可能性も高いです。

口座の開設者やIPアドレスが偽装されていれば、捜査は難航を極めます。

去年の11月には、犯人のIPアドレスがホワイトハッカーによって特定されたとの報道もありましたが、その後は特に進展もなく、事件解決の手がかりにはならなかったようです。

海外当局の協力が十分に得られない以上、事件の起こった国内で捜査を進めるほかありません。

大阪府警は今後の捜査の方針について、流出の詳細な経緯に焦点を充てていくとしています。

しかし、事件発生から1年間、大阪府警は流出の経緯について捜査してきました。

テックビューロ関係者に聞き取り調査や、パソコンのメールや通信履歴の任意提出を受けて捜査していますが、手がかりは見つかっていません。

今後さらに捜査しても、犯人の特定につながる情報が得られる可能性は低いでしょう。

仮想通貨業界への影響は?

大阪府警の発表から、現在の捜査力では、仮想通貨関連犯罪への対処が難しいことが分かります。

Zaifの被害総額は、Coincheckの被害に比べて約10分の1ですが、だからといって捜査が容易というわけではないようです。

ブロックチェーンは新興技術であり、様々な分野に応用が期待されています。

仮想通貨も金融の仕組みを大きく変える可能性を秘めており、金融機関がブロックチェーン・仮想通貨技術を取り入れる動きも盛んになってきています。

しかし、仮想通貨関連の不正への耐性はまだまだ低いと言わざるを得ません。

ハッキング被害は相次いで起こっており、ハッキングそのものを防ぐことができず、事件を解明する能力も不十分です。

国際的な規制の枠組みを作っていくために、これまでに開催されたG20などでは、マネーロンダリングをはじめとする不正への対策が必要と言われています。

今のような状況では、不正への懸念から、規制にも慎重にならざるを得ないでしょう。

仮想通貨関連の不正を防いでいくためには、仮想通貨取引所のセキュリティ性を向上することで被害を減らすこと、そしてブロックチェーン技術の進化を促し、不正を防止したり、捜査能力を向上したりすることが欠かせません。

日本の警察は世界的に見てもかなり優秀であり、人口1000人当たり警察官が2人であるにもかかわらず、殺人検挙率で世界一を誇ります。

強盗・強姦などの犯罪の発生率も突出して低いです。

しかし、近年はサイバー捜査員の不足が深刻な問題となっており、サイバー犯罪に関する実績は芳しくありません。

2012年に起こったパソコン遠隔操作事件で、4人も誤認逮捕したことは記憶に新しいでしょう。

仮想通貨のハッキングは、ブロックチェーンという全く新しい技術を中心として、警察と犯人が攻防を繰り広げているわけですが、サイバー犯罪に弱い日本の警察が、サイバー犯罪のプロに太刀打ちできるのか、大いに疑問です。

今後は、仮想通貨関連の犯罪に対処していくためにも、仮想通貨業界がその道のプロとして警察の捜査に一層協力し、不正防止に努めていく必要があるでしょう。

市場への影響は?

Zaifから流出した仮想通貨の半分以上はビットコインであり、5966BTCが流出しています。

これは、当時の時価(1BTC=70万円で計算)で42億円ですが、現在の時価(1BTC=110万円で計算)では約66億円となります。

犯人が、これを換金することによって、市場の売り圧力になるとも考えられますが、その可能性は低いでしょう。

まず、5966BTCがまとまった規模で、特定の時間と特定の取引所で売られることになれば、それなりの混乱を招くと考えられますが、犯人は既に20か国以上・数十万口座に分散しているため、そのような混乱は考えにくいです。

また、特定されないために1年間にわたって工作を続けた犯人が、捜査の手がかりになる派手な売り方をするとも思えません。

580億円を流出させたCoincheck事件でさえ、流出した仮想通貨の売却が売り圧力になったとする報告はないのですから、Zaifから流出したビットコイン、ビットコイン・キャッシュ、モナコインの売却によって、暴落が起こる懸念はほとんどないと考えてよいでしょう。

まとめ

今回の発表から、大阪府警が1年間にわたって捜査を続けても犯人の特定はできず、手がかりもなく、捜査が難航を極めていることがわかりました。

海外当局との連携の難しさもあり、Zaif事件もCoincheck事件と同様、迷宮入りする可能性が高いです。

仮想通貨の歴史は浅く、技術的にも完全ではないため、このような事件が起こることは仕方がありません。

これを、業界発展のための材料として、不正防止に役立てることが重要でしょう。

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機関投資家の参入で市場はどう変わる?様々な影響を考察 https://kasou-tsuuka.jp/kikantoushika/ https://kasou-tsuuka.jp/kikantoushika/#respond Thu, 03 Oct 2019 01:16:04 +0000 https://kasou-tsuuka.jp/?p=5067 今でも、ビットコインについて正しく理解している人は少数派ですが、仮想通貨元年と言われた2017年以前はほとんど認知されていませんでした。

一部の専門家がビットコインの仕組みを評価していただけです。

専門家たちは、総じてビットコインの実用性を評価しており、特に金融の効率化に多大なメリットをもたらすことを期待していました。

しかし最近では、このような期待が薄れてきています。

本稿では、ビットコイン市場に機関投資家の参入が進みつつある現状と、これによって想定される影響について解説していきます。

かつてのビットコインへの期待

ビットコインが一般的に認知される以前、ビットコインを評価していたのは一部の仮想通貨業界関係者や、経済・金融の専門家に限られていました。

仮想通貨業界では、当時からビットコインの投機性に注目し、期待していた人も多かったのですが、経済・金融の専門家の中には、ビットコインの実用性に期待していた人が少なからずいました。

例えば、経済学者の野口悠紀雄氏などがそうです。

野口氏は、金融機関を介して法定通貨で決済する仕組みは非常に効率が悪く、ビットコインの実用化によってこれを解決できるとしていました。

そして、ビットコインの認知が徐々に広がってくるにつれて、一般の投資家も「今後、ビットコインの実用化が進む。価値が上がって儲かる」と考えるようになり、急速に人気が高まり、大暴騰を演じることとなりました。

しかし近年、ビットコインの実用化は遠のいてきており、かつての専門家が期待した実用性も薄れつつあります。

これは、ビットコインの先物取引が徐々に広がってきていること、ビットコインに投資するための投資信託が人気を集めていることなどが原因です。

ビットコイン先物の広がり

ビットコインの先物取引が、CBOE(シカゴ・オプション取引所)とCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)で開始されたのは2017年12月のことです。

CBOEは今年3月に先物取引から撤退していますが、CMEは取引を継続しており、機関投資家の参加も順調に増えています。

これに加えて、Bakktでも9月23日にビットコイン先物取引の開始を予定しています。

既に、機関投資家向けに入出金サービスを開始しており、かなりの手ごたえを感じているようです。

ビットコイン先物に機関投資家が興味を示している理由には、以下のようなことが考えられます。

安全に取引できる

ビットコインを売買し、保有する際に気をつけなければならないのは、秘密鍵の管理です。

秘密鍵を紛失すれば、ウォレット内のビットコインは取り出すことができなくなります。

また、ハッキング被害によって盗まれる危険もあります。

このリスクを避けるためには、複数のウォレットに分散して管理するなどの対策が必要です。

機関投資家の運用は多額であることから、セキュリティ関連のトラブルを起こした場合の損失は計り知れません。

これは、機関投資家が仮想通貨市場に参加しにくい、大きな理由の一つになっていました。

しかし、先物取引を利用すれば、カストディアン(資産の管理を請け負う金融機関)に保管を任せることができます。

また、Bakktはサイバーセキュリティ対策にも力を入れており、365日・24時間体制でセキュリティに勤めるとしています。

セキュリティのグレードは、ニューヨーク証券取引所と同じグレードとしており、極めて高いセキュリティ性が期待できます。

このほか、Bakktはビットコインのデポジットに総額1.25億ドルの保険をかけており、これも安全性を高めています。

安心して取引できる

ビットコインの先物取引は、現物取引よりも安全であると同時に、安心であるとも言えます。

一般的に、個人投資家は一企業が運営する仮想通貨取引所で取引しています。

取引高は各取引所で異なり、小規模であり、取引所間の価格が大きく乖離することもあります。

当然ながら、多額の資金を運用する機関投資家の参加は難しい環境でした。

これに対し、現在でも先物取引を提供しているCMEの規模は、CBOEをはるかに上回っています。

このような規模の大きさから、アメリカ政府の監督下にあります。

Bakktについても、Bakktがニューヨーク証券取引所を運営するICEの傘下にあることから、規模は相当に大きいです。

CMEやBakktなどによって、先物取引が大規模に取り扱われるようになったことで、多額の資金を運用する機関投資家も安心して取引できるようになったのです。

ビットコイン投資信託も人気

ビットコイン投資信託も、機関投資家の人気を集めているようです。

ビットコイン投資信託としては、大手仮想通貨投資ファンドであるグレースケール・インベストメンツの投資信託「GBTC」が知られています。

GBTCは、ビットコインの市場価格に連動する投資成果を目指す投資信託です。

GBTCは投資信託ですから、直接の投資対象はグレースケール・インベストメンツであり、グレースケール・インベストメンツがビットコインに投資することによって、間接的に投資することができます。

GBTCの人気の理由

GBTCが機関投資家から人気を集めている理由も、ビットコイン先物取引と同じです。

つまり、安全・安心な取引ができることです。

GBTCは投資信託ですから、これに投資した機関投資家は受益証券を持つこととなり、ビットコインの現物を保有しません。

このため、ビットコインの管理に手間取ったり、セキュリティ対策にコストをかける必要もありません。

また、投資信託には販売会社・運用会社・信託銀行といった複数の機関が関わっており、信託財産は信託銀行が管理しています。

したがって、仮にグレースケール・インベストメンツが破綻した場合にも、信託財産が損なわれることはありません。

プレミアムが発生

GBTCの価格はビットコインの現物価格が基準となりますが、現在、GBTCの価格が現物価格で換算したビットコイン価格を20%以上も上回る状況となっています。

GBTCの本来の設計から考えると、ビットコイン現物価格と大きく乖離するのは不自然であり、ビットコイン現物価格とGBTC価格に生じているサヤは縮小していき、GBTC価格がビットコイン現物価格水準へと下落する可能性もあります。

もっとも、GBTC価格に生じているプレミアムは、安全に投資できることに対する上乗せと考えることもできるため、サヤが生じている状態が適正なのかもしれません。

いずれにせよ、運用成果を求められる機関投資家が、現物価格よりも高い水準でGBTCを購入しているのです。

少々高い水準で購入しても利益が得られる、という期待の表れと見ることもでき、人気の高さがうかがえます。

機関投資家の参加で遠のく実用性

上記のように、ビットコインの先物や投資信託といった投資対象が、機関投資家からの人気を集めています。

今後も、機関投資家の参加は徐々に増えていくと考えられます。

仮想通貨市場界隈では、ビットコイン市場に機関投資家が参入してくることが、ビットコイン価格の上昇要因になるとする意見もあります。

この意見は、主に流動性の増加が根拠となっています。

流動性が高まることは活発に取引されることであり、普及にもつながるため、価格が上昇するという意見も見られます。

しかし、機関投資家の参加は、それほど単純に好材料とは言い切れません。

その理由はいくつかあります。

まず、流動性は高まったとしても、実用化は遠のくと考えられるためです。

ビットコイン上昇のシナリオ

冒頭で書いたように、かつてビットコインの実用性に注目する専門家は多く、一般投資家もこの点に期待していました。

ビットコインの発行上限は2100万枚です。

ビットコインが金融に革命を起こし、スタンダードな決済手段としての地位を確立すれば、供給は限定される一方で需要が高まり、価格は上昇していくと考えるのが自然です。

また、中央銀行が管理する法定通貨であれば、金融政策によって価格を安定させることができます。

しかし、ビットコインは非中央集権的仕組みであるため、価格の安定に導く手段に乏しく、多くは自律的な調整機能に任せるほかありません。

これも、需給の不一致から青天井に価格が上昇していく原因になると考えられます。

先日、大手仮想通貨取引所BinanceのCEOであるCZ氏が、自身の公式ツイッターで、

 

「もしあなたが1BTCを持っているならば、あなたは世界の最も裕福な3/1000の人になるだろう。」

 

と発言して話題になりましたが、これも上記のような考えに基づくものです。

ビットコインが普及し、全世界で活用されるようになれば、世界人口70億人の需要に対して2100万枚の供給であることから、1000人のうち3人しか1BTCを保有できない計算となります。

このほか、ビットコイン価格が日本円にして1BTCあたり数百万円、数千万円、あるいは1億円以上になると予想する専門家もいますが、その多くがCZ氏と同じく、世界中に浸透・実用化されることを前提としています。

「普及→値上がり」のシナリオが成り立たなくなる

ところが、機関投資家の参加が増えれば増えるほど、このような値上りのシナリオが成り立たなくなります。

なぜならば、機関投資家はビットコインの実用性ではなく、投機性だけに注目して取引するためです。

先物取引や投資信託の仕組みからも分かる通り、ビットコインに投資する機関投資家は、ビットコインを実用的に(決済などのために)利用するのではありません。

そもそも、手元にビットコインの現物を持たなくてよいことに価値を見出し、現物水準より高くても投資するのですから、実用のために利用する意思などあるはずがないのです。

ここ数年で、ビットコイン決済を導入する企業は増加しており、普及が進んでいる証拠とも見られています。

しかし、資金量から考えて、実用化のカギを握る個人の保有量を、投機だけを目的とする機関投資家の保有量が大きく上回る可能性が高いです。

数千兆円の市場規模を誇る株式市場でさえ、90%のシェアを機関投資家が占めているのですから、2017年末時点でも68兆円程度の市場規模に過ぎなかった仮想通貨市場であれば、機関投資家が大部分のシェアを獲得することは容易でしょう。

個人も実用より投機

さらに、個人レベルでも、ビットコインの普及は進まないと考えるべきです。

現在、ビットコインを買っている人のほとんどは、実用性に注目して買っているのではありません。

「便利だから」という理由で、現金以外の形で持っていたいならば、ビットコインよりも電子マネーのほうが向いています。

電子マネーは、ビットコインよりもはるかに普及しており、実生活で活用しやすく、価値も安定しているからです。

ビットコインを買っている個人投資家は、ほとんど全員が将来的な値上がりを期待して買っていると言ってよいでしょう。

ビットコインの実用化が進み、決済などに活用されるためには、ビットコインが「お金」として機能する必要があります。

お金がお金として機能するためには、額面の価値よりも商品としての価値が低いことが大前提です。

例えば、東日本大震災復興事業記念のプルーフ金貨が良い例です。

この金貨の額面は1万円です。

一般的な通貨とは異なり、おもちゃのコインなどと判別が難しく、実店舗などでは利用できないものの、法的には1万円の価値が認められており、1万円以下の商品を買うことができます。

しかし、この金貨で1万円以下の買い物をする人はいません。

なぜならば、その金貨にはゴールドとしての、額面以上の価値があるからです。

ビットコインもこれと同じです。ビットコインが将来値上がりすると予想して買うということは、ビットコインの「投機商品としての価値」が「市場価値(額面の価値)」を上回るということであり、買い物に使う人はいないのです。

個人レベルで買われているビットコインでも、買い物に使われることはなく、現時点で普及の見込みは非常に薄いと言って良いでしょう。

考えてみれば至極当たり前のことですが、投機目的でビットコインを買いつつ、普及による値上がりを期待している人が大勢います。

これは、矛盾というほかありません。

以上のように、ビットコインの多くを機関投資家が投機目的で保有する可能性があり、同時に個人レベルでも投機目的で保有するとなれば、ビットコイン決済を導入する企業がいくら増えたところで、実用化が進むとは考えにくいです。

実用化と普及が進まなければ、専門家たちの「普及を前提とした値上がり」というシナリオも成り立たなくなります。

機関投資家がビットコイン市場に参加してくることは、今以上にビットコインの投機性が高まり、実用性が損なわれることに他ならないのです。

今後、機関投資家の参加が増えるたびにニュースになると思いますが、それによって流動性は増加するでしょうが、普及が促進されて価格の上昇につながるのではなく、むしろ普及の妨げとなり、普及に伴う価格の上昇は期待できなくなると考えるべきでしょう。

市場環境が大きく変わる可能性も

機関投資家の運用する資金は、個人投資家をはるかに上回るため、機関投資家の参加によって流動性が飛躍的に高まることは疑いがありません。

取引したいと考える人が多いほど需要は高まり、価格も上昇します。

しかし、普及による価格への影響を除外しても、流動性の増加と価格の上昇はイコールではありません。

流動性が増加した時、買いと売りのどちらに傾いたかが重要なのであって、売ろうとする機関投資家が多ければビットコイン価格は下落します。

機関投資家の取引が、大きな売り圧力になることは十分に考えられます。

なぜならば、先物市場で空売りする機関投資家も多いからです。

機関投資家の圧力はレベルが違う

ビットコインFXでレバレッジ取引をするならば、個人でも空売りは可能です。

しかし、個人の空売りによって形成される売り圧力は大きなものではなく、即座に暴落につながることはありません。

これまでのビットコイン市場で、暴落を招くレベルの大きな売り圧力になってきたとされているのは、ビットコインの大量保有者である「クジラ」と呼ばれる勢力の売りでした。

クジラの売りによって暴落を引き起こすとき、それは空売りによる売り圧力ではなく、現物の大量の売りでした。

つまり、値下がりを見越しての売りではなく、保有しているビットコインを利確したり、ポジションを調整したりするための売却です。

ビットコインの大量保有者が、現物を一度に売るだけで、ビットコイン市場は容易にかき回されてきたと言えます。

多額の資金を運用する機関投資家が、多額の資金を背景とする証拠金取引によって、ビットコインを大量に売ったとすれば、クジラとは比べ物にならない影響を持つはずです。

ボラティリティは低下する可能性

もっとも、売り圧力が一方的に大きくなるのではなく、買い圧力も大きくなると考えられます。

このため、機関投資家の参加によって、暴落・暴騰が起きやすくなるとは限りません。

ただし、ビットコイン市場が、個人投資家主導から機関投資家主導へと転換していくタイミングでは、機関投資家の動きが市場をかき回すことも考えられます。

例えば、

 

  1. 実用化に伴う上昇を期待し、ビットコインを買う個人投資家が増える
  2. ビットコイン価格がしばらく上昇を続け、徐々に参加してくる機関投資家もその流れに乗ってビットコインを買い、価格がさらに上昇する
  3. 機関投資家の参加は続き、空売りの機会を伺う勢力も増えてくる
  4. さらなる上昇を期待する個人投資家を尻目に、機関投資家が売りに走り、一気に売り崩される

 

といった流れです。

しかし、機関投資家の参加が増えることは、基本的には市場の安定・ボラティリティの低下につながると考えられます。

これは、ビットコイン市場の主導権が、アマチュアである個人投資家から、プロである機関投資家に移るためです。

機関投資家はプロ集団

個人投資家の中にも、ビットコイン投資だけで生計を立てるプロがいますが、それは全体のごく一部に過ぎません。

多くの人は、「ともかく持ち続けていればいずれ値上がりする」と期待して無計画に投資したり、「うまくいけば大儲けできるかもしれない」と射幸心に駆られて投資しています。

しかし、機関投資家の最大の目的は資産を殖やすことです。

成績が悪ければ、顧客から資金を集めることが難しくなり、機関の運営に支障をきたします。

このため、機関投資家は運用成績を少しでも高めるために、超一流の頭脳を集め、膨大なデータを駆使し、緻密に投資していきます。

いわば、機関投資家は投資のプロ集団です。

さらに、顧客離れを防ぎ、新規顧客を獲得するためには、他の投資機関に勝る成績を挙げる必要があります。

プロ集団同士で鎬を削ってきた、まさに海千山千の猛者なのです。

その猛者が、時に個人投資家では思いもよらないような、思いついても資金的に到底実行できないようなこともやってのけます。

大量の投機的売買によって、人為的に作った相場で大儲けする「仕手戦」がその代表例です。

利益につながる取り組みであれば、まさに「何でもやる」といったスタイルです。

このように比べてみると、資金量はもとより知識、技術、データ分析、経験などのあらゆる点で、個人投資家は機関投資家に太刀打ちできません。

世界的なファンドマネージャーであるチャールズ・エリスは、機関投資家に支配された市場に、個人投資家が挑むのは『敗者のゲーム』であると言っているほどです。

ビットコイン市場の乱高下

現在、ビットコイン市場でしばしば暴落を引き起こすクジラの売り圧力は、それがクジラによるものかどうか断定できないケースも多いです。

また、混乱を招くこともありますが、一時的な混乱に留まることがほとんどです。

このため、いつ起こるかわからない、実態の掴めない勢力の売り圧力を懸念する「弱気の見通し」はそれほど強くありません。

むしろ、発展途上にある仮想通貨市場では、材料が価格に与える影響を把握することが難しく、様々なニュースが好材料とみなされ、強気の見通しが主流となっています。

中長期の下落トレンドでも、ちょっとしたニュースで買われることが多く、トレンド転換には不十分なものであっても、「いよいよトレンドの転換か」といった雰囲気になります。

このように、これまでのビットコイン市場では、弱気の見通しが市場価格に反映されるよりも、むしろ強気の見通しが市場価格に反映されることが多かったと言えます。

また、アマチュア主導の市場であることから、ニュースの持つ実質的な影響とはあまり関係なく、暴騰・暴落が引き起こされることもありました。

さらに、出来高の水増しなどによって価格が操作されている可能性、ステーブルコインの裏付け資産が不十分である可能性なども指摘されています。

これが、知識・技術・経験・情報が不十分な個人投資家を混乱させ、乱高下の大きな原因となっています。

理不尽な値動きが減る

プロ集団である機関投資家の参加が増えることで、ビットコインの動きは今よりも合理的なものになるはずです。

もちろん、本来相場とは合理的なものではなく、機関投資家の比率が高まっても、理不尽な値動きはなくなりません。

しかし、今の値動きと比べると、随分と合理的なものになっていくと考えられます。

例えば売り圧力にしても、機関投資家が増えることで、理不尽な売り圧力と暴落は起きにくくなるでしょう。

多くの機関投資家が参加すれば、プロによって材料が的確に判断され、正しい情報を根拠として、ビットコインが計画的に売買されるようになります。

機関投資家の働きかけにより、取引所などが不正を働く余地もなくなっていくでしょう。

クジラだけではなく、空売りする機関投資家も売り圧力となり、それを熟知する機関投資家も大勢参加することで、これまで強気の見通しが反映されやすかった市場価格は、弱気の見通しも織り込むようになります。

つまり、ビットコインがそれなりに説明のつく価格に落ち着く可能性が高まるのです。

「まだまだ上がる」と考えて買いまくるアマチュアによって過度に値上がりしたり、一時的な恐怖によって売りまくるアマチュアによって過度に値下がりしたりすることは減ります。

このように、完全に合理的にはなり得ないとしても、今よりも値動きは合理的になり、ボラティリティも低下するはずです。

長年、ボラティリティの高さは仮想通貨の大きな問題とされてきました。

機関投資家の参加によってボラティリティが低下するならば、仮想通貨業界にはプラスになると言えるかもしれません。

機関投資家の参加を正しく考える

以上のように、

 

  • ビットコインの実用化・普及が遠のく
  • ボラティリティが低下し、暴騰・暴落が抑制される

 

といった流れを考えると、機関投資家の参加とビットコイン価格の関係はなかなかに複雑です。

少なくとも、実用化に伴う暴騰は期待しにくくなるでしょうが、純粋に投機面に注目するならば、機関投資家の参加がビットコイン価格の上昇を引き起こす可能性もあります。

現在、ビットコイン市場はかなり規模が小さいです。

多くの機関投資家がビットコインへの投機に興味を示し、たくさんの資金が流入した場合、ビットコインの発行総数は限られているのですから、流入する資金量が多ければ多いほどビットコイン価格は上昇し、市場規模は拡大していきます。

この意味において、機関投資家の参加はビットコイン価格の上昇要因になり得ます。

しかし、機関投資家の参加によって、市場の様子が大きく変わることは覚悟しておかなければなりません。

ビットコインへの期待、仮想通貨市場におけるビットコインとアルトコインの関係、世界的な規制のあり方、ニュースが市場に与える影響、仮想通貨業界を取り巻く環境など、多くの変化が起きるはずです。

特に、ニュースの解釈(例えば実用性に着目したニュースのインパクトが小さくなること)や投資のスタンスなどを変えることが重要になるでしょう。

プロ集団とまともに戦えば、個人では太刀打ちできない可能性が高いのですから、市場で儲けたいならば、

 

  • 試し玉を経て本玉に入る、ツナギやナンピンを適切に利用するなどの相場技法を学ぶ
  • 実践を通して経験を積み、相場技法を磨く
  • 長く生き残るために資金管理を徹底する

 

などの技術面が重要になることは間違いありません。

このほか、自分で売買するのではなく、GBTCのような投資信託を買って、運用をプロに任せるのも良い方法です。

機関投資家の参加によって理不尽な値動きが減り、大儲けは難しくなっていくのであれば、僥倖を狙って個人で投資するよりも、プロに任せたほうが賢明でしょう。

ビットコイン市場にプロのプレイヤーが少ない今、運用をプロに任せるというスタンスは一般的ではありません。

しかし、機関投資家の参入によって投資環境が変われば、そのようなスタンスも十分にあり得るのです。

まとめ

本稿では、ビットコイン市場に機関投資家の参加が徐々に増えてきていること、それによって想定される影響について詳しく解説しました。

今後、機関投資家の参加がどのように推移していくか、まだまだ不明なことも多いです。

機関投資家の動きはまだまだ始まったばかりですし、顧客の利益を第一に考える機関投資家のことですから、短期間のうちに、大胆に参加してくるとは考えにくいです。

機関投資家の動きが、市場に目立った影響を与えるには、まだ時間がかかるかもしれません。

それに合わせて、個人も柔軟に変化していく必要があるでしょう。

機関投資家の影響を事前に知り、備えておくために、本稿が役立てば幸いです。

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仮想通貨の普及を妨げるサイバー攻撃。保険市場も動き始めた https://kasou-tsuuka.jp/cyber/ https://kasou-tsuuka.jp/cyber/#respond Thu, 03 Oct 2019 01:13:33 +0000 https://kasou-tsuuka.jp/?p=5065 仮想通貨市場の発展は、国内外の規制当局や政府の方針によって大きく左右されます。

現在、大局的には慎重姿勢で少しずつ取り組んでいる状況ですが、そのような慎重姿勢とは無関係に、仮想通貨業界では様々な出来事が起こっています。

中でも、サイバー攻撃による仮想通貨の流出は後を絶たず、これが仮想通貨の普及を妨げる大きな原因となっています。サイバー攻撃への懸念を払しょくしない限り、仮想通貨の普及はなかなか進まないでしょう。

本稿では、国内外におけるサイバー攻撃への懸念、これに商機を見出す保険市場の動きなどをまとめていきます。

仮想通貨業界の課題

仮想通貨が一般的に認知され始めたのは2017年頃からであり、当時の仮想通貨業界界隈では、強気の意見が少なくありませんでした。

仮想通貨は社会に急速に普及していき、数年の内に法定通貨に取って代わるとする意見、「年末には○万ドルに上昇」といった意見が多く見られました。

しかし、それから2年以上が経過した今、仮想通貨はまだまだ普及しているとは言い難い状況にあります。

実用化の目途は立っておらず、価格の基準も定まらず、実用性よりも投機性に注目されていることは、2017年とほとんど変わっていません。

このような状況に陥っている大きな原因は、世界中の政府や金融関連機関が、仮想通貨との適切な向き合い方に答えを出しかねているからです。

仮想通貨とは一体どのようなものなのか、普及によってどのような影響をおよぼすものなのか、安全性は十分であるのかなどについて、不明点があまりにも多いことから、懸念を示すほかなく、普及の妨げとなっているのです。

もっとも最近では、Facebookのリブラ構想が打ち出されたことによって、各国政府は早急に議論を進め、規制の枠組みを作っていくことを求められており、やや進展の兆しが見え始めています。

金融庁長官の発言

それでも、仮想通貨は技術面での課題を多く抱えていることから、政府が普及を後押しするのはまだまだ難しいようです。

今月5日、金融庁と日本経済新聞社が共同開催したフィンサム2019において、金融庁の遠藤俊英長官は、以下のように語っています。

 

「(ブロックチェーン技術が進展したことにより)今後、規制の効果が十分に及ばないような状況が想定される。

従来の金融規制にかわる、新たなアプローチを開拓することが必要だ。」

 

遠藤長官は、昨今目覚ましい発展を見せているブロックチェーン技術に肯定的であり、仮想通貨業界にとっては好ましい人物と目されています。

しかしながら、遠藤長官は、技術の発展に規制の整備が追い付いていないことを憂えているようです。

ブロックチェーン技術そのものには肯定的でありながら、このような憂慮があることから、仮想通貨全般を全面的に肯定するには至っていません。

ビットコインをはじめ、多くの仮想通貨は非中央集権的な仕組みによって機能しており、管理者がいません。

管理者が不在でも問題なく機能していくために、ブロックチェーン技術が取り入れられているのですが、実際に不正アクセスによる流出が後を絶たず、セキュリティが万全とは言い難い状況が続いています。

さらにIT業界には、ブロックチェーンが内蔵する暗号技術は、10~15年程度でハッカーに破られると言い切る専門家もいます。

この問題が解決されない限り、規制の整備も難航すると考えられます。

サイバー攻撃の被害が拡大

現在、セキュリティ技術はサイバー攻撃に劣っていると言って良いでしょう。

これは、実際にサイバー攻撃による被害が拡大していることをみれば疑いがありません。

先日、国連安保保障理事会の北朝鮮制裁委員会の報告によって、北朝鮮が各国の金融機関に対してサイバー攻撃を仕掛け、直近の3年間で最大20億ドルの資金を奪ったことが明らかとなりました。

この3年間で、攻撃の対象となった国は17か国であり、少なくとも35回の攻撃が実施されているとのことです。

このような国連の報告は初めてではなく、これまでにもしばしば報告されてきたことです。

北朝鮮はこれを強く否定していますが、北朝鮮の主張よりも国連の主張を信じておくほうが間違いないでしょう。

このほか、ハッキングだけではなく、軍部主導で不正なマイニングも行なっていることが報告されています。

なお、この報告によれば、サイバー攻撃や不正マイニングの具体的な手法も把握しているとのことですが、裏を返せば、具体的な手法が分かっていながら防ぐ手立てがないとも言えます。

遠藤長官はフィンサム2019の講演で、今後、日本が主導して国際研究体制を整備していき、世界規模での規制を整備していく考えを明らかにしています。

G20の枠組みを軸として、各国の規制当局、中央銀行、大学・研究機関などから専門家を招くほか、ブロックチェーン関連の開発者や企業に参加を募るとのことです。

仮想通貨が普及していくためには、システムを安定させ、仮想通貨が盤石の安全性を備える必要があります。

サイバー攻撃に対応できない限り、仮想通貨業界が普及を推進しても、個人投資家の関心が高まっても、機関投資家が参入しても、各国の政府や規制当局、中央銀行などは普及に難色を示すでしょう。

仮想通貨が単なる投機の対象から、実用的なものへと昇華するためにも、サイバー攻撃で破られることのないセキュリティの開発が急務となっています。

保険市場の動きにも変化

サイバー攻撃の激化に対し、政府や規制当局は強い懸念を示していますが、一方で商機を見出している業界もあります。

保険業界が、仮想通貨業界の取り込みに動いているのです。

2017年、仮想通貨関連の保険は存在していませんでした。

しかし最近、仮想通貨保険市場が拡大の兆しを見せています。

目立った事例では、サイバーセキュリティ保険のスタートアップとして知られる、サンフランシスコのCoalition社が、設立から2年で1万社以上の顧客を獲得しています。

サイバー攻撃の激化に伴い、自社が攻撃対象となった場合に備えて、サイバーセキュリティ保険に加入する企業が急増しているのです。

特に注目すべきは、Coalition社の顧客のうち500社以上が仮想通貨関連企業であることです。

仮想通貨取引所はもちろんのこと、デジタル資産ヘッジファンドも顧客になっています。

Coalition社の共同創設者であるJoshua Motta氏は、フォーブス氏の取材に対し、

 

「現在、仮想通貨保険市場は2~5億ドルの保険料収入を得ている。

サイバーセキュリティ保険は、年20~25%のペースで急成長している。しかし、仮想通貨保険市場はそれを上回るペースで成長すると予想している」

と発言しています。

仮想通貨保険市場が急成長の兆しを見せていることは、世界的な保険市場の動きからも見て取れます。

世界一の保険市場と言えば、ロンドンの「ロイズ・オブ・ロンドン(以下、ロイズ)」です。ロイズでは、世界中の保険引受業者と保険契約仲介業者が所属していますが、既にロイズに属する複数の業者が、仮想通貨関連企業に保険商品の提供を始めています。

仮想通貨関連の保険を取り扱うのがスタートアップだけであれば、市場の成長にそれなりの時間を要するものですが、ロイズでも既に仮想通貨保険サービスが提供されていることを考えると、Joshua Motta氏が急成長を予想することも頷けます。

仮想通貨保険の具体例も一部明らかとなっています。

例えば、世界最大手の仮想通貨取引所であるコインベースは、ホットウォレットにサイバー攻撃を受けて仮想通貨を流出させた場合に、2億5500万ドルまで補償を受けられる保険に加入しているようです。

ネガティブ・ポジティブどちらにも解釈できる

保険市場の動きが仮想通貨市場に与える影響は、ネガティブにも、ポジティブにも解釈できます。

ネガティブな解釈

当初、ブロックチェーン技術は、改ざんなどを防ぐことに優れているとされてきました。

しかし、当初はこのように信じられていたものの、理論的に不正が可能であるとする意見がしばしば見られ、実際にブロックチェーンが不正に書き換えられる事例も起きています。

ブロックチェーンのルールを逆手に取ったサイバー攻撃によって、不正を防ぎきれなかったことは、サイバー攻撃がブロックチェーンのセキュリティを上回っている証拠とも言えます。

そして、セキュリティ面での脆弱性を補うべく、多くの仮想通貨がアップデートを繰り返しています。

これも、仮想通貨業界がサイバー攻撃を防ぎきれない事実を受け入れているからに他なりません。

同様に、仮想通貨のセキュリティに問題があるからこそ、保険市場がここに商機を見出しているのです。

もし、セキュリティにおいて完全無欠であれば、仮想通貨保険の需要はなく、仮想通貨保険市場は成り立たないはずです。

このように、仮想通貨保険市場の急成長は、サイバー攻撃の懸念が払しょくしきれていないことの証左です。

サイバー攻撃の懸念が払しょくされない限り、各国政府や規制当局が仮想通貨と積極的に向き合えないことを考えれば、悪材料とも受け取れる内容です。

ポジティブな解釈

一方、仮想通貨保険市場の拡大は、ポジティブにも解釈できます。

保険業界が仮想通貨保険に商機を見出しているのは、今後も仮想通貨を取り扱う機関や企業が増え、保険サービスを提供する機会があると考えているからです。

つまり、サイバー攻撃への懸念が高まっている中でも、仮想通貨が普及していき、取り入れる企業が増えていくという予想が根拠となって、保険業界が動き始めたのです。

現在、仮想通貨市場の時価総額は30兆円を超えていますが、このうち保険によってカバーされる範囲はごく一部にすぎません。

保険収入を拡大していく余地はまだまだ大きく、保険業界が意欲を燃やす理由となっています。

さらに、仮想通貨市場は、今後大きく伸びていくことが予想されています。

仮想通貨市場の拡大は、仮想通貨保険の拡大余地にもつながるため、保険業界はこの点にも注目していると思われます。

このほか、仮想通貨保険市場の成長は、仮想通貨の価値が認められてきた証拠とも言えます。

そもそも、保険というものは、

 

  • 自動車という資産が、交通事故などによる損害を受けた時の備え→自動車保険
  • 不動産という資産が、火災や地震などによる損害を受けた時の備え→火災保険・地震保険
  • 貨物や船舶という資産が、海上危険による損害を受けたときの備え→海上保険

 

というように、明らかな価値が認められている資産に対し、損害を担保するためのものです。

仮想通貨保険も、仮想通貨に資産としての明らかな価値を認め、損害を担保することが目的です。

このことから、保険業界が仮想通貨業界に参入してきたことから、仮想通貨が資産としての地位を認められたと考えることもできます。

仮想通貨に否定的な人はまだまだ多く、トランプ大統領も「ビットコインはお金ではない。価値の裏付けはなく、信頼していない」と発言しています。

しかし、仮想通貨の価値を認める流れが徐々に高まってきていることは間違いありません。

保険業界の動きからも、この流れは明らかです。

個人レベルでも普及は進む

保険業界、仮想通貨業界といった大きなくくりだけではなく、個人レベルでもこの流れは加速しています。

先日、10BTC以上を保有するビットコインアドレス数が過去最高に達したことが報じられました。

9月1日時点で、10BTC以上を保有するビットコインアドレスは15万7000アドレスに達しています。

もっとも、10BTC以上を保有しているのは、ビットコイン保有者全体のうち上位1%といわれています。

ビットコインSVを率いるクレイグ・ライト氏は、110万BTCを所有しているとされていますが、このことからも多くのビットコインが一部の人に集中している様子がうかがえます。

ビットコインの大量保有者は、秘密鍵の紛失などに備えて、複数のビットコインアドレスに分散して保管するのが普通です。

このため、10BTC以上を保有するアドレスが過去最高に達したとはいえ、これを以て仮想通貨に投資する人が大幅に増えているとは言い切れません。

10BTC以上を保有するアドレス数の増加推移を見ても、アドレス数の増加は2016年頃から鈍くなっており、2017年頃から現在にかけてはほぼ横ばいを続けていました。

最近になって、横ばいから微増に転じた結果、10BTC以上を保有するアドレスが過去最高に達したにすぎません。

とはいえ、10BTC以上を保有するアドレス数が過去最高に達したことは事実です。増加したビットコインアドレスの中には、新たにビットコインに投資した人のビットコインアドレスも多分に含まれているはずです。

少なくとも、アドレス数は横ばいを続けた後に減少することなく、上昇の兆しを見せているのですから、仮想通貨への期待と人気はまだまだ衰えていないと考えるのが自然です。

このような流れも、保険業界が仮想通貨業界に参入する動機になっていることでしょう。

まとめ

金融庁の遠藤長官がフィンサム2019で語ったように、現在、急速に発展するフィンテック技術に対し、国内外の規制が追い付いていません。

ブロックチェーン技術がサイバー攻撃を防ぎきれていない今、ブロックチェーン技術の発展を一層促進していく必要がありますが、それによって規制とのギャップがさらに広がってくれば、新たな懸念が生まれる可能性も否定できません。

保険市場で仮想通貨保険が成長の兆しを見せていることは、このような複雑な事情が絡み合っていることでしょう。

保険業界の動向は、ポジティブにもネガティブにも捉えられる動きです。

サイバー攻撃や仮想通貨保険に関するニュースも、今後はそれなりに判断材料になってくると考えられます。

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フィンサム2019でSBI北尾社長が講演。XRP活用への期待 https://kasou-tsuuka.jp/finsum2019/ https://kasou-tsuuka.jp/finsum2019/#respond Thu, 03 Oct 2019 01:11:59 +0000 https://kasou-tsuuka.jp/?p=5063 金融庁と日本経済新聞社の共催によって、2016年から毎年開かれているフィンサム。

今年も9月3日から6日にかけて開催されました。

仮想通貨に関わる内容も色々と取り上げられていますが、中でも注目すべきは、SBIホールディングスを率いる北尾社長の講演内容です。

昨今の国内金融の概況、地域金融の苦境、金融庁の方針と焦りに加えて、北尾社長の講演内容を詳細に検討していくと、SBIの構想が仮想通貨業界にも大きな影響をもたらす可能性は極めて高いと考えられます。

本稿では、SBIの構想と背景、期待される影響などについて詳しく解説していきます。

フィンサム2019で北尾社長が講演

9月3日から6日にかけて、金融庁と日本経済新聞社の共催によって、フィンサム2019が開催されました。

フィンサムは2016年から開催されている、フィンテックの活用をテーマとするイベントです。

仮想通貨周辺のことも色々と取り上げられていましたが、中でも特に注目されているのが、SBIホールディングスの北尾吉孝社長の講演です。

SBIホールディングスは、日本国内の金融機関の中でも特に進取性に富んでおり、フィンテックをはじめとする新興技術も積極的に取り入れています。

それを率いている北尾社長は、以前から仮想通貨の可能性、特にXRPの有用性に強い関心を示しており、SBIホールディングスとしてもリップル社との連携を強め、XRPの活用を模索してきました。

フィンサム2019の講演では、北尾社長は地域創生と次世代金融機関の創造を打ち出しています。

その中で、国際送金や貿易金融の分野では、仮想通貨を積極的に活用していく方針を明らかにしました。

北尾社長いわく

北尾社長の講演が行なわれたのは、フィンサム2019初日の3日です。

北尾社長は講演の中で、

 

「国内外の様々なフィンテックを活用し、地域金融機関と『第4のメガバンク構想』を実現していく」

 

と発言しています。

現在、メガバンクとされている金融機関は三菱UFJフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの3社です。

SBIホールディングスの構想では、SBIホールディングスが旗手となって地域金融機関との連携を強め、既存のメガバンクに匹敵する規模のグループを作ろうとするものです。

この構想では、持ち株会社はSBIホールディングスが過半を出資し、大手銀行や地方銀行、あるいはベンチャーキャピタルなどにも出資を募り、地銀への支援を実施します。

具体的な支援策は、システムなどのインフラ、資産運用商品やサービスの提供、人材育成の支援などが挙げられています。

支援策のうち、期待が集まるのはシステムの提供、人材育成の支援です。

これによって危機的な状況にある地域金融機関の収益性の改善につながることが期待されています。

地域金融は危機的状況

近年、地域金融機関の収益は悪化を続けています。

その大きな原因とされるのが、地域経済の停滞と、日銀の超低金利政策です。

この影響により、金融機関としての主な収益源である利ザヤが目減りし、融資によって得られる利益が圧迫されています。

19年3月期の決算を見ても、融資金利や手数料収入など、本業の損益が赤字になった地銀は全105行のうち4割に達しており、このうち27行は5年以上の赤字が続いている状態です。

本業の赤字を、本業以外の業務で穴埋めできない地銀が増えているのです。

連続赤字を回避している地銀も、資産を売却などによって得た利益で本業赤字を穴埋めし、最終損益を一時的に黒字に転換しているケースが少なくありません。

しかし、このような黒字は本質的に赤字と大差なく、いずれは恒常的な赤字に苦しむと考えられます。

金融庁のレポートでも、10年後の2028年度には、地銀の6割が最終赤字になるという試算を発表しています。

金融庁は再編を促進

日銀の黒田総裁の最近の発言からも、日銀の低金利政策は今後深堀りされる可能性があるため、利ザヤの縮小による収益悪化を食い止めることは容易ではありません。

また、メガバンクであれば海外への展開によって収益拡大を図ることもできますが、地域金融の担い手である地銀は海外に展開できません。

基本的に、展開する地域の金融から収益をあげる必要があります。

とはいえ、地域によっては人口や企業数が急速に減少しているため、地域内での収益拡大も容易ではなく、まさに八方ふさがりの状況です。

超低金利の環境下で、地域金融の枠組みの中で地銀が再生するためには、業務の効率化を進め、収益性を改善する必要があります。

金融庁も危機感を強めており、経営統合や合併などによる、地銀再編を促進する考えです。

金融庁は先日、2019事務年度の金融行政の重点分野をまとめていますが、その中でも経営統合・合併の加速を方針としています。

金融庁の方針に後押しされる形で、以下のように、ここ数年で多くの再編が実現してきました。

 

  • 15年10月:九州フィナンシャルグループ(肥後銀行・鹿児島銀行が統合)
  • 16年4月:コンコルディアフィナンシャルグループ(横浜銀行・東日本銀行が統合)
  • 16年10月:めぶきフィナンシャルグループ(常陽銀行・足利銀行が統合)
  • 18年4月:関西みらいフィナンシャルグループ(近畿大阪銀行・関西アーバン銀行・みなと銀行が統合)
  • 18年5月:東京きらぼしフィナンシャルグループ(八千代銀行・東京都民銀行・新銀行東京が統合)
  • 18年10月:第四北越フィナンシャルグループ(第四銀行・北越銀行が統合)
  • 19年4月:ふくおかフィナンシャルグループ(ふくおかフィナンシャルグループ(福岡銀行・熊本銀行・親和銀行の統合)に十八銀行が参加)

 

以上のように、再編の動きが盛んになっています。

象徴的な事例は、18年4月に発足した関西みらいフィナンシャルグループの発足です。

個の事例では、りそなホールディングスの子会社であった近畿大阪銀行と、三井住友フィナンシャルグループの傘下であった関西アーバン銀行・みなと銀行が統合しています。

系列の垣根を超える再編は前例がなく、地域金融の逼迫した状況が、金融機関を再編へと突き動かしている様子がうかがえます。

金融庁の方針は難航

ただし、地銀の再編は容易ではありません。

地銀同士が統合・合併によって規模を拡大し、経営基盤が強くなることは間違いないとしても、その地域で銀行の寡占が進むことによって、顧客が不利益を被る恐れがあります。

このため、公正取引委員会が統合・合併に難色を示しており、再編がスムーズに進まないのです。

最近の例を見ても、福岡銀行(福岡県)・熊本銀行(熊本県)・親和銀行(長崎県)が統合されて誕生したふくおかフィナンシャルグループと、十八銀行(長崎県)が統合を図った際、公正取引委員会が待ったをかけています。

同じ長崎の地銀である親和銀行と十八銀行が統合すれば、ふくおかフィナンシャルグループの長崎県内の融資シェアが一気に高まります。

融資シェアが高まり寡占状態になれば、金融機関同士の競合によって金利が抑制される作用が働かず、貸出金利が過度に引き上げられ、立場の弱い中小企業が窮地に立たされる恐れがあります。

これに対し、独占禁止法を持ち出した公正取引委員会と金融庁が対立する構図となり、再編が難航しました。

最終的には、独占禁止法の例外規定を設けることで統合に至っていますが、今後も同様の理由によって再編が難航する可能性が考えられます。

金融庁の焦りが追い風か

金融庁の焦りが再編の促進へとつながり、なおかつそれが難航している現状を考えるにつけ、SBIホールディングスに寄せられる期待は高まるでしょう。

再編が難航する中でも、SBIホールディングスの支援が進めば、地銀の収益性は大きく改善される可能性があります。

収益性改善のために、各地銀が経営の効率化を模索していますが、顕著な効果が得られた事例はありません。

効率化のためのシステムの導入・更新に多額のコストがかかるため、システムの刷新が必要と分かっていても、積極的に取り組めない地銀が多く、目立った効果をあげられないのです。

このため、効率の悪いシステムに依存し、高コスト体質に陥っている地銀が多く、早急な改善が求められています。

フィンサム2019で北尾社長は、

 

「持ち株会社は、地域金融機関に対してシステムを安価に提供する」

 

と語っています。

この支援によってシステムの導入・定期更新にかかるコスト負担が小さくなれば、高コスト体質の根源であるシステム費用が圧縮される可能性が高いです。

また人材に関して、地銀は資産運用に強い人材が不足していることが課題となっています。

資産運用は、傘下にSBI証券を抱えるSBIホールディングスのお家芸とも言えるもので、このノウハウによって人材育成を支援することで、課題の解決を図ることができます。

その結果、地銀が資産運用から得られる収益を伸ばすことができれば、低金利政策や地域特有の問題によって本業が圧迫される中でも、収益を確保できる可能性が高まります。

これについて北尾社長は、

 

「SBIグループが運用を総受託し、地域金融機関の運用を高度化することも考えられる」

 

とも発言しています。

仮想通貨業界にも好影響の期待

金融庁の焦りがSBIホールディングスの構想の後押しとなれば、地域金融の問題を解決すると同時に、仮想通貨業界への好影響も期待できます。

マネーロンダリング対策に貢献

まず、フィンサム2019の講演でも語られていますが、SBIホールディングスのシステム支援では、SBIグループとベンチャー企業、地銀が共同で使えるシステムをクラウド上に作ることで、システムを安価に提供していくとしています。

共同プラットフォームでは、業務効率化だけではなく、マネーロンダリング対策にもつながるフィンテックを一体で導入していく考えです。

これまで、仮想通貨の普及を妨げる大きな原因の一つに、マネーロンダリングへの懸念が挙げられてきました。

この問題は、仮想通貨への規制がなかなか進まない原因にもなっています。

SBIの主導によって、国内の多くの地銀がマネーロンダリング対策を強化していけば、国内金融におけるマネーロンダリングへの懸念が後退し、国内仮想通貨業界の発展に寄与する可能性が考えられます。

仮想通貨取引の活性化に貢献

また、SBIホールディングスの狙いの一つに、若年層の顧客の獲得があります。

SBIホールディングスでは、これまでも若年層の資産運用を促進するために、Tポイントでの株式投資を可能とする「ネオモバイル証券」を設立するなど、様々な取り組みを展開してきました。

このような動きに触発されて、地銀でも進取性に富む取り組みが展開される可能性があります。

特に、SBIと地銀が資産運用での連携を強めていくにあたって、資産運用に弱い地銀は、資産運用分野でSBIへの依存を強める可能性が高いです。

地銀を窓口として、SBIグループでの資産運用を始める顧客も増えることが考えられます。

このような流れで若年層に資産運用が普及したとき、仮想通貨も資産運用の対象になるはずです。

様々なデータを見ても、若年層は中高年層に比べて、仮想通貨取引に対する抵抗が少なく、将来的に若年層の仮想通貨取引は拡大していくと考えられています。

SBIグループでは、SBI VCトレードによって仮想通貨取引も展開しているため、この構想の延長として仮想通貨取引が活性化することが期待できます。

XRPの普及にも期待

また、この構想がXRPの普及を促進する可能性も高いです。

XRPの取引拡大の可能性

まず、地銀とSBIホールディングスの連携によって、顧客の資産運用に働きかけていくにあたって、XRPの取引拡大が考えられます。

SBIホールディングスは、資産運用分野の展開の中で、特にXRPの取引拡大に力を入れています。

ネオモバイル証券の設立を見ると、単に若年層の株式投資の促進を目指しているように見えますが、その延長としてXRPの普及を目指していることは明らかです。

最近の取り組みを見ても、ネオモバイル証券の口座保有者がSBI VCトレードに新規口座開設した場合、もれなく1000円相当のXRPを付与すること、XRPの取引金額に応じて最大20万円相当のXRPを付与するキャンペーンを実施しています。

このほか、先日、SBIグローバルアセットマネジメント(SBIホールディングスの持ち株会社)の子会社であるモーニングスター社(資産運用関連業務を主とする。ジャスダック上場)で、株主優待にXRPを導入することが発表されています。

このように、株式投資と仮想通貨投資をうまく組み合わせることで、SBI VCトレードの口座開設拡大、XRPの認知度アップを目指しています。

これが、XRPの取引拡大、普及促進、価値の向上につながることが考えられます。

XRPの実用化が加速

さらに、第4のメガバンク構想では、SBIホールディングスと地銀が連携していく中で利用されるシステムの一環として、XRPの活用が考えられます。

フィンサム2019の北尾社長の講演の中では、R3社のCordaを国際送金に活用していくことが語られています。

また、先日リップル社が提携を発表して話題となったマネーグラム社について、「マネーグラム社は、創業時から非常に親しくしていた」とも語っています。

マネーグラム社の顧客基盤は世界200ヵ国に上り、SBIグループの国際送金会社であるSBIレミットでも、マネーグラムのネットワークを利用しています。

SBIレミットの国際送金累計額は、今年7月時点ですでに7000億円を突破したことが発表されており、利用が急速に拡大しています。

注目すべきは、北尾社長の講演の中で、将来的にXRPの活用が明言されていることです。

北尾社長は、

 

「海外送金には、xCurrentを利用している。

将来的にはxRapid、すなわち仮想通貨XRPを使用していく。

SBIレミット、SBI Ripple Asia、SBIグループと深い関係にある東南アジアの銀行と連携して、システムの開発を進めている。

近い将来に具現化し、次世代金融インフラを構築していく」

 

と明言しています。

第4のメガバンク構想を進めていく上でも、SBIがシステムの構築・支援・提供を主導していく以上、リップル社の技術が組み込まれる可能性は高いです。

そうなれば、多くの地銀が収益性改善のためにXRPを利用することとなり、メガバンクと同じ規模の金融ネットワークでXRPが利用される可能性もあり、XRPの普及を大幅な普及に寄与すると考えられます。

金融庁は、地域金融が深刻な状況に置かれている今、好転の糸口になりえるSBIの構想に好感を持つはずです。仮想通貨への取り組みに慎重な金融庁も、XRPの実用化にはやぶさかではないでしょう。

SBIの構想は動き始めている

これまで、SBIは地域金融機関との提携を急拡大してきました。

2017年に清水銀行と提携したことを皮切りに、今や35の地銀・信金と提携しています。

地域金融機関で、顧客をSBI証券のネット口座につなげるために、SBIの社員が常駐し、資産運用の相談を受け付ける地銀店舗も増えています。

さらに、9月7日付の日本経済新聞朝刊では、SBIホールディングスと島根銀行の資本・業務提携が報じられています。

島根銀行の増資のうち、SBIが25億円を出資(SBIホールディングスが19億円、SBI傘下のファンドが6億円を引き受け)するほか、SBIから取締役2名を派遣するとのことです。

島根銀行は、2019年7~9月期決算で19億円の損失を計上しており、20年3月期の連結最終損益は23億8000万円という深刻な状況に置かれています。

増資によって調達した資金は、主に損失の穴埋めと不採算店舗の再編費用に充てられるとのことです。

もちろん、単に損失を補填するだけではなく、SBIからシステムや資産運用でも支援を受け、改善に努めていきます。

島根銀行の顧客をSBIにつなぎ、仮想通貨をはじめとした資産運用に誘導する狙いもあります。

島根銀行は、低金利政策のほか、少子高齢化の影響を大きく受けている代表的な地銀です。

提携の結果、業績の悪化を食い止め、成長軌道に乗せることができれば、第4のメガバンク構想に参加する地銀が増えるはずです。

また、この提携は市場からも期待を集めており、島根銀行の株価は提携発表後、前日終値比で一時17%の高騰を見せています。

今回の提携は、第4のメガバンク構想の始動と見られており、支援がうまくいけば、仮想通貨業界への影響も高まるはずです。

まとめ

フィンサム2019で北尾社長が語った内容は、地銀への支援の拡大を通じて、仮想通貨業界全体の発展、とりわけXRPの普及促進が期待できるものでした。

SBIホールディングスは、国内の金融機関のなかでも特に仮想通貨業界と近い関係にあり、国内仮想通貨業界の発展にも大きな影響を与えています。

今後も、より大きな影響を与える存在になっていきそうです。

SBIの構想は大きく、構想に関わる動きを細かくチェックすることは容易ではありません。

しかし、大局的にみても、SBIの動きは仮想通貨業界の流れを把握し、投資の判断材料としても役立ちます。

当サイトでは、今後も注目すべき情報についてまとめていきたいと考えています。

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ビットコイン価格は景気後退で上昇しない?最近の動向から考察 https://kasou-tsuuka.jp/btc-keiki/ https://kasou-tsuuka.jp/btc-keiki/#respond Tue, 17 Sep 2019 04:50:30 +0000 https://kasou-tsuuka.jp/?p=4994 8月に入ってから、景気後退懸念の高まりと同時に上昇に転じたビットコインですが、ここ数日で大きく値下がりを見せています。

ビットコインは、景気後退局面で値上がりすると言われることも多かったのですが、今回はその例に当てはまっておらず、ビットコインは安全資産ではないとする意見も増えてきました。

果たして、ビットコインと景気動向は、どのような関係にあるのでしょうか。

最近の動向とともに考察していきます。

最近の動向

アメリカの政策金利引き下げや長短金利逆転、米中貿易摩擦の影響、ここ数日ではアルゼンチンに端を発するペソ安などの影響もあり、世界的な景気後退の懸念が一層高まっています。

NYダウ平均は、13日終値の26279.91ドルから800ドルも下げ、14日の終値で25479.42ドルをつけています。

日経平均株価もこれにつられて、15日終値20450.65円をつけ、200円以上の下げ幅となりました。

世界の株価指数は全面安となっており、世界の株式時価総額は3兆ドル以上も減少しています。

景気後退への懸念により、リスク資産から資金を逃避させる動きが高まっています。

代表的なのが金の値動きです。

株式・債券・通貨・商品の動向を見てみると、7月末から8月17日の価格を比較した場合、金が最も上昇しています。

この期間、NY金先物価格は約100ドルの上昇となっています。

金以外で上昇した資産には、日本円、米国債、ドイツ国債などがあり、リスク資産から安全資産へと資金が流れている様子が分かります。

このような流れの中で、ビットコイン価格も上昇していました。

8月に入ってから、下落基調にあったビットコインは反騰を見せ、8月1日には約110万円であったものが、8日には130万円に迫る勢いを見せています。

このことから、仮想通貨市場界隈では、世界経済の後退とビットコイン価格には相関がみられ、景気後退とともにさらなる上昇を見せることが期待されていました。

しかし、9日からビットコイン価格は下落に転じています。

数日のうちに110万円を割り、17日現在は110万円前後で推移しています。

ビットコインは安全資産ではない?

この流れを受けて、「ビットコインは安全資産ではない」とする有識者も表れています。

米仮想通貨投資ファンドIkigaiの責任者であるTravis Kling氏は、

 

「ここ数日、ビットコインは安全資産として機能していない。

仮想通貨市場の構造によるものかもしれないし、特定の市場ストレスにしか反応しないのかもしれない」

 

と語っています。

これまで、世界経済に後退懸念が生じたとき、ビットコインが買われる動きがみられました。

このため、ビットコインと景気後退懸念には相関があるとされてきたのですが、今回はその例に当てはまっていません。

仮想通貨市場の歴史は浅い

Travis Kling氏の発言は、仮想通貨市場の構造が世界経済とどのような関係にあるのか、よくわからないという意味が読み取れます。

これは、仮想通貨市場の歴史は非常に浅いためです。

最も歴史の古いビットコインでさえ、2009年に運用が開始されたものであり、仮想通貨の取引が広がるまでに長い時間を要しています。

仮想通貨市場の取引が活発化したのは2017年ごろですから、それ以前の市場は一部の投資家や愛好家によって形成されていました。

一部の人々によって形成される市場は、株式“市場”や為替“市場”などと同じ意味での市場とみなすことはできません。

むしろ、仮想通貨市場は、実質的な意味で市場としての歴史が始まっていないとも言えます。

通常、金融市場には機関投資家や政府が参加しているものです。

多くのプレイヤーが取引することで市場が形成されていくため、世界経済の動向によって様々な影響を受けます。

一方、仮想通貨市場は取引が増えているとはいえ、プレイヤーの大部分は個人です。

ほとんどの機関投資家は手を出していませんし、政府も参加していません。

したがって、仮想通貨”市場”といいつつも、一般的な市場と同じものとは考えにくいのです。

市場としての歴史が短ければ、前例となる過去がありません。

過去の経済動向との関係を見ることはできず、影響の程度も不明です。

仮想通貨の市場規模は小さい

仮想通貨の市場規模も考える必要があります。

政府や機関投資家が参加していないことから、仮想通貨の市場規模は小さく、2018年6月時点で3000億ドル程度です。

これに対し、株式の市場規模は74兆ドル、金の市場規模は7.8兆ドルとなっており、仮想通貨市場よりも圧倒的に大きいことが分かります。

政府や機関投資家が多く参加し、市場規模が大きくなれば、世界経済の影響も大きく受けることとなります。

政府や機関投資家は、世界経済の動向を受けて、様々な方針を打ち出します。

政府が巨大な投資機関を運用している場合には、特に顕著です。

分かりやすいのが、中東諸国の政府系ファンドです。

中東全体で見れば、政府系ファンドの運用総額は2兆ドルとも言われており、市場への影響は絶大です。

中東諸国は、外貨収入の大部分を原油の輸出に頼っており、獲得した外貨を世界中で運用しています。

このため、中東の政府系ファンドの方針は、原油価格に大きく影響を受けることになります。

原油価格が下がれば、中東の外貨収入は減ります。

これによってキャッシュが必要となれば、市場からオイルマネーを引き上げます。

これが、原油価格の動向が、様々な市場で多くの影響をもたらす理由の一つでもあります。

このように、莫大な資金量を持つプレイヤーが参加し、規模が大きい市場では、世界経済の動向にわかりやすく反応します。

株式投資を考えると、短期的に、あるいは個別株で見れば、景気動向を無視した値動きを見せることもありますが、長期的に、株式市場全体が景気動向を無視して動くことはありません。

プレイヤーの大部分が個人であり、規模も小さい仮想通貨市場では、このような反応が起こりにくい環境にあります。

大きな景気後退局面において、巨大な投資機関が資金を動かし、金融市場が大きく揺れ動いているとき、景気動向を全く無視した動きが続くことはないとしても、反応がわかりにくく予測も立てづらいことは間違いないでしょう。

今後、仮想通貨市場の規模が大きくなり、機関投資家なども積極的に参加してくるようになるまでは、このような分かりにくさ、難しさを感じることが度々あると思います。

安易に予想を立てず

Travis Kling氏の言う通り、仮想通貨市場の構造が景気後退懸念にどのような影響を受けるか、まだまだ予測が立ちにくい状況です。

景気後退懸念が強くなったとき、最も買われるのは安全資産の金です。

ビットコインをデジタルゴールドと称し、金のようなものだとする意見もありますが、金とビットコインでは歴史も市場規模も違います。

長い歴史の中で、安全資産としての価値を認められ続けてきた金に対し、ビットコインの歴史は短く、安全資産としての価値は認められておらず、むしろ乱高下するリスク資産としての性質が強いです。

多額の資金を運用する投資機関や富裕層のほとんどは、金への投資を選ぶでしょう。

景気後退局面で、マネーの逃避先として選ぶのですから、その逃避先がハイリスクであれば本末転倒です。

もちろん、一定の条件下では、富裕層がビットコインを買う動きもあります。

国家による締め付けが厳しい中国や、インフレが続くベネズエラなど、法定通貨への信用が著しく下がった国では、法定通貨よりもビットコインのほうが信頼は高いため、リスク回避のためにビットコインを買うのです。

しかし、世界的なスタンダードで考えるならば、ビットコインよりも法定通貨や金のほうが安全です。

最近の金価格の上昇や円高の進行は、その表れです。

このような流れがビットコインで起こるためには、ビットコインの標準的な価値が定まること、ビットコインの歴史が長く続き、安全資産として認められることが必要です。

仮想通貨市場の短い歴史の中で、これまで軽微な懸念との相関が見られたことは一旦忘れて、大きな懸念にどのような影響を示していくのか、今後注視していく必要があるでしょう。

まとめ

これまで仮想通貨業界では、「ビットコインは景気後退局面で上昇する」と言われることも多かったのですが、最近ではそのような見方が難しくなってきています。

もちろん、景気後退局面でどのように動くか分からないのですから、「景気後退局面で下落する」とも言い切れません。

ビットコインも、投資対象の一つとして認識されている以上、景気とは何らかの関係があると考えるべきです。

今後、市場規模が大きくなれば、景気との関係も分かりやすくなってくるでしょう。

ただし、現在ではそれが分からない状況であり、極めて投機性が高いと言えます。

あくまでも余裕資金の範囲内で、現物に限って長期保有するなど、冷静な計画と判断が求められます。

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アメリカが政策金利を引き下げ。仮想通貨市場への影響は? https://kasou-tsuuka.jp/usa-down/ https://kasou-tsuuka.jp/usa-down/#respond Tue, 17 Sep 2019 04:49:16 +0000 https://kasou-tsuuka.jp/?p=4996 先日、アメリカでは約10年半ぶりに、政策金利が引き下げられました。

また、この引き下げに先だって、今年5月から長短金利差がマイナスとなっています。

このことから、景気後退局面に突入したことが懸念され、株式市場などでは不安が広がっています。

一方、仮想通貨市場では、アルトコインの値動きは鈍いものの、利下げと同時にビットコインは上昇に転じています。

政策金利の引き下げが、ビットコイン価格を押し上げる要因の一つになっている可能性も考えられます。

本稿では、アメリカの政策金利の動向が広く市場に与える影響と、仮想通貨市場に考えられる影響、投資判断に役立てる考え方などについて解説していきます。

アメリカが政策金利を引き下げる

先月、一時的に大幅な下落を見せた仮想通貨市場ですが、特にビットコイン価格において、8月に入ってから急速な回復を見せています。

7月31日時点では105万円前後で推移していたビットコイン価格は、8月6日には130万円に迫る上昇を見せました。

その後は横ばいを続けているものの、8月13日現在も120万円程度で推移しています。

この背景には、米中貿易摩擦をはじめ複数の要因が考えられるのですが、8月1日から上昇していることを考えると、アメリカが8月1日に政策金利の引き下げを発表したことも、影響していると考えられます。

政策金利とは?

世界的な景気は一定のサイクルで動いており、そのサイクルは常にアメリカから始まるといわれます。

そして、そのサイクルを知る手がかりとして重視されるのが、アメリカの政策金利です。

政策金利とは、中央銀行が金融政策によって、景気を安定的に拡大させるために設定する基準金利です。

簡単に言えば、中央銀行が一般の銀行に融資する際に設定される金利でもあります。

政策金利を変えることによって、流通するお金を調節することができます。

政策金利が上がれば銀行の調達コストも高まり、企業や個人に貸し付ける金利も高くなるため、企業が事業性資金を融資によって調達したり、個人が住宅や自動車の購入のためにローンを組むことも減り、お金の流通が減ります。

また預金によって得られる利息も高まるため、企業や個人は手元のお金を銀行に預けるようになります。

これも、お金の流通が減ることにつながります。

逆に、政策金利が下がれば銀行の調達コストも下がり、企業や個人がお金を借りやすくなり、特に企業の設備投資などが活発化します。

また、預金で利息を期待するよりも、株式や債券といった金融商品によるリターンを期待する動きが強くなるため、お金の流通が増えます。

このように、景気が良い場合には政策金利を引き上げて金融の引き締めを行い、景気が悪い場合には政策金利を引き下げて金融の緩和を図ることによって、景気の行き過ぎを防いでいくのです。

したがって、政府が政策金利を引き上げた際には景気が良い、引き下げた際には景気が悪いと考えることができます。

金利は「炭鉱のカナリア」

アメリカの景気サイクルを示す指標にISM製造業景況指数があり、これは50のラインを下回るほど景気が悪い、上回るほど景気が良いとみなします。

ISM製造業景況指数の歴史を振り返ると、1987年のブラックマンデー後に急降下して50を割り込み、1991年の湾岸戦争の時には40前後に達しています。最近では、2002年のITバブル崩壊の際にも40近くまで下がっており、2008年のリーマンショック後にも急降下して40を大きく割り込んでいます。

そして、ISM製造業景況指数と高い相関性を示すのが、アメリカの政策金利です。

2000年までに、アメリカの政策金利は6.50%まで上昇していますが、ITバブル崩壊直前の2001年1月には6.00%に引き下げられ、これは2001年9月に起こったアメリカ同時多発テロよりも早い段階での利下げです。

同時多発テロの後、2002年にITバブルが崩壊し、アメリカのIT関連失業者数は56万人に達しています。

景気の失速を受けて、アメリカでは政策金利を急ピッチで引き下げます。

2002年11月には1.25%まで引き下げられており、2003年には1%まで落ち込んでいます。

その後、景気が徐々に回復したことにより、2004年7月には1.25%へと利上げを実施します。

これを皮切りに、2006年6月までの2年間で実に17回もの利上げを行い、政策金利は5.25%まで上昇しています。

利上げペースを見ると、この時期は大変な好景気であったことが分かりますが、2006年からアメリカの住宅価格は頭打ちとなり、景気の好循環が崩れ始めました。

FRBは、景気後退局面の直前である2007年9月に政策金利を4.75%へと引き下げ、2008年5月までに2%へと引き下げられています。

そして2008年9月15日、サブプライム・ローン問題によって、アメリカの大手金融機関であるリーマン・ブラザーズが破綻しました。

かの有名な「リーマンショック」です。

当時の株式市場を見てみると、2008年9月29日にアメリカ政府が緊急経済安定化法案を提案したことで世界的な金融不安が起こり、この日のダウ平均株価は史上最悪の777ドルの下落となりました。

日本でも、リーマンショック直前の2008年6月には14000円台であった日経平均株価が、わずか4ヶ月後の10月にはザラ場で一時6000円台をつけるほどの大暴落に至っています。

注目すべきは、ITバブルの崩壊でも、リーマンショックでも、それに先だって政策金利の引き下げが行われているということです。

つまり、政策金利が引き下げられたときに、暴落を警戒して市場から資金を引き上げていれば、大暴落と損失を避けることができたのです。

あるいは、空売りを仕掛けることで大きな利益を得られた可能性もあります。

これが、政策金利が「炭鉱のカナリア」とも呼ばれる理由です。

今回の利下げが騒がれる理由

アメリカは、先日8月1日の政策金利発表において、政策金利を2.50%から2.25%へと引き下げています。

2008年12月に0.25%まで引き下げられた時期を起点とすると、利下げが実施されたのは約10年半ぶりのことです。

これを「炭鉱のカナリア」が鳴いたと考えるのは自然です。

このことは、

 

  • NYダウ平均が26864.27ドル(7月31日終値)から25717.74ドル(8月5日終値)へと1146.53ドルの下落
  • 日経平均株価が21521.53円(7月31日終値)から20516.56円(8月7日終値)へと約1000円の下落
  • 金先物価格が1437.80ドル(7月31日終値)から1519.60ドル(8月7日終値)へと約80ドルの上昇

 

といった動きからも、利下げへの警戒が良く分かります。

しかし、今回の利下げが騒がれているのは、政策金利の引き下げだけではありません。

長短金利差でも悪いサインが出ていることに注目すべきです。

長短金利差とは、短期金利(=政策金利)と長期金利の乖離のことです。

長期金利は、短期金利に先行して動きます。

利下げによって短期金利を低い状態に据え、景気を慎重にコントロールし、徐々に景気が回復しているタイミングでは、長期金利が先行して上がり、長短金利差のプラス乖離は拡大していきます。

景気への懸念が薄らいで利上げが実施されると、短期金利が長期金利に追従していく形となり、長短金利差は縮小していきます。

その後、好循環に陰りが見え始めると、長期金利は短期金利に先行して下がり始め、やがて短期金利を割り込み、マイナス乖離が発生します。

長短金利差がマイナスになったとき、景気減速局面が本格的に到来します。

ここで、政府は政策金利の引き下げを実施し、短期金利は長期金利を追い、やがて長短金利差のマイナス乖離が解消されます。

ここから、再び景気が上向いて長期金利が上昇を始め、長短金利差のプラス乖離は拡大していき・・・というのが基本サイクルです。

これまでの歴史を見ると、長短金利差がマイナスになった後、やはり経済的に大きな出来事が起こっています。

2000年以降を見てみると、長短金利差がマイナスになったのは2000年4月です。

4月、5月はプラスとマイナスを行き来していたのですが、5月半ばから2001年3月まではマイナスの状態が続き、-1%を割り込む局面もありました。

その後、上述の通りITバブル崩壊に至っています。

リーマンショック前を見ても、2006年7月から2008年1月までマイナスの状態が続き、やがてリーマンショックが発生しています。

単に政策金利だけを見れば、必ずしも利下げが大暴落の前兆とは言い切れないのですが、長短金利差のマイナス乖離の後に利下げが実施されているとき、景気悪化への懸念は特に大きくなると言えます。

以上のことを踏まえて、今回の利下げはどうでしょうか。

アメリカの10年国債利回り(長期金利)と政策金利(短期金利)で見てみると、3月に長短金利差がマイナスとなっています(週次データで、3月17日の長短金利差が-0.06%)。

その後、わずかにプラスを維持していたものの、5月には再びマイナスに転落し、現在に至っています。

8月12日の10年国債利回りは1.656%ですから、政策金利を2.25%へ引き下げても-0.594%の差があります。

長期金利がすぐに上昇に転じるとは考えにくいため、この乖離を埋めるために政策金利の引き下げが続くと考えるのが妥当でしょう。

杞憂ならば、それに越したことはないのですが、ITバブル崩壊やリーマンショックと同じ傾向を示しているため、十分に警戒しておく必要があります。

仮想通貨市場への影響

冒頭で述べた通り、この警戒がビットコインの上昇につながっていると考えることができます。

もっとも、ビットコインの歴史は浅く、ITバブル崩壊やリーマンショックの頃にはまだ存在していなかったため、これらの金融危機と金利の関係を以て、ビットコインや仮想通貨市場への影響を断言することは困難です。

しかし、利下げや長短金利差のマイナス乖離が不安を引き起こし、リスク資産から安全資産へ資金を移す動きが高まっています。また、ビットコイン価格が利下げを境に大きく上昇していることも事実です。

このことから、今回の利下げによって、仮想通貨市場にも資金が流入していることはほぼ間違いないと考えられます。

景気後退局面において、アメリカは急ピッチで利下げを進めることが多いです。

今後も、過去と同様に短期間で利下げが続く可能性があります。

これによって株式市場から資金を引き上げる動きが高まり、金やビットコインが買われることは十分に考えられます。

影響は未知数

ただし、利下げに端を発する動きによって仮想通貨市場が盛り上がり、価格が上昇するとしても、影響度や動きが読めないのが難しいところです。

仮想通貨の歴史が始まってから、金融危機といえる大きな出来事は起こっておらず、参考にすべきデータがありません。

これが金であれば、値動きは比較的安定しています。

金先物価格は2000年には300ドルを下回っていましたが、ITバブル崩壊までに300ドルを突破し、経済が安定してからも順調に値上がりを続けています。

リーマンショックの頃には900ドル前後まで上昇し、2011年8月には1800ドルを突破、その後下落に転じ、約4年半後の2015年末には1100ドルまで下落しているものの、下落率でいえば約39%にすぎません。年換算では8.7%程度の下落率です。

これに対し、ご存知の通り仮想通貨はボラティリティが非常に高いです。

これは、仮想通貨の価値が定まっていないこと、信用取引の比率が異常に高く投機性が高いことなどが原因です。

2017年末、一時220万円を超えたビットコイン価格は2018年末に40万円を割り込んでいます。

1年間で約82%もの下落ですから、金価格の下落とは比べ物になりません。

このことから、アメリカの政策金利の引き下げが、今後もビットコイン価格の上昇要因になる可能性がある一方で、

 

  • 政策金利の動向から、最終的にどれくらいの影響を受けるか
  • 利下げが続く中、仮想通貨業界で悪材料が出てきたときにどのような影響を受けるか
  • 利下げの結果、景気後退が一服した時にどのような値動きを見せるか

 

といったことは全くの未知数であり、何らかのきっかけで金利動向とは無関係に乱高下したり、大幅な下落に陥る可能性も否定できません。

したがって、

 

  • 現在、利下げと同時にビットコイン価格が上昇していること
  • 今後も利下げが実施される可能性があり、その際に同様の効果が期待できること
  • リスクオフの流れでビットコインが買われる動きが徐々に強くなっていること
  • ビットコインの上昇余地が大きいこと
  • 強気な予想を打ち出す専門家が少なくないこと

 

などの理由からビットコインに投資するとしても、仮想通貨市場の歴史は浅く値動きが予測しにくいこと、他の金融商品に比べて価格変動が激しいことなどにより、ハイリスクであることを忘れてはなりません。

決して楽観視することなく、あくまでも慎重に投資を進めていきましょう。

まとめ

アメリカの政策金利引き下げと時を同じくして、ビットコイン価格は上昇しています。

これまで、アメリカの政策金利や長短金利差が株式や金の価格に影響を与えてきたことから、仮想通貨市場も金利動向の影響を受けている可能性は高いです。

しかし、歴史の浅い仮想通貨市場において、金利の影響がどの程度のものであるか、最終的にどのような結果に至るか、予想することは困難です。

金利の動向を仮想通貨投資に役立てる視点は重要ですが、分析や予測を過信することなく、慎重に判断していくことが重要です。

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中国の洪水がビットコイン価格に与えた影響とは? https://kasou-tsuuka.jp/china-btc/ https://kasou-tsuuka.jp/china-btc/#respond Tue, 17 Sep 2019 04:47:55 +0000 https://kasou-tsuuka.jp/?p=4998 今月18日、四川省で洪水被害が発生しました。

現時点では、四川省の洪水による被害状況は、詳細があまり報じられておらず、被害状況を具体的に数値化した情報もありません。

これは、四川省が山岳地帯に位置しており、被害の状況がスピーディに伝わらないことが大きいと考えられます。

しかし、21日、中国大手メディア8BTCの創業者のツイートによって、マイニング施設が洪水被害に遭っていることが分かりました。

本稿では、四川省の洪水被害、仮想通貨市場への影響、自然災害と仮想通貨の関係などについて解説していきます。

四川省の洪水被害

四川省は、世界的にもマイニングファームが集中するエリアとして知られます。

ビットコインマイニングには膨大な電力を必要とし、マイニング事業者にとって電気代の負担をいかに減らすかが重要です。

四川省は、電力の供給量が豊富であり、また安価です。

これは、四川省では雨量が多く、山岳地帯であることから川の流れも速く、それを利用した水力発電が盛んであるためです。

特に、豊水期の電力は通常の半分以下にまで下がることもあります。

このため、電力代が主要コストとなるマイニング事業者が四川省に集中し、世界のマイニングシェアの50%を四川省が占めているというデータもあります。

したがって、四川省で洪水被害が起こったとき、当然ながらマイニング事業者にも影響が懸念されます。

洪水被害によって電力が不足したり、マイニングファームが直接的な被害を受けたりすれば、マイニング事業に悪影響を与え、ハッシュレートの低下を招き、ビットコイン価格の下落にもつながる可能性があるのです。

ビットコイン価格への影響

このニュースを受け、仮想通貨業界でも、洪水被害への注目がにわかに高まっています。

現時点では、被害の詳細は不明です。

マイニングファームが洪水によって被害を受けたとはいっても、電力供給が不足して事業に支障をきたしているのか、施設の浸水によって操業を停止しているのか、土砂崩れによって施設が倒壊したのか、といったことは伝わっていません。

しかし、川沿いに施設を構えていたり、コストカットのために簡易的な施設でマイニングを実施していたり、大規模な洪水によって被害を受けやすいマイニングファームが多かったことも事実です。

また、発電所の一部が洪水被害に遭っていることも徐々に分かってきています。

他の地域での洪水被害ならばいざ知らず、マイニングに関係の深い地域での洪水であり、仮想通貨市場への影響も懸念が出てきたことで、ビットコイン価格にも影響が出ています。

ビットコイン価格は、21日にこのニュースが伝わるまで、115万円程度で推移していました。

しかし、ニュース直後から急落し、22日15時現在では105万円台まで落ち込んでいます。

この下落は、主にハッシュレートの低下と、中小のマイニング事業者の廃業への懸念によるものです。

ハッシュレート低下の懸念

ビットコイン価格は、ハッシュレートと強い相関があり、ハッシュレートが上昇すればビットコイン価格も上昇すると考えられています。

これは、

 

マイニング報酬を得るためには、大量の電力を消費して、高性能のコンピューターを稼働させる必要がある。その結果、ハッシュレートが上がる。

これには多くのコストがかかるため、マイニング報酬として受け取ったビットコインの価値が、費やしたコストを上回り、採算が取れなければマイニング事業が成り立たない。

つまり、マイナーは採算性があると考えてコストを費やし、ハッシュレートを上げている。

マイナーはビットコイン価格に強気であり、その見通しが市場の好材料となり、ビットコイン価格も上がる。

 

ビットコインは非中央集権的性質を特徴としており、特定の国や組織によって管理されておらず、適正価格も明確ではない。

そのため、リスクに敏感であり、容易に乱高下する。

特に、ハッキングなどのシステム上の問題で下落することが多い。

ハッシュレートが上昇すれば、システム上の不安は後退し、ビットコインの信頼が高まり、価格も上昇する。

 

といった理由によります。

マイニングファームが集中している四川省で洪水被害が拡大し、マイニング事業に悪影響をもたらした場合、ハッシュレートが低下する懸念があります。

これが、ビットコイン価格の下落要因となります。

中小マイニング事業者廃業の懸念

さらに、中小マイニング事業者が廃業すれば、これもビットコイン価格に悪影響を与える可能性があります。

四川省では、大手マイニング業者だけではなく、中小規模のマイナーも拠点を構えています。

現時点では、マイナー1社あたり100万元(1500万円)の被害が推定されており、この被害によって廃業を余儀なくされるマイナーも出てくるかもしれません。

廃業に追い込まれた会社は、事業を清算する必要があります。

会社財産を処理するにあたり、マイナーはこれまでマイニングによって得たビットコインを売り払うことになります。

もし、今回の洪水の被害が想像以上に大きく、また今後も被害が拡大していくなどすれば、廃業に追い込まれるマイナーが増え、廃業・清算に伴うビットコインの売却が相次ぎ、市場において大きな売り圧力となる可能性があります。

現時点での懸念は小さい

もっとも、現時点では、被害への懸念はそれほど深刻ではありません。

21日、四川省の水文水資源勘測局は、洪水の警戒レベルを「弱警報」に設定し、警告を発令しています。

「弱警報」は、最も強い警戒レベルである「危険」、2番目に強い警戒レベルである「強警報」に続くレベルであり、警戒レベルとしてはまだ低いと言えます。

また、今回の被害は、2018年7月の洪水被害ほどではないとする証言もあります。

2018年7月8日から11日にかけて、四川省綿陽市では豪雨に見舞われました。

1951年以来最大の豪雨とも言われ、涪江本流では50年に1度の大洪水が発生。

一部の村が孤立したり、農地が甚大な被害を受けたりしました。

今回の洪水被害は、これに比べると被害規模が小さいとのことです。

しかし、現在の状況で再び大雨が降るなどにより、二次的、三次的な被害も考えられます。

その場合、マイナーの被害が拡大するのは勿論のこと、警戒レベルが引き上げられ、仮想通貨市場に警戒感が広がる恐れもあります。

そんな中、安心材料として注目されているのは、ハッシュレートが低下していないことです。

マイニングファームに甚大な被害が及んでいれば、ハッシュレートは大きく低下するはずです。最新(20日9時)のハッシュレートを見てみると、低下するどころか上昇を続けています。

このデータから、マイニングとハッシュレートへの影響はさほど大きくないとも考えられます。

とはいえ、被害の拡大も考えられるため、ハッシュレートの推移には注目しておく必要があるでしょう。

自然災害による懸念を示唆

今回の洪水被害は、現時点では大きな懸念がなかったものの、自然災害による仮想通貨市場への影響を考える、良い契機になると思います。

自然災害は仮想通貨だけではなく、多くの市場に影響をもたらします。

2011年、東日本大震災後に日本の株式市場が大幅に下落したことは記憶に新しいでしょう。

同じく2011年、日系企業が多く進出するタイで大洪水が起こった際にも、株式に大きな影響を与えました。

株式市場以外にも、自然災害や天候は作物の収穫量を左右し、穀物相場に影響を与えます。

自然災害の影響を挙げると、枚挙にいとまがありませんが、仮想通貨市場においても同様です。

マイニングファームは特定の地域に集中しているため、その地域で自然災害が起これば、市場に様々な影響をもたらします。

特に、マイニング事業者は安価な電力を必要とするため、マイニング事業の拠点として求める条件が特殊です。

四川省が選ばれるのも、

 

  • 人口密度が低い、発展途上のエリア(周辺住民への電力供給が少なく、マイニング事業に大量の電力を費やしても問題になりにくいエリア)
  • 降水量が多い、川の流れが速いなど、水力発電に有利なエリア

 

など、マイニング事業に好都合な条件がそろっているためです。

しかし、これらの条件はマイニング事業には好都合であっても、同時に問題を孕んでいます。

人口密度が低い発展途上のエリアでは、インフラの整備遅れており、災害への対策も不十分なケースが多く、洪水などの災害が起こった場合に、大きな被害を受けやすい、被害が拡大しやすいといえます。

そして、本来降水量が多く、川の流れが速いエリアであれば、洪水などの災害が起きやすくなります。なおかつ、四川省は丘陵・山岳地帯であることから、豪雨の際に土砂崩れなども起きやすいです。

ビットコイン価格に大きな影響を与えるマイニングが、このような条件のものとで行われていることを知れば、自然災害も投資の判断材料として役立てることができます。

環境の変化にも留意

これに加えて留意しておきたいのが、近年、世界的に水災害が増加していることです。

これは、環境の変化によるものとされています。

四川省だけではなく、世界的な水災害に目を向ければ、様々な地域で大規模な災害が発生しています。

フィリピンでは、2011年、2012年、2013年と3年連続で大型の台風に見舞われ、死者1000人を超える水災害が発生しています。

モンスーンによる豪雨の被害も深刻です。

2012年、パキスタンでは504万人以上が被災しており、2013年はインドとネパールにおいて、死者6000人以上の被害を受けています。

上記でも少し触れていますが、2011年のタイ大洪水の被災者は900万人を超えています。

このように、具体的な数値を見てみると、水災害による被害の規模は、大変に深刻なものであることが分かります。

損保ジャパン日本興亜リスクマネジメントの研究報告(2015年5月発表)によれば、自然災害の発生件数は常に増加傾向にあり、特に1960年代以降は急激な増加を見せています。

自然災害による経済被害も、1980年代以降に急激に増加しており、特に災害リスクの高い地域での増加が顕著です。

仮想通貨市場への影響を考えるにあたり、注目すべきは、自然災害の65%を気象・水関連災害が占めていることです(洪水32%、暴風25%、渇水6%)。

中でも、近年の洪水発生件数は、1980年代に比べて約3倍に増加しています。

自然災害とマイニングの関係を考えると、このような自然災害(特に水災害)の増加は、一つの懸念材料となるでしょう。

今のところ、大規模な水災害はマイニングと関係の少ない地域で起こっており、自然災害による仮想通貨市場への影響も限定的です。

しかし、自然災害の増加傾向の強さから、今後災害が減少に転じるとは考えにくく、むしろ今後も発生件数・被害規模ともに増加傾向を続けると考えるのが妥当です。

また、仮想通貨業界が発展したのは、ごく最近のことであり、マイニングファームが集中するエリアが大規模な災害に見舞われた場合にどの程度の影響を受けるのか、予測することも困難です。

このため、実際に大規模災害が発生したとき、予測しにくいだけに大混乱をきたし、実際の影響以上に暴落を見せることも考えられます。

仮想通貨投資を実践する投資家は、今回の四川省洪水をきっかけに、自然災害が仮想通貨市場に与える影響について、よく考える必要がありそうです。

まとめ

今回の四川省の洪水被害は、被害の状況が詳細に報じられておらず、またハッシュレートの低下も見られないため、市場に深刻な影響を与えているわけではありません。

それでも、ビットコイン価格が短期間で10万円程度の下落につながっており、今後の動向に注目しておく必要があります。

投資においては、損失を最小限に留めるためのリスクコントロールが必須であり、懸念されるリスクを正しく捉え、適切に対応していくことが重要です。

仮想通貨市場におけるマイナーの重要性、ビットコインマイニングの特殊性、自然災害の増加傾向などを理解し、しっかりとアンテナを張っておくことで、より適切な判断ができるでしょう。

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たった1BTCの保有で世界の富豪になるって本当? https://kasou-tsuuka.jp/1btc/ https://kasou-tsuuka.jp/1btc/#respond Tue, 17 Sep 2019 04:42:27 +0000 https://kasou-tsuuka.jp/?p=5000 先日、BinanceのCEOであるCZ氏の公式ツイッターで、「1BTCを持っている人はやがて富裕層になる」とするツイートが発信されました。

ビットコインの普及は世界的に進んでおり、価値の上昇が見込まれているため、現在のビットコイン保有者が将来の富裕層になる可能性は十分に考えられます。

ビットコインに投資している人にとっては勇気づけられるツイートですが、このような考え方に対する疑問もしばしばみられます。

本稿では、ビットコインの普及と価値上昇への期待、その中でしばしば議論の対象となる矛盾点について解説していきます。

1BTCの保有で富裕層に?

8月25日、BinanceのCEOであるCZ氏の公式ツイッターで、ビットコインに関する強気の予想がツイートされました。

そのツイートは、

 

「もしあなたが1BTCを持っているならば、あなたは世界の最も裕福な3/1000の人になるだろう。」

 

というものです。

3/1000という数値の根拠は、世界の人口は約70億人であるのに対し、ビットコインの発行上限は2100万枚であるためです。

今後、ビットコインが普及して世界中の人に利用されるようになった場合、1000人あたり3人しか1BTCを保有できない計算になります。

現在、ビットコインの発行枚数は1789万7113枚であり、普及率はまだまだ低い状況です。

今後ビットコインが普及していき、世界中で高い価値が認識されるようになれば、ビットコインの価値は上昇し、たった1BTCの保有で富裕層の仲間入りができるという予想です。

CZ氏と同じ意見を持つ人は他にもいます。

例えば、コインベースのCEOであるブライアン・アームストロング氏も、CZ氏のツイートに先だって、以下のようなツイートをしています。

 

「良くも悪くも、ビットコインを所有する重要性は高まっている。発行上限は2100万枚のみであり、一部の人が既に1BTC以上を所有している。」

 

現在、1BTC以上を保有している人が多数います。

流通量が限られている中で、既に1BTC以上を保有する人がたくさんいるのですから、この傾向が強くなるにつれて、1BTCを保有するためのハードルは高まっていきます。

1BTCの保有によって、世界の3/1000に該当する富裕層になるためには、1BTCを早い段階で確保しておくことが重要と言えるでしょう。

ビットコインの普及は進む

上記のように、ビットコインの保有によって富裕層の仲間入りを果たすためには、ビットコインの価値が上昇することが前提となります。

これは、ビットコインが高い価値を持っていることが世界共通の認識となる必要があります。

単に価値の保存のためだけであれば、すでにゴールドという安全資産が存在し、信用も圧倒的に高いため、ビットコインがその地位を奪うことは難しいでしょう。

そこで、ビットコインがゴールドより優れている部分、すなわち実用性に価値を見出すことが欠かせません。

送金や決済などに利用できる通貨としての実用性と、その実用性をもたらすための世界的な普及が、ビットコインの価値を高めます。

先日、仮想通貨投資ファンド大手のグレースケール社の発表によって、ビットコインを受け入れている企業と非営利団体が、世界で10万社を突破したことが発表されました。

この発表によって、ビットコインの実用面での普及が着実に進んでいる様子がうかがえます。

ビットコインの現在の市場価値は1000臆ドル程度であり、数兆ドルにおよぶ金融市場全体ではごく一部にすぎません。

今後の普及に伴い、ビットコインの価値が認識されていくにつれて、ビットコインの市場規模は拡大していくと考えられています。

特に、ビットコインをはじめとする仮想通貨は、若い世代ほど高い関心を抱く傾向があります。

今後、長い時間をかけて世界の富が後世に受け継がれていくとき、受け継いだ資産をビットコインに振り分ける人も増えていくと予想されます。

これも、今後のビットコインの価値を高める要素になると考えられます。

このような展開が進めば、1BTCの保有によって富裕層の仲間入りを果たせるという予想も成り立ちます。

考え方のバランスに疑問も

もっとも、1BTCの保有によって富裕層になれるとする考え方は、現在の価値においてビットコインに投資し、その価値が下がらない、つまり価値の保存手段としての機能も期待しつつ、長期的な価値の上昇を見越して手元に留めておくことで初めて成り立ちます。

これは、1970年代に10年間で1365%ものリターンを生み出した、ゴールドへの投資と同じ結果を期待するものです。

しかし、ビットコインの価値が上昇するためには、ビットコインの普及が絶対条件です。

ビットコインの普及のためには、ビットコインを送金や決済のために積極的に利用し、手放す人が増えることが前提となります。

つまり、現在の価値が保存されること、そして将来的な価値の上昇を見込んで手元に留めておく姿勢は、普及促進とは逆のベクトルの考え方なのです。

このため、ビットコインをデジタル・ゴールドと称してゴールドのような役割を期待し、なおかつ普及を促そうとする考え方に疑問の声も挙がっています。

ビットコインとゴールドには様々な相違

実際、ビットコインとゴールドは、様々な点で異なります。

まず、ゴールドは古くから砂金や金貨として決済手段として活用されてきました。

それが、現在では価値の保存手段として認められています。

ビットコインも、決済手段として普及し、活用され、やがて価値の保存手段として認識される流れを想定すれば、ゴールドとかなり似ていると言えます。

また、ゴールドの特徴のひとつは、希少性があり偽造が難しいことであり、発行総数に上限があり、ブロックチェーン上で機能するビットコインはこの点でも似ています。

しかし、長い歴史の中で価値の保存手段としての地位を確立したのに対し、ビットコインの歴史は浅く、価値の認識は一定していません。

また、ゴールドが決済手段となり、流通を目的として利用されていた時代と、現在を比較すれば、経済の枠は大きく異なります。

だからこそ、ゴールドよりもビットコインのほうが実用面で優位に立っているとも言えます。

しかし、ビットコインを通貨として、決済や送金の手段として考えたとき、やはり価値の保存という意味ではゴールドに劣ります。

例えば、通貨はインフレによって相対的に価値が目減りするのに対し、ゴールドはインフレの影響を受けにくいという特徴があります。

一方、ビットコインが実用面での普及を果たし、法定通貨を淘汰し、送金や決済に利用される通貨として機能した場合、インフレによってビットコインの価値は目減りすると考えられます。

1BTCの価値が100万円、ある商品の価値が100万円であれば、この商品を1BTCで買うことができます。

しかし、インフレによってこの商品が105万円に値上がりすれば、購入のためには1.05BTCが必要となり、相対的にビットコインの価値は目減りするのです。

このように、実用化されたビットコインにはインフレヘッジの機能がなく、ゴールド並みの価値保存機能は期待できないのです。

極論すれば、ゴールドの価値保存機能は、実用性と流通性の低さに依る部分が大きいと言えるのですから、ビットコインの実用性と流通性が高まるにつれて、ゴールドとは異なる特徴が目立ってくると考えられます。

価値の判断には時間を要する

8月27日付の日経新聞朝刊では、仮想通貨リブラの評価について、

 

「お金の主導権をめぐる競争の行き着くところは、法定通貨と仮想通貨の信認争い。世界のいずれかの法定通貨がリブラとの信認争いに巻き込まれる蓋然性を否定できない」

「ユーザーがどのような価値を得られるのか、議論される段階で初めて本当の評価ができる」

 

といった、複数の専門家の意見が掲載されています。

この評価は、リブラに対する意見であると同時に、仮想通貨全体、あるいはビットコインに対する評価とも捉えることができるでしょう。

ビットコインとは何なのか、一般的に共通する認識は定まっていません。

世界経済の中枢には、ビットコインを信用しないとする立場の人も多く、一方でビットコインの保有によって富裕層になれるとする人もいます。

また、仮想通貨業界でも、ビットコインを投機的なリスク資産であるとみなす意見、価値の保存に役立つ安全資産であるとする意見など様々であり、決済手段としての有用性をあまり考慮しない議論も多々見られます。

今後、ビットコインの投資や普及の実態に伴って、ビットコインへの共通認識が徐々に固まってくるはずです。そこで初めて、ビットコインを保有する意味、活用する意味について多くの人が同じように考えるようになり、本当の価値も定まり、評価も一定してくると思います。

仮想通貨業界の一部では、ビットコインをデジタル・ゴールドとする考え方も強いのですが、この考え方については今後も長い時間をかけて議論されていくことでしょう。

とはいえ、上記の通り、ビットコインを受け入れる企業や団体は世界的に増加傾向を続けており、徐々に普及は進んでいます。

これにより、ビットコインの価値が長期的に高まっていくことは十分に考えられます。

ビットコインがゴールドとして機能する、また長期的に保有することによって富裕層になれるほどのリターンが得られる、といった考え方には様々な疑問もありますが、グレースケール社の発表の通り、市場ではビットコインの受け入れが進みつつあるという事実には注目しておくべきでしょう。

 

まとめ

CZ氏のツイートは、仮想通貨業界内外から注目されています。

基本的に強気な発言が多いことから、CZ氏の発言に惹かれて仮想通貨投資を始める人も多いと思います。

また、CZ氏の発言にはかなり強気な発言も多いものの、全く荒唐無稽とは言えない、一定の根拠のある発言です。この発言がひどく非難されるようなケースはあまりなく、類似する意見を発信する業界関係者が多いことからも、そのことが良く分かります。

しかし、ビットコインをはじめとする仮想通貨の価値は現在定まっておらず、意見の対立もしばしば起こっています。

多くのデータが蓄積されている分野でさえ意見の対立は起こるのですから、歴史の浅い仮想通貨で意見の対立が起こることは当然と言えます。

CZ氏をはじめとする業界関係者の強気の発言によって、仮想通貨への期待を高めるだけではなく、中立の立場で自分なりに考えて投資することが大切です。

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クレイグ・ライト氏、110万BTCを巡る裁判に敗れる https://kasou-tsuuka.jp/craigwright/ https://kasou-tsuuka.jp/craigwright/#respond Tue, 17 Sep 2019 04:41:02 +0000 https://kasou-tsuuka.jp/?p=5002 先日、ナカモト・サトシを自称し、ビットコインSVを率いる人物として知られるクレイグ・ライト氏が、110万BTCをめぐる裁判に敗れたことが報じられました。

これにより、55万BTCが原告に返還されることが決まりましたが、このうち約22万BTCが短期間に売却され、非常に強い売り圧力になる懸念が広がっています。

本稿では、この裁判の詳細と、懸念される売り圧力について解説していきます。

裁判の詳細

ビットコインの生みの親であるナカモト・サトシを自称し、またビットコインSVを率いる人物としても有名なクレイグ・ライト氏(以下、ライト氏)は、2018年2月末ごろ、1兆円相当の支払いを求める訴訟を起こされていました。

そして先日、ライト氏が敗訴したとの報が伝わり、市場に動揺が広がっています。

裁判について、時系列に見ていくと以下の通りです。

裁判の始まり

訴訟を起こしたのは、アイラ・クレイマン氏(以下、アイラ氏)です。

アイラ氏は、ビットコインが始まって間もない2009年から2011年にかけて、ライト氏と共同でマイニングを行なっていた、デイブ・クレイマン氏(以下、デイブ氏)の相続人にあたります。

このマイニングによって、ライト氏とデイブ氏が得たビットコインは110万BTCに上ります。

デイブ氏は2013年に死亡しており、本来ならばこれと同時にアイラ氏がこの半分にあたる55万BTCを相続しているはずです。

また、マイニング事業のためのソフトウェアはライト氏とデイブ氏が共同で開発したものであるため、アイラ氏はデイブ氏の知的財産権についても所有権があります。

しかし、ビットコインの黎明期にあたる当時、ライト氏とデイブ氏は、ビットコインのマイニングを行なっていることを家族や友人に話していませんでした。

このため、デイブ氏の死亡後、かなり時間が経過してから訴訟に至りました。

なぜ、2018年になってアイラ氏が共同マイニングの事実を知ったのかについて、詳しい情報はありません。

フロリダ州南部地方裁判所の記録によれば、アイラ氏の主張は以下の通りです。

 

(アイラ・クレイマン氏は、)「クレイグ・ライト氏はデイブ・クレイマン氏の死後まもなく、デイブ・クレイマン氏が所有するビットコイン関連の知的財産と、55~110万BTCを盗んだと主張している。

また、クレイグ・ライト氏は、デイブ・クレイマン氏の所有していた財産を奪うべく、クレイグ・ライト氏および自身の会社に移すことを画策し、契約書の日付を過去にさかのぼらせることで、デイブ・クレイマン氏の署名を有効にしたと主張している。

 

この主張に基づき、アイラ氏は、

 

  • 110万BTCの大半、もしくは適正な市場価格相当の資産の返還
  • 共同開発したビットコインソフトウェアの知的財産権侵害に対する賠償

 

を求めています。

ライト氏は、これに対して棄却を求めていましたが、2018年12月、フロリダ州南部地方裁判所は、

 

クレイグ・ライト氏は、デイブ・クレイマン氏の死後、最低でも30万BTCを換金し、様々な海外信託に移動した。

 

として、ライト氏の棄却請求を却下しています。

裁判の経緯

この訴訟について、当時はあまり大きく取り上げられていた印象がありません。

その後もしばらく、特別に経過が報じられることはありませんでした。

 

経過1:ビットコインを巡る裁判所命令

事態が大きく動き始めたのは、今年5月です。

ライト氏はフロリダ州南部地方裁判所により、2013年12月31日(デイブ氏が死亡したのは同年4月)から所有しているビットコインのリストの開示を命じられました。

これに対しライト氏は、全てのアドレスが網羅されたリストは持っておらず、開示はできないと主張しました。

一般的に、ビットコインの大量保有者は、ビットコインアドレスのカギの紛失や盗難のリスクに備え、複数のビットコインアドレスに分散して保有します。

110万BTCもの大量保有ともなれば、アドレスはかなりの数に上るはずです。

ライト氏はビットコインアドレスを開示できない理由として、2011年に、所有するビットコインを全て白紙委任信託に移動したためと主張しています。

白紙委任信託はブラインド・トラストとも呼ばれるもので、銀行や資産運用会社などの受託業務を行なう第三者が、完全に裁量権を与えられる、つまり白紙委任を受けている信託のことです。

信託の受益者は、信託が所有している財産について知ることができない仕組みになっています。

これにより、所有する資産をきっかけとする利益相反を防ぐことができます。

よく見られる例として、政治家が所有する資産が投票に影響しないよう、自身の資産を白紙委任信託に入れることを求められることがあります。

つまり、ライト氏は、ビットコインを全て白紙委任信託に移動させたことにより、自分ではビットコインの状況を把握できないと主張したのです。

これに対して裁判所は、ライト氏に対し、

 

  1. 白紙委任信託の名前と位置を特定する書類(及び宣誓陳述書)
  2. 信託の設立・管理・運営に関する全ての書類のコピー
  3. 2011年に白紙委任信託にビットコインを移動した記録、あるいは白紙委任信託の全トランザクションの記録(及び宣誓陳述書)

 

などの証明書類を提出するよう命じました。

経過2:偽造文書の提出が発覚

上記の裁判所命令が出されたのは5月3日であり、証明書類の①は5月8日まで、②は5月9日まで、③は5月15日までに提出することを命じられています。

かなりの短期間で証明書類を揃えることを命じていますが、大量の資産を白紙委任信託に移動させているのですから、それについての情報は常に正しく把握しているはずであって、すぐに提出できて当然だということでしょう。

ライト氏が、これらの書類を提出したことについては何ら情報がなかったものの、その後の流れから、どうやら期限通りに提出していたようです。

しかし7月、この証明書類がまた物議を醸します。

この裁判に関わっていた弁護士の一人が、ライト氏の文書が偽造であることを、証拠とともにツイッターで指摘したのです。

ライト氏が提出した証書の日付は2012年であったものの、ファイルのデータでは作成日時が2015年になっていたため、この証書が偽造であることが発覚しました。

証書が偽造であったことにより、ビットコインを白紙委任信託に移動させたという主張は通らなくなったため、裁判所は改めてビットコインアドレスの開示を命じています。

しかし、ライト氏はこれにも応じることはできませんでした。

証書の偽造について、ライト氏は法廷侮辱罪を問われる可能性もありますが、これについての判決は未だ出ていないようです。

裁判の結末

以上のような経緯をたどり、8月26日、ついにライト氏の敗訴が確定しました。

裁判所は、ライト氏とデイブ氏が共同でマイニングして得たビットコインの所有権について、その50%にあたる55万BTCをアイラ氏の権利として認めました。

アイラ氏が当初求めていた「110万BTCの大半」には至らなかったものの、このほかビットコインソフトウェアに関する知的財産権もアイラ氏の権利として認められたとのことです。

現時点では、ライト氏が55万BTCをどのように返還するのか、方法や予定などは明らかになっていません。

しかし、争われた110万BTCの所在についても、Tulip Trustという信託に保管されていることが明らかとなっています。

ライト氏は、この信託からアイラ氏へ、55万BTCを返還すると考えられます。

また、裁判後のインタビューで、ライト氏は、

 

(アイラ氏は、遺産税納付のための資金を)ビットコインで用立てるしかないだろう。

 

と語っているため、返還の意思もあるものと思われます。

売り圧力への懸念

ライト氏は、裁判の結果によってビットコインの売り圧力が強まる可能性を示唆しています。

連邦遺産税の仕組み

アメリカにおける相続税、すなわち連邦遺産税の税率は、100万ドル以上の相続の場合に最高税率である40%が課せられます。

したがって、アイラ氏が55万BTCを相続すれば、このうち22万BTC相当を納付する必要があります。

遺産税は現金で納付します。

22万BTCは、8月28日12時現在の時価にして約2351億円ですから、アイラ氏がこれを現金で納付できない場合、相続したBTCを大量に売却して納付する必要があります。

これが、大きな売り圧力になる可能性があります。

もちろん、アイラ氏がデイブ氏から多額の現金を相続している可能性も否めませんが、納税額の大きさから考えて、大量の売りにつながることは十分に考えられるでしょう。

譲渡税の懸念はなし

同時に気になるのが、譲渡所得税です。

アメリカでは、仮想通貨は連邦税法上の資産に位置づけられており、仮想通貨取引によって得た譲渡益は納税者の総所得に算入されます。

日本の税法では、株式などの資産を相続した場合、その資産の取得価格は被相続人の取得価格を引き継ぐため、被相続人の取得価格が低く、相続時点での資産価値が大きく高まっている場合には、売却によって多額の譲渡税が発生します。

このため、譲渡所得税も考慮する必要があります。

しかし、日本の税法とは異なり、アメリカでは相続した資産の取得価格を、被相続人の取得価格ではなく、相続人の相続開始時の価格に修正します。

このため、アイラ氏が55万BTCを相続してから売却するまでの間に、ビットコインが暴騰しない限り多額の譲渡益が発生することはなく、譲渡所得税の額も小さくなると思われます。

したがって、アイラ氏が遺産税に加えて多額の譲渡所得税の納付を迫られ、22万BTCを大きく上回る売り圧力が発生する懸念はありません。

どの程度の売り圧力か?

アイラ氏が納税のために22万BTCを売るならば、これが大きな売り圧力となることは間違いありません。

これまでも、一度に大量のビットコインが売られ、暴落する局面がありました。

このため、ビットコインの大量保有者であり、しばしば大量の売りを仕掛ける「クジラ」の動きが常に注目されています。

22万BTCの売り圧力は、これまで話題になったクジラ(と思われる)の売りの規模を遥かに上回ります。

最近の例を見ても、今年5月、日間取引量が100万ドルを超える大手取引所Bitstampでフラッシュクラッシュ(この時は一時的に30%の暴落)が起こったとき、約15億円にあたる1900BTCの売り板が確認されています。この売り板は、クジラによるものと見られています。

このように、1900BTCの売りでさえ30%の暴落を引き起こしているのです。

22万BTCは、この100倍以上の売りですから、一度に売られればこれまでに類を見ない混乱を引き起こすでしょう。

売り圧力に警戒すべき時期は?

以上の懸念から、ライト氏は、

 

「ビットコインSVには全く影響はないが、ビットコインには強い売り圧力になるだろう」

「ごめんねBTC」

「売り圧力を避けるためには、一気に売却しないように、アイラを説得しなければならない」

 

と発言しています。

もっとも、ビットコインは仮想通貨市場を牽引する存在であり、多くの仮想通貨は互いに強い相関にあるため、ビットコインが暴落すればビットコインSVも影響を受けることは必至であり、ライト氏の発言は疑問です。

また、一気に売却しないとしても、かなり強い売り圧力になる懸念は拭えません。

というのも、アメリカでは、原則として死亡日から9ヶ月以内に遺産税を申告・納付するよう定められているためです。

今回のケースでは、デイブ氏の死亡日から既に6年以上が経過しているため、相続開始時から9ヶ月以内に納付すると考えられます。

22万BTCを一気に売ることを避け、仮に9ヶ月間にわたって毎日分割して売るとしても、約815BTCを毎日売り続けることになります。

先日、Bitstampで1900BTCの売り板がフラッシュクラッシュを起こしたことを考えると、815BTCが特定の取引所で一度に売られれば、かなり強い売り圧力になるでしょう。

もっとも、市場全体の取引高を考えると、22万BTCの売却はそれほど問題にはなりません。

世界におけるビットコインの24時間の取引高は、8月28日現在、約2兆円です。

また、Bitflyerの報告によれば、国内取引所の月間出来高は、これまで取引が最も多かった2018年12月で約1844万BTCとなっています。

したがって、複数の取引所で、長期にわたって、小さな単位で細かく売却するならば、市場に深刻な影響を与えるとは考えにくいです。

ただし、アイラ氏がどのように売却するか、現時点では全く不明です。

ライト氏が55万BTCを返還し、アイラ氏が相続してから9ヶ月間が、売り圧力を警戒すべき時期と言えるでしょう。

まずは、ライト氏が55万BTCを返還する時期を知るために、続報に注意しておく必要があります。

まとめ

ライト氏は、以前にもビットコインキャッシュの分裂とハッシュ戦争を引き起こした張本人です。

これまでも、仮想通貨業界でたびたび話題となり、物議をかもすことも多いです。

今回、裁判の結果、市場に大きな売り圧力が発生する懸念が生じましたが、これもライト氏がかつての盟友の資産を着服したことが原因です。

仮想通貨業界において、要注意人物としてのイメージがますます定着しそうです。

仮想通貨に投資している人は、22万BTCの売り圧力に警戒しておく必要があります。

ライト氏の返還の時期やアイラ氏の姿勢などについて、続報が出る可能性も高いため、しっかりと動向を見守っていきましょう。

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モーニングスター社がXRPを株主優待。影響や意図を深読み https://kasou-tsuuka.jp/morningstar-xrp/ https://kasou-tsuuka.jp/morningstar-xrp/#respond Tue, 17 Sep 2019 04:38:24 +0000 https://kasou-tsuuka.jp/?p=5004 先日、ジャスダックに上場しているモーニングスター社が、株主優待としてXRPを配布することを発表しました。

これによって、モーニングスター社の株価が大幅に上昇したわけでもなく、株式市場の反応は極めて薄いのですが、仮想通貨市場への影響を是非考えてみるべきでしょう。

本稿では、モーニングスター社のXRPによる優待実施の概要と、期待される影響について解説していきます。

株主優待にXRPを導入

SBIホールディングスは、日本の金融業者の中でも特に多角化が進んでいる会社です。

ネット証券業、保険業、銀行業、仮想通貨交換業、ベンチャー企業投資などの様々な分野で事業を展開し、総合金融業者として急速に発展しています。

とりわけ、仮想通貨業界における存在感は強く、北尾吉孝社長はリップル社の役員も務めています。

SBIホールディングスは2015年11月、中間持株会社としてSBIグローバルアセットマネジメントを発足しており、SBIグローバルアセットマネジメントの子会社には投資評価会社として有名なモーニングスター社があります。

現在、モーニングスター社はジャスダックに上場しており、時価総額は今年3月時点で272億円です。財務は堅調であり、10期連続増配の実績からも分かる通り、業績も安定して伸びている優良会社です。

株主優待の内容

モーニングスター社の配当金は増配を続けており、2019年3月期の中間配当で6.5円、期末配当で7.5円、合計14円を配当しています。

2020年3月期の中間配当は、前年同期比50銭増配の7円に増配することが発表されています。

また、期末配当も8円への増配が予定されており、予定通りに配当されれば年間の配当金は15円となります。

モーニングスター社の8月30日の終値は350円ですから、配当金15円ならば配当利回りは約4.29%となります。

東証1部全銘柄の平均配当利回り(前期基準・加重平均)は2.56%、ジャスダック全銘柄の平均配当利回り(前期基準・加重平均)は1.71%ですから、モーニングスター社の4.29%という利回りはかなり高い水準と言えます。

またモーニングスター社は、配当金のほかに株主優待も実施しています。

これまでは、保有する単元数に応じて、株式新聞の無料購読クーポンなどを提供してきました。

これに加えて、8月28日のプレスリリースにおいて、中間配当の株主優待でXRPを配布することを発表しました。

配布されるXRPは、1単元(100株以上)を保有する株主に対して30XRPです。

中間配当の基準日は9月30日です。

配当金の増配に加えて、現金と同じ価値があるXRPを配布するのですから、かなり太っ腹です。

配当利回りは大きく上昇

1株あたりの年間の配当金15円であるため、100株保有する株主は配当金1500円に加え、30XRPを受け取ることになります。

最近、XRPは1XRP=27~28円程度で推移しています。

1XRP=28円とすれば、30XRPは840円相当です。

したがって、モーニングスター社の株主は、配当金とXRPを合計して年間で2340円を受け取ることになります。

現在の株価350円で100株取得した場合の投資金額は3.5万円ですから、これに対する配当利回りは最大で約6.69%まで上昇することになります。

ただし、XRPの配布は「100株につき30XRP」ではなく、「100株以上の保有者に30XRP」であるため、全ての単元株主(1単元(=100株)以上を保有する株主)に一律で30XRPの配布となります。

これは株主優待の特徴とも言える部分です。

配当金は1株ごとに支払われますが、株主優待は「100株以上で」「500株以上で」「1000株以上で」といった条件で配布されるため、株式の保有数と株主優待が比例するものではないのです。

モーニングスター社が、XRPの配布をツイッター上で発表したとき、「とりあえず1000株買いました」といったリプライを送るユーザーも見受けられましたが、1000株保有しても300XRPの配布を受けられるわけではありません。

350円で1000株保有すれば、配当金は15000円と30XRPを受け取るため、配当利回りは約4.53%となります。

この点には注意が必要です。

SBIホールディングスの自信

SBIホールディングスの北尾社長は、これまでもXRPを力強く推してきました。

モーニングスター社の株主優待にXRPが導入されたのも、SBIグループとしての方針が色濃く表れています。

株主優待に伴うモーニングスター社のプレスリリースでは、株主優待としてXRPを配布することについて、以下のように説明しています。

 

当社は、株主の皆さまへの利益還元として、2019 年 9 月 30 日を基準日とする中間配当の増配を決定し、併せて中間株主優待として、仮想通貨 XRP を贈呈することにいたしました。

仮想通貨(暗号資産)は、既にグローバルで、決済、送金、運用等の様々な場面で利用されており、なかでも効率的なグローバル送金で活用されている仮想通貨 XRPの実用性は今後一層高まり、ひいては、資産運用におきましても重要な資産クラスのひとつになると考えております。

当社は、「投資家一人一人の的確な資産形成に資する」ことを経営の基本的な考えとしており、これまでに豊富で偏りのない投資情報を提供してまいりました。仮想通貨につきましても、当社が運営する「My 仮想通貨」アプリを通じて、仮想通貨の価格情報や関連ニュース等を積極的に提供してまいりました。

当社株主の皆さまには、「My 仮想通貨」アプリによる情報に加え、仮想通貨 XRP に触れる機会を提供させて頂きたく、このたびの株主優待を実施させて頂くことになりました。

 

この説明から、SBIグループがXRPに寄せる期待が良く分かります。

XRPが金融的に非常に有用であり、今後実用性が高まっていく仮想通貨であるとする記載には、金融業者としての立場が多分に含まれています。

しかし同時に、資産運用でXRPが重要な資産クラスになるとも記載しています。

投資評価会社として知名度が高く、資産運用に関する情報を発信したり、セミナーを開催したりしているモーニングスター社が、このように立場を明確にしたことは、XRPにとって間違いなく好材料になると言えるでしょう。

XRPへの見込みが大きく外れてしまうと、モーニングスター社の発信する評価や情報への信頼は揺らぎ、事業に大きなマイナスとなります。

相当な自信や裏付けがなければ、このような大胆な優待を実施することはできないはずです。

見方によっては、SBIグループはモーニングスター社を通じて、XRPへの投資を推奨したと考えることもできます。

XRPの価格への影響は?

モーニングスター社の株主優待によって、XRPには以下のような影響が考えられます。

関心の高まり

モーニングスター社は、株主優待としてXRPを配布することで、自社の株主の資産にXRPが含まれることになります。

資産形成をサポートすることを使命としている会社ですから、株主がXRPという重要な資産クラスに積極的に投資できるように、XRP関連の情報を今以上に発信していくことが考えられます。

なんといっても、モーニングスター社の株主の多くは、投資に強い関心を抱いています。

モーニングスター社のような、ジャスダック上場の地味な会社以外にも、株式市場には魅力的な銘柄がたくさんあります。にもかかわらず、あえてモーニングスター社に投資しているのは、

 

  • モーニングスター社の投資関連業務に期待している
  • モーニングスター社の発信する情報を信頼している

 

といった理由からです。

期待・信頼しているモーニングスター社がXRPにお墨付きを与えたことで、モーニングスター社の株主がXRPに高い関心を抱くようになれば、XRP価格にも良い影響が期待できます。

投資の促進

さらに、XRPに投資する人が増え、価格上昇につながる可能性もあります。

というのも、XRPを受け取るためには、SBI VCトレードに口座を開設する必要があるためです。

モーニングスター社の単元株主数は、今年3月時点で15073人です。

単元株主のうち、どれくらいが口座を開設するか不明ですが、元より投資に関心を寄せる株主が多いのですから、これをきっかけとして口座を開設する人もかなり多いはずです。

単元株主に配布されるXRPは、合計で約45万XRPです。

仮に、これが全て売られるとしても、ほとんど影響のないレベルであり、優待が売り圧力になることは考えにくいです。

むしろ、受け取ったXRPをそのまま保有し続ける人や、興味をもってXRPへの投資を始める人も多いでしょうから、価格の上昇力になることも期待できます。

仮想通貨市場全体への影響も

モーニングスター社の株主優待をきっかけとして、これまで株に投資してきた人が、その一部をXRPに振り分けることも考えられます。

これは、株式市場から仮想通貨市場に資金が流れてくることにほかなりません。

もちろん、モーニングスター社の規模から考えれば、この株主優待が仮想通貨市場に与える影響はわずかなものかもしれません。

しかし、このような形で株式市場と仮想通貨市場が直接的な接点を持つことは珍しく、その意味を深読みするのも悪くないでしょう。

たとえば、この株主優待を通じてXRPへの関心や信頼が高まっていけば、

 

  • SBI VCトレードの口座開設が増える→XRPに投資・保有する人が増える→XRPを介した様々な金融サービスの普及につながる→XRPの流通量が大きく伸び、価格の上昇につながる
  • リップルネットを通じて送金業務を行なうSBIレミットの利用者が増える→SBIレミットの送金業務にXRPが使われることで、XRPの流通量が大きく伸び、価格の上昇につながる

 

など、様々な形でXRPの上昇要因になる可能性があります。

このように、モーニングスター社の株主優待は、SBIグループがあらゆる金融業務にXRPを活用するための布石となり、XRPの普及・価値向上につながるかもしれません。

今後は、モーニングスター社がXRPによる優待を継続していくのか、経過を観察していく必要があるでしょう。今回と同様、自信をもってXRPを推進し、優待として配布し続けるならば、SBIグループがXRP支持の立場であることは明白であり、XRPに投資する理由にもなりえると思います。

まとめ

モーニングスター社が株主優待でXRPを配布することは、投資評価会社として非常に思い切った取り組みだと言えます。

リップル社と深い関係にあるSBIグループが、XRPの普及推進にかなり自信を持っていること、また近年加速する実用化の流れに手ごたえを感じている様子がうかがえます。

仮想通貨市場やXRPの価格にも長期的に大きな影響をもたらす可能性があるため、単に株式市場の片隅で起こった小さな変化と見るのではなく、大いに好材料として捉えるべきでしょう。

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ビットコインが反騰。その背景と今後の見通しは? https://kasou-tsuuka.jp/btc-hantou/ https://kasou-tsuuka.jp/btc-hantou/#respond Wed, 07 Aug 2019 06:03:52 +0000 https://kasou-tsuuka.jp/?p=4991 ビットコインをはじめとする仮想通貨は、リブラに関する公聴会やテザー問題によって、7月に大暴落しました。当初、この影響が長引くことも懸念されていましたが、早くもビットコインが大幅な反騰を見せています。

本稿では、ビットコインが反騰につながった背景と、今後の見通しについて、著名人の意見を交えながら解説していきます。

ビットコインが反騰した背景

先月、ビットコインをはじめとする仮想通貨は軒並み大暴落しました。

これは、仮想通貨業界からは好感を以て迎えられた、Facebookのリブラが世界的に警戒されていること、さらにテザー問題が再燃したことによります。

懸念すべき問題が立て続けに起こったことから、100万円を下回る局面もありました。せっかく形成されつつあった上昇基調も腰を折られた形となり、影響が長引くことも予想されていました。

しかし、リブラに関する公聴会が仮想通貨業界全体に波及する結果にならなかったこと、そしてテザー裁判でも目立った悪材料が出なかったことによって、悪材料はひとまず落ち着いた感があります。

反騰の態勢が整ったことで、ビットコインは7月末から徐々に上昇してきました。8月2日には110万円を回復、さらに8月5日には120万円まで回復し、8月6日10時現在は123万円まで上昇しています。

これは、単にリブラやテザーに対する懸念が薄れただけではなく、世界経済におけるリスクが高まっていることが原因と考えられます。

 

世界的なリスクの高まり

最近、世界経済のリスクはにわかに高まってきています。ここ数日の日経平均株価を見ても、7月30日は21709.31円、31日は21521.53円、8月1日は21540.99円、2日は21087.16円、5日は20720.29円、6日は11時現在で20311.26円と、短期間で大幅に下落しています(全て終値)。

米中貿易摩擦の激化が大きな原因と考えられ、中国元は5日のオフショア市場で過去最安値を記録していますし、韓国ウォンも1ドル=1200ウォンまで下げています。この韓国ウォンの価格は、2017年1月以来の水準です。

米中貿易摩擦だけではなく、香港の逃亡犯条例を巡る大規模デモも大きな原因と考えられます。デモは4月頃から始まり、一部過激派の運動から200万人規模の運動へと発展しており、今後ますます泥沼化していくことも予想されます。

このほか、アメリカの金融緩和、イギリスのEU離脱なども見逃せないニュースです。

リスクが高まったとき、リスク資産から安全資産へと資金を移す動きが起こります。例えば、 中国の富裕層が、不安定な状況にある中国政府の管理下に資産を置いておくことを嫌い、国外に資産を逃避させている動きは確実にあるでしょう。

もちろん、このような動きは世界的なものです。日経平均株価が大幅に下げているということは、多くの人が株を売っているということです。株というリスク資産から、金などの安全資産に資金を移すための動きが、株式市場や外国為替市場などで起こっているのです。

安全資産の代表である金価格を見てみると、この流れが良く分かります。

金価格は、2018年8月の平均が4335円/グラムで直近の底値となっており、それ以降上昇を続けています。

金価格の直近の最高値は2013年2月平均の4910円/グラムですが、今年7月にはその高値を更新しています。8月6日の終値は5437円となっており、高値の更新が続いています。

このような金価格の推移を見ても、リスク資産から安全資産へと資金が流れている様子が良く分かります。

 

ビットコインにも資金が流れる

株や債券といった伝統資産に対し、不動産やコモディティなどをオルタナティブ資産と言います。ビットコインなどの仮想通貨も、伝統資産の代替となる資産という意味において、オルタナティブ資産であるといえます。

オルタナティブ資産は多岐にわたり、リスクも様々であることから、オルタナティブ資産=安全資産とは言えません。価値の保存手段として長い歴史を誇る金は、オルタナティブ資産であり安全資産と言えますし、ボラティリティが高く普及率も低いビットコインは、オルタナティブ資産でありリスク資産と言えます。

リスクが高まった時、金などの安全資産に資金を逃避させるのは当然ですが、ビットコインなどのリスク資産に資金を逃がすのは不合理に思えるかもしれません。

しかし、伝統資産からオルタナティブ資産へ資金を移すのですから、ビットコインに資金を移すこともなんら不合理ではありません。

むしろ、法定通貨が大きく下落し、信用を失っている局面では、法定通貨の対極にある仮想通貨を買う動きが当然にして起こるのです。

特に、仮想通貨は伝統資産からオルタナティブ資産へと資金を移すと同時に、投機的なパフォーマンスも期待できます。

資産を守ることを重視する資産家であれば、金を買うことが多いですが、そうではない個人投資家は値上がり益を期待して仮想通貨を購入する傾向があります。

以上のように、

 

  • リブラやテザーの問題などによるリスクが後退した
  • 世界的なリスクの高まりによって、ビットコインを買う動きが強くなった

 

という流れによって、ビットコインが反騰につながったのです。

 

著名人の見解は?

この流れを受けて、強気の予想を打ち出す著名人も出てきています。

ビットコイン強気派として知られるMax Keiser氏がその一人です。Keiser氏は、アメリカの経済番組「カイザーレポート」の司会者として知られる人物であり、2017年11月には「ビットコインはいずれ10万ドルを超える」とも予想しています。

 

10万ドルを超えるという予想は今のところ的中していませんが、この発言の直後にビットコインが過去最高値をつけたことは事実です。

また、Keiser氏は早くからビットコインとハッシュレートの相関性を指摘しており、この指摘はかなり浸透してきています。

このため、Keiser氏の強気な発言は業界から注目されています。8月4日、Keiser氏は自身のツイッター上で、

 

私は、ビットコインが今週中に15000ドルを超えると見ている。政府、中央銀行、中央集権化された法定通貨に対する信頼は、数十年ぶりの低水準にある。

 

と発言しています。

「今週中」という予想は、短期予想としてはかなり強気といえますが、ここ数日の上昇のペースや、ビットコインのボラティリティの高さを考えると、この予想が的中することも十分に考えられます。

 

今後の動きには注意

今回のビットコインの反騰は、世界的な影響を考えると、起こるべくして起こったものと言えます。

しかし、ビットコインチャートを見てみると、ほとんど押し目を作らずに上昇していることが分かります。

押し目を作らずに上昇していることは、単に他の資産からビットコインへと資金を移すための買いが集まっただけではなく、

 

  • 総悲観から一転して上昇を始めたため、持たざる心理による買いが増えている
  • 継続的な下落を見越していた売り勢力のショートポジションが決済され、上昇力になっている
  • さらなる上昇を見込んでいる人が多く、利確する人が少ない

 

ということが分かります。

仮想通貨市場は、現物買いよりも信用買いのほうが圧倒的に多く、この点で他の市場と大きく異なります。信用買いによって形成された相場は、現物買いによって形成された相場よりも不安定です。

なぜならば、信用買いでは自己資金以上に買うため、投資家心理は弱気に傾きやすいからです。悪材料が出てから決済するまでの動きが非常に早く、大幅な下落が起こりやすく、ロスカットが相次いで暴落に至ることもあります。

Keiser氏の予想通りの展開になることも考えられるため、今後も継続的に上昇することを期待して、ビットコインに投資する人もいると思います。

しかし、大幅な下落が起こるリスクも高まっていることを十分に認識し、

 

  • 現物買いに限定する
  • 信用買いの場合には、まず少量の試し玉を入れてみる
  • 損切りやナンピンの基準をあらかじめ決めて、計画的に取り組む

 

など、慎重な姿勢で取り組むことが大切です。

 

まとめ

世界的な不安の拡大によって、金やビットコインの価格が大幅に上昇しています。仮想通貨市場では、大幅な値動きが起こったとき、その原因がよくわからないこともありますが、今回の反騰は十分な根拠があると言えます。

著名人の予想通り、ビットコインはさらなる上昇を続けるとも考えられます。しかし、下落リスクも徐々に高まっていることを認識し、慎重に投資していくことが大切です。

 

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リップル第2四半期レポート公開。XRP販売に期待 https://kasou-tsuuka.jp/xrp-report/ Wed, 07 Aug 2019 05:55:51 +0000 https://kasou-tsuuka.jp/?p=4932 先日、リップル社が第2四半期レポートを公開しました。

公開に先立ち、一部の専門家はXRPの販売量の増加が売り圧力となり、XRPの投資パフォーマンスを低下させていることが指摘されていましたが、第2四半期レポートの内容は、XRPの将来性に期待できる内容も含まれていました。

本稿では、XRPの販売量の増加とXRP価格への懸念、第2四半期レポートで好感されているポイントについて解説していきます。

XRPの売り圧力に懸念

先日、仮想通貨データ分析企業・MessariのリサーチャーであるFlorent Moulin氏によって、XRPの販売量と価格の相関性について、興味深い見解が示されました。

リップル社の方針は、XRPの価格動向にも大きな影響を与えるとされています。

これは、リップル社が大量に保有しているXRPを定期的に販売することで、売り圧力になると考えられているためです。

XRPの総発行数は1000億枚ですが、これは全てが市場に流通しているわけではなく、リップル社が内部に留保していたり、創業者などの一部個人や一部の関連企業に大量に割り当てられています。

このような、現在流通していないXRPを、リップル社が定期的に市場に解放したり、一部個人が売却したりすることがあり、これがXRPの価格上昇の妨げになっていると言われます。

 

XRPの販売量・供給率は高まる

Moulin氏は、リップル社のXRP販売による売上と供給率の増加を指摘しており、特に今期の第2四半期の公表に先だって、「2018年の(XRP販売による売上の)最高額に次ぐものになるかもしれない」との見解を示していました。

この根拠は、リップル社によるXRP販売量と供給率が大幅に増加していることです。

リップル社だけではなく、一部個人による売却も徐々に増加してきています。

一部個人による売り圧力は、リップル社の販売に比べると少ないものの、第2四半期の売却量は4億XRPに上り、決して無視できないことが分かります。

このような一部個人とリップル社のウォレットから販売されたXRPは、合計で18億XRP以上にもなると推算されています。

さらに、これらの販売による市場への供給率について、リップル社の報告と実際の数値が異なることも指摘されています。

Moulin氏によれば、リップル社の報告が供給率4.5%としているのに対し、実際の数値は11.6%となっています。

決して微々たる相違と言えるものではなく、投資家にとっては売り圧力になりかねないため、実際の数値をもとに販売量・供給率の動向に注意する必要があるでしょう。

 

XRPはパフォーマンスが悪い?

なおMoulin氏は、この売り圧力の影響を受け、XRPは他の仮想通貨に比べて投資効率が悪化していることも指摘しています。

Messariの分析結果を見ても、仮想通貨の時価総額上位10銘柄(ビットコイン、イーサリアム、リップル、ライトコイン、ビットコインキャッシュ、イオス、バイナンスコイン、ビットコインSV、エイダ、ステラ。テザーは除く)のパフォーマンスを比較した場合、XRPは第9位にランクされています。

このようなパフォーマンスの悪さについて、リップル社などによる売り圧力であると指摘する声は多いです。

仮想通貨分析企業であるCrypt.IQのレポートでも、

 

  • BTC建てでのXRP価格は、2018年から88%の下落を記録している
  • 2013年のXRPの流通量は78億XRPであったが、現在は428.3億XRPに増加している
  • 2016年にリップル社が公開した売上報告書では、XRP販売による売上は460万ドルであったが、2017年には1.6億ドルに、2018年には5.3億ドルに増加している

 

などのデータを示しており、XRP販売による売り圧力が年々高まっていることを指摘しています。

世界の主要取引所におけるXRPの出来高は1000万~1億くらいです。

現在のXRP価格は約0.3ドルであり、2018年の売上である5.3億ドルを売り上げるためには、18億XRPを販売していることになります。

販売するタイミングやペースにもよりますが、一度に大量に販売されれば値崩れを起こす規模の売りになるでしょうし、値崩れしないように売られるとしても、価格上昇を抑えつけるには十分な影響を持っていると言えます。

価格上昇による利益を目的としてXRPに投資する人にとって、これは懸念すべきことです。

 

リップル社の第2四半期レポート

7月25日に公開された、リップル社の第2四半期レポートでは、2019年4~6月におけるXRPの販売は、機関投資家向けに106.87億ドル、プログラマティック販売(プラットフォームを介して自動で行われる販売)は144.64億ドル、合計で251.51億ドルとなっています。

第1四半期のレポートでは、機関投資家向けに61.93億ドル、プログラマティック販売で107.49億ドル、合計で169.42億ドルとなっています。

これと比較すると、3ヶ月間で約48%も増加していることになります。

短期間に販売量が1.5倍も増えているのですから、これまでXRP価格が伸び悩んできた原因の一つと考えるのが妥当でしょう。

販売量の増加ペースは一定ではありませんが、このような流れが続くことは、パフォーマンスに大きな影響を与えるはずです。

 

出来高水増し問題が原因か

上記のような懸念は、これまでにも度々話題になってきました。

投資家にとって救いとなるのは、これらの懸念に対し、リップル社が具体的な取り組みを実施していることです。

第2四半期でXRPの販売量が増加している背景には、仮想通貨市場における「出来高の水増し問題」があります。

株をはじめとする、あらゆる投資に共通することですが、価格と出来高には強い相関性があります。

出来高が多いということは活発に取引されているということであり、売りたい人も多ければ買いたい人も多いということです。

売りたい人の多さは下落につながりますが、本当に見捨てられてしまったものには買い手もつかず、出来高は伸びません。

つまり、出来高の多さは価格の上昇力とも捉えることができるため、出来高に注目しておくことは投資の基本とも言えます。

したがって、仮想通貨投資でも、出来高について正確なデータが必要となりますが、仮想通貨市場では以前から、取引所による出来高の水増しが疑われています。

XRPの出来高も水増しを指摘されています。

リップル社のXRP販売量は、市場全体の出来高に基づき、価格への影響が軽微であると判断した数量を販売しています。

このため、出来高が水増しされていれば、価格への影響が軽微ではない販売量になる可能性もあり、売り圧力への懸念も高まります。

リップル社が虚偽のデータを報告し、大量の販売につながったわけではありませんが、リップル社は市場の透明化を目指し、水増しを防ぐためにXRPの販売を一部制限してきました。

この制限を解除し、従来の販売を再開したことが報告されたのは第2四半期の初めですから、第2四半期で販売量が増加していることは自然であるとも言えます。

 

売り圧力は減少するか

また、第3四半期では、第2四半期よりも保守的なアプローチを用いるとも発表しています。

「より保守的なアプローチ」とは、出来高の水増しを防いだ後、正確な出来高データに基づく販売基準を新たに設定するアプローチです。

これまでリップル社では、水増しを指摘されているCoin Market Capの出来高データをもとに販売量を決定してきました。

しかし、新たな販売基準では、より正確なデータとしてCrypto Compare社のデータを利用し、販売量の適正化に努めるとのことです。

このアプローチは、第3四半期から導入される予定です。

リップル社の掲載したデータでは、第2四半期におけるXRPの出来高は、Crypto Compare社のデータでは390.9億ドル、Coin Market Capのデータでは1595.7億ドルとなっており、約4倍の差があります。

第3四半期からは、Crypto Compare社の出来高データを基準に販売していくのですから、販売量は減少し、売り圧力も小さくなることが期待されます。

 

その他の注目ポイント

以上のように、XRPの販売方針に注目が集まっていますが、一方でxRapidの取引増加にも注目するべきでしょう。

xRapidは、XRPを利用する送金サービスであるため、xRapidの取引増加はXRPの普及と価格上昇につながるとされています。

今年に入ってから、マネーグラムとリップル社の提携をはじめ、xRapidの導入が広がりつつあります。

第2四半期レポートでは、第1四半期と比較して、

 

  • xRapidを導入し、正式に利用した企業が30%増加した
  • xRapidによる取引数が170%増加した

 

ことが報告されています。

xRapidは、ようやく導入が進みつつある段階ですから、短期間でXRP価格に大きな影響が出るとは考えにくいものの、長期的には良い流れと言えるでしょう。

 

まとめ

出来高データの是正によってXRPの販売量が適正(XRP価格に影響しないレベル)となり、さらにxRapidの利用増加によってXRPの価値が高まれば、XRP価格にも期待が持てます。

第2四半期における販売量の増加を悲観するのではなく、第3四半期での販売量がどうなっているか、実際に保守的なアプローチが効果を発揮しているのか、といったことに注目していきましょう。

 

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非難囂々のリブラの公聴会。しかし市場は安堵感を取り戻す https://kasou-tsuuka.jp/libra-kouchoukai/ Wed, 07 Aug 2019 05:52:59 +0000 https://kasou-tsuuka.jp/?p=4934 17日、18日の2日間にわたり、米上院・下院でリブラの公聴会が開かれました。

仮想通貨業界にとっても大きな影響が懸念されていた公聴会であり、公聴会前からリブラを批判する意見が多かったため、公聴会前まで仮想通貨市場は下落を続けました。

公聴会ではリブラへの不信感が非常に強いことが分かりましたが、公聴会後、市場は落ち着きを見せています。

本稿では、公聴会でのやりとりのまとめと、市場が安堵感を取り戻した理由について解説していきます。

リブラ問題と公聴会

先月、Facebookが独自通貨として開発を進めているリブラのホワイトペーパーが公表されました。

仮想通貨業界は、これがデジタル資産の普及を促進するとして歓迎したものの、各国の金融・経済の主導者たちは強い懸念を示しています。

今月大阪で開催されたG20でも、早急にリブラを規制していく必要があるという結論に達していますし、先日パリで開催されたG7 でも同様の見解で一致しています。

これは、リブラ・プロジェクトの目標とする「シンプルかつグローバルな金融インフラ」が実現した場合、世界の金融・経済にあまりにも大きな影響を与える可能性があるためです。

これまでの仮想通貨とは異なり、リブラはFacebookが抱える20億人規模のユーザーを基盤としているため、リブラがローンチされれば、急速に普及していくと考えられます。

当然、ドルや円といった法定通貨にとって代わる存在になるかもしれませんし、金融機関に与える影響も非常に大きいことでしょう。

国家にとって、自国あるいはEUのような統合体で独自の法定通貨を発行しているということは、国家あるいは統合体の主権に大きく関わっており、世界の金融と経済が安定して成り立つためにも欠かせない要素です。

リブラ・プロジェクトが実現すれば、そのような基本的な仕組みが大きく変わり、金融・経済に混乱をきたす懸念があるのです。

日銀の黒田総裁はリブラ問題の懸念に対し、

 

日本銀行は、リブラがどのようなものであれ、決済手段としての十分な信頼が確保できるのか、金融システムにどのような影響があるのか、内外の関係当局と連携しながら動向に注意していきたい。

 

と話しています。

また、FRBのパウエル議長も、「徹底的に、忍耐強く取り組んでいく」と発言しています。

G20やG7では「早急な規制が必要」とされたものの、具体的な規制案はありません。

世界全体としては強い懸念を持ちつつも、各国の政府や中央銀行といった小さな単位での意見としては、黒田総裁の発言のように「(性急に結論を下すのではなく)注意深く見ていきたい」という意見なのだと思います。

しかし、リブラに対する規制が仮想通貨業界全体の発展の妨げになることが懸念され、最近の暴落の一因になったことも事実です。

 

リブラの影響を最も受けるのはアメリカ

リブラの開発を手掛けるFacebookはアメリカの企業であり、Facebookのユーザー数が最も多い国もアメリカです。

Facebookのユーザー数を国別で見てみると、アメリカが2.3億人で第1位となっています。

第2位はインドで2.2億人です(2017年データ)。

総人口に対するユーザー数を比較すると、アメリカは総人口3.29億人に対してユーザー数2.3億人で利用率は約70%、インドは総人口13.39億人に対してユーザー数は2.2億人で利用率は約16%ですから、非常に大きな差があります。

さらに、アメリカの法定通貨である米ドルは、世界の基軸通貨でもあります。

当然ながら、リブラによって最も大きな影響を受けるのはアメリカと考えるのが妥当です。

だからこそ、アメリカは世界の中でも、特に強い懸念を抱いています。

 

公聴会とは?

17日、18日に、米上院・下院で開かれたリブラの公聴会が、懸念の強さの表れです。

早急な規制が必要であれば、アメリカが先陣を切って規制に取り組んでいくべきで、公聴会には大きな注目が集まっていました。

公聴会とは、米上院・下院に設置されている種々の委員会が、調査や情報収集を目的として、関係者や専門家を召喚するものです。

大きな懸念が発生した際や、重要な法案を検討する際に開かれます。

特定の企業の活動が、経済に大きな影響を与える場合にも開かれることがあり、過去にはトヨタの豊田章男社長が召喚されました(2010年の大規模リコールの際)。

また、Facebookは過去にも公聴会に召喚されたことがあります。

2018年、Facebookの個人情報の扱いに問題があるとして、CEOのザッカーバーグ氏が召喚されたのです。

公聴会の大きな特徴の一つは、様々なメディアで大々的に報道されることです。

議員にとっては見せ場になりえることから、様々な質問が行われます。

問題を本質的にえぐる強烈な質問もあれば、問題の本質をまったく外している質問もあり、回答側の発言の揚げ足取りにもつながる可能性があります。

公聴会に召喚された企業側に問題があればそれを露呈することになり、問題がなくても穿った見方をされることもあるため、公聴会によって疑念を晴らすというよりも、関わらなくて済むならばそれがベスト、ともいえます。

懸念が高まるなかで公聴会が決定したことにより、仮想通貨市場の下落の一因となったのも、このような公聴会の性質によるものが大きいでしょう。

 

17日 米上院での公聴会

17日は、米上院で公聴会が開かれました。

上院で主題となったのは、Facebookの信用問題です。

リブラ・プロジェクトの技術的な問題にツッコむのではなく、Facebookの過去のデータ取り扱いに関する問題を持ち出し、「信用に懸念があるFacebookが進めているのだから、リブラも信頼できない」というスタンスです。

上記の通り、Facebookは過去にも公聴会に召喚されていますが、これは数千万人規模で個人情報流出させたことが原因です。

また、Facebookが広告主である企業に個人情報を提供している疑惑もあります。

さらに、2019年になってからも、数億人分のユーザーパスワードを暗号化処理せずに保管していたことが発覚しています。

仮想通貨業界への影響を考えると、リブラ・プロジェクトは好ましい側面も多いです。

しかし、Facebookが過去に起こした問題が大きく、当然の理由によって信用を失っていることも事実です。

Facebookの個人情報取り扱いに関する問題は、ごく最近に起こったものであり、失った信頼を取り戻すのは到底不可能です。

リブラの技術面を問題とするまでもなく、開発元であるFacebookへの不信感を以て断罪するという雰囲気には納得できます。

むしろ、公聴会は大々的に報道されるのですから、リブラが技術面でどれだけ安全であっても、リブラに信頼を寄せるような発言をすれば、議員としての良識を疑われるでしょう。

また、リブラの技術について正確に理解し、的を射た質問をできる議員がどれだけいるのかも疑問です。

だからこそ、上院では単に信用問題を追求する形になったのだと思います。

 

Facebook側の対応

招集されたFacebookからは、仮想通貨責任者であるDavid Marcus氏が出席しています。

Marcus氏は仮想通貨責任者という、Facebookの一部門の代表として出席し、リブラの技術面での懸念を払しょくしたいと考えていたはずです。

リブラの技術面について質問があれば、仮想通貨責任者として十分な理解もあるでしょうし、様々な回答もできたと思います。

しかし実際には、上記の通りFacebookの信用問題が主題となりました。

仮想通貨部門の責任者として、リブラ周辺のことには責任をもって回答できるでしょうが、Facebook全体の信用問題が主題となれば、もはや責任の範疇を超えています。

このため、Marcus氏はこれらの批判に対して、リブラを管理するのは、様々な企業が参加するリブラ協会であることを強調することで対応しています。

Facebookが不信感を持たれるだけの十分な理由があるだけに、議員が抱く不信感に直接的に反論するのは困難でしょう。

しかし、信用のないFacebookだけではなく、信用のある多くの企業群によって管理されていくのだから、Facebookへの不信感だけを理由にリブラの可能性を潰さないでほしい、と主張したわけです。

また、リブラの利用にあたって必要となるウォレット兼決済アプリである「Calibra.com」の個人データを、Facebookやリブラ協会に共有しないとも明言しています。

しかし、リブラ協会の参加企業とFacebookの利害関係は曖昧であり、Calibra.comを管理するのは、Facebookの子会社であるCalibraです。

親会社であるFacebookのデータ管理に問題があるため、子会社であるCalibraのデータ管理への不信感も根強いものがあります。

 

批判と非難に終始

Marcus氏の説明によってリブラへの不信感が拭われたわけではなく、Facebookが信用できないからリブラも信用できないと考え、Marcus氏の説明も不十分であるとする議員も多いようです。

公聴会では、上院議員のSherrod Brown氏から、

 

労働者がFacebookに、苦労して稼いだお金を預けられるだけの信頼はないのではないか?

あなた(Marcus氏)は、仕事の報酬をリブラで受け取ることができるのか?。

 

という質問もされており、リブラへの不信感の強さが分かります。

リブラは銀行口座として機能するものではなく、「Facebookにお金を預ける」という前提には違和感がありますが、Facebookが管理するリブラを法定通貨によって購入し、利用するのですから、広い意味ではそのような側面がないわけではありません。

これに対してMarcus氏も、リブラは銀行口座ではないとして反論しています。

しかし、同様の質問が繰り返されたため、「私は、自分の全資産をFacebookに預けることができる」と発言し、Facebookやリブラの信頼性を強調しています。

しかし、質問したBrown氏は、Facebookやリブラに強い不信感を持っているのです。

Facebook側のMarcus氏がいくら信頼していると強調したところで、考え方が変わるはずもありません。

実際、Brown氏は公聴会の終了後の取材で、

 

リブラを制御する法案を支持する。

 

と発言しています。

以上のように、17日の公聴会は批判と非難に終始する内容となりました。

ポジティブと言える意見もわずかにありますが、それも「リブラの利点とリスクをしっかり検討せずに規制していくのは、時期尚早ではないか」といった程度のものであり、Facebookやリブラに理解を示すものではありませんでした。

 

18日 米下院での公聴会

18日は、米下院で公聴会が開かれました。

上院では、主にFacebookの信用問題を軸とした公聴会になりましたが、下院ではリブラやリブラ協会に対しての質問も行われています。

中でも注目したいのは、Alexandria Ocasio Cortez議員によって、リブラ協会の参加企業の選び方について質問されたことです。

前日、上院ではMarcus氏により、「リブラはFacebook単体ではなく、リブラ協会によって管理されるものであり、信用できるものだ」との説明がありました。

これをさらに追求するように、

 

  • リブラ協会のメンバーは、民主的な方法で選ばれていないのではないか
  • リブラ協会の大半を大企業が占めているのだから、これは大企業による独占なのではないか

 

など、リブラとリブラ協会の中央集権的な性質について、疑問が投げかけられたのです。

これに対してMarcus氏は、リブラ協会はオープンであり、リブラのビジョンに賛同しており、一定の条件を満たせばどの企業でも参加できると説明しています。

一定の条件とはいかなるものか、詳しい説明はありません。

しかし、この質問のほかに、

 

リブラのブロックチェーンでは、誰でもノードになることができるか?

 

との質問に対して、Marcus氏は、

 

誰でもなることはできない。市場規模が10億ドル以上、なおかつ顧客によるキャッシュフローが5億ドル以上であることが条件だ

 

と回答しています。

これが、リブラ協会に参加するための条件の一つになるものと思いますが、これはなかなかに厳しい条件です。

現在、Facebookの時価総額は約5500億ドルであり、それから見れば市場規模10億ドルのハードルは低いようにも思えます。

しかし、多くの企業にとってはクリアしがたいハードルです。

このほかにも色々な条件があるはずですから、リブラ協会がMarcus氏の説明のように「オープンである」とは言い難いでしょう。

 

リブラ・プロジェクトは中止しない

一部の大企業による独占を懸念している下院が、Marcus氏の説明によって中央集権的な特徴への懸念が解くはずもなく、下院金融サービス委員会からは、リブラとカリブラの開発中止が要求されています。

しかし、Marcus氏は、

 

Facebookは、時間をかけて規制条件を全て満たし、リブラを発行する。

 

と応じ、開発中止の要求を拒否しています。

中止の要求を明確に拒否したわけではないものの、事実上の拒否と捉えてよいでしょう。

下院のCarolyn Maloney議員も、この回答を「ノーと捉える」と言っています。

このとき、Maloney議員は、「開発を中止しないならば、まずはSECとFRBの監督の下で、100万人以下の規模で試験してはどうか」との代替案を出しています。

しかし、Marcus氏は試験運用を承諾せず、Maloney議員は「ならば、リブラは発行すべきではない」と結論づけています。

上院よりはやや具体的な議論がなされたものの、互いに譲らない結果になったと言えるでしょう。

Marcus氏の対応が正しいかどうかは別として、規制当局に協力すると言いつつも、規制当局の監督を受けて試験運用することは承諾しなかったのですから、米国議会には悪印象になったことでしょう。

 

懸念は後退か

今回の公聴会によって、上院・下院共にFacebookとリブラを認めていない雰囲気が分かります。

認めておらず、懸念しているからこそ公聴会に至ったのですから、当然といえば当然ですが、Facebook側の回答は納得のいくものではなく、平行線どころかより強い拒否反応を生み出しただけの印象もあります。

トランプ大統領もリブラを名指しで批判しており、公聴会も非難囂々のうちに幕を閉じたのですから、今後の米国会がリブラを規制・抑制する方向で取り組んでいく可能性も十分に考えられます。

どのように進展していくか、しっかり注目していく必要があるでしょう。

 

市場は安堵感を取り戻す

先日より、公聴会を不安視したことも一因となって、仮想通貨市場は大幅な下落を続けてきました。

しかし、公聴会後、仮想通貨市場は安堵感を取り戻しています。

確かに、公聴会はリブラへの不信感がありありと分かる内容でしたが、それと同時に、この不信感はあくまでもFacebookを原因とする部分が大きいことも分かりました。

市場が不安を抱いていたのは、リブラへの規制を発端として、仮想通貨業界全体への様々な規制に発展していく可能性があったからです。

しかし、蓋を開けてみればFacebookへの不信感が主な原因であり、仮想通貨業界全体への影響はどうやら小さいようです。

さらに、今回の公聴会ではビットコインについても言及されており、特に

 

中国政府でさえ、国家ぐるみでの規制によってビットコインを殺すことはできなかった。

政府は、非中央集権のブロックチェーン技術やビットコインを排除することはできない」

「政府によって、イノベーションを止めてはならない。

 

など、ビットコインとリブラは根本的に異なるものだとする指摘や、擁護する意見もありました。

今回の公聴会がFacebookとリブラへの不信感を主題としていたこと、ビットコインなどの非中央集権的な仮想通貨への全体的な批判がなかったこと、リブラとビットコインの違いについてきちんと認識されていると分かったことなどから、仮想通貨市場がひとまず安堵感を取り戻すには十分な内容だったと思います。

もちろん、トランプ大統領はビットコインを批判していますし、米国議会全体がビットコインに賛成しているわけでもないため、今後も規制の動向には気を付けておくべきです。

しかし、少なくとも公聴会への不安による重石は取り除かれ、実際に公聴会後にビットコイン価格は110万円台を回復しています。

再び上昇トレンドに転じるきっかけにはならないかもしれませんが、さらなる下落を引き起こさなかっただけ良しとするべきでしょう。

 

まとめ

今回の公聴会の内容から、アメリカ政府がFacebookとリブラに大きな不信感を抱いていることが良く分かりました。

仮想通貨の普及促進につながるとして、仮想通貨業界からは歓迎されたリブラですが、今後様々な困難に直面していくことと思います。

公聴会によって、市場が安堵感を取り戻したことは喜ばしいことです。しかし、仮想通貨市場への影響が全くないとは限りません。

今後も、リブラ周辺の動きにはしっかりと注意を払うべきでしょう。

 

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テザー問題とリブラ問題の影響。暴落の背景を探る https://kasou-tsuuka.jp/tether-libra/ Wed, 07 Aug 2019 05:50:19 +0000 https://kasou-tsuuka.jp/?p=4936 7月10日よるから現在にかけて、ビットコイン価格が大幅に下落しました。

ビットコイン価格が急速に上昇し、ついに上昇相場へと転換したかと言われていた矢先の暴落であり、大きくつまずいた印象があります。

今回の暴落の背景には、テザーとリブラという、根深い二つの問題があります。

本稿では、これらの問題と今回の暴落の関係、今後の展開などについて解説していきます。

暴落の1週間

この1週間、仮想通貨市場は久々に酷い暴落となりました。

ビットコイン価格は、7月10日22時には142万円の終値を付けていたものが、23時の終値136万円と1時間で6万円の急落となり、その後も勢いを保って下落を続けた結果、15日9時の終値は109万円となりました。

5日で20%以上もの暴落です。

また、ビットコインの暴落の影響を受けて、他のアルトコインも軒並み大幅な下落となっています。

XRPで言えば、一時32円台まで落ち込み、今年5月あたりから徐々に回復してきた価格は全く崩れてしまいました。

 

暴落の背景

この暴落の背景には、

 

  • ようやく上昇相場への転換かと期待され、同時にリブラのホワイトペーパーなどの好材料も重なったため、買いが集まっていた
  • しかしその後、リブラへの規制やテザー問題への懸念が高まり、リスク回避や利確のための売りが相次いだ

 

といったことが考えられます。

仮想通貨はボラティリティが大きいこと、信用取引の割合が高いことなどから、急速に買いが集まった時のリスクも非常に大きくなります。

何らかの悪材料から大幅に下落すると、多くのポジションがロスカットを受けることとなり、下落を加速させるためです。

今回の暴落(というよりも、これまでの仮想通貨市場における暴落のほとんど)も、同じ原因によるものです。

特に大きかったのが、テザーの発行と価格操作への疑惑が深まっていること、一時は好材料となったリブラへの規制強化が懸念されていることです。

 

テザー問題に注目が集まる

テザー問題は、これまでも度々取り上げられており、そのたびに市場に様々な影響を与えてきました。

今回の問題も、2018年末からテザーとビットコインの値動きに相関性の高さが指摘されており、価格操作の懸念も高まっていました。

ビットコインが下落を続けている中、テザーが新規発行されることで市場が反騰する動きが多く確認されており、テザーの発行状況によって買いが集まる状況になっていたのです。

このことは、テザーの発行状況を含め、大口取引を確認できるトラッキングBOT「Whale Alert」のシェア数が大幅に増加を続けていたことからも分かります。

このような方針は、投資する金融資産の本質的な価値に基づく投資判断ではなく、問題の渦中にあるテザーの発行を材料として売買するのですから、非常に頼りない方針と言えます。

テザー発行を根拠とした上昇相場が続く中、NYGAがテザー問題に関する多数の証拠を提出したことが報じられたり、メトロポリタン銀行がテザー口座を半年以内に凍結する方針を示したりしたことで、相場の崩壊につながったと考えられます。

 

人為ミスで暴落が加速

さらに、今回の暴落ではWhale Alertのミスも影響しています。

14日、Whale Alertは50億ドルものUSDTが新規発行されたとして反応を示しました。

これまでのUSDTの新規発行は1億ドル程度であったため、その50倍に相当するUSDTが新規発行されたとなれば異常です。

これにより、市場の警戒感が急速に高まったのですが、結局は人為的なミスであったことが報告されました。

いくらテザーの発行が市場の上昇力になってきたとはいえ、テザー問題の現状を考えれば、50億ドルも新規発行を素直に受け取ることはできないでしょう。

さらに、単なる人為的なミスであったのですから、裁判を控えたテザーにとって甚だ好ましくありません。

そもそも、価格操作の疑念があること、つまりテザーの動向を原因とした市場の動きに問題が投げかけられているのです。

Whale Alertにおける人為的なミスが市場に影響を与えたとなれば、これもテザーの動向によって市場が左右された事例と考えることもできます。

極端に言えば、人為的なミスを起こすことで市場を動かせる、つまり市場の操作が可能であるとも言えるのですから、裁判で不利に働く可能性も否めません。

テザー社に関する裁判は、7月29日に予定されています。

この裁判でテザーに不利な判決が下ったならば、市場の上昇を引き起こしてくれるテザーへの期待が薄くなり、これまでのような上昇力を欠くことになります。

以上の懸念から、Whale Alertの報告がミスであったことが判明するなり売りが加速し、さらなる下落を招きました。

29日の裁判は、今後の市場動向を占う重要なイベントとなるでしょう。

 

リブラへの警戒も下落を招く

先日、Facebookがリブラのホワイトペーパーを公表した際には、仮想通貨市場にとって追い風となりました。

リブラ計画が実施されれば、法定通貨からデジタル通貨への移行が大変にスムーズになり、仮想通貨の普及にもつながると考えられます。

このため、仮想通貨業界の主要な人々も、多くがリブラを歓迎しています。

しかし、リブラは金融システムに対してあまりにも大きな変革をもたらす可能性があるとして、各国政府や規制当局は警戒感を強めています。

G20でも懸念の声が挙がっているほか、FBRのパウエル議長も「リブラ計画には個人情報保護、資金洗浄、消費者保護、金融の安定などの懸念があり、徹底的かつ忍耐強く取り組むべきである。12ヶ月以内にリブラ計画を実施するのは難しいだろう」などと発言しています。

さらに、トランプ大統領も多くの仮想通貨を信用していないと発言しており、特にリブラを名指しで批判しています。

この流れを受けて、下院では14日、大手IT企業がデジタル資産を発行・運用することを禁止する議案が提出されています。

また、7月18日、19日には米上院・下院で公聴会が開かれることが決まっており、さらにG7でもリブラを主要議題に取り上げる予定です。

Facebookのような、巨大な影響力を持つ企業が金融に参入することについて、これまでも米国会では問題視する雰囲気がありました。

しかし、議案の提出や公聴会といった具体的な形での動きは初めてのことです。

リブラを叩くために、規制を急速に進めた結果、仮想通貨業界全体の発展を強く制限してしまう可能性もあります。

リブラだけではなく、他の様々な仮想通貨にも同様の規制が適用されれば、多くの人が仮想通貨から資金を引き上げるはずです。

そのリスクに備えるための売りが増えていることも、今回の暴落の原因となっています。

 

今後の進展に注目

テザーやリブラの問題によって、今後の仮想通貨市場がどのように進展していくか、全く予断を許さない状況です。

もちろん、裁判は一朝一夕に結論が出ないものですし、パウエル議長も言っている通り、リブラへの規制も慎重に進められていくことと思います。

仮想通貨市場も、これらの進展によって左右されるでしょう。

短期間のうちに、再び急速に上昇トレンドに入るとは考えにくいです。

また、進展が見られないタイミングで強い空売りが仕掛けられるとも考えにくく、さらなる急落の危険性もそれほど高くないでしょう。

もっとも、再び下落トレンドになっていく可能性もあります。

仮想通貨に投資する人、特にレバレッジ取引をする人の中には、短期的な利益を目的としている人が少なくないからです。

レバレッジ取引はリスクが高いため、投資期間が長ければ、その期間中の急騰落によって損失を被るリスク、すなわち「持ち続けるリスク」も高まります。

また、仮想通貨以前に全く投資の経験がないという人も多いです。

このような人は、リスクコントロールのために短期投資をするのではなく、希望的観測によって投資をし、思ったように利益が得られず、短期間でしびれを切らして決済することで、結果的に短期投資になるケースがよくみられます。

このため、テザーやリブラの問題があまり進展することなく、解決・結論に時間がかかるほど積極的に売買する動きが減り、仮想通貨市場の流動性が乏しくなると考えられます。

市場に資金が流入してこなくなる、つまり需要が乏しくなると、価格は下落していきます。

特にアルトコインの値動きは、出来高との相関性が強いため、流動性が乏しくなるほど下落傾向も強くなるでしょう。

テザーやリブラの問題が長期化することは、仮想通貨市場にとって好ましくありません。

しかし、結論を急げば好ましくない判例や規制につながり、さらなる下落を招く懸念があります。

このことから、現在の仮想通貨市場は、テザーとリブラの問題により、上昇への期待よりも下落への警戒を強めるべき時期と言えるでしょう。

 

価格調整と捉える専門家も

ただし、今回の下落は決して悲観すべきものではないとする専門家もいます。

ビットコインに強気のコメントを続けているトム・リー氏は、自身のツイッター上で、今回の暴落は健全な価格調整だと指摘しています。

トム・リー氏は、先日トランプ大統領が「ビットコインはお金ではない」と批判した際にも、却ってビットコインの知名度向上につながる「最高の宣伝」としています。

大統領発言によりビットコインが強気相場を引き起こし、ビットコインは年内に4万ドルを突破するとみています。

確かに、株でも仮想通貨でも、あらゆる投資対象は一本調子に上昇や下落を続けるものではなく、価格の調整を繰り返すものです。

したがって、今回のビットコインの動きが単なる価格調整であり、年内に4万ドルまで上昇の可能性があるならば、今回の暴落は押し目買いの絶好のチャンスと言えるでしょう。

 

まとめ

テザーとリブラの問題によって暴落を招いた今、注目すべき直近のイベントは18日、19日のリブラの公聴会、そして29日のテザーの裁判です。

これらの動きに注目しつつ、慎重に動きたいものです。

警戒感が強まり、市場が暴落しているタイミングが、割安な価格で仕込めるチャンスになることもあります。

「売るべし、買うべし、休むべし」、「休むも相場」の格言の通り、警戒を強めて全く手を出さないのも投資ですし、警戒しつつ段階的に仕込んでいくのも良いでしょう。

明確な判断基準が得られるまでは、慎重に取り組んでいきましょう。

 

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トランプ大統領が仮想通貨を痛烈に批判 https://kasou-tsuuka.jp/trump-hihan/ Wed, 07 Aug 2019 05:47:39 +0000 https://kasou-tsuuka.jp/?p=4938 アメリカのトランプ大統領は、ツイッターでの発言がしばしば取り上げられることでも有名です。

先日のG20の際にも、トランプ大統領が北朝鮮を電撃的に訪問したことが話題となりましたが、これも前日にツイッターで会見を予告したことで、多くのメディアで取り上げられていました。

そのトランプ大統領が、今度はツイッターで仮想通貨とリブラに対する批判を展開しています。

リブラの公聴会が数日後に控えたタイミングでの発言であり、仮想通貨市場への影響も表れています。

本稿では、トランプ大統領の発言と仮想通貨市場への影響を解説していきます。

トランプ大統領が仮想通貨を批判

7月12日、トランプ大統領はツイッターにおいて、仮想通貨やFacebookのリブラに痛烈な批判をしています。

トランプ大統領のツイッター発言は度々注目されてきましたが、今回の発言も大きな注目を浴びています。

トランプ大統領の批判は、かなり語気が強いもので、

 

私は、ビットコインやその他の仮想通貨を支持していない。

あれはお金ではないし、価値は不安定だ。

価値の裏付けにも乏しい。

規制が整っていないから、麻薬取引をはじめとした非合法取引の温床になっている。

 

というものでした。

仮想通貨に対する規制が十分に整っていないことで、非合法取引を助長していることは、これまでも議論の対象となってきました。また、価値が不安定であることや、仮想通貨をお金でないとする意見も、従来からあったものですから、その点では特に驚くべき発言ではありません。

しかし、トランプ大統領がこのように明言していることは、やはり注意しておきたいことです。

2017年、中国が仮想通貨に対して大々的な規制を敷いたことにより、仮想通貨市場は大きな打撃を受けることとなりました。

もし、アメリカで仮想通貨業界の発展を牽制するような規制が行われれば、これも仮想通貨市場に大きな影響が表れる可能性が高いです。

 

リブラへの批判も

また、Facebookが開発している仮想通貨「リブラ」に対しても批判を展開しています。

トランプ大統領は上記のツイートに続けて、以下のように発言しています。

 

同様に、Facebookのリブラもほとんど信用していない。

Facebookや他の企業が銀行になりたいならば、銀行と同じ規制を受けるべきだ。

 

先日のG20でも、リブラ構想が実現した場合、金融・経済に大きな影響を与える、場合によっては混乱をきたす可能性があることから、早急な対処が必要だという結論に達しています。

現在の金融・経済の中枢では、リブラを否定的にみなす勢力もかなり強く、トランプ大統領もまたその一員であることが分かります。

Facebookのリブラ構想が実現すれば、Facebookが銀行のシェアを大きく奪う可能性があります。

しかし、Facebookは銀行と同様の厳格な規制を基にリブラを展開していくことは想定していません。

そもそも、リブラ構想はスマホアプリなどを介して、手軽に送金や決済が可能となることを目指しています。

つまり、様々な規制から生じる手間を省いた利便性こそが、最大の特徴と言えます。

そこに、銀行同様の厳格な規制が加えられるならば、リブラの活用に様々な制約が課せられ、利便性の大きな妨げとなります。

リブラ構想と銀行規制は非常に相性の悪いものであり、トランプ大統領の発言のように銀行同様の規制を受けることになれば、リブラ計画には大きな狂いが生じるでしょう。

 

米ドルが唯一無二の通貨

さらに、トランプ大統領のツイッターでは、

 

アメリカは、唯一無二の通貨を持っている。

世界中のどこでも通用し、最も信頼されており、最も支配的な立場にある通貨だ。それは、米ドルである。

 

とも発言しています。

トランプ大統領は、この発言によって米ドルという法定通貨を強く支持しています。

本物の通貨は仮想通貨でもなく、リブラでもなく、法定通貨・米ドルであると断言したわけです。

仮想通貨の起源を考えると、法定通貨、中央集権的な金融システムに対する批判から生まれた側面があります。

このため、「法定通貨と、仮想通貨の技術的側面(ブロックチェーン技術)を支持する」という立場は成り立っても、「法定通貨と、仮想通貨そのものの双方を支持する」という立場は、基本的には成り立ちにくいものです。

トランプ大統領は、仮想通貨と対立した立場にある米ドルを強く支持しているのですから、その存在を脅かす仮想通貨やリブラを強く批判しているのは、ある意味当然のことと言えるでしょう。

 

法定通貨と仮想通貨の対立が浮き彫りに

トランプ大統領はアメリカの首長なのですから、このような発言は立場相応とも言えます。

現実的に、米ドルは世界の基軸通貨であり、あらゆる法定通貨の中で最も信頼性に優れており、確かに支配的立場にあります。

仮想通貨が、たとえ技術的にどれほど優れていようとも、実際に金融・経済に良い意味での変革をもたらすものであっても、仮想通貨を支持することで米ドルの信頼性や支配力が損なわれることは避けなければならないのです。

この発言は、法定通貨を否定できない指導者の一群と、法定通貨にとって代わる可能性がある仮想通貨側との対立を浮き彫りにしたとも言えます。

 

各仮想通貨の立場にも影響するか?

今後も、このような対立は長引くでしょう。

様々な形で、仮想通貨の普及を妨げる原因になる可能性があります。

しかし、これは必ずしも、すべての仮想通貨に影を落とすとは限りません。

例えば、法定通貨を否定しない立場の仮想通貨は、他の仮想通貨が抑えつけられる中で成長していきやすいとも考えられます。

良い例がリップル社のXRPです。

XRPは法定通貨にとって代わるものではなく、否定するものでもなく、法定通貨がより効率的に機能するために役立つ仮想通貨です。

多くの仮想通貨は、送金や決済が法定通貨に比べて大変に便利であることを特徴としています。

しかし、XRPのような存在によって、法定通貨の劣る部分をカバーできるならば、法定通貨を支持する勢力として、XRPを支持するという流れも考えられます。

実際に、基本的に仮想通貨を否定する金融業界で、XRPは着実に勢力を伸ばしています。

このように、それぞれの仮想通貨が法定通貨にどのような影響をもたらすかという視点で考えた場合、規制の強く影響を受ける仮想通貨、影響を受けにくい仮想通貨、規制が追い風になる仮想通貨、といった影響度の違いが出てくるはずです。

今回のトランプ大統領の発言は、法定通貨と仮想通貨の対立を浮き彫りにすると同時に、法定通貨と特定の仮想通貨の親和性を浮き彫りにすることになるかもしれません。

 

リブラの公聴会に注目

以上のような理由から、トランプ大統領の発言は注目に値しますが、タイミング的にも意味深なものを感じます。

というのも、Facebookのリブラ計画に対する公聴会が数日後に控えているからです。

先日、リブラのホワイトペーパーが公表されてから、一部で懸念の声が高まり、Facebookはすぐに開発の停止を求められました。

そして、米国議会では16,17日に、リブラに関する公聴会が開かれることとなりました。

FBR(米連邦準備制度委員会)のパウエル議長も、先日開かれた上院の銀行委員会において、リブラに対して「最高水準の規制が必要だ」と明言しています。

パウエル議長の場合、特にプライバシー保護についても強い懸念を示しています。

また同時に、パウエル議長は「ビットコインやその他の仮想通貨が普及していけば、米ドルにとってかわる存在になりかねない」とも発言しています。

トランプ大統領の一連のツイートは、その後まもなく投下されたものです。

その内容ろ見れば、パウエル議長の考えを支持し、それに加えて強い批判を加えることが目的と考えられます。

 

仮想通貨市場への影響も

リブラの公聴会が控えるタイミングでこのような発言がなされたことで、国際的にも大きな注目を集める結果となっています。

リブラが普及することによって、仮想通貨全体の普及にもつながる可能性が高く、仮想通貨業界は基本的にリブラを歓迎してきました。

ここ数ヶ月、仮想通貨は好調を続けてきたのですが、リブラへの期待も上昇を押し上げる要素となりました。

しかし、ここ数日でビットコインを初め多くの仮想通貨が暴落しています。

この暴落は、トランプ大統領の発言と時期を同じくしていることから、トランプ大統領の発言も強く影響しているものと考えられます。

リブラに対する国際的な懸念が高まったことで、上昇力に陰りが見えてきたところへ、トランプ大統領の痛烈な批判が行われたことで、数日の公聴会でリブラ計画に打撃が加えられること、さらには規制の可能性が高まったことにより、下落への圧力が一気に高まったものと思います。

 

「トランプ大統領が批判した」という重要性

これまで、一国の首長が自身の発言として、仮想通貨に対してこのように痛烈な批判をすることはほとんどありませんでした。

要人発言全体で見れば、過去にJPモルガンのCEOが「ビットコインは詐欺だ。仮想通貨取引に手を出した社員はクビにする」などと痛烈な批判を展開したことがあります。

しかし、この発言が行われたのは2017年のことです。

当時は「仮想通貨元年」などともいわれており、仮想通貨に対する懐疑的な意見も今よりずっと多く、そのような批判が出てくるのもやむを得なかったと言えます。

あの当時、仮想通貨への強い批判が行われてもある程度は仕方のなかった状況の当時でさえ、このような発言が仮想通貨市場にマイナスの影響を与えていました。

あれから約2年が経過し、仮想通貨への国際的な規制は遅々として進まないものの、国家レベルでの規制はそれなりに進展していますし、なにより仮想通貨業界の健全化、各仮想通貨取引所のセキュリティ性、各仮想通貨の技術レベルなどは大きく進展しています。

もちろん、未だにハッキング被害は後を絶ちませんが、少なくとも2年前に比べると随分と改善され、仮想通貨の実用化も進んでいます。

企業がブロックチェーン技術を取り入れる動きや、実際の決済に仮想通貨が利用される動きは加速度的に増えています。

 

リブラ計画は、あまりにも大きな影響が懸念されていることから、相対的に批判する動きも大きくならざるを得ないでしょう。

しかし、一国の首長がリブラ単体への批判にとどまらず、仮想通貨への信頼性に疑いを投げかける、それも自国通貨と対比しながら仮想通貨を批判しているのですから、トランプ大統領の発言からは「米ドルVS(リブラを含む)仮想通貨全体」という構図も見て取れます。

リブラに関する公聴会の直前に、このような批判が行われたことも重要ですが、それ以上に仮想通貨業界が進化を続け、多くの企業が関心を示し、普及への足掛かりも掴み始めたタイミングで、これまでの歩みを否定するような意見が出てきたことに、仮想通貨投資に関わる側としての懸念を抱くべきでしょう。

 

まとめ

世界的な懸念の高まりに加え、トランプ大統領という大物が敵対に回ったことで、Facebook・リブラにとっては逆風が吹き荒れる状況となりました。

リブラ計画、延いては仮想通貨全体の今後には多くの困難が生じる可能性も出てきました。

トランプ大統領だけではなく、リブラ計画を全面的に否定・反対する声が多方面から上っています。

リブラへの規制は、仮想通貨への全体的な規制にも大きな影響を与えると考えられており、規制の方向性によっては、仮想通貨全体にとって大きな試金石になりかねません。

ここ数ヶ月、多くの仮想通貨は上昇力を取り戻し、ようやく冬の時代を乗り越えたかと言われていました。しかし、まだまだ寒い時期が続くのかもしれません。

今後はしばらく、リブラ周辺の動きに注意しておく必要がありそうです。

 

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日本のキャッシュレス化の遅れ、そしてセブン・ペイの失敗 https://kasou-tsuuka.jp/cashless-7pay/ Wed, 07 Aug 2019 05:45:50 +0000 https://kasou-tsuuka.jp/?p=4940 日本政府はかねてより、キャッシュレス化を推進しており、多くの企業がそれに追随して様々な活動を展開してきました。

最近では、PayPayやLINE Payがその最たるものであり、キャッシュレス決済は徐々に浸透しつつあります。

しかし先日、セブンイレブンでセブン・ペイを導入したところ、すぐさま問題が露呈するなどの躓きも見られ、諸外国と比較してもまだまだ日本のキャッシュレス化は遅れている状況にあります。

本稿では、日本のキャッシュレス化の動向をまとめ、仮想通貨業界への影響を考察していきます。

日本のキャッシュレス化

日本政府は、2018年からキャッシュレス化を目指しています。

経済産業省の目標では、「2025年までにキャッシュレス決済率を40%にする」としています。

これは、世界的にキャッシュレス化の普及が進んでいる流れの中で、日本も遅れを取らないようにすることが大きな目的です。

また、それと同時に、2020年に開催される東京オリンピックに備えるためでもあります。

オリンピックになると、世界中から多くの人が日本を訪れます。

このとき、キャッシュレス化が進んでいない状況であれば、技術的に遅れている印象を与えかねません。

また、キャッシュレス化の普及率が諸外国より大幅に低ければ、外国人に不便を強いることとなります。

決済の様々な場面での混乱、さらには換金所などでの混雑なども招き、オリンピックによる経済効果を減少させることにもなりかねません。

このため、政府はキャッシュレス化の推進を目指しているのです。

 

キャッシュレス化の現状

現在、日本で広く普及しているのは、Suicaをはじめとする交通系のカード決済でしょう。

しかし、クレジットカード、電子マネー、デビットカードなどによる決済は、まだまだ十分に普及しているとは言い切れません。

これは、日本と諸外国のキャッシュレス決済率を比較してみると、よくわかります。

野村総合研究所の2016年のデータによれば、諸外国のキャッシュレス比率は以下のようになっています。

 

1位:韓国(96.4%)

2位:イギリス(68.7%)

3位:オーストラリア(59.1%)

4位:シンガポール(58.8%)

5位:カナダ(56.4%)

6位:スウェーデン(51.5%)

7位:アメリカ(46.0%)

8位:フランス(40.0%)

9位:インド(35.1%)

10位:日本(19.8%)

11位:ドイツ(15.6%)

 

※中国は詳細なデータがないものの、2015年時点で約60%とするデータ有り。

 

韓国のように、普及率が100%に迫る国は例外としても、日本はインドにも大きく遅れをとっており、先進国の中でも特にキャッシュレス化が遅れていることが分かります。

先進国の中で、同じく遅れをとっているのはドイツです。

ドイツと日本は民族性が似ており、質実剛健の風があると言われます。

この民族性から、実態のある確実な「現金」を重視する傾向が強く、あまりキャッシュレスというものを好まないとも言われます。

もっとも、日本では仮想通貨の取引も盛んですし、必ずしもキャッシュレスを忌避するものではないでしょう。

実際、PayPayやLINE Payといった新しい電子マネーも、比較的浸透しつつあるように思います。

特に、これら二つの電子マネーは、全てのコンビニで利用可能となっています。

 

セブン・ペイの失敗

ただし、長らくキャッシュレス化が進まなかった日本において、急速にキャッシュレス化の推進を目指したことで、問題も出てきています。

その最たる例が、セブン・ペイの失敗です。

様々な企業がキャッシュレスサービスを開始する中、セブンイレブンでも7月1日、「セブン・ペイ」というスマホ決済サービスを開始しました。

しかし、サービス開始直後に不正アクセス被害が続出し、3日にはサービスの停止に至っています。

現時点で、900人以上のIDが乗っ取りに遭い、被害総額は5500万円となっています。

 

セブン・ペイの甘さ

セブン・ペイの公式サイトを見てみると、

 

  • 最短2タップで簡単登録
  • セブンイレブンで手軽に使える
  • nanacoポイントが貯まる

 

といった、利便性を押し出す内容となっています。

そもそも、コンビニという業態の語源である「Convenient」からして「便利」という意味であり、キャッシュレス決済も利便性を追求するものですから、このようなスタンスには何ら問題はないでしょう。

しかし、利便性を求めるあまり、システムがあまりにも脆弱であれば、大きな問題です。

セブン・ペイの小林社長は、

 

事前に脆弱性は見つかっていなかった。原因は調査中である

と発表しているのですが、セキュリティ性に問題があったことは明らかです。

なにしろセブン・ペイには、今や仮想通貨業界では常識となっているSMS認証や二段階認証などの機能が備わっておらず、さらにメールアドレス・電話番号・生年月日の情報だけでパスワードをリセットできる仕組みになっていたのです。

確かに、これならば何度も認証せずにラクに利用できます。

登録もパスワード設定も簡単です。

しかし、その結果としてこのような事件が起きてしまったのです。

今回の不正利用では中国人が逮捕されており、警視庁は国際的な犯罪組織が関与しているとして捜査しています。

セキュリティ性の向上に苦心している仮想通貨取引所でさえ、ハッキング被害に遭うことがあるのです。

セブン・ペイのようなシステムでは、国際的な犯罪組織の手にかかれば実に簡単に不正利用できるものであり、不正利用されないほうがおかしいというレベルです。

BBCニュースでは、この事件を「あっさり不正アクセス許す」と題する記事にまとめていますが、まさに「あっさり」とは言い得て妙です。

 

仮想通貨業界への影響は?

日本のキャッシュレス化の遅れ、国をあげてのキャッシュレス化の推進、そして今回のセブン・ペイの問題によって、仮想通貨業界にはどのような影響があるのでしょうか。

まず、キャッシュレス決済が普及すれば、現金を伴わない決済に抵抗がなくなる人が増えるため、仮想通貨業界にも良い影響が表れるでしょう。

しかし、これは直接的な影響ではなく、間接的な影響です。

したがって、政府がキャッシュレス化を推進していること、またセブン・ペイの問題を受けての対応などによって、仮想通貨業界に直接的に大きな影響があるとは考えにくいです。

それでも、間接的には様々な形で影響してくると思います。

今回のセブン・ペイの問題に関して言えば、仮想通貨業界が見直される一つの契機になる可能性があります。

日本の仮想通貨業界でも、これまで何度か、セキュリティ性に端を発する社会問題を引き起こしてきました。

そのたびに、仮想通貨業界は金融庁からの強い規制を受け、問題のある業者は淘汰されつつ、健全な業者だけが生き残り、セキュリティ性も随分と改善され、業界の健全化は大きく進みました。

日本の仮想通貨業界は、多くの問題を一つずつ解消してきたと言えるでしょうが、それより遅れて出てきたキャッシュレスサービスは同じ轍を踏むように、様々な問題に直面している印象があります。

これは、政府が2018年から急速にキャッシュレス化の促進を始めたこと、また仮想通貨に比べて参入障壁が低いこと、これによって多くの企業がキャッシュレスサービスを展開し、シェアの獲得競争が激化したことが原因でしょう。

もう少し緩やかにキャッシュレス化を進めればよかったのでしょうが、あまりにも急速に競争が展開していったため、常識的には考えられないようなセキュリティ性の甘さでサービスが開始され、社会問題を引き起こす会社も出てきたのです。

もちろん、2018年初頭のCoincheck事件でも、仮想通貨業界としては考えられないセキュリティの甘さであるとして随分叩かれていましたが、セブン・ペイの甘さはそれをはるかに上回るものです。

技術やサービスなどというものは、黎明期の未熟な段階では、様々な問題が起こるものです。

また、これによって技術やサービスが成長していくのも事実です。

したがって、セブン・ペイの問題によって、闇雲に進められようとしていたキャッシュレス化に一旦調整が入ることで、キャッシュレス化がより健全な形で普及していけば、これが仮想通貨業界にも良い影響を与えることになるでしょう。

また、キャッシュレスサービスを展開する企業の姿勢が明らかになったことで、既に多くの問題を乗り越えてきた仮想通貨業界の信頼が、相対的に高まることにもつながるかもしれません。

このように、キャッシュレス化の流れは、促進される流れによっても、またセブン・ペイのような問題が起きる流れによっても、間接的に良い影響を受けるものと思います。

 

まとめ

セブン・ペイの問題は、その内容を見てみると呆れかえってしまうほどのものでした。

これにより、キャッシュレス決済への信用が揺らぎ、普及の妨げになることも考えられます。

しかし、これはセブン・ペイが大きな問題を抱えていただけで、キャッシュレス決済そのものはこれまでと変わらず推進されていくでしょう。

政府によって、何らかの規制が加えられる可能性もあり、結果的には健全化の良い材料となるはずです。

このような動きは、仮想通貨業界にも間接的に良い影響を与えるものですから、今後もキャッシュレス化の動きには注目していきましょう。

 

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大阪でG20・V20が開催。市場への影響を考える https://kasou-tsuuka.jp/g20-osaka/ Wed, 07 Aug 2019 05:43:03 +0000 https://kasou-tsuuka.jp/?p=4930 6月28日から29日にかけ、大阪でG20が開催されました。

また、時を同じくしてV20も開催されています。

今回、G20では主にリブラについて、V20では主にFATFのガイドラインについて議論されていますが、特に注目すべき内容はなく、仮想通貨市場への影響もほとんど見られません。

本稿では、G20とV20の概要について解説していきます。

G20大阪サミットの内容は?

6月28日から29日にかけて、大阪でG20が開催されました。

仮想通貨が金融に与える影響が高まってから、G20では仮想通貨への世界基準の規制についても議論されてきました。

しかし、特にこれといった内容のある議論ではなく、マネーロンダリングやテロ資金などへの不正利用を防ぐために、世界基準で規制していきましょう、といった方針が確認されるだけでした。

G20の動きによっては、仮想通貨市場に大きな影響を与える可能性があるため、市場からの注目度は高いです。

しかし、既に分かり切っていることを各国が確認し合うだけで、ほとんど進展がない状況が続いていました。

ただし、今回のG20はこれまでと異なり、フェイスブック社が開発を進める「リブラ」について議論が行われています。

フェイスブック社は、リブラのローンチを2020年としており、金融への影響も大きいことから、G20 としては仮想通貨全体に対する規制よりも、リブラへの規制を優先的に進めていく雰囲気になっているようです。

もっとも、今回も仮想通貨への全般的な規制について、具体的な議論はなされていません。

リブラへの規制も、強い懸念を表明しているものの、懸念への具体的な対応は打ち出されていません。

しかし、リブラのローンチまで、あまり時間的な猶予はないため、今後リブラへの規制が急速に進められていく可能性があります。

これが、仮想通貨全体への規制の基礎固めになるとも考えられるため、リブラへの対応には注意しておく必要があるでしょう。

 

V20も同時開催

今回のG20では、仮想通貨全体への規制からリブラへの規制へシフトした感じがありますが、市場に大きな影響を与えるような議論にはなりませんでした。

一方、G20に合わせて大阪で開催されたV20はどうだったのでしょうか。

V20とは、仮想通貨業界を牽引する、世界の仮想通貨業界関係者、FATF事務局、政府関係者などが集まり、議論・情報の共有などを目的とするものです。

今回のV20には、日本の自主規制団体であるJBA(日本ブロックチェーン協会)も参加しています。

V20で議論される内容は、主にG20が今後世界基準での仮想通貨規制に取り組んでいくにあたり、規制が仮想通貨業界の発展の妨げにならないよう、どのように向き合っていくかについてです。

特に、今回のV20では、FATF(金融活動作業部会。マネーロンダリング対策のための国際基準を策定する組織)が6月22日に発表したガイドラインが議論の対象となっています。

FATFは政府間機関であり、金融ネットワークに強い影響力を持っています。

FATFのガイドラインは、G20が仮想通貨の規制を考えていく上でもひとつの指針となるため、V20 としてもFATFのガイドラインについてしっかり議論し、業界の発展につなげていく必要があるのです。

 

FATFのガイドラインとV20

FATFのガイドラインは、主にマネーロンダリングとテロ資金調達を防止するために作られており、仮想通貨の普及のためには欠かせないものです。

しかし、FATFのガイドラインの中には、仮想通貨の普及の妨げになりかねない内容も含まれています。

例えば、FATFのガイドラインでは、仮想通貨を送金する際には受取人の情報を提供すべきとしています。

これは、銀行における電信送金では義務付けられていることですが、仮想通貨取引にも適用されてしまうと、仮想通貨のメリットを損なうことになります。

なぜならば、仮想通貨取引はアドレスさえあれば可能であり、それがブロックチェーン技術の優れた点でもあるからです。

また、仮想通貨交換業者にとって、提供する受取人の情報が正確であるかどうかを確認することが困難な場合も多く、コスト負担の増大を招きます。

このコストは利用者の負担にもつながり、低コストで送金できるというメリットも損なわれます。

コスト負担を嫌う利用者だけではなく、仮想通貨の受取人の情報把握が困難な場合に送金できないとなれば、規制の対象外であるウォレット同士で仮想通貨をやり取りする人が増え、仮想通貨の流れを把握することが一層困難となり、マネーロンダリングやテロ資金調達の問題が却って大きくなる可能性もあります。

このように、FATFの規制によって受取人の正確な情報の提供が義務付けられても、仮想通貨の発展の妨げとなり、犯罪防止にも逆効果なのではないかという懸念の声が上っています。

 

ガイドラインは仮のもの

Ⅴ20では、仮想通貨業界から懸念の声が上っている、ガイドラインの条項についてFATF自ら解説しています。

Ⅴ20で登壇したFATF書記官は、22日に発表したガイドラインは仮のものであり、より適切な規制を模索中であるとしています。

FATFは、中央集権的な仮想通貨取引所だけではなく、分散型取引所やP2P取引所も含めた規制が必要と話していますが、これは一朝一夕に片付く問題ではありません。

特に、「P2P取引が増加し、把握が一層困難になるのではないか」という質問に対して、技術的に多くの課題があることを認めています。

この課題に取り組むにあたり、様々な専門知識が必要となります。

FATFでは、資金洗浄やテロ資金対策に関する技術、ここでは仮想通貨やブロックチェーン技術について、専門機関にリサーチを依頼して専門の知識・情報を収集し、G20に報告しています。

FATFは、2018年のG20終了後、規制の整備を促進するためにリサーチを始めたと話しています。

アルゼンチンでG20が開催されたのは2018年12月ですから、FATFが専門知識・情報を収集し、規制を模索してからまだ半年しか経っていません。

規制を作り上げていくには、まだ時間がかかると見てよいでしょう。

なお、FATFの規制は仮想通貨業界にデメリットをもたらすことが目的ではなく、規制によって仮想通貨市場がよりオープンになるものだと強調しています。

現時点でのガイドラインには懸念の声もありますが、FATF自らの説明によって、

 

  • ごく短期間でガイドラインを作成していることから、あくまでも仮のものであり、模索中であること
  • 仮想通貨業界にマイナスにならない規制を模索していること

 

などがわかり、とりあえずは安心といったところです。

 

JBA・加納会長のスピーチ

また、Ⅴ20に参加したJBAからは、会長である加納裕三氏がスピーチをしています。

加納氏は、日本国内で仮想通貨の関心が高まっていることを、

 

  • ビックカメラなどの大企業がBTC決済を導入していること
  • 仮想通貨関連書籍が100冊を超えていること

 

などの例を挙げながら話し、また国内の規制への取り組みについては、

 

  • JBA(日本ブロックチェーン協会)、JVCEA(日本仮想通貨交換業協会)、JCBA(日本仮想通貨事業者協会)などの組織が業界の整備に取り組んでいること
  • 金融庁が改正資金決済法に仮想通貨を取り組んだこと

 

などについて話しています。

日本は改正資金決済法の可決をはじめ、世界的にも規制が進んでいる国です。

もちろん、コインチェック事件のような未曽有のハッキング被害もあったものの、それを通じて業界が成長しつつあります。

一方で、規制の整備が遅れている国、不明確性が強くなりつつある国なども多く、各国での規制に格差が出てきています。

この格差が大きくなるにつれて、規制が遅れている国を利用した規制逃れの問題が大きくなるでしょう。

加納氏は、このような問題に対処するためにも、世界基準での規制が必要だと訴えかけました。

 

まとめ

今回のG20・V20では、どちらも大きな話題になる動きは見られませんでした。

世界基準での規制は、FATFの取り組みを見ても、G20 の内容を見ても、まだまだ模索中といった印象があります。

仮想通貨市場への影響は可もなく不可もなく、今後も世界基準での規制という大きな単位での動きではなく、米SECの動きや日本の金融庁の動き、あるいはそれぞれの仮想通貨の動きなど、小さな単位での動きに注目していくことになりそうです。

 

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